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ついである記・11
病めるイタリア
著者: 山室隆夫12
所属機関: 1京都大学 2国際整形災害外科学会
ページ範囲:P.246 - P.247
文献購入ページに移動イタリアという国とその国民の偉大さについては前回に少し触れた.しかし,現在のイタリアを訪れた人々はこの国の社会状況に多かれ少なかれ失望して帰っていくのではなかろうか.特に,日本人は現在のイタリアのような複雑極まりない社会には慣れていないので,イタリア人の物の考え方や生活態度には嫌悪をすら覚える人が多いであろう.私もこの10年間に6回もイタリアを訪れたが,行く度に何か厭な目にあったので,この国は偉大な国ではあるが,どうも心底から好きにはなれない国である.
タクシーの運転手が料金をふっかけたり,スリが大勢うろうろしているのはイタリアだけではなく,南欧や東欧では共通にみられる現象である.これらの被害は用心をすれば防ぎうるが,用心をしても防ぎきれない恐喝や強盗が特に南イタリアではもう手の施しようもない状態になっている.それはこの国の社会がいかに病んでいるかを物語っていると思われる.いわゆる先進国と呼ばれる国々の中では,治安が手の施しようのないような状態になっているのはアメリカとロシアとイタリアだけだ.アメリカは銃社会である上に人種問題が根底にあり,ロシアは政治と経済が極端に混乱していることが原因であろうと容易に理解できるが,イタリアの病根は何であろう.人種問題政治の混乱,マフィアの跳梁などいろいろな要因が考えられるが,いずれにしても容易に理解しえない国である.
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