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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科33巻10号

1998年10月発行

雑誌目次

視座

学会は人と人との出会いの場―特別講演に想う

著者: 戸山芳昭

ページ範囲:P.1161 - P.1161

 人生とは人と人との出会いの場と言われている.医者にとっては,学会が人との出会いの場になることがある.整形外科の学会でも,第一線で活躍してきた人の特別講演が企画されることも多い.中には,時々医学とは全く異なった分野の講演も行われ,その人の生き方,出会い,考え方,思想などが拝聴でき,医学という小さな社会の中で生きている私にとっては新鮮な気持ちで一杯になり嬉しいかぎりである.しかし,医学者が特別講演を行う場合,その多くは,その人が歩んできた研究・臨床歴が中心に語られる.素晴らしい研究結果,業績が述べられ,さすがにこの世界の第一人者は違うな,と尊敬する気持ちで一杯になる.自分もいずれはこのような特別講演を依頼される身になってみたい,などと考えたりもする.だが,今まで拝聴した特別講演の中で,ご自分の業績,研究結果とともに人生の生き方,考え方,出会いなどが一体になって語られた講演に出会った記憶は少ない.一般に,研究業績とともに人に感動を与えるような,人生を変えるほどの人との出会いなどが,その講演の中で述べられることは少ないようである.どうしても学会,研究会での特別講演は,一般の学会発表に近い形式になってしまう.
 ところが,先日行われた第16回日本骨代謝学会での須田立雄教授(昭和大学歯学部生化学教室)の特別講演には極めて感動した.

論述

院内感染が疑われた整形外科手術後の偽膜性大腸炎

著者: 明田浩司 ,   伊村昌記 ,   堀川一浩 ,   浦和真佐夫 ,   内田淳正

ページ範囲:P.1163 - P.1167

 抄録:われわれは三重大学附属病院整形外科病棟において,1996年1月より1997年10月に至る22カ月間に14例の偽膜性大腸炎を経験した.各症例について疫学的調査を施行したところ,女性(78.6%),高齢者,侵襲度の大きい手術施行後に多く発症した.また,その多くが同一病室からの発症であり,時間的にも連続しており,院内感染による可能性が示唆された.

膝屈筋腱多重折りによる前十字靱帯再建術―移植腱の太さが臨床成績に与える影響

著者: 朝比奈信太郎 ,   仁賀定雄 ,   星野明穂 ,   池田浩夫 ,   鄭光徹 ,   長束裕

ページ範囲:P.1169 - P.1173

 抄録:膝屈筋腱を移植腱として用いた前十字靱帯(ACL)再建術80例を対象として,移植腱の太さと臨床成績の関係について検討した.𦙾骨骨孔のガイドピンは膝伸展位で十分Blumensatt線より後方に設置されるように注意を払い,notch plastyは施行せずに再建術を行った.移植時の腱の太さにより7.5~8.5mmのA群30例,9.0mmのB群29例,9.5~10.5mmのC群21例の3群に分類して,臨床成績との関連について検討した.Lysholm score,Lachman test,前方引きだしテスト,pivot shift testの陽性率,KT-1000の健患差,膝伸展筋力とも各群との関連性は見られなかった.5度以内の僅かな伸展制限を認めた例が,少数ながら移植腱の太い群で見られた.関節鏡視像では,再建ACLの前方線維が𦙾骨側で部分断裂している例が,移植腱の太い群で比較的高率に認められた.

専門分野/この1年の進歩

骨・軟部腫瘍学術集会―この1年の進歩

著者: 大野藤吾 ,   第31回日本整形外科学会骨・軟部腫瘍学術集会

ページ範囲:P.1174 - P.1176

 7月18日,19日に千葉県の幕張メッセ国際会議場で第31回日本整形外科学会骨・軟部腫瘍学術集会を約700名の参加者のもとに開催しました.この学術集会の発表を通覧し,特に目に付いた話題を4点触れます.

基礎知識/知ってるつもり

windblown hand(風車翼手)

著者: 荻野利彦

ページ範囲:P.1178 - P.1180

【同義語】
 MP関節の尺側偏位が風車の翼を思い浮かべさせることから,MP関節の尺側偏位を主徴とする先天性手指変形を風車翼手という.風車翼状手,pill roller hand,congenital ulnar deviation(あるいはdrift)of the fingers,windmill-vane fingers,déviation des doigts en coup de vent,Windmülenflügelglstellungなどとも呼ばれる.

最新基礎知識/知っておきたい

在宅医療―整形外科医の役割

著者: 西林保朗 ,   本井治

ページ範囲:P.1182 - P.1186

【はじめに―在宅医療今昔―】
 明治以降第2次世界大戦終戦後まで,多くの医療行為は患者の自宅で行われていた.医師の往診は一般的な形態であり,出生から死亡まで居宅は医療を提供する場であった.ところが戦後,病院や診療所の整備が進み,交通網の発達もあいまって医療機関における外来診療や入院が増大し,居宅における診療は急速に減少してきた.その結果,高度医療の提供の場であるべき大病院でさえ,3時間待ち3分診療の謗りを受ける羽目になった.
 しかし,成人病(生活習慣病)を中心とする疾病構造が定着すると,在宅で日常生活を送りながら医療サービスを受けることが求められ,医療技術の進歩がこのことを可能にしてきている.また,高齢者の医療や介護も最近クローズアップされている.1997年の兵庫県の県民意識調査では,県民の約6割が在宅での介護を希望している.

講座

認定医トレーニング講座―画像篇・25

著者: 金古琢哉 ,   高岸憲二

ページ範囲:P.1187 - P.1189

症例:49歳,男性(図1)
 6カ月前に右肩を強打した後より,右肩関節痛が出現し,挙上困難となる.夜間痛があり,右肩の脱力感を自覚する.

整形外科英語ア・ラ・カルト・70

整形外科分野で使われる用語・その33

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.1192 - P.1193

●O'Donoghue's Triad(オゥドナヒューズ・トラィアッド)
 これは外科医や整形外科医には“unhappy triad”や“terrible triad”として知られているが,“O'Donoghue's Triad”が正式なものである.“triad”は英語で三徴候を意味する.日本でいう“trias”はギリシャ語とラテン語に由来している.
 ラテン語の“trias”の属格は“triadis”であり,ギリシャ語のそれは“triados”である.これは“三つ組”を意味し,英語ではこの属格から派生した言葉“triad”を使う.さて“unhappy triad”とは,米国ではアメフトにおいて横からタックルしたときによく起こる外傷のことある.膝の外側からの力(valgus stress)と膝の内旋(external rotation)の力で起こり,このとき三つの障害が起こる.すなわち,内側側副靱帯(medial collateral ligament)と前十字靱帯(anterior cruciate ligament)の両靱帯の破裂,そして内側半月板の損傷の“三つ組”である.

ついである記・28

Malmöへの墓参の旅

著者: 山室隆夫

ページ範囲:P.1196 - P.1197

 コペンハーゲンを訪れたのは1993年以来5年振りであった.この町にはチボリー公園のような華やいだ遊園地や多くのポルノ・ショップもあるが,町全体を北欧特有の清らかな翳りが覆っているようにいつも私には感じられる.多くの若者達が自転車を駆って勢いよく走り過ぎていく姿,港の両岸にひしめくようにして繋留されている色とりどりのヨットや船,何度も首を落とされながらも波打ち際にひっそりと佇み続けている人魚の像など,1961年以来私の知る限りではコペンハーゲンの下町の雰囲気は何十年も殆んど変わっていない.この町で1998年6月にSICOTとEFORT(ヨーロッパ整形外科学会)の合同の教育研修会が開催され,私はその講師として招かれてやって来たのだが,私と家内にとって大切なもう一つの旅の目的は,コペンハーゲンの対岸のマルメー近郊にあると思われるフォン・ローゼン先生夫妻のお墓に詣でることであった.

臨床経験

足関節外果骨折と外側靱帯損傷を合併した1例

著者: 川村大介 ,   石田博英

ページ範囲:P.1199 - P.1202

 足関節外果骨折と足関節外側靱帯損傷を合併した極めて稀な1例を経験したので報告する.症例は14歳の女性で,バレーボールで着地の際,右足関節内反を強制され受傷した.単純X線では,明らかな骨折とは診断できなかったが,ストレスX線を撮影したところ,右腓骨遠位部外側の開大,および距骨傾斜角の増大・足関節の前方動揺性を認めた.以上より足関節外果骨折と外側靱帯損傷を合併したものと診断し,外果骨折に対してはtension band wiring法による骨接合術,靱帯損傷に対しては縫合術を行った.術後10カ月を経過した現在,外果は骨癒合を認め,足関節の不安定性は見られていない.外果骨折と外側靱帯損傷を同時に合併した報告はこれまでほとんどなく,本症例においてはストレスX線でこれらの損傷が明らかとなった.同様の受傷機転を認めた患者には,骨折と靱帯の合併損傷を念頭に置いて,ストレスX線が重要であると考えられた.

下肢ガス壊疽の2例

著者: 石河紀之 ,   菅野裕雅 ,   大沼信一 ,   湯浅昭一

ページ範囲:P.1203 - P.1206

 抄録:外傷や重症疾患に伴わずに発生した下肢ガス壊疽の2例を経験した.1例は22歳の男性で,膝窩部から下腿にかけて発生した.本例は明らかな誘因がなく,また初期に典型的な所見を認めなかったため,局所所見が現れるまで診断に苦慮した.1例は93歳の女性で,化膿性膝関節炎から波及して,大腿部に発生した.2例とも,初期の徹底した切開排膿が効果的で,その後の外科的療法を必要とせず,患肢を温存できた.その際,CTと造影CTが病巣の局在を詳細に示し,術前情報として有用であった.

繰り返す右前腕筋肉内出血により発見された類上皮肉腫の1例

著者: 岡村篤 ,   山崎隆 ,   浦和真佐夫 ,   平田仁 ,   内田淳正

ページ範囲:P.1207 - P.1210

 抄録:症例は22歳男性である.反復する右前腕筋肉内出血にてコンパートメント症候群を呈し,筋膜切開術が計4回施行され,5回目の手術にて類上皮肉腫との診断に至った.診断までの4回の筋膜切開,血腫除去術では術中腫瘤は認めなかった.腋窩部に3mm大の腫瘤を認め,生検術を施行したところ,同様に類上皮肉腫であったため,右肩関節離断術を施行した.繰り返す血腫を初発症状とする類上皮肉腫の1例を報告する.

前方除圧固定術が奏効した頚椎OPLLの1症例

著者: 藤林俊介 ,   四方實彦 ,   吉富啓之 ,   田中千晶

ページ範囲:P.1211 - P.1215

 抄録:前方除圧固定術により,劇的な症状の改善をみた頚椎OPLLの1例を経験した.症例は60歳男性,主訴は歩行障害.20年前に他院にてC3~C6の椎弓切除術を受けた.3年前より再び歩行障害が出現し,初診時は歩行不能であり,JOAスコアは4/17点であった.C2からTh1の連続型OPLLで,脊柱管占拠率は60~80%であった.ClからTh2までの残存椎弓を切除したが,歩行障害は改善しなかった.そこで,C3からTh2の6椎間の前方除圧を施行し腓骨を用いて固定術を行った.術後JOAスコアは14点に改善,独歩が可能となった.椎弓切除術後に症状の再発を来したOPLLでは,前方よりの除圧固定術が必須で,多椎間前方固定時の移植骨には腓骨が有効であった.

掌蹠囊胞症に伴って発生した大腿骨Garre硬化性骨髄炎の1例

著者: 松本卓二 ,   大浦晴夫 ,   玉置哲也 ,   桜井啓一 ,   木下裕文

ページ範囲:P.1217 - P.1220

 大腿骨病変を伴った掌蹠囊胞症性骨髄炎の1例を経験したので報告する.症例は56歳の女性で,左大腿骨に骨硬化性の病変および両手両足底には囊胞様皮疹を認めた.骨生検術では慢性骨髄炎の診断を得るも,細菌培養は陰性であった.病巣扁桃を基盤とした掌蹠囊胞症および大腿骨Garré硬化性骨髄炎が疑われ,扁桃摘出術を施行され良好な治療効果が得られた.

右母指IP関節近傍に発生し,関節亜脱臼を呈した腱鞘線維腫の1例

著者: 阿部圭宏 ,   山口清直 ,   高瀬完 ,   林豊 ,   守屋秀繁

ページ範囲:P.1221 - P.1224

 抄録:右母指IP関節近傍に発生し,IP関節の亜脱臼をきたした腱鞘線維腫の1例を報告する.症例は73歳,女性.右母指IP関節部の腫瘤と変形を主訴とした.CT,MRIでは比較的境界明瞭で内部の均一な腫瘍として描出された.手術にて摘出を行った.病理検査では,豊富な膠原線維を伴った紡錘形の線維芽細胞の増殖が見られたため,右母指屈筋腱腱鞘より発生した腱鞘線維腫と診断した.手指に発生する腫瘍のなかで,線維腫は比較的希とされている.病理組織学的には,腱巨細胞腫,腹壁外デスモイドと類似しているため,これらと比較,検討した結果,腱巨細胞腫と類縁疾患,もしくは同一疾患である可能性が高いと考えられた.また,発生機序として反復刺激の関与が推測された.

髄膜炎を併発した結核性脊椎炎の1例

著者: 工藤正育 ,   片野博 ,   武田裕介 ,   佐々木知行 ,   原田征行 ,   植山和正 ,   田中洋康

ページ範囲:P.1225 - P.1228

 抄録:結核性脊椎炎に結核性髄膜炎を併発し死亡した.例を経験した1症例は69歳の女性,1997(平成9)年1月より腰痛出現し,同年3月より再び腰痛増強,他医を受診しMRIにて腰椎化膿性脊椎炎と診断され,入院安静および抗生剤治療を続けるも軽快なく,当科紹介となった.同年6月2日,生検目的に経皮的髄核摘出術に準じ椎間板穿刺,ドレナージを施行した.鏡検にて抗酸菌は陰性,一般培養も陰性であった.6月7日より不穏徴候を認め,髄液検査を行った.細胞数増加,糖低下,蛋白増加が見られた.徐々に意識状態の低下が見られたため,6月13日,弘前大学第3内科転院し,髄液PCR法にて結核性髄膜炎と診断,抗結核療法を行うも軽快せず,6月18日死亡した.剖検では結核性脊椎炎および結核性髄膜炎の所見であった.

Component disassemblyを生じたBateman UPF Ⅱ人工骨頭の1例

著者: 岩瀬敏樹 ,   杉浦昌 ,   土屋廣起 ,   花村美穂 ,   鈴木健司 ,   伊藤圭吾

ページ範囲:P.1229 - P.1232

 抄録:Component disassemblyを生じたBateman Universal Proximal Femur Ⅱ(UPF Ⅱ)人工骨頭の1例を報告する.症例は70歳,男性.沈静化した左化膿性股関節炎による変形性股関節症に対してUPF Ⅱによる人工骨頭置換術を行った.人工骨頭置換術後11年で人工骨頭のアウターヘッドの脱転をきたして来院した.人工股関節再置換術時の摘出標本ではアウターヘッドポリエチレンの摺動面荷重部に著しいwearを認め,ポリエチレンのスリット部の破損を生じていた.人工骨頭置換術後2年時のX線所見ではすでに臼蓋辺縁部にosteolysisの進行を認めており,ポリエチレンwearが早期より多量に生じていた可能性が示唆された.本機種使用例でosteolysisの進行を見た場合には早期の再置換術を検討するべきである.

脳性麻痺を合併した成人クレチン症の1例

著者: 西山正紀 ,   二井英二 ,   山崎征治

ページ範囲:P.1233 - P.1235

 抄録:脳性麻痺を合併した成人クレチン症の1例を経験したので報告する.32歳時身体所見は,身長128cm,arm span 123cmで四肢短縮型小人症を示していた.重度の知能障害,眼間開離,鼻根扁平,鞍鼻を認めた.皮膚は蒼白で乾燥し,やや冷たく,手指は太く,屈曲拘縮を示した.下肢には痙性が著明であった.末梢血では軽度の貧血,甲状腺機能検査ではT3,T4の減少,TSHの増加をみた.X線所見では,腸骨稜骨端核の癒合不全,股関節亜脱臼,外反扁平股を認め,成人クレチン症と脳性麻痺の混在する所見を示した.甲状腺ホルモン投与により活動性の改善と多関節症状の改善が得られ,治療開始後2年のX線所見では,腸骨稜骨端核は癒合していた.成人クレチン症においても,内科的甲状腺ホルモン管理は重要である.

遠位橈尺関節掌側脱臼の2例

著者: 牧田聡夫 ,   中村俊康 ,   仲尾保志 ,   高山真一郎 ,   堀内行雄

ページ範囲:P.1237 - P.1240

 抄録:比較的稀な,骨傷を伴わない外傷性遠位橈尺関節掌側脱臼の2例を経験した.受傷機転はどちらも回外強制であった.症例1では受傷後4週での徒手整復が可能で保存的に加療できた.一方,症例2は受傷後10週で来院したため,徒手整復が不可能で観血的整復術が施行された.回内外可動域は回内は70°,回外は90°と経過良好であった.
 外傷性遠位橈尺関節脱臼新鮮例は徒手整復可能であるが,陳旧例では観血的整復術を要することが多い.良好な結果を得るためには,早期診断,治療が重要である.

隣接する𦙾骨に骨膜性骨形成を生じた小さな血管腫の1例

著者: 五嶋孝博 ,   十字琢夫 ,   山田紀彦 ,   河合従之 ,   高橋総一郎 ,   飯島卓夫

ページ範囲:P.1243 - P.1245

 隣接した𦙾骨に骨膜性骨形成を生じた小さな有痛性血管腫を1例経験した.症例は33歳,男性.1年前より持続する右腓腹部痛を主訴に当院を受診した.右腓腹部近位内側に強い圧痛があり,足関節背屈により疼痛が誘発された.単純X線では圧痛部に隣接した𦙾骨に骨皮質の肥厚がみられた.CTでは𦙾骨後方に隣接して筋肉と等密度の径2cmの腫瘤があり,MRIのT1強調画像では筋肉と等信号,STIR画像では高信号を呈していた.血管腫を疑い腫瘍を切除した.腫瘍は拡張した血管と固い瘢痕様の線維性組織から構成されており,この線維性組織は𦙾骨骨皮質の肥厚部に連続していた.病理診断は海綿状血管腫であった.術後,疼痛は完全に消失した.本例のような小さな血管腫により骨皮質の肥厚を生じることは稀である.本例は腫瘍自体は小さいものの局所の疼痛が著しく,血管腫の強い炎症が骨に波及し骨膜性骨形成を生じたものと推定される.

𦙾骨顆間隆起偽関節に対して観血的整復内固定術を施行した1例

著者: 田賀谷健一 ,   猫塚義夫 ,   伊志嶺博 ,   堺慎 ,   芳賀千明 ,   柴田定 ,   浅岡隆浩 ,   相馬裕 ,   岩森秀樹 ,   神川仁

ページ範囲:P.1247 - P.1250

 抄録:前方動揺性を伴う𦙾骨顆間隆起偽関節に観血的整復内固定術を施行した1例を経験した.症例は21歳男性.11歳時に受傷し,保存的治療を他医にて受けた後,左膝関節痛が伸展時に軽度残存した.20歳時から仕事で重量物を扱うようになり,左膝関節痛の増悪と不安定感が出現した.左膝関節は最大伸展時に𦙾骨大腿関節に軋音を触知し,前方動揺性を認めた.単純X線でMeyers and McKeever分類type Ⅲである𦙾骨顆間隆起骨折を認めた.関節鏡視上は前十字靱帯に変性を認めず骨片に付着していた.鋼線締結法にて観血的整復内固定術を施行した.術後8カ月,症状は消失し骨癒合を得て前方不安定性も認めない.𦙾骨顆間隆起偽関節は変性の少ない前十字靱帯であるなら観血的整復内固定術の適応があると考える.

両側𦙾骨内果疲労骨折の1例

著者: 櫻吉啓介 ,   小林尚史

ページ範囲:P.1251 - P.1254

 抄録:両側𦙾骨内果疲労骨折の1例を経験したので報告した.症例は13歳の男子中学生.バスケットの練習中に右足関節内側に疼痛が出現し当科受診.X線像では,𦙾骨下関節面と内果関節面の境界部からほぼ垂直に内上方に向かう骨折線を認め,𦙾骨内果疲労骨折と診断した.保存的に経過観察を行っていたが,疼痛の再発と骨折線が明瞭となったため,初診から7カ月後にスクリューにて固定した.初回手術から9カ月後,左足関節内側に疼痛が出現し来院.X線像では右側術前と同様の骨折線を認め,手術を行った.
 本症例の特徴として,凹足の存在,回内度の減少,内果傾斜角の増大が認められ,このことが疲労骨答を引き起こした要因になったと推察した.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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