icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床整形外科30巻4号

1995年04月発行

文献概要

特集 上位頚椎疾患―その病態と治療(第23回日本脊椎外科学会より)

脊椎悪性腫瘍に対する脊椎全摘術(Total en bloc Spondylectomy)―病巣高位と手術法(血管剥離について)

著者: 川原範夫1 富田勝郎1 鳥畠康充1 滝野哲也1 池淵公博1 松井貴至1 藤田拓也1 水野勝則1 田中重徳2

所属機関: 1金沢大学医学部整形外科 2金沢大学医学部第2解剖

ページ範囲:P.449 - P.455

文献購入ページに移動
 抄録:脊椎全摘術を後方単一アプローチで行う場合,椎体周囲の正確な解剖学的知識が必要となる.今回,解剖実習死体21体を用い,椎体周囲の血管系についての解剖学的観察を行うとともに,17例の脊椎全摘術の手術所見を検討した.実習死体の観察では,大動脈弓は,ほぼ第3胸椎(T3)高位に存在していた.下行性大動脈はT5椎体前面から椎体に近接し,椎体の左方を下行しL4高位で左右総腸骨動脈に分れていた.上位胸椎の分節動脈はT4高位以下の大動脈から分岐し,椎体の左右を上行するため,上位胸椎の椎体前面には存在しなかった.下大静脈は第3,4腰椎(L3,4)高位で椎体右側前方に近接していたが,L2高位で横隔膜右脚の前方に位置し,それ以上では前方に移行し椎体と離されていた.奇静脈は上大静脈に流入するため,T4,5を最後に椎体を離れていた.横隔膜脚はL2/3椎間板高位に起こっていたものが多かったが,その場合L2分節動脈は横隔膜脚と椎体との間に存在していた.
 手術所見では,上位胸椎,中下位胸椎の椎体周囲の血管剥離は容易であった.腰椎では腰筋の剥離が必要であり,上位腰椎の場合は,横隔膜の慎重な剥離,分節動脈の処理が必要であった.また第4腰椎切除の際には,術野が深いため,用手剥離操作が困難であり,細心の注意を払いながら,脊椎用スパチュラによる血管剥離を行った.以上,第1胸椎から第4腰椎まで後方単一アプローチによる脊椎全摘術が可能であった.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1286

印刷版ISSN:0557-0433

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら