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「癌抑制遺伝子」
著者: 戸口田淳也1
所属機関: 1京都大学生体医療工学研究センター
ページ範囲:P.924 - P.925
文献購入ページに移動正常細胞と癌細胞を細胞融合させるとその形質が正常となることより,癌の形質は正常細胞に対して劣性であり,正常細胞には細胞の癌化を防ぐ遺伝子があるのではないかと,古くより考えられていた.そして1986年初めての癌抑制遺伝子として,小児の眼に発生する悪性腫瘍である網膜芽細胞腫(retinoblastoma,Rb)の原因遺伝子として,網膜芽細胞腫(RB1)遺伝子が単離されたことにより,この仮説が分子レベルで実証された.
癌抑制遺伝子の定義として,その正常細胞における機能としては,細胞の癌化を阻止する機能をもつものであること,そして癌細胞においては,その機能が消失するような変異が存在していること,更にその遺伝子を欠く腫瘍細胞に正常な遺伝子を導入した場合,悪性形質に何らかの抑制が認められることなどがあげられる.一般にその機能は,変異遺伝子に対して優性であり,双方の対立遺伝子に変異が存在しない限り,機能的には正常であると考えられている.逆に変異遺伝子からみると,その変異は正常遺伝子に対して劣性であるために,初期には劣性癌遺伝子(recessive oncogene)という表現も用いられた.
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