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ついである記・5
Buenos Aires
著者: 山室隆夫12
所属機関: 1京都大学 2国際整形災害外科学会
ページ範囲:P.1044 - P.1045
文献購入ページに移動1982年4月にアルゼンチンの軍事政権がフォークランド諸島を占領した.そのフォークランド諸島は英国領だということで,当時のイギリス首相で鉄の女といわれたサッチャーが激しく怒って強力な軍隊を送り,数日間の戦闘で島を奪還したことは今もまだ記憶に新しい.この対英戦で敗れたことが原因でアルゼンチンの軍事政権が崩壊し,1983年に民政移管が実現したといわれているが,そんなことよりも私が興味深く思ったことはフォークランド諸島は地球上で日本のちょうど反対側に位置しており直線距離にすれば日本から最も遠いところにある島であるということと,そのような最果ての南太西洋に浮ぶ島が未だに英国領だということであった.そのフォークランド諸島に近いアルゼンチンのベノスアイレスで1992年12月,汎ラテンアメリカ整形外科学会とSICOTとの合同会議が開かれた.私はSICOTのPresident-Electに選出されていたのでどうしても出席しなければならなかったが,先づ距離的に日本から最も遠い国であること,さらに南米といえば麻薬と貧困によって社会秩序が崩壊し犯罪が極めて多いと聞かされていたので,尻ごみする気持ちが強かった.「犯罪はブラジルより少ないが夜は出ない方がよいでしょう」という程度の旅行社からの情報だけを持って,家内と二人でともかく出発し,35時間という長旅の後に恐る恐るベノスアイレスの空港に降り立った.
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