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ついである記・15
Marseilleとその周辺
著者: 山室隆夫12
所属機関: 1京都大学 2国際整形災害外科学会
ページ範囲:P.916 - P.917
文献購入ページに移動以前にも書いたが,フランス語は国際語として日本人が想像する以上になお広く使われているし,また,私の知る限りでは,フランス人の自国の文化に対する強い誇りは昔も今もあまり変わっていないように思われる.しかし,彼等が他国の文化を低くみる一種の偏見である中華思想を強く持っていると考えるのは全く当たっていないと私は思っている.
私と家内が初めてパリを訪れ,当時高名であったジュデー教授の病院に寄宿させていただいたのは昭和37(1962)年の6月であった.当時,フランス人を評して「彼等は気位が非常に高くてフランスが世界の文化の中心だと信じているので,英語で話しかけると意味が解っていてもわざと返事をしないのだ」などと言われていた.事実,私達も言葉が通じなくて苦労をしたものだが,その当時はフランスの一般庶民で英語の喋れる人は大変少なかったので,上記のような誤った評価がなされたのではなかろうか.その後,私は十数回に亘ってフランスを訪ねる機会があったが,今では,フランス人の他国人に対する偏見の少ないことにむしろ驚ろいているほどだ.勿論一概には言えないが,フランス人はアメリカ人,イギリス人,ドイツ人などよりも他国で育った科学や文化を正当に評価しようとする姿勢を強く持っているように私には思える.
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