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論述
カナダ式股関節離断用義足の実用性—装着者の遠隔成績から
著者: 沢村誠志1 村田秀雄1 中島咲哉1 三橋保雄2 安藤元之2
所属機関: 1神戸大学医学部整形外科学教室 2兵庫県身体障害者更生指導所
ページ範囲:P.575 - P.583
文献購入ページに移動われわれメスをとる医師は,患者が不幸にして股関節離断をうける場合に,その後の義足歩行によつてどの程度社会において活動できるかを術前に知つておかねばならない.一般的な社会常識として大腿切断の場合にはなんとか杖なしで歩行ができそうだと考えても,切断部位が股関節離断の場合には,将来の歩行の可能性に疑いをもつことは稀でない.特に,股関節離断の場合は,外傷の原因によるよりも,悪性腫瘍の原因によるものが多いだけに切断部位が股関節離断と決つた場合の患者および家族の心理的ショックが想像以上に大きいことを知つておかねばならない.われわれはこういつた易合に必ず,カナダ式股義足を既に装着中の患者を紹介するか,また,義足歩行の状態を映画によりみせているが,その心理的効果は何よりも大きいことをよく経験する.
股関節離断に対する義足については,1954年Toronto(Canada)のSunny Brooks Hospitalでカナダ式と呼ばれるものが開発され,その後,種々の改良が加えられた.特に,骨盤に対するソケットの解剖学的適合およびalignmentによる安定性の獲得などにおいて,従来のsaucer typeおよびtilting table typeに比較してまつたく新しいbiomechanicsの理論からテザインされ欧米を初め,広く用いられていることは衆知の通りである.
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