特集 脊椎外傷の最近の進歩(上位頚椎を除く)(第24回日本脊椎外科学会より)
骨傷の明らかでない頚髄損傷に対する治療法の選択
著者:
白澤建藏1
芝啓一郎1
植田尊善1
大田秀樹1
森英治1
力丸俊一1
加治浩三1
所属機関:
1総合せき損センター整形外科
ページ範囲:P.405 - P.413
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抄録:受傷後48時間以内に入院し,神経学的評価のなされた骨傷の明らかでない頚髄損傷の観血的治療群53例と,保存的治療群72例の治療成績をprospectiveに比較した.Frankel分類で1段階以上の改善を示したものは観血的治療群では71.7%,保存的治療群では72.2%であり,両群に有意な差はなかった.さらに,これらの症例の中で脊柱管狭窄を合併した不全麻痺例29例を抽出して,観血的治療と保存的治療の2群間の神経学的改善の推移を,ASIA motor scoreを用いて検討した.両群の初診時,受傷後1カ月,3ヵ月のmotor scoreは,観血的治療群でそれぞれ48点,76点,90点,保存的治療群で47点,77点,89点で,有意な差はなかった.最終調査時の上肢機能,下肢機能は,観血的治療群でそれぞれ1.58点,1.42点,保存的治療群で1.50点,1.75点で,両群間で有意差を認めなかった.すなわち,急性期の非骨傷性頚髄損傷の治療においては,観血的治療と保存的治療の間で差がなく,保存的治療を原則とすべき結果を得た.
慢性期に観血的治療を行った脊柱管狭窄合併例28例の手術成績に関与する因子を検討した.手術時年齢,罹病期間,術前重症度,頚椎単純X線側面像における最狭窄部の最小脊柱管前後径,第5頚椎高位の脊柱管前後径,損傷部の動的脊柱管前後径(dynamic factor)は手術成績と関連がなかった.