臨床経験
膝後方不安定性を示した大腿骨遠位骨端離開Salter-Harris Ⅲ型の1例
著者:
史賢林12
堀部秀二3
松本憲尚3
中村憲正3
前田朗3
越智隆弘3
所属機関:
1行岡病院整形外科
2大阪労災病院整形外科
3大阪大学医学部整形外科
ページ範囲:P.277 - P.280
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抄録:今回われわれは後方不安定性を示した極めて稀な大腿骨遠位骨端離開Salter-Harris Ⅲ型の1例を経験したので報告する.患者は17歳,男性.ラグビープレー中左膝を前外方よりタックルされ受傷.初診時脂肪滴を含まない関節血腫を認め,単純X線像で明らかな骨傷を認めなかった.後方不安定性が強度であったため後十字靱帯損傷を強く疑った.合併損傷の有無を検索するため施行したMRIでは大腿骨遠位骨端線内側から顆間窩に至るSalter-Harris Ⅲ型骨折であった.関節鏡にて骨折部が不安定であったため鏡視下にコントロールしながらAO螺子2本にて固定した.術後後方不安定性は消失し,術後1年の現在症状はない.
Salter-Harris Ⅲ型の大腿骨遠位骨端離開は非常に稀であるが,本症例のように骨端線閉鎖前の症例では本骨折を考えて正確な診断のもと適切な治療法を選択することが重要である.