icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科33巻1号

1998年01月発行

雑誌目次

巻頭言

第71回日本整形外科学会学術集会を主催するにあたって

著者: 井形高明

ページ範囲:P.2 - P.3

 第71回日本整形外科学会学術集会は平成10年4月17日(金)~20日(月),徳島市での開催に向け,徳島大学整形外科学教室,同門はもとより徳島県下の各界をあげて準備しております.

論述

腰部脊柱管狭窄症におけるL5神経根絞扼障害(lateral recess syndrome)とlateral recess内ヘルニア合併例の臨床症状の比較

著者: 金宮毅 ,   木田浩 ,   田畑四郎 ,   高原光明 ,   山口栄 ,   相澤利武 ,   関修弘

ページ範囲:P.5 - P.9

 抄録:腰部脊柱管狭窄症における上関節突起下での神経根絞扼性障害をlateral recess syndrome(以下LRS)とし,lateral recess内ヘルニア合併例(以下LDH)との臨床症状の相違を比較検討した.対象症例は全例L5神経根障害を示し,手術にて病態を確認したLRS例90例(男性47例,女性43例),19歳~83歳(平均63歳),LDH例59例(男性43例,女性16例),19~85歳(平均49歳)である.現病歴においてLRS例では下肢症状を初発症状とする例が多いのに比較し,LDH例は腰痛から下肢症状へと変化するタイプが多かった.動作との関係では,LRS例,LDH例ともに歩行負荷において症状再現性を示した.腰椎の前後屈においてはLDH例に特に症状誘発が多く,筋力ではLDH例に前脛骨筋,長母趾伸筋でのMMT4レベルの低下が多かった.以上より同じlateral recessという圧迫部位でも,圧迫原因により臨床像に違いがあることを明らかにした.

40歳以上発症の骨肉腫症例の検討

著者: 中村紳一郎 ,   楠崎克之 ,   平田正純 ,   橋口津 ,   福録潤 ,   村田博昭 ,   平澤泰介

ページ範囲:P.11 - P.15

 抄録:40歳以上で発症した骨肉腫13例を経験した.若年例と比して骨盤や脊椎の発生例が多く,的確な診断や初期治療が行われていない症例が多かった.また,若年例よりも経過が緩慢な症例が多く,予後は比較的良好であった.高齢者に対する化学療法は副作用が強く,十分な注意を要する.

骨盤位分娩麻痺の特徴

著者: 樋口周久 ,   川端秀彦 ,   柴田徹 ,   有賀健太 ,   坪井秀規

ページ範囲:P.17 - P.20

 抄録:骨盤位分娩麻痺の特徴を頭位分娩麻痺の特徴と比較して検討した.対象は骨盤位分娩麻痺67例.頭位分娩麻痺136例であった.平均出生時体重は骨盤位分娩麻痺では2,895gと頭位分娩麻痺の4,186gより小さく,罹患側に関しては,骨盤位分娩麻痺の両側罹患の割合は25.4%であり,頭位分娩麻痺の0.7%より高かった.これらは,頭部娩出の順序およびその方法の違いによるものと考えられた.麻痺形式では骨盤位分娩麻痺の86.6%が上位型であるのに対して,頭位分娩麻痺の63.2%が全型であった.合併症については,骨盤位分娩麻痺で横隔神経麻痺の合併頻度が高く,ホルネル症候群を認めなかった.麻痺形式と合併症の違いは,腕神経叢に加わる分娩時の牽引力の方向の相違によると考えられた.手術所見では骨盤位分娩麻痺で節後損傷が少なく,神経根引き抜き損傷が多かった.また,神経根引き抜き損傷はC5からC7の上位神経根に集中していた.

A-Wガラスセラミックス(AW-GC)椎間スペーサーを用いた腰椎後方進入椎体間固定術の治療成績

著者: 加藤浩 ,   吉野恭正 ,   飯田惣授 ,   平澤洋一郎

ページ範囲:P.21 - P.26

 抄録:AW-ガラスセラミックスを用いてPLIFを施行した症例で,1年以上経過観察可能であった57症例63椎間の臨床成績およびAWと骨癒合の程度について検討した.経過観察期間は12~46ヵ月,平均26.8ヵ月であった.AWは1椎間1個使用で,対側には局所自家骨を挿入し,腸骨からの採骨は行わなかった.疾患は変性すべり症25例,分離すべり症8例,変性側弯症11例,狭窄症6例,椎間板症他7例であった.各々の術後改善率は,71.5,74.4,60.5,76.7,79.9%であった.術前就労していた症例は33例で,そのうち28例,86%は元の職業に復帰していた.自家骨癒合は97%に,AWと骨は76%で癒合を認めたが,24%にはAW周囲の骨透亮像が残存していた.AW周囲に骨新生を認めたものは73%であった.AWは1椎間1個の使用で良好な臨床成績を示し,全例とも骨癒合または骨新生がみられたことから,PLIFにおける有用な椎間スペーサーである.

変性側弯の有無による腰部脊柱管狭窄症の病態および治療成績の比較検討

著者: 石本勝彦 ,   井口哲弘 ,   松原伸明 ,   日野高睦 ,   西川哲夫 ,   冨田佳孝 ,   本田久樹

ページ範囲:P.27 - P.34

 抄録:Cobb角10°以上の変性側弯の有無で,腰部脊柱管狭窄症の病態および治療成績を比較検討した.病態面でみれば,変性側弯のある群は,腰痛,筋力低下,L4神経根障害および多椎間障害が多いという点で変性側弯のない群と比較して有意差があった.観血的治療に関しては変性側弯群は日整会腰痛治療判定基準の改善率が有意に劣っており,特に馬尾障害を伴うものの改善が悪かった.変性側弯群は術後側弯と側方すべりの増強がみられたが,程度は軽く症状の再発には至らなかった.固定や矯正術の併用については,側弯の程度が軽い症例が多いため,患者の状態や腰背筋の筋力,術前の不安定性などを考慮して慎重に選択する必要がある.また変性側弯のある群は,それがない通常の腰部脊柱管狭窄症に比べて,術前の病態が異なっており,さらに治療成績も悪く,後者の治療概念をそのまま適応するのは問題があると思われた.

連載 リウマチ―最新治療のポイントとその留意点・4

手関節疾患への対応

著者: 水関隆也

ページ範囲:P.37 - P.44

 抄録:多くの関節リウマチは手関節が初発部位となる.手関節の変形,障害はすなわちリウマチとの闘病結果を反映しているともいえる.手関節滑膜炎が投薬によって改善されない場合には滑膜切除術が考慮される.早期の場合は尺骨頭を温存したまま滑膜切除術が行われるのがよい.中期,晩期の場合は,滑膜切除術をより完全に近づけ伸筋腱の断裂を予防するため,尺骨頭切除術を併用する.尺骨頭切除術から生じる尺骨末端不安定症,手根骨の尺側転位を予防するためSauve-Kapandji法を追加することもある.手関節の変形が進行すると手根骨は尺掌側へ脱臼し,手関節は不安定になることが多いが,これを矯正,安定化するには手関節固定術が選択される.手根中央関節が保たれ橈骨手根関節が破壊された例では手関節の可動域をいくらかでも維持できる部分手関節固定術が選択される.これらの併用手術は変形予防/矯正に有効であるが,これらに関心を奪われ肝心の滑膜切除術が疎かになってはならない.

専門分野/この1年の進歩

日本リウマチ・関節外科学会―最近の進歩

著者: 田中清介

ページ範囲:P.46 - P.48

 第25回日本リウマチ・関節外科学会は平成9年10月3,4日神戸国際交流センターにおいて,同学会としては近年最多の参加者をえて行われた.

最新基礎知識/知っておきたい

in situ hybridization(ISH)法

著者: 中瀬尚長

ページ範囲:P.50 - P.53

【はじめに】
 古くから整形外科の研究において組織形態学が柱の一つとされてきた.しかしながら分子生物学が発展し遺伝子レベルでの病態の解明が可能となった現在,組織形態学も分子レベルで論ずることが必須となりつつある.このような要求に答えてくれる手法こそが組織形態学的手法と分子生物学的手法をドッキングさせたin situ hybridization(インサイチューハイブリダイゼーション)法である.本方法は,いかなる細胞がいかなる部位である特定の遺伝子を発現しているのかということを検出する,すなわち,顕微鏡で組織切片を観察したときに,「あの遺伝子を発現しているのはどの部位のどのような細胞なのだろうか?」といった疑問に答えてくれる方法である.本稿では,その基本的な概念からやや専門的な手法に至るまで項目別に概説するが,読者の方々はそれぞれの要求に応じて適宜各項目をピックアップして読んでいただければ幸いである.

講座

認定医トレーニング講座―画像篇・17

著者: 井口理 ,   小川清久

ページ範囲:P.55 - P.59

症例:40歳,女性,主婦
 美容室で慣れない姿勢をとった後,左肩に鈍痛が出現した.その2日後の夜間に,突然左肩に強い自発痛が出現し,左肩の自動運動も不能となったため来院した.肩関節前方に強い圧痛があり,疼痛のため自動運動は著しく制限されていた.全身的な合併症・外傷歴・神経学的異常所見はない.初診時の単純X線像を示す(図1).

整形外科英語ア・ラ・カルト・62

外科医の“knee exercise”〔整形外科医のご批判を乞う!〕

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.60 - P.61

●はじめに
 今回は僣越ながら,一外科医が行っている膝の訓練法を述べ,整形外科医のご批判を乞うつもりで書いた.

ついである記・20

中国の泰山に登る

著者: 山室隆夫

ページ範囲:P.62 - P.63

●あまりにも巨大なる国
 中国はいろいろな意味であまりにも巨大な国であるので,3回や4回この国を訪ねたからといってまともな印象記など書けるわけがない.しかし,初めて北京を訪れて天安門から紫禁城に入った時,また,明の十三陵を歩いた時,そして,八達嶺の万里の長城へ登った時に受けたあの圧倒的な量感と遥かなる歴史への想いは,私の胸の中にある確かな印象としていつ迄も残り続けている.
 われわれが学会出席のために中国へ行くと,きまって「熱烈歓迎」を受ける.そして,夜は人民大会堂で中国衛生部の要人を交えて特別のメニューの中華料理をいただいたり,また別の夜は清朝時代の建物といわれる晋陽飯莊でペキンダックの御馳走にあずかり,しまいには,双方から歌までとび出す程に和やかに打ち解けた雰囲気になる.しかし,そのような会でも不思議なことに何となくお互いの気持ちを探り合っているようなもどかしさがあり,中国の医師との間には肌と肌を接するような熱い友情が育ってこないのを私は残念に思ってきた.私はその原因について,日中戦争に関するわだかまりが今もなお根強く残っていることや,本来,両国の文化には大きな相違がある上にわれわれがあまりにも強く西欧化したためではないかなどと思っていた.それで,私はよく杜甫や李白の詩や孔子の言葉などを漢文で書いてみせて,日本人がいかに中国文化の影響を受けて育ってきたかを理解してもらうよう努めてきた.勿論その程度のことで理解が深まり友情が育つ筈もないのだが.

臨床経験

経頭蓋電気刺激誘発複合筋活動電位モニタリング下にS-S shuntを施行した外傷性脊髄空洞症の1治験例

著者: 片山理恵 ,   川口善治 ,   中村宏 ,   根塚武 ,   北川秀機

ページ範囲:P.65 - P.68

 抄録:外傷性脊髄空洞症に対し,経頭蓋電気刺激誘発複合筋活動電位モニタリング下にT1-3の椎弓切除術およびT2レベルでS-S shunt(syringo-subarachnoid shunt)を施行した.経頭蓋電気刺激誘発複合筋活動電位モニタリング法とは,大脳皮質運動野を連続電気的に刺激し,四肢の骨格筋から誘発電位を記録するものであり,全運動路を評価しうる鋭敏な脊髄機能評価法である.本法は臨床的価値が大きいと思われるが,脊髄症が強い場合には,下肢からの記録が困難なことがある.本症例はその限界を示した一例である.

2椎間に発生した外側型腰椎椎間板ヘルニアの1例

著者: 尾島朋宏 ,   土田敏典 ,   山城輝久 ,   川原範夫 ,   三平伸一

ページ範囲:P.69 - P.73

 抄録:2椎間に発生した外側型腰椎椎間板ヘルニアの1例を経験した.症例は29歳の男性で初診時,強い右下肢痛のため歩行困難であった.右L4/5椎間孔外ヘルニアによる右第4腰神経根障害と診断し,外側開窓によるヘルニア摘出術を施行,症状軽快した.ところが7ヵ月後,今度は左下肢痛が出現した.左L5/S1椎間孔外ヘルニアによる左第5腰神経根障害と診断し,手術施行した.第5腰椎分離症が存在したため手術は分離椎弓を取り外しヘルニアを摘出後,切除椎弓を還納し分離部に骨移植を追加してcannulated screwにて固定した.術後1年で下肢痛を認めず経過良好である.
 異なる2椎間に外側型腰椎椎間板ヘルニアが出現した原因としては重労働に従事していたこと,肥満を認めたこと,元々の第5腰椎分離症,さらにL4/5椎間板の変性によって椎間不安定性が増大し,L5/SI椎間板にストレスが集中したことが考えられた.

Anterior sacral meningoceleの1例

著者: 坂本直俊 ,   横串算敏 ,   山下敏彦 ,   横澤均 ,   合六孝広 ,   石川一郎

ページ範囲:P.75 - P.78

 抄録:73歳男性に発症したanterior sacral meningocele(以下ASM)の1例を経験した.ASMはきわめて稀な髄膜瘤の一型であり本邦ではこれまでに7例の報告しかない.本症例は排尿困難を主訴として泌尿器科を受診し,CTで骨盤腔内のcystを指摘された.頻尿や便通障害を認めたが腰痛,下肢痛および神経学的異常は認めなかった.単純X-Pでは仙骨のトルコ半月刀状骨欠損(scimitar sacrum)を認めた.脊髄腔造影やCTM,MRIでは脊髄腔と連続し骨盤腔内に広がるcystを認め,内部は髄液の信号強度と一致していた.以上の検査所見から本症例をASMと診断し,後方アプローチにて仙骨下端でASMを切離して硬膜を縫縮した.神経切除に伴う仙骨神経の脱落症状が遺残したが,ASMは著しく縮小し、他臓器の圧迫症状は消失した.

膝関節部に発生したグロームス腫瘍の1例

著者: 土田敏典 ,   赤丸智之 ,   津山健 ,   北野喜行

ページ範囲:P.79 - P.81

 抄録:膝前面に発生したグロームス腫瘍の1例を経験し,MRIの術前診断としての有用性について考察した.症例は64歳男性で,3年前から誘因なく右膝前面の疼痛が出現し,同部に直径約10mmの腫瘤を自覚していた.CTでは膝蓋骨前面に境界明瞭な腫瘤を認めた.MRIでは,T1強調像で低信号,T2強調像で中等度から高信号に描出され,内部に線状の無信号域を有し,Gd造影像では全体に淡く造影された.局所麻酔下に腫瘍を一塊として摘出した.術後疼痛は消失し,2年を経過した現在,再発を認めていない.病理組織学的には,拡張した血管の増殖と,それを取り巻く小型類円形細胞の腫瘍性増殖を認め,グロームス腫瘍と診断した.MRI像においてグロームス腫瘍ではT2強調像で高信号を示し,内部に点状・線状の無信号領域をもち,これをsalt-and-pepper patternと呼ばれており,今後もMRIを術前診断として試みる価値があると思われた.

スノーボードにより生じた距骨外側突起骨折の2例

著者: 金治有彦 ,   宇佐見則夫 ,   井口傑 ,   片岡公一 ,   宮崎祐

ページ範囲:P.83 - P.86

 抄録:スノーボードによる距骨外側突起骨折の2例を経験したので報告する.症例1は27歳男性,症例2は21歳女性である.2例ともスノーボードで滑走中に逆エッジで転倒,受傷し,当院を受診した.単純X線写真で距踵関節内に達する距骨外側突起骨折を認め,症例1には6週間の膝下ギブス固定,症例2には手術を行い,骨折部をチタン製海綿骨螺子にて固定した.2例とも骨癒合は良好で日常生活に支障はない.欧米ではスノーボードにより生じた距骨外側突起骨折は知られているが,本邦での報告はほとんどなく,自験例を含め4例のみである.4例全例とも骨折線が距踵関節面に達する関節内骨折型であった.自験例2例は逆エッジの際に転倒,受傷したことから背屈外反強制により生じたと考えた.スノーボードの普及に伴い,本邦でも本骨折が急増することが考えられる.スノーボードによる足関節外側の傷害を診る際には本骨折を念頭に置き,診察することが重要である.

脊柱管内に突出した小児頚椎椎間板石灰化症の1例

著者: 堀木充 ,   大和田哲雄 ,   大河内敏行 ,   佐藤巌 ,   久田原郁夫 ,   米田稔

ページ範囲:P.87 - P.90

 抄録:小児頚椎椎間板石灰化症は頚部痛,頚部運動制限を主訴とし,保存的治療で緩解する疾患である.今回,われわれは脊柱管内に突出し,線維輪に石灰化を認めた小児頚椎椎間板石灰化症の1例を経験した.
 症例は11歳男児で頚部痛,頚部運動制限を訴えていたが,神経学的には異常が認められなかった.断層X線写真で,C5椎体の扁平化,椎間腔の拡大,C5-6椎間板内の小さな石灰化陰影と脊柱管内に突出する石灰化陰影を認めた.本症例で後方突出が認められるが,神経症状がなかった理由として,石灰物質が椎間孔内に漏出していなかったこと,脊髄に比べて脊柱管が広く,脊髄への圧迫が軽度であったことが挙げられる.しかし,神経症状が出現した場合でも石灰化物質は徐々に吸収されるため手術的治療はほとんどの症例で適応がないと考えられる.本症例も保存的治療で症状は緩解し,その後,症状の再発は見られない.

著明な石灰化を生じた軟部平滑筋腫の1例

著者: 生越章 ,   今泉聡 ,   塩谷善雄 ,   畠野宏史 ,   山村倉一郎 ,   堀田哲夫

ページ範囲:P.91 - P.93

 抄録:軟部腫瘍は時に石灰化を生じる.足背に発生し著明な石灰が認められた平滑筋腫を報告する.症例は72歳女性で,10年の経過をもつ5cm大の足背腫瘤のために来院した.単純X線およびCTにて腫瘤全体に多房状の石灰化が認められた.辺縁切除された腫瘍は内部にミルク様の白色液の貯留と,石灰化がみられ,組織学的には好酸性の胞体を持つ紡錘形細胞が粗に増殖していた.軟部平滑筋腫は稀な腫瘍であるが石灰化を生じやすく,石灰化の認められる軟部腫瘍をみたとき鑑別診断の一つに入れられるべきである.

腰部肥厚性硬膜炎の1例

著者: 合六孝広 ,   山下敏彦 ,   坂本直俊 ,   横串算敏 ,   石川一郎

ページ範囲:P.95 - P.98

 抄録:腰部に発生した比較的稀な疾患である肥厚性硬膜炎1例を報告した.症例は58歳,男性.腰痛,左下肢痛,歩行困難を主訴とした.脊髄腔造影では,L2椎体下縁よりL5椎体レベルまで硬膜管の著しい狭小化を認めた.MRIでは,L3/L4レベルの硬膜管背側にT1強調画像で低信号,T2強調画像で高信号を呈し,low signal rimを伴う腫瘤を認めた.2ヵ月前の前医入院時にはこれらの所見は認めなかった.L3,4椎弓切除を施行すると硬膜背側に肉芽組織様の腫瘤を認めた.肉芽組織および肥厚した硬膜を切除し,人工硬膜を用いた硬膜形成術を施行した.病理組織所見では,切除硬膜は非特異性炎症細胞浸潤を伴い著しく肥厚していた.術後,症状は著明に改善した.前医において施行された脊髄腔造影や硬膜外ブロックが肥厚性硬膜炎の原因と推測された.

頚椎部flexion myelopathyの1例

著者: 稲生秀文 ,   中村滋 ,   山田芳久 ,   洪淑貴 ,   増井徹男 ,   楫野學而

ページ範囲:P.99 - P.104

 抄録:平山により若年性一側上肢筋萎縮症が報告され,近年その病因が頚椎部にあるとされ,頚椎部flexion myelopathyと呼ばれている.今回比較的稀な本疾患を経験したので報告する.
 症例は16歳男性で,主訴は左前腕から手指にかけての知覚鈍麻と手指の運動障害.また頚部屈曲で症状が増悪するエピソードが存在した.屈曲位のmyelogramとCTMで硬膜管と脊髄はC3/4,4/5.5/6レベルで特に前方へ移動し,左側優位に後方より圧迫された像を呈した.脊柱管前後径は単純X-P上C4,5レベルで12mm以下であり,developmental canal stenosisの要素を伴った頚椎部flexion myelopathyと診断し,脊柱管の拡大と頚椎屈曲の制動を目的とし椎弓形成術を施行した.術後約2年の現在経過は良好であり,CTMで左側優位の圧迫像も改善されている.

十数年間にわたり閉鎖神経刺激症状を繰り返した閉鎖孔ヘルニアの1例

著者: 牧野明男 ,   増岡昭生 ,   伊坂直紀 ,   熊倉啓夫 ,   渡部仁

ページ範囲:P.105 - P.108

 抄録:十数年間にわたり閉鎖神経刺激症状を繰り返した閉鎖孔ヘルニアの1例を経験した.症例は79歳女性.約13年前から右大腿内側部の激痛発作が出現し,そのつど閉鎖神経ブロックを受けていた.発作時は激痛のために股関節屈曲内転内旋肢位をとっており,伸展外転外旋強制で自発痛が増強するHowship-Romberg徴候を認めた.CT像にてヘルニアを確認できた.開腹根治術により症状は消失した.腹部症状がないか,あっても軽度の場合,閉鎖神経刺激症状が主訴となるため,整形外科外来やペインクリニックを受診すると考えられる.高齢のやせた女性が,間欠的な激しい大腿内側部痛を訴える場合,閉鎖孔ヘルニアも考慮する必要がある.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら