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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科32巻9号

1997年09月発行

雑誌目次

視座

「枚挙の時代」と「ブレークスルー」―整形外科の研究について思うこと

著者: 岩本幸英

ページ範囲:P.971 - P.971

 患者さんにとって良い整形外科医とは,医師としての人格と,整形外科疾患についての十分な知識をもち,現段階で最善の治療法を提供できる医師である.そのために,整形外科研修医に対するトレーニングは,日頃から整形外科疾患についての知識の吸収を怠らず,治療の適応の正しい判断ができ,必要な場合には最高の技量をもって手術を行える医師を養成する目的で行われる.ここで必要とされるのは,確立され十分に検証された知識と技量であり,新しい診断法や治療法のトライアルではない.しかし,私のように大学に席を置いているものには,学生や研修医に確立された知識と技量についての教育を行うだけでなく,疾患の病態解明や新しい診断法,治療法の開発に向けて先駆的な研究を行う使命がある.
 整形外科疾患に関する研究,なかでも病態の謎を解くという作業においては,基礎的な研究の手法が必要な時代になってきている.それならば,整形外科における基礎研究も基礎研究者に完全に任せたらどうか,という議論がある.しかし,整形外科疾患を熟知し,問題点を肌で感じているのは整形外科医なので,先々の臨床への還元ということを考えるならば,基礎研究も整形外科主導で行ったほうが良いと考えている.しかし,分子生物学をはじめ,基礎的研究の手法の進歩はめざましいものがあり,整形外科の研究室だけですべてを把握し,応用することは到底不可能である.

論述

橈骨コンポーネント付き人工肘関節の開発と使用経験

著者: 中嶋洋 ,   西塔進 ,   山本隆文 ,   太田信彦 ,   石山照二 ,   山本健吾 ,   宮崎忠勝 ,   島田幸造

ページ範囲:P.973 - P.983

 抄録:人工肘関節に安定性と生理的な荷重伝達を可能とするためステムに9゜の傾斜をつけた橈骨コンポーネント付き人工肘関節(N式)を開発し,12例14肘に置換した.その臨床成績,安定性を工藤111型(K式)症例9例10肘と比較した.N式は平均手術時年齢60.2歳,平均追跡期間35.1カ月,K式は62.7歳,70.4カ月であった.JOA scoreはK式は53.1点が75.8点に,N式は45.6点が87.1点と改善し,N式に有意に高い術後点数が得られた.X線学的にゆるみの変化はいずれの群にも見られなかった.X線ストレス撮影ではK式は外反方向に8.4゜の動揺性を示したのに対し,N式は1.6゜で有意に安定性を示した.橈骨コンポーネント関節面の動態を中間位,回内位,回外位での正側面X線像により検討した.関節面の角度変化,軸偏位は極めて少なく,橈骨コンポーネントは適正な動態を示した.以上のことからN式人工肘関節は,関節の安定性と高い臨床成績が得られることがわかった.

RA腰椎病変に対する後方進入腰椎椎体間固定術(PLIF)

著者: 稲岡正裕 ,   米延策雄 ,   細野昇 ,   山崎勇二 ,   多田浩一

ページ範囲:P.985 - P.991

 抄録:RA腰椎病変に対する手術的治療法やその予後に関する報告は少ないが,神経合併症やADL障害の強い腰痛に対し脊柱の再建が必要となる場合がある.RA病変が比較的下位腰椎に限局した場合,病的骨折とすべりによる狭窄症状を合併し,脊柱の再建と神経要素への除圧が必要となる.
 今回,前方の再建と後方の除圧,ならびに後方インスツルメンテーションを一度で可能な後方進入腰椎椎体間固定術(以下PLIF)によって,RA腰椎病変に対応した3症例の病態と短期予後を調査し,RA腰椎病変に対するPL1Fの適応について検討した.

2椎間の腰椎変性すべり症に対するpedicle screw法を用いた後方進入椎体間固定術の検討―手術成績と問題点の検討

著者: 奥山幸一郎 ,   千葉光穂 ,   鈴木均 ,   小西奈津雄 ,   黒田利樹 ,   鈴木哲哉 ,   田村康樹 ,   阿部栄二 ,   佐藤光三

ページ範囲:P.993 - P.999

 抄録:2椎間に腰椎変性すべり症が生じた症例では腰椎全体の前弯の減少を示し,慢性の腰痛を主訴とするものも少なくない.われわれは神経組織の除圧のほかに矢状面の不良アラインメント矯正を目的としてすべり2椎間にpedicle screw法を併用したPLIFを行った.症例は14例(女性12,男性2例),手術時年齢は平均59歳(46~73歳),術後経過観察期間は平均2.3年(0.5~4.5年)であった.すべり椎間はL3/4/5例が12例,L2/3/4が2例であった.術前JOAスコアーは9.0±4.7(mean±S. D.)点,すべり2椎間のslip angle,腰椎前弯角,仙骨角は平均13.5±9.5゜,2.9±16.0゜,6.7±9.0゜と著しく低下していた.術後JOAスコアーは平均18.4±3.9点,slip angle,腰椎前弯角,仙骨角は平均-1.3±7.4゜,16.8±13.8゜,20.8±7.4゜まで改善した.術後の腰痛は,Denisのpain scaleは全例P2,3となったが,X線学的所見と術後の腰痛の問には相関関係はなかった.

関節近傍および四肢末梢に発生した軟部肉腫に対する患肢温存手術の経験

著者: 土谷一晃 ,   高橋寛 ,   安田ゆりか ,   鳥畑秀子 ,   茂手木三男 ,   丸山優 ,   沢泉雅之 ,   亀田典章 ,   蛭田啓之

ページ範囲:P.1001 - P.1008

 抄録:当科で患肢温存手術を行った肘関節,前腕,足などの軟部肉腫について治療上の問題点を検討した.症例は術前診断でadequate wide marginの獲得が可能,あるいはそれ以下でも術前療法有効と診断された13例で,病理組織診断はMFH4例,滑膜肉腫2例などであった.発生部位は足・足趾,前腕各4例などで,筋肉内腫瘍8例,皮下腫瘍5例であり,腫瘍の大きさは平均5.8cmであった.広範切除後,11例に有茎または遊離皮弁による再建を行った.切除縁評価はwide margin 11例,intralesional margin 2例,平均33カ月の経過で再発は1例,CDFI0例,NED1例,他因死2例であり,機能評価は平均で上肢26.7点,下肢27.0点であった.四肢末梢でも画像所見,局所可動性などを参考に,筋膜,関節包などをバリアーとしてadequate wide marginの設定が可能であれば患肢温存を検討すべきである.上肢の場合,機能保持のため緻密な切除縁の設定が必要で再建法の工夫が今後の課題と考えられる.

二分脊椎を伴わない脊髄脂肪腫―本邦22例の検討

著者: 能地仁 ,   菅原修 ,   鈴木聖

ページ範囲:P.1009 - P.1015

 抄録:本邦において脊髄脂肪腫は統一された分類がないため全て同一の腫瘍として論じられる場合が多かった.今回われわれの経験した脊髄円錐部に発生した硬膜内脊髄脂肪腫2症例を供覧し,これまで本邦にて報告された二分脊椎を伴わない脊髄脂肪腫(True spinal lipoma:DiLorenzo 19822))20例の特徴について調査検討を行った.True spinal lipomaは全脊髄脂肪腫の約1/3であり成人男性に多く発症していた.その局在は胸椎,腰椎部に多く,馬尾神経レベルに限局して発生した報告は認められなかった.下肢しびれ感,排尿障害,歩行障害で発症するものが多く,罹病期間が長いのが特徴であった.髄液・単純X線像においては特異的な所見はないがCT,MRIにおいて脂肪と等信号の領域として描出されるため診断は比較的容易である.治療は神経症状出現後早期に部分摘出術によって除圧を図るのが好ましいが罹病期間の長期に及ぶものは予後不良である.

腰部脊柱管狭窄における膀胱障害―残尿量からみた検討

著者: 鹿山悟 ,   菊地臣一 ,   紺野慎一 ,   関修弘

ページ範囲:P.1017 - P.1021

 抄録:腰部脊柱管狭窄による馬尾型と混合型間欠跛行を呈する35例を対象として,術前と術後に残尿測定による膀胱機能の評価を行った,さらに,膀胱障害と他の神経障害との相関と,手術後の排尿機能の推移を検討した.その結果,術前の残尿量は排尿に伴う症状の有無とは関係がなかった.しかし,術前の残尿量が多い症例では馬尾障害が重度であった.手術により残尿量は減少し,排尿に伴う症状も改善した.これらの事実から,腰部脊柱管狭窄による馬尾障害に伴う膀胱障害の有無を判定するには,自覚症状の有無に関わらず,残尿測定による他覚的な評価が必要であるといえる.さらに,膀胱障害は下肢症状と同様に可逆的な障害であると推測される.

検査法 私のくふう

超音波法(アキレス)による骨粗鬆症の診断

著者: 佐々木康夫 ,   水野直樹 ,   中島敏光 ,   近藤喜久雄

ページ範囲:P.1023 - P.1026

 抄録:〔目的〕超音波骨評価装置のアキレス測定値とMD法を比較し,カルシトニン投与の影響や,出産回数とアキレスの関係も調べる.
 〔対象と方法〕女性患者347名.測定機器はLunar社アキレス.147例はCXD法で,中手骨にて測定し,アキレスとCXD法の年齢分布を比較した.ビタミンDのみ使用群24例,ビタミンDとカルシトニン併用群13例の2群の12カ月間のアキレスの変化,さらに出産回数とアキレスの関係を調べた.

専門分野/この1年の進歩

日本脊椎外科学会―この1年の進歩

著者: 茂手木三男

ページ範囲:P.1028 - P.1029

 第26回日本脊椎外科学会は主題を「脊柱靱帯骨化症に関する最近の進歩」とした関係から,脊柱靱帯骨化の成因,病態,治療に関する多くの発表がなされた.近年,成因に関する研究の進歩はめざましいものがあり,本学会でもOPLLの成因に関する最新の知見が発表された.その主なものを紹介する.

連載 整形外科philosophy・6

人間について―医の視点から

著者: 辻陽雄

ページ範囲:P.1031 - P.1033

 ここでは医学・医療の面から,人間について追補的な2,3の一般論を考察してみたいと思う.

講座

認定医トレーニング講座―画像篇・13

著者: 西野暢 ,   松本忠美

ページ範囲:P.1034 - P.1038

症例:46歳,男性
 1994年6月頃より,特に誘因なく左股関節部痛を認めるようになり,整骨院にてマッサージ,温熱療法などを受けて,症状の軽快,増悪を繰り返していた.1996年10月より股関節部痛が増強し,跛行も認めるようになり,近医受診し当科紹介となった.
 既往歴にくも膜下出血があり3回の開頭手術を受けている.

整形外科英語ア・ラ・カルト・58

“The Oath of Hippocrates”・その2

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.1040 - P.1041

●ヒポクラテス医箴
 前回はヒポクラステス医箴(いしん)の英文とその日本語訳を書いてみた.今回はその医箴の中に書かれているギリシャ神話の神々のことを解説してみたい.
 神々の出て来る“The Oath of Hippocrates”の冒頭の文は次のようである.

ついである記・16

再びHunary

著者: 山室隆夫

ページ範囲:P.1042 - P.1043

●或るハンガリー人留学生のこと
 或る国についての印象は,実際にその国へ出かけていって景色を見たり,食事をしたり,いろいろな人々と出逢うことによって自然に自分の中に出来上ってくるわけだが,その印象の深さを左右する最も大きな要素はその国でどのような人達とどのように関わり合いを持ったかということであろう.「ついである記(7)」の中で書いたように,私は1988年に初めてハンガリーへ行った.その後,何度もハンガリーの各地を訪ね多くの友人ができたが,ここに紹介するSzomor Zoltan君とその家族に出逢わなかったら,私のハンガリーという国に対する愛着はもっともっと稀薄なものに止まったのではないかと思う,ハンガリーでは氏名を書くとき,日本と同じように姓を先に書き,名を後に書く.したがって,彼の名前はSzomorが姓でZoltanが名である.そのゾルタン君はハンガリーのペーチ(Pécs)医科大学整形外科の医員で,1990年に先天股脱予防普及会の奨学金で初めて日本へやってきた.この会は神戸の荻原一輝先生が事務局を預っておられるが,世界における先天性股関節脱臼の発生を予防することを目的としており,その活動の一つとして,この疾患の多発国から毎年2人つつ若い整形外科医を日本へ招聘して1カ月間に亘って幾つかの小児整形外科センターへ研修旅行をさせるために奨学金を出している.

臨床経験

重篤な麻痺を免れた第3胸椎後方脱臼骨折の1例

著者: 山梨晃裕 ,   村田英之 ,   串田一博 ,   山内秀樹 ,   井上哲郎

ページ範囲:P.1045 - P.1048

 抄録:症例は24歳,男性.乗用車運転中に対向車と正面衝突し受傷した.初診時,背部痛や四肢の麻痺はなく,乳頭の高さに帯状の知覚低下を認めた.胸椎斜位X線像で第2胸椎椎体前縁が第3胸椎椎体後縁の延長線上に後方転位していた.MR像では,脊柱管は第2胸椎高位で後方に転位し,第2/3胸椎椎間高位で拡大していた.CT像では,第3胸椎椎体の椎弓根付着部近傍での骨析,右第3/4胸椎椎間関節脱臼,左第3胸椎下関節突起骨折を認めた.受傷後2週間で観血的整復術を施行し,Harrington法にて後方固定した.本症例の受傷機転は,合併損傷などから推測すると通常いわれている後方よりの外力ではなく,脱臼部より上位に前方から外力が加わり過伸展を強いられた可能性が高い.脊柱管の転位にかかわらず重篤な麻痺を免れたのは,骨折により脊柱管が拡大した,生理的後弯部位が過伸展したため脊髄に牽引力が強く作用しなかった,生来脊髄に比し脊柱管が広かったなどの要因があったためと考えた.

疲労骨折との鑑別を要した第2中足骨類骨骨腫の1例

著者: 安間久芳 ,   小林良充 ,   井上善也 ,   齋藤英彦

ページ範囲:P.1049 - P.1052

 抄録:第2中足骨類骨骨腫の1例を経験した,症例は18歳,男性,高校陸上部の中距離選手である.足背部の腫脹や疼痛,特に夜間痛のため近医を受診し疲労骨折と診断され,保存的に治療されていたが改善せず来院した.単純X線像で第2中足骨骨皮質の肥厚,硬化を認め疲労骨折と類似した像を呈していたが.疲労骨折より肥厚.硬化の範囲が広く,厚いことが鑑別のポイントであると考えた.nidusは単純X線像では不明瞭であったが断層X線像やMRIで確認できた.手術は一般的なノミではなくエアトームを使用して最小限に骨皮質を削りnidusの掻爬と骨移植を行い,スポーツへの早期復帰に有用であった.類骨骨腫の中足骨発生例はまれであるが特に疲労骨折との鑑別疾患として念頭におくべきである.

背椎に発生した類骨骨腫の治療経験―2例報告

著者: 東裕隆 ,   浅野聡 ,   大矢卓 ,   高橋達郎 ,   佐藤栄修

ページ範囲:P.1053 - P.1058

 抄録:比較的稀な脊椎に発生した類骨骨腫の2例を経験した.ともに15歳の男性で,1例は下関節突起,他の1例は椎弓根に発生していた.臨床症状では安静時痛(特に夜間痛)が特徴的であった.断層写真,CTではnidusを示す周囲に骨硬化像を伴う卵円形の骨透亮像が認められ,骨シンチグラムの集積像とともに有用であった.確定診断にはnidusの大きさと組織学的所見によった.2例とも痔痛の消失には,手術によるnidusの完全切除が必要であった.1例で背椎固定術を併用した.調査時(術後6年および2年),2例とも症状および腫瘍の再発はなかった.1例では側弯の合併が早期診断のpitfallとなっていた.背椎発生の類骨骨腫の診断上,注意を要する点である.われわれは比較的稀な背椎に発生し,手術を必要とした類骨骨腫(osteoid osteoma)の2例を経験したので,苦干の文献的考察を加えて報告する.

アルビジア髄内釘による脚延長術を施行した外傷後大腿骨短縮の1例

著者: 田村太資 ,   中瀬尚長 ,   安井夏生 ,   越智隆弘 ,   平林伸治 ,   柴田徹

ページ範囲:P.1059 - P.1062

 抄録:本邦で初めてアルビジア髄内釘による脚延長術を経験したので報告する.症例は22歳男性,12歳時に右大腿骨遠位骨端線損傷に対し観血的整復術施行され,17歳時より脚長差による歩行障害を自覚,今回右下肢短縮による歩行障害を主訴に来院.右大腿骨に3cmの短縮を認めたため,この症例に対しアルビジア髄内釘を用いた脚延長術を施行した.術後1週間のwaiting periodの後,1日1.05mmの延長を開始し27日間で延長を終了.術中の延長量も含め計3.14mmの延長となった.延長終了後6日目から部分荷重を開始した.術後8カ月の時点で全荷重歩行しており,右膝関節に可動域制限はなく骨形成は良好であった.完全閉鎖式延長法である本法は,従来の創外固定器を用いる方法で従来から指摘されてきた長期にわたるフレームの装着やピン刺入部の感染等の問題点が解消され,新しい骨延長法の1つとして有用であると考えられる.

術後ガングリオンの再発により回復が遅延した肩甲上神経麻痺の1例

著者: 浪花豊寿 ,   小川清久 ,   宇井通雅

ページ範囲:P.1063 - P.1065

 抄録:棘窩切痕部のガングリオンによる棘下筋単独麻痺に対し手術的治療を行ったが,ガングリオンの再発により回復が遅延した1例を報告する.症例は41歳男性で,下肩甲横靱帯を切除しガングリオンを全摘出したが,術後7カ月に至っても回復を認めず,MRIによってガングリオンの再発が明らかとなった.以後,2回の穿刺吸引を施行した.術後1年8カ月に至り,MRI上ガングリオンは依然存在していたが,臨床上および筋電図上の回復傾向を認めた.ガングリオンの再発を完全に防止することができない以上,手術においては下肩甲横靱帯を切除し棘窩切痕部でのトンネル構造を開放することが最も大切であると考えられた.

陳旧性圧迫骨折による遅発性脊髄症に対する後方侵襲脊椎骨切り術の経験

著者: 三橋浩 ,   冨士武史 ,   田中正道 ,   細野昇

ページ範囲:P.1067 - P.1070

 抄録:陳旧性圧迫骨折後の脊柱角状後弯変形による遅発性脊髄症の1例に対し後方侵襲による脊椎骨切り術を行った.手術手技は角状後弯変形の頂椎部の椎体を田考案の特殊な手術器械を用いて椎体前方まで剥離し,襖状に骨切りして,矯正を行った.矯正後は椎弓根スクリューとロッドにより固定した.後弯Cobb角は術前68゜から術後40゜と改善し脊髄症状も改善した.

膝関節大腿骨外側顆膝蓋関節面に発生した離断性骨軟骨炎の1症例

著者: 平博文 ,   王寺享弘 ,   案浦聖凡 ,   小林晶

ページ範囲:P.1071 - P.1074

 抄録:成長期のクラブ活動により発生したと思われる稀な離断性骨軟骨炎の1症例を経験し,手術的治療をしたので報告する.症例は21歳の男性.バスケットボール歴8年.1996(平成8)年8月8日,野球の走塁中,ベースを蹴った直後から突然左膝関節痛が出現した.初診時,膝関節20~30.屈曲位で膝蓋大腿関節外側にsnappingを触知し,淡血性の関節液を吸引した,単純X線軸射像で大腿骨外側顆膝蓋関節面に不整像を認め,MRIの結果,大腿骨外側顆膝蓋関節面に発生した離断性骨軟骨炎と診断した.3カ月後,痔痛,snappingは消失しており,単純X線像で剥離したと思われる骨軟骨片を認めた.12月20日関節鏡視下に骨軟骨片摘出,drillingを施行し,術後3カ月の現在,症状は完全に消失している.

感染に伴う脱落ビーズと破損アルミナスクリューにより著しい股関節の破壊に至った1症例

著者: 藤林俊介 ,   松下睦 ,   田中千晶 ,   飯田寛和

ページ範囲:P.1075 - P.1080

 抄録:感染に伴うビーズの脱落とアルミナセラミックスクリューの破損により著しい股関節の破壊に至ったポーラスコート型人工関節を経験した.抜去したインプラントに対しSEM,EPMAによる定性分析等による調査を行い,その原因を考察した.感染による人工関節のルースニングにより,ビーズの脱落およびアルミナセラミックスクリューの破損が進み,人工関節摺動面に侵入したビーズおよび破損スクリューが,人工関節の破壊,さらには股関節の破壊へと進展したものと考えられた.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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