臨床経験
大後頭孔部減圧術後に髄膜炎を併発したChiari奇形に伴う脊髄空洞症の1症例
著者:
井須豊彦1
小林延光1
鎧谷武雄1
山内亨1
中村俊孝1
田中徳彦1
所属機関:
1釧路労災病院脳神経外科
ページ範囲:P.997 - P.1000
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抄録:大後頭孔部減圧術後,髄膜炎,水頭症を併発したChiari奇形1型に伴う脊髄空洞症の1症例を報告した.症例は26歳,男性,右上肢,右胸腹部のしびれ感,右手脱力を主訴に来院.既往歴としては,1年3カ月前に他院にて,大後頭孔部減圧術が行われ,その後髄膜炎,水頭症を併発し,脳室腹腔交通術が施行された.当院入院時のMRIでは,Chiari奇形I型,脊髄空洞症(C2~conus medullaris)と診断され,cisterna magnaの描出は不明瞭であった.手術は,Th4レベルにて,空洞くも膜下腔交通術を施行した.術後経過良好で,しびれ感,脱力は改善し,空洞の縮小がみられた.
大後頭孔部減圧術後に発生する髄膜炎は,術後に改善した大後頭孔部の髄液流通障害を再び引き起こし,術後成績不良の原因となり得るため,注意すべき合併症と考えられる.術後合併症の少ない手術法の選択が望まれる.