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論述
文献概要
抄録:外傷性肩関節(初回)脱臼例を分析し,反復性への移行率と後遺障害を調査し,初期治療の有効性を検討した.これにより若年者の初回脱臼は早期に鏡視下にBankart lesionの修復を行うべきという最近の発表に反論を試みた.対象は当院で治療を行った初回脱臼78例78肩である.骨折の合併率は年齢と共に増加し,50歳代を頂点にして順次減少していた.10歳代の再脱臼率は40%,20歳代の再脱臼率は50%であった.50歳未満では初期固定の期間が長い程,再脱臼率は有意に低く,約半数は受傷前と同等に回復しており,残りは一部のスポーツ活動に支障があった.50歳以上では再脱臼は極めて少なく固定期間に無関係であったが,日常生活にかなり支障の残る例もあり,骨折や腱板断裂の合併が多いことが原因と考えられた,若年者の初回脱臼であってもまず保存療法を選択すべきで,早期の鏡視下修復術はその適応を限定すべきであると考える.
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