臨床整形外科32巻12号

1997年12月発行

臨床経験

左L1神経に発生した多発性馬尾神経鞘腫の1例

著者： 張禎浩¹ 吉田裕俊¹ 川崎修平¹ 高橋誠¹ 後藤敏²

所属機関： ¹諏訪中央病院整形外科 ²諏訪中央病院病理科

ページ範囲：P.1417 - P.1420

　抄録：われわれは，左LI神経に沿って多発性に発生した馬尾神経鞘腫の1例を経験したので報告する．症例は，64歳男性．主訴は，歩行障害，両下肢のしびれ．脊髄造影上，硬膜内髄外腫瘍と思われる腫瘤像が5個認められた．MRIでは，TI強調像で低輝度から高輝度，T2強調像で高輝度を示す腫瘤が5個認められた．造影MRIでは腫瘤は著明に造影された．術中，左LI神経に沿って多発した大小7個の腫瘤を認めた．病理所見では，Antoni A型とAntoni B型の混在する像が見られ神経鞘腫と診断された．
　多発性脊髄腫瘍の脊髄腫瘍全体に対する発生率は数％と低く，さらに同一神経に沿って多発した馬尾神経鞘腫の報告例は本邦では10例にすぎない．診断にあたっては，脊髄造影，CTM，MRI，造影MRIが有用であった．しかし術前には見逃されていた腫瘤が，術中初めて発見されることもあり，術中の慎重な検索が必要である．