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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科31巻12号

1996年12月発行

雑誌目次

視座

硬さのとれない日本人

著者: 星野雄一

ページ範囲:P.1319 - P.1319

 国際学会などでしばしば感じることであるが,日本人の印象は概して硬い.公用語であることの多い英語に自信がないために無口であることが大きな原因ではあろうが,もう一つ重要なのが外見である.日本人はきちんとした地味なスーツ姿での参加が多く,これは他人に不快感を与えないという点では最低限まちがいのない格好である.他国との人の出入りの少ない2000年の歴史を狭い島国に寄り添うように生きてきたため,個人の自由を主張しあうのではなく同種であるという他人の了解を互いに求めあうほうが安心していられる社会の形態に由来すると考える.このような日本人の性癖は,きちんとしているという印象を与える点では有利であっても,打ち解けた率直な雰囲気とは反対のものであり,場合によっては不利になることさえあり得る.
 ハワイでの日米脊椎外科合同会議(スパイン・アクロス・ザ・スィー)で面白い経験をした.学会初日,蒸し暑い中,小生も含めほとんどの日本人はスーツ姿であった.一方,米国人はといえば,発表者はさすがにネクタイをするものが多かったが,たいがいの聴衆はポロシャツ姿,なかには浜辺から戻ったばかりの短パン姿のものもいた.2日目,日本人のなかに半袖シャツでノーネクタイ姿が目立ち始め,3日目にはかなりの者がポロシャツ姿となっていた.

論述

骨巨細胞腫に対するSurgical Adjuncts(SA)とAW-GCを用いた関節機能温存手術

著者: 笠原勝幸 ,   坪山直生 ,   戸口田淳也 ,   中村孝志

ページ範囲:P.1321 - P.1329

 抄録:関節近傍のGCTの手術時,関節面と関節機能を温存したいが掻爬術+骨移植では再発率が高い.掻爬術にsurgical adjuncts(surgica adjuvants:SA)を加えることにより腫瘍切除の安全域を拡大し,軟骨下骨を自家腸骨で再建し,AW人工椎体またはAW多孔体を利用して荷重を支持する関節機能温存手術を考案した.surgical adjunctsとして概念を確立させたのはMalawer10)で,cryosurgeryn11)とacryliccementation14)を代表的なSAとしてあげているが,両者とも不十分な点も多い.筆者らは安全で確実な独自のSAを行い,病的骨折合併例や鳥山4型など従来は広範切除の必要なGCTの症例にも掻爬術で関節構造を温存し,支持性に優れ骨結合性と骨伝導能を持つAW・GCを用いて関節機能をほぼ完全に温存することができたのでその手術法を報告する.𦙾骨の関節面を再建支持するのに機械的強度に優れたAW人工椎体を,橈骨の関節面を形成支持するのにはAW多孔体を用い経過は良好である.

膝前十字靱帯断裂と顆間窩の狭小化の因果関係について―MRI,解剖遺体膝による検索

著者: 福井要一 ,   原田征行 ,   岡村良久 ,   柿崎寛 ,   川島信二 ,   半田哲人 ,   星忠行

ページ範囲:P.1331 - P.1337

 抄録:膝前十字靱帯断裂(以下ACL断裂)と顆間窩の狭小化の因果関係を探るためにACL片側断裂群,非断裂群,両側断裂群の顆間窩の測定を行った.
 測定はMRI coronal imageで,ACL(remnant)が顆間窩に接するスライスで顆間窩の顆部に対する比をnotch比として測定した.また解剖遺体膝50膝を観察し,顆間窩の形態を顆間窩前方の形態により以下の3型に分類した.①O型(顆間窩出口が楕円形)②C型(同部が円形)③W型(同部に狭窄があるもの)
 結果:ACL片側,両側断裂群のnotch比はACL非断裂群に比して有意に小さかった.また,解剖遺体膝の観察ではW型では膝伸展位でACL顆間窩に狭窄されており,他のtypeより断裂の危険性は高いと推察された.以上より,顆間窩の狭小化はACL断裂のひとつの危険因子と考えられた.

頚椎後縦靱帯骨化症の手術治療成績と外傷の関連について

著者: 中村雅也 ,   藤村祥一 ,   松本守雄 ,   鎌田修博 ,   戸山芳昭 ,   鈴木信正

ページ範囲:P.1339 - P.1342

 抄録:頚椎後縦靱帯骨化症の手術治療成績を,外傷の有無で外傷群・非外傷群に分け,骨化型別に静的圧迫因子および動的因子に着目して比較検討した.頚椎可動域は分節型・限局型で大きく,混合型,連続型の順に低下していた.脊柱管狭窄率は連続型・混合型で大きく,分節型・限局型で低かった.骨化型別の術前JOAスコアは,分節型・限局型では外傷群と非外傷群の間に有意差はなかったが,連続型・混合型では外傷群が非外傷群より有意に低かった.骨化型別の改善率は,分節型・限局型・混合型では外傷群が非外傷群より有意に低下していたが,連続型では両群間に有意差はなかった.脊柱管狭窄率と改善率の間には,外傷群,非外傷群のいずれでも相関はみられなかった.外傷群では頚椎可動域と改善率に負の相関がみられたが,非外傷群では相関がみられなかった.外傷後の頚椎OPLLの手術治療成績の低下は.動的因子の関与が大きいものと考えられた.

検査法

馬尾腫瘍に対する3D-MRIの検討

著者: 平学 ,   遠藤健司 ,   市丸勝二 ,   柄沢玄宏 ,   浦和康人 ,   伊藤公一 ,   三浦幸雄

ページ範囲:P.1343 - P.1349

 抄録:馬尾腫瘍に対する3D-MRIによる画像診断で,腫瘍と硬膜管および神経根との位置関係を立体的に描出し,質的診断と局在診断について検討した.対象は馬尾腫瘍15例を対象とし,方法は島津MAGNEX 150(1.5T)を使用し,3次元撮像法としてT2強調像のRISE法,STAGE法,T1強調像のSTIR法にて撮像し,5mm sliceで撮像し,3mm stepで重ね合わせ,更にMIP処理施行し,3D-MRI画像を作製し検討した.3D-MRI(特にSTIR法)での質的診断は,SE法による2D-MRIで診断可能なlipomaとarachnoid cystのみは,3D-MRIでも診断可能であったが,最も多かった神経鞘腫においても,3D-MRI画像の輝度のみでは確定診断は得られなかった.しかし,局在診断においては,腫瘍と硬膜管および神経根との位置関係が明確に描出でき,さらに,様々な方向から腫瘍を確認できるため,全例とも腫瘍の硬膜内,外の局在診断には可能であり,今後,馬尾領域以外の脊髄腫瘍に対する局在診断にも有用であると考えられた.

手術手技 私のくふう

大腿骨遠位部の転移性骨腫瘍に対するハックステップ髄内釘による膝関節固定術

著者: 高木信博 ,   松田雅彦 ,   川路博之 ,   加藤博文 ,   松木達也 ,   蓮池尚文

ページ範囲:P.1351 - P.1356

 抄録:予後不良と判断した大腿骨遠位部の転移性骨腫瘍に対して,ハックステップ髄内釘による膝関節固定術を試み,良好な結果を得たので報告する.症例は,73歳男性,56歳女性の2例で,原発巣はそれぞれ,胃癌,腎癌であった.手術はいずれも,腰椎麻酔下に施行された.大腿骨遠位部の骨転移巣は放置し,また同部を展開することなく閉鎖的に,ハックステップ髄内釘を大腿骨近位部から𦙾骨骨幹部まで挿入することが可能であった.手術時間と出血量はそれぞれ,3時間30分,340mlと2時間40分,950mlであった.術後,疼痛の改善と下肢の支持性を再獲得できた.
 この方法は,低侵襲性であり,全身状態の悪化した,ある程度予後不良な症例の場合にも適応が可能で,大腿骨遠位部の転移性骨腫瘍を伴った単発性または多発性の骨転移患者のQOLの維持に有用な手術法の一つである.

講座

認定医トレーニング講座―画像篇・6

著者: 紺野慎一 ,   菊地臣一

ページ範囲:P.1358 - P.1362

症例 22歳,女性
 2週間前より左大腿部痛が誘因なく出現し当科を受診した.安静時痛はないが,立ち上がりや歩き始めに左大腿部痛が出現する.既往歴では,2年前よりSLEに罹患し,現在までにステロイド10250mg(プレドニゾロン換算)服用している.股関節に可動域制限はなかった.Fabereテストが左側で陽性であった.Scarpa三角に圧痛はなかった.
 初診時の単純X線前後像(図1),1週間後のMRI像(図2),および骨シンチ像(図3)を示す.

基礎知識/知ってるつもり

Lubrication(潤滑)の分類

著者: 岡正典

ページ範囲:P.1364 - P.1365

【はじめに】
 私達の関節はスケート滑走時の摩擦係数0.05よりも10分の1程低い,驚くべき低摩擦下に動いている.長時間起立や長時間疾走などの厳しい条件下で70年以上使用されても摩耗しない関節は工学者の目から見れば驚異の的であり,生体関節の潤滑機構を解明しようとする数多くの研究1,2)が報告されている.摩擦係数0.005という低摩擦は面接触のほとんど起こらない液体膜潤滑を考えないと説明困難であるが,関節液で満たされた空間で関節軟骨同志が接して行われる生体関節の潤滑には,工学的に説明し切れない,特殊な生物学的現象が関与しているのは確かである.
 一方,人工関節最大の合併症“ルーズニング”に摩耗したポリエチレン粒子周囲の肉芽組織による骨吸収が関与していることが明らかになってから,人工関節の潤滑を考え直し,ポリエチレンの摩耗をいかに減らすかという課題も生じてきた.この稿のテーマは潤滑の分類とされているが,あくまでも関節の潤滑のみに限定して述べ,最後に人工関節の潤滑について述べる.

整形外科philosophy

整形外科良医を育てる

著者: 室田景久

ページ範囲:P.1366 - P.1369

はじめに
 戦後50年を経て,我が国の指導者層は戦中派から戦後派へとそのほとんどが交替しているが,これは大学の臨床教室においても例外ではない.
 戦中派とは,辞書には第2次世界大戦の最中に青年時代を送った世代のことで,戦前派,戦後派に対してできた語とあるが,筆者は,この戦中派とは,忠孝を教えの淵源とする教育勅語に沿って教育され,戦時中,身内の犠牲や学業の中断,飢餓などの艱難に堪え,一度ならず死を覚悟したことのある世代のことであり,戦後派とは自由主義,絶対平和主義を至上の原理とする戦後教育を受け,豊饒の世に育った世代のことと解している.

整形外科英語ア・ラ・カルト・50

比較的よく使う整形外科用語・その17

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.1370 - P.1371

●endoscope(エンド・スコゥプ)
 体内を観察する器具を“endoscope”と呼ぶが,これはフランスのパリにあるネツカー(Necker)病院の泌尿器科医デゾルモーが尿道鏡を考案したときに,“中を覗く”という意味でエンドスコープ(endoscope- 内視鏡)という言葉を造った.ドイツの医者クスマウル(Adolf Kussmaul 1822-1902)の名前は,糖尿病や尿毒症のときに起こる“ketoacidosis”の際に現れる大呼吸“クスマウル呼吸”に残っている,これは脳血管障害の患者や心肺疾患の重症末期に観察されるチェーン・ストークス(Cheyne-Stokes)呼吸とともによく知られている.クスマウルは,パリのデゾルモーの処で尿道鏡を見学し,その尿道鏡のアイデアを基にして1868年に金属管の胃鏡を作成した.これが最初の胃内視鏡である,クスマウルが使用した胃鏡は第2次大戦で焼失したが,その複製品は私の母校の九大耳鼻咽喉科教授久保猪之吉がドイツ留学のとき持帰り,九大の久保猪之吉記念館に保存されている.平成9年10月10日に福岡市で催される日本医史学会のときに,多分公開されるものと期待している,現在多くの分野で内視鏡があり,整形外科でも関節鏡など大いに利用されている.従来では大きな切開を行い厄介であったものが,現在では小さな傷から内視鏡を挿入して行う“minimal invasive Surgery”が盛んである.

ついである記・8

オランダでのSICOT世界会議

著者: 山室隆夫

ページ範囲:P.1372 - P.1373

 今年(1996年)の8月,オランダの首都アムステルダムにおいて国際整形災害外科学会(SICOT)の世界会議がベアトリックス王女の御臨席もえて盛大に開催された.私はこの学会の理事長として身に余る光栄を与えられたが,また,同時に極めて重い責任を感じていたので,この会議の終了と共に理事長の席をカナダのソルビー教授に譲ってほっと一息ついているというのが今の私の偽らぬ心境である,ところで,毎月書き継いでいるこの小文は,私が世界のいろいろな国々で見聞したことを時の順に書き連ねているわけではなく,想い出すことをその都度気ままに書いているので前後の脈絡は殆んどないと言ってよい.しかし,書き止めておきたい沢山の古い想い出があるのに,今年の8月のことをもう早や書いておきたいと考えるのは,自分にとってこの世界会議は忘れてはならないイベントであったことと,そこで感じ取ったことを風化させずに次の世代に伝えておきたいというやや年寄りじみた気持からである.

臨床経験

anterior tarsal tunnel syndromeの1例

著者: 岩佐潤二 ,   西川梅雄 ,   江田有史

ページ範囲:P.1375 - P.1378

 抄録:足背の下伸筋支帯の部分で生じる深腓骨神経の絞扼障害は,anterior tarsal tunnel syndromeと呼ばれるが,本症の報告は比較的少ない1~12).われわれは本症の1例を経験したので報告する.患者は65歳の女性で,受診の2日前(1994(平成6)年7月6日)からとくに誘因なく,夜間,安静時に右足背の疼痛が出現し,正座によって症状は増強した.初診時,第1趾間部の知覚異常,下伸筋支帯部の圧痛とTinel様徴候,足関節底屈による疼痛の増強を認め,本症と診断した.1カ月間に保存的治療を行ったが軽快しなかったため,下伸筋支帯の切離と神経剝離術を施行した.術中所見では,深腓骨神経は下伸筋支帯下縁の部分で,下伸筋支帯によって圧迫され,扁平化していた.手術翌日から症状は消失し,術後2年の現在,経過良好である.本症の誘因として足部変形,靴,種々の外傷などが挙げられるが,誘因不明のものも多く,われわれの症例でもとくに誘因を認めなかった.

上位胸髄軟膜下脂肪腫の2例

著者: 相庭温臣 ,   宮坂斉 ,   三井公彦 ,   小林健一 ,   岡本弦 ,   丸山雄造

ページ範囲:P.1379 - P.1383

 抄録:spinal dysraphismを伴わない上位胸髄部軟膜下脂肪腫の2症例を経験した.症例1は57歳男性,主訴は歩行障害,両足底のしびれと背部痛であった.術中第3から第6胸椎レベルに黄色脂肪様の腫瘍を認め,部分摘出を行い症状の軽減をみた.病理所見は膠原線維増生を伴った成熟脂肪組織であったが,S-100蛋白の免疫組織染色により神経線維や神経細胞の混在が確認された.症例2は58歳男性,主訴は歩行障害,両下肢のしびれと排尿障害であった.第1から第3胸椎レベルに黄色脂肪様の腫瘍を認め,部分摘出を行い症状の軽減をみた.病理所見は成熟脂肪組織であった.症例1で確認された神経組織を取り込んでいる像は脂肪腫が発生異常による組織奇形であることを示唆し,真の腫瘍と異なり本2症例で術後に残した組織が将来真の腫瘍として一層の発育をする可能性は低いものと推測される.

骨端板閉鎖前に発生した上腕骨頭類骨骨腫の1例

著者: 吉野匠 ,   小川清久 ,   宇井通雅

ページ範囲:P.1385 - P.1388

 抄録:成長期に,骨端の骨硬化性病変を見ることは稀である.今回われわれは成長期の上腕骨頭に骨硬化性病変が生じ,診断に苦慮したOsteoid osteomaの1例を経験したので報告する.症例は8歳男児で,左肩関節痛を主訴とし来院した.単純X線で左上腕骨骨端部に境界明瞭な径10mmの骨硬化像を認める以外に,臨床検査で明らかな異常はなかった.抗生剤の投与により局所の腫脹,熱感,発赤,疼痛などの炎症症状は緩解したが,その後もしばしば再発を繰り返したため,治療と最終診断を兼ねて病巣掻爬を施行した.抗生剤の投与により症状の緩解を見たという臨床経過からは,Brodie骨膿瘍が最も疑われたが,培養で菌が検出されなかったことや,病理組織診,さらにCT像などから,最終的にOsteoid osteomaと診断した.10年経過した現在,再発や危惧された成長障害は認められない.

軟骨粘液線維腫の2例

著者: 作左部昇 ,   岡田恭司 ,   堀川明 ,   阿部栄二 ,   佐藤光三 ,   千葉光穂

ページ範囲:P.1389 - P.1392

 抄録:軟骨粘液線維腫の2例の治療経験を述べた.症例1(10歳,女子)ではX線像にて左𦙾骨の近位骨幹端の多房性で境界明瞭な骨溶解像と,骨皮質の菲薄化と外側への膨隆を認めた.石灰化像や骨膜反応は認めなかった.生検にて軟骨粘液線維腫と診断し掻爬骨移植術を行った.症例2(60歳,女性)ではX線像にて右腸骨に薄い隔壁様構造を伴った境界明瞭な骨溶解像と,菲薄化した骨皮質を認めた.CTで内部にごく少量の石灰化像を認めた.MRIでは腫瘍はT1で低信号,T2で不均一に高信号を示し,ガドリニウムで増強された.生検で軟骨粘液線維腫と診断したが,MRIで周囲筋への浸潤が疑われたため広範切除術を行った.2例とも術後4年以上再発は認められない.軟骨粘液線維腫と軟骨肉腫の鑑別ではX線像での境界部の性状や石灰化像の有無が重要であり,さらに生検を行い確認する必要性を考察した.

鎖骨近位骨端線後方離開の1例

著者: 玉置康之 ,   秦公平 ,   川那辺圭一 ,   中山威知郎 ,   古川賢吾 ,   清水基行

ページ範囲:P.1393 - P.1396

 抄録:今回われわれは,胸鎖関節脱臼と鑑別困難である比較的稀な鎖骨近位骨端線後方離開の1例を経験したので報告する,症例は13歳の男性で,柔道で投げられ肩関節後方から転落し受傷した.受傷後2週の紹介受診時,右胸鎖関節部に疼痛,腫脹,圧痛を認め断層X線写真,CTでは鎖骨近位端が後方へ転位していた.手術所見はSalter Harris type IIの鎖骨近位骨端線後方離開であり,整復後,キルシュナー鋼線にて固定を行った.術後3カ月で抜釘を行い,以後経過良好である.

パラグライダーによる腰椎破裂骨折の3例

著者: 本郷道生 ,   阿部栄二 ,   佐藤光三 ,   菊地俊彦 ,   山本正洋 ,   片岡洋一 ,   青柳耐佐

ページ範囲:P.1397 - P.1402

 抄録:パラグライダーによる,腰椎破裂骨折の3例を報告した.症例は男2例,女1例,年齢は29,41,42歳であった,受傷機転は,2例が飛行中の落下,1例が離陸時の地面への殿部の衝突であった.損傷レベルはL1が2例,L2が2例,麻痺はFrankel Cが2例,Dが1例であった.全例Denis B型の破裂骨折で,脊柱管内への骨片の突出を認め,Kaneda deviceを用いた前方除圧固定術を行った.経過観察期間は1年3カ月から7年で,全例に神経麻痺の改善が認められた.

3次元ヘリカルスキャンCTが術前計画に有用であった寛骨臼骨折の4例

著者: 南銀次郎 ,   竹下秀之 ,   前田俊英 ,   渡部欣忍 ,   吉岡慎二 ,   平澤泰介

ページ範囲:P.1403 - P.1407

 抄録:寛骨臼骨折はしばしば複雑な転位を示し,単純X線像や従来のCT像だけでは骨折形態の把握が困難な場合が多い.今回われわれは,4例の寛骨臼骨折に対し3次元ヘリカルスキャンCT(以下3D-CTと略す)を撮影し,その診断と治療に対する有用性を検討した.
 症例は男性4例で,Judet-Letournel分類による骨折型は横骨折2例,T字骨折1例,後壁骨折1例であった.全例保存療法では関節面の整復が得られないため,螺子および鋼線を用いて観血的整復固定術を行った.現在術後10~14カ月(平均12.5カ月)と短期経過であるが良好な結果を得ている.3D-CTでは短時間の撮影で任意の方向から骨折の立体像を描出することが可能となり,手術進入路や内固定方法の選択など術前計画に有用な情報を得ることが出来た.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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