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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科3巻7号

1968年07月発行

雑誌目次

視座

九州路の旅

著者: 片山良亮

ページ範囲:P.553 - P.553

 御承知の通りDr. David M. Bosworthが勲二等瑞宝章をお受けになり,そんな関係で,本年は私は手の外科学会に出席ができなくなつて残念に思つていますとともに,津下先生には誠に申訳のないことをいたしました.
 私はBosworth先生と一緒に4月3日に東京を出発して,整形外科の総会に出席し,それから更に広島,別府,九州横断道路を経て熊本への旅に出ました.熊本からは汽車で福岡に向いましたが,天児先生御夫妻の御出迎えをうけて恐縮いたしました.それから更に飛行場まで御送りいただきBosworth先生も感激しておられました.

論述

先天性中足骨内反(Congenital Metatarsus Varus)について

著者: 土屋弘吉 ,   亀下喜久男 ,   森岡健

ページ範囲:P.554 - P.565

 1909年Cramerは,前足部の内転と内反を主な変形とする先天性足変形に対し,metatarsus adductusとmetatarsus varusなる語を初めて使用した.彼は,その主な変形が中足骨の単なる内転によるものをmetatarsus adductusと呼び,これに対し,中足骨の内反により前足部の内転変形が起つていると考えられるものをmetatarsus varusと呼んだ.
 1929年Kauffmannは,中足骨の内反変形は乳幼児期には見られず,これは,起立歩行により二次的に発展するものであると結論した.そして,metatarsus adductusとmetatarsus varusとは,同一疾患のうちの程度の異なるものであるとし,両者をまとめて,pes adductusと呼んだ1)7)8)

いわゆるatypical spondylolysisについて

著者: 荒井三千雄

ページ範囲:P.566 - P.574

はじめに
 古来,脊椎分離症に関して多くの研究があるが,多数の臨床材料について新たな観点から検討を加えることは,今日においても決して無意味ではない.たとえばX線写真をよくみると,まず症例によつて分離部の形にかなりの違いがあることに気づく.裂隙の形はあまりにも多様であつて,分類に困惑を覚えるほどである.しかし,なかには通常のものとは明らかに異なる一群の分離症がある.これはNathanのいうatypical spondylolysisに相当したもので上位腰椎の片側にみることが多い.ただ,この異型脊椎分離症においても,個々の分離部の形状はまつたく同じではなく,後述のごとくtypical spondylolysisとの間に移行を思わせるものがある.これらを仔細に検討すれば,あるいは脊椎分離症の発症病理に関して何らかの手がかりをうる可能性も考えられ,当科で経験したいわゆるatypical spondylolysisの20例を中心にこの問題を考察してみた.

カナダ式股関節離断用義足の実用性—装着者の遠隔成績から

著者: 沢村誠志 ,   村田秀雄 ,   中島咲哉 ,   三橋保雄 ,   安藤元之

ページ範囲:P.575 - P.583

いとぐち
 われわれメスをとる医師は,患者が不幸にして股関節離断をうける場合に,その後の義足歩行によつてどの程度社会において活動できるかを術前に知つておかねばならない.一般的な社会常識として大腿切断の場合にはなんとか杖なしで歩行ができそうだと考えても,切断部位が股関節離断の場合には,将来の歩行の可能性に疑いをもつことは稀でない.特に,股関節離断の場合は,外傷の原因によるよりも,悪性腫瘍の原因によるものが多いだけに切断部位が股関節離断と決つた場合の患者および家族の心理的ショックが想像以上に大きいことを知つておかねばならない.われわれはこういつた易合に必ず,カナダ式股義足を既に装着中の患者を紹介するか,また,義足歩行の状態を映画によりみせているが,その心理的効果は何よりも大きいことをよく経験する.
 股関節離断に対する義足については,1954年Toronto(Canada)のSunny Brooks Hospitalでカナダ式と呼ばれるものが開発され,その後,種々の改良が加えられた.特に,骨盤に対するソケットの解剖学的適合およびalignmentによる安定性の獲得などにおいて,従来のsaucer typeおよびtilting table typeに比較してまつたく新しいbiomechanicsの理論からテザインされ欧米を初め,広く用いられていることは衆知の通りである.

リウマチ手の尺側偏位について

著者: 富田満夫 ,   渋谷俊隆 ,   石橋盟士

ページ範囲:P.584 - P.589

はじめに
 慢性関節リウマチにおける手指の尺側偏位(ulnar deviation)は日常生活動作,特に手指の巧緻運動に与える影響は大で,その成因については今なお論議され興味深い問題としえよう.われわれの調査結果では付表に示すようにリウマチ患者総数112名中手に変形を有する患者95名,尺側偏位の認められる例は右26例,左16例(19%)で諸家の報告20〜30%にほぼ一致している.この変形が右に多いことは,日常生活における右手使用の頻度と橈側からの圧迫がその成因または進行過程に関与するものと思われ,尺側偏位における把持動作,特にpinchの変化を観察して2,3の知見を得たが,この変形の成因と治療についてもわれわれの考えや経験を述べてみたい.

診療の経験から

孤立性骨嚢腫(solitary bone cyst)の治療経験とわれわれの治療方針について

著者: 島啓吾 ,   後藤守

ページ範囲:P.590 - P.598

いとぐち
 過去,色々な病名でよばれてきた本疾患はその独立性さえはつきりしなかつたこともあるが,現在ではその呼称は必ずしも一定はしていないとはいえ,独立した単一の疾患であることには大方の異論のないところである.しかしながらその原因は勿論,本態についても諸家の見解は必ずしも一致を見ていないようである.従つてその治療法に関しても,なお色々な意見があるようである.
 元来,治療方針はその疾患の本態をどう考えるかにより当然異なるわけであるが,現在われわれは本疾患を良性骨腫瘍の1つと考えており,その上に立つての治療法の問題をわれわれのこれまでの経験に基づいて少しく検討して見たいと思う.

境界領域

高カルシウム血症

著者: 熊岡爽一

ページ範囲:P.599 - P.604

I.カルシウム代謝
 食物中のカルシウムはVit. Dと副甲状腺ホルモンの存在において吸収を促進されるが,吸収率は100%よりはるかにひくく,経口的に摂取したカルシウムの吸収は決して良好ではない.カルシウムの貯蔵庫は他の鉱物質とは比較にならないほどに尨大であり,全身骨がこれに相当することは多言を要しない.血中のカルシウムはその約50%が血清蛋白とゆるく結合し,のこりはイオン化している.血中のカルシウムは神経筋の刺激性に重大な関係を持ち,常に10mg/100ml前後に厳密に保たれている.カルシウムは胆汁,腸液および尿中へ排泄される.胆汁,腸液への排泄機構は十分あきらかではないが,屎中対尿中のカルシウム含量は大略2:1とされている.腎では副甲状腺ホルモンは燐酸塩の尿細管よりの再吸収を阻害し,カルシウムの再吸収を促進するといわれている.したがつて,副甲状腺ホルモンが増加すると血中の燐は低下し,カルシウムは排泄がさまたげられて増加する.カルシウムの尿細管よりの再吸収が高まるときは,Renal Calcinosisをおこし,腎機能が低下してくる.時にはNephritis interstitialisがおこる.患者は時に口喝,多飲を訴え,多尿となることもある.また,高血圧を伴うこともある.高い高カルシウム血症が持続すると,数週のうちに腎機能は荒廃におちいる.

手術手技

主として大腿骨骨折後における膝関節伸展拘縮の手術

著者: 河野左宙 ,   堀田利雄

ページ範囲:P.605 - P.612

いとぐち
 膝関節伸展拘縮は主として大腿骨骨折後に種々の原因で発生するが,近時,各種災害に起因した大腿骨骨折の増加に伴い膝関節伸展拘縮症例も増加している.
 教室田中の大腿骨骨折441例についての調査では,膝関節の屈曲障害が認められたものが全症例の31.2%に達し,中でも直角まで屈曲できないものが21%を占めていた.一般に固定期間の長いものほど膝の伸展拘縮が発生しやすく,特に大腿骨下1/3部の骨折では固定期間とは無関係に膝関節の屈曲障害が高頻度にみられ,その約半数が直角まで屈曲できない結果となつている.このような障害の発生は,骨折に関連してある程度避け難いものとみなければならないが,負傷後1〜2年を経てなお直角以内の屈曲が不可能で,一定の角度で無痛発条性に屈曲が停止するような症例は,その後,非観血的に治療を重ねても,それ以上の可動性回復は期待できない.関節形成術により関節可動性の回復をはかる以外にないと考えられる.

カンファレンス

骨腫瘍—これはなんでしよう〔11〕

著者: 骨腫瘍症例検討会 ,   前山巌

ページ範囲:P.613 - P.618

症例
 A:患者は19歳の男の子で,昭和38年の10月に柔道で投げられた時に左の踵に痛みを感じましたが,そのまま放置して1週間後に熱感と疼痛が強くなつて,近くの外科でレントゲンを撮つてもらいまして,踵骨骨折と診断きれ,手術を受けました.
 1月後も痛みが去らないので,接骨師にマッサージを約1ヵ月受けました.なおも疼痛が続くために39年2月に当病院の整形外科に参りました.

臨床経験

月状骨軟化症の小治療経験

著者: 滝川一興 ,   根岸照雄 ,   鷹野昭士 ,   村井俊彦 ,   関根紀一

ページ範囲:P.619 - P.623

 月状骨軟化症の手術法としては従来さまざまな方法が考案実施されているが2,4〜8,10〜15,18,20,22,24,25),終期ないしはこれに近い病期のものに対しては満足すべき方法は未だないといつてよい3,11,16,19).著者らは最近グレーナー(Orlando Graner et al.)らの発表した方法9)を簡便化して,極期ないし終期と思われる月状骨軟化症の4例に追試し良好な成績を得た.

尺骨遠位端掌側脱臼の2例

著者: 斉藤守

ページ範囲:P.624 - P.630

はじめに
 遠位橈尺関節脱臼は古くDessaultによつて既に記載されたというが.1912年Cotton and Brickleyは27例について詳細に検討している.本邦においては名倉らの10数例を散見する.しかし習慣性脱臼の報告は比較的少なく,わが国では村田らの1例をみるのみである.最近わたくしは陳旧性尺骨遠位端掌側臼の1治験例と,習慣性尺骨遠位端掌側脱臼の1症例とを経験したので報告する.

長母指屈筋腱裂の検討と反省

著者: 栗村仁 ,   南条文昭 ,   巌琢也

ページ範囲:P.631 - P.634

まえがき
 今回,過去10年,当科手の外科専門外来開設以来の長母指屈筋腱裂(以下FPL裂)を調査し,若干の問題点を得たので,これを披瀝しこの治療に対しての幾ほどかの参考になればと思い発表する次第である.

豆状骨単独骨折の2例について

著者: 古谷彊 ,   間中千文 ,   奥田直樹

ページ範囲:P.635 - P.638

 豆状骨の単独骨折は稀なるもので,過去にはSchnek(1932年),Snodgrass(1937年),Pershl(1937年)らの報告が見られるが,その数は手根骨骨折の約3%以下の低値を示しているに過ぎない.また,われわれの調査した範囲においては,本邦にはいまだ報告例を見ないが,われわれは最近その2症例を経験したので報告する.

第4腰椎椎体Fibromyxomaと思われる症例の手術治験

著者: 小林慶二

ページ範囲:P.639 - P.643

 脊椎に発生する良性腫瘍は非常に稀であり,現在まで外骨腫,血管腫,良性骨芽細胞腫,巨細胞腫などの報告を見るが,線維性腫瘍の報告例は少ない.私は第4腰椎椎体に発生した良性線維性腫瘍の一手術治験例をここに報告する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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