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ついである記・22
Saudi Arabia
著者: 山室隆夫12
所属機関: 1京都大学 2国際整形災害外科学会
ページ範囲:P.344 - P.345
文献購入ページに移動サウジアラビアはアラブ諸国最大の国で,国土の広さは日本の約6倍もあり,アラビア半島のほぼ8割を占めている.しかし,その人口は日本の約10分の1にしかすぎないから,人口密度の極めて稀薄な国であるといえよう.この国ではガソリンよりも水の方が値段が高いといわれる程に土地が乾燥しており,国土の約3分の1が砂漠に覆われた不毛の地であるので,昔から人の住みにくい土地であったと思われる.
西歴570年にムハンマド(訛つてマホメットとも呼ばれる)がこの国の紅海岸に近いメッカに生まれて,40歳で神の啓示を受け,622年にメッカから北方のメディナと呼ばれる地へ移ってイスラム教を創始したことにより,この辺境の地が後にイスラム教徒の聖地となったのである.現在,世界のイスラム教信徒の数は10億人以上ともいわれており,その総ての信徒が一生涯で少なくとも一度はメッカとメディナへの巡礼の旅を終えてから死にたいと希っているわけだから,この国の求心力は宗教的な意味では勿論のこと,そこから派生するいろいろな影響からみても国際的に無視できないものがある.また,1938年にこの国で油田が発見され,最近では世界有数の産油国になっているから,経済的な世界戦略の上からもかなり注目すべき国であろう.しかし,私は1995年3月にSICOTの中東地域国際シンポジウムに出席するために初めてこの国を訪れるまでは,その歴史や風土についてほとんど関心を持っていなかった.
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