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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科3巻9号

1968年09月発行

雑誌目次

視座

整形外科と形成外科

著者: 岩原寅猪

ページ範囲:P.741 - P.741

 かつて,田代義徳先生が整形外科集談会東京地方会で"整形,成形,美形"についてお話されたことがある.それぞれ整形外科,形成外科,美容外科(とでもいうか)の意味で,これら3つの近接近似した外科系分科の相互関係についてのお話であつたと記憶している.
 整形外科という字を択らばれたのは田代先生その人であるときく.形を整えてはたらきをととのえるとの意だという.すなわち,整形は名で機能の復元が実であるともいえる.この意味において,整形外科は機能外科ともいえ,運動器外科ともかんがえられる.そして,わが国の整形外科はこの始祖の意をよく体して,誤りなくその道を歩んできたたといえる.それのみではない,われわれの先人達は運動器を最大幅に解して整形外科の間口を拡げることを忘れなかつた.脊髄外科が無理なく整形外科の領野にあるのはその一例である.さらにまた.災害外科は主に整形外科に属し,わけても骨折は完全に整形外科の薬籠中にある.世界中でわが国ほど広域に整形外科が取り扱つているところはない.

論述

大腿骨頭の虚血性壊死について—外傷性遅発性のものと,特発性のものと

著者: 水野祥太郎

ページ範囲:P.742 - P.754

いとぐち
 大腿骨頭の血行の阻害が重大な病変の原因となることは,私どものペルテス病研究13,14)における初期の完全な虚血像から推定されていたところであつて,海外においても多くの注目をあつめていたところである.しかし,その決定的な証明は容易に達成されなかつた.私どもはまず,ペルテス病の初期病変をとらえる目的をもつて骨頭核の骨髄造影を検討しはじめたが,これは骨髄造影に関する富士9)らの多年の経験が根底に横たわつていた.
 最初にわれわれをひきつけたものは静脈像であつたが,その読影にいちじるしい矛盾をともなうことに間もなく気づかれて,他に道を求めることとなつた。静脈造影の不条理さは事実による証明を附して,近く英文をもつて発表される予定である.かくして松本ら17)の努力による血流測定が軌道に乗るにいたつた.一方,柳谷27,28)らの股関節症研究は派生的に特発性無腐性壊死を気づかしめて,症例があつめられ.同時に,増原,岩坪11)らの頸骨折偽関節の研究,渡辺,提島25)らの頸骨折治療の遠隔成績検討などは期せずして外傷性虚血性壊死の症例をあつめる結果となり,血流の状態と組織像,病理変化の過程は一致し,ここに大腿骨頭の無血管性(異血管性)壊死症候avascular (or dysvascular) syndromeなる概念にまとめられたのである.

横断面作図法に基づく脊椎体のTrephine(Needle)Biopsy

著者: 竹光義治

ページ範囲:P.755 - P.765

 脊椎疾患の早期診断は今日の発達した臨床的,X線学的および生化学的技術によるも困難なる場合が稀ではない.四肢や表層の骨関節であれば,容易に生検を行なつて確定診断を下すことができるが,椎体の場合,これが重要臓器に囲まれていることから,生検はかなりの危険を伴うと考えられ,殊にopen biopsyでは侵襲も大きくなるため一般には適用されることも稀であつた.しかしながら,1935年Robertson & Ball17)らの発表以来needleおよびtrephine biopsyの方法が各種研究され実施されてきたが,一昨年Ottolenghi14)は935例に椎体のneedle biopsyを行なつた成績を発表し85%の成功率を収めている.
 これまでの方法は18〜16ゲージの長い注射針を用い,注射筒で陰圧にしてaspirationで得た微量組織片を細胞診で,あるいは先端に鋸歯のあるtrephineで採取した小円柱状組織片を通常のパラフィン切片として染色し,組織学的診断に供しており.穿刺のために種々の簡単な器具が考案されている.

シンポジウム 内反足

内反足(概論)

著者: 松野誠夫

ページ範囲:P.766 - P.773

 足の変形の中で,内反足Pes varusあるいは内反尖足Pes equinovarusは日常よく遭遇する最も重要な変形の1つである.
 この変形について正しい治療を行なうためには足関節および足部の解剖と機能をよく理解していることが必要である.

内反足治療の問題点

著者: 柏木大治 ,   藤井英夫

ページ範囲:P.774 - P.782

はじめに
 先天性内反足は整形外科の先天性疾患中,先天性股関節脱臼に次いで発生頻度が高く,治療が困難で,かつ難治性の症例が多い点で整形外科医にとつて極めて重要な疾患である.本疾患の治療が大変難かしいのは他の先天性諸疾患と同様,それらの原因が未だ明らかでないことや,治療の出発点が各症例により著しく異なつている点などによる.すなわち,足部変形の形態ははなはだ類似していても,変形の要素や,その程度が各症例によつて多種多様であり,たとえ,早期に治療を開始した症例でも,その開始時の僅かの月齢の差は足根骨の変形や矯正能の程度を著しく左右するものである.それ故に,本症の治療に当つては医師はその外観的な変形の共通性にとらわれることなく,各々の症例に対して全く独自の態度で当ることが重要である.
 内反足の病因論や,治療については古くはHippocrates(400 B. C.)よりBrowneや,Kiteに至るまで種々論議されてきたが,変形の解剖学的な原因が後足部に存在する点については諸家の一致した意見となつてはいるが,その具体的な治療法に関する意見は必ずしも同じではない。しかしながら,近年に至つてKite法が漸次一般化され,諸外国は言うに及ぼず,本邦においても彼の理論的な治療大系と,その成績は諸家により高く評価されるところとなつた.

先天性内反足の治療について

著者: 吉川靖三 ,   本多純男 ,   山辺登

ページ範囲:P.783 - P.795

 私たちは昭和35年以来,東大整形外科において先天性内反足診療班を組織して今日まで診療を続け,その治療経験は350例に達した.これは本症治療の困難性,多様な問題から考えて決して十分な数ではない.またその成績の正確な分析と判定とはなお将来の問題であると考えるが,一定の治療法についての治療効果についてはある程度の見通しを持つことはできるようになつた.
 その治療方針の一端は,さきに「整形外科治療指針」に述べ,また初期の手術経験については第11回東日本臨床整形外科学会において報告した.しかしその後経験を重ねるとともに,一部治療方針に変化をみた点もあるので,ここでは現時点における私たちの治療方針と治療の具体的方法について述べる.

Imhäuser教授による先天性内反足の治療法

著者: 西尾昭彦

ページ範囲:P.796 - P.803

はじめに
 先天性内反足の治療については,その発生要因とともに,沢山の先人の業績をもつ今日においても,なおいろいろな問題点を含んでいる.
 近年の治療方式の中には,たとえばPes adductusとsupinatusの二要素の矯正をequinusに優先させること,equinusの矯正には観血的方法が有利なことなど,諸学者の間に統一的見解を見る面も無くはない.しかし,保存的療法の限界や,観血的療法の時期については未だに意見の一致をみず,また現存する多様な治療手段の選択においては諸家の間に著しい相違をみる.手技の委細に至つては百人百様といつてもよい.

境界領域

小児の悪性腫瘍

著者: 田口信行

ページ範囲:P.807 - P.814

はしがき
 近年,小児の感染症や下痢症などによる死亡が著しく減少し,悪性腫瘍による死亡が死因の上位を占めるにいたつた.昭和38年の死因統計(第1表)によると,年齢階級別では5〜9歳,10〜14歳および15〜19歳の3階級で,悪性腫瘍による死亡は病死の首位を占めている1)
 このように,大病院においては白血病などの悪性腫瘍患者を取扱う機会が多く,これらの治療法に習熟することは小児科医にとつて欠かせない条件になつてきたといつても過言ではない.国立小児病院において昭和40年10月の開院以来,昭和43年5月末日までに取扱つた悪性腫瘍患者数は第2表に示すごとく89例に達する.患者数の多いのは急性白血病,神経芽細胞腫,ウィルムス腫瘍,小児原発性肝癌などである.

カンファレンス

骨腫瘍—これはなんでしよう〔13〕

著者: 骨腫瘍症例検討会 ,   鳥島貞宜

ページ範囲:P.815 - P.819

症例
 A:今から約14年前,当時患者は12歳の女の子で,主訴は右膝関節の腫脹と疼痛でした.現病歴は昭和29年6月下旬に,学校でなわ飛びをしてから右膝関節内側に疼痛が生じました.その後,右膝関節内側に腫脹が現われ,この腫脹は軽くなつたり,強くなつたりしておりましたが,約1週間くらい前から強くなつてきて,昭和29年11月9日に入院しました.
 全身所見では,臨床検査成績に特に異常なく,胸部レ線像でも腫瘍の転移はみとめられません.

臨床経験

Melorheostosisの1例

著者: 村上敬朋 ,   野村龍雄 ,   工藤弘毅 ,   中島辰馬

ページ範囲:P.820 - P.824

 レ線学的に骨の異常硬化像を呈する系統疾患がいくつかあるが,なかでもmelorheostosisは非常に興味深い疾患の一つである.著者らは最近左上肢にみられた,いわゆるmonomelic melorheostosisを経験したので症例報告する.

海外だより

スウェーデンの整形外科

著者: 立岩正孝

ページ範囲:P.804 - P.806

 恩師 鈴木次郎先生が,第41回整形外科学会にProf. Hirschを招待されたのにちなんで,私にProf. Hirschの下で勉強してくるように命令が下つた.幸い,昭和42年度スウェーデン政府留学生試験に合格したので,文部省在外研究員として,10カ月間の研究を行なえることとなつた.
 しかし,昼なお暗く,雪の中に沈みこんだ北欧の町Göteborgにおいて"Prof. Suzuki died"の電報を受けとらねばならぬとは,鳴呼——.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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