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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科33巻7号

1998年07月発行

雑誌目次

視座

「教育に迷う新米教授が患者さんから教育されたこと」

著者: 佐藤啓二

ページ範囲:P.831 - P.831

 有名大学の整形外科学教室の入局者は極めて多数で,入局試験や入局制限等の言葉も聞こえてくる.しかし,私立医大の整形外科の入局者はそれ程多くないので,入局してくれた若い医師たちは金の卵に相当する.折角入局してくれた志ある若い整形外科医たちに対して,できるだけ充実した卒後教育を行いたい,立派な整形外科医を育てたい,それのみが私たち大学の教官に与えられた使命である,とまで考えて生活をしながら赴任後約10ヵ月が経過した.4月には2度目の入局者を迎えようとしている.しかし,現実には,様々なハンディキャップがあり,充実した卒後教育システムを完備するにはほど遠いとの現状認識を持つ一方で,全力を挙げて卒後教育システムのシステムアップを計らないと大学の存亡にも関わるとの危機意識も持つようになった.
 そこで実力ある整形外科医と評価される医師を養成するために,どのような卒後教育システムを整えることが必要なのか?という問題に対して,回答を得るべく朝夕と考えをめぐらし続けてきた.それでも確乎たる回答が得られず,あれこれ思い悩む毎日が続いていた.

論述

膝前十字靱帯再建術後の筋力と可動域の回復―1皮切関節鏡視下 vs. 2皮切関節鏡補助下手術

著者: 井上千春 ,   大越康充 ,   橋本友幸 ,   山根繁 ,   石田亮介

ページ範囲:P.833 - P.837

 抄録:本研究の目的は,1皮切関節鏡視下再建術が術後筋力と可動域の獲得に与える効果を明らかにすることである.30歳未満で,自家ハムストリング腱を用いて2皮切関節鏡補助下再建術を行った症例(2皮切群)および1皮切関節鏡視下再建術を行った症例(1皮切群)を手術施行日順にそれぞれ30例ずつ選択し,調査対象とした.膝伸展におけるisometric contraction(以下IMC)/BWは,術後1年時までのいずれの時期においても1皮切群が高値であった.isokinetic contraction(以下IKC)(180deg./sec.)のpeak torque値(対健側比)は両群間に有意差は認めなかったが,正常トルクカーブの出現率は2皮切群が有意に少なかった(p<0.01).膝完全伸展獲得日数,膝120°獲得日数は,1皮切群で有意に短期間であった.1皮切群ではROM,筋力ともに早期に回復が得られた.これは手術侵襲の軽減による効果と考えられた.

仙腸関節痛の診断―仙腸関節造影を用いた検討

著者: 須田義朗 ,   青木義広 ,   中島秀人

ページ範囲:P.839 - P.842

 抄録:仙腸関節痛の特徴を知る目的で仙腸関節造影を用いた検討を行った.対象は30例34関節で,透視下に造影剤を注入して再現痛の有無を確認後,局麻剤とステロイドを注入した.再現痛があり,ブロック後に80%以上疼痛が軽減した症例を仙腸関節痛と診断した.
 再現痛とブロック効果から15例16関節が仙腸関節痛と診断された.造影後CT像では,仙腸関節痛と診断された16関節中7関節(43%)に造影剤の腹側へのleakを認め,靱帯・関節包の破綻が仙腸関節痛の大きな要因と考えられた.また,各種疼痛誘発テストの仙腸関節痛の診断における有用性を検討したが,仙腸関節造影・ブロックの結果とは相関しなかった.

頚椎多椎間前方固定術後における隣接椎間不安定性―動的因子についてのX線学的検討

著者: 加東定 ,   鷲見正敏 ,   片岡治 ,   澤村悟 ,   池田正則 ,   向井宏

ページ範囲:P.843 - P.848

 抄録:頚椎多椎間前方固定術を施行した69例のX線調査から,隣接椎間における動的因子(dynamic factor:以下,DF)が12mm以下の陽性例について検討した.DF陽性例は術前17%にしか認められなかったが,調査時には46%の症例に増加していた.DFが調査時に陽性となったものや,術前に陽性であっても調査時に計測値がさらに減少した症例を増強例とすると,DFは35%の症例で増強していた.DFの増強は頭側の隣接椎間にも尾側にも同程度の頻度で認められた.DFの増強因子としては性別・疾患・椎間部位・固定椎角度・術前後方すべりの有無が認められた.DF増強例は女性に,また頚椎症性脊髄症に多く認められた.固定椎の頭側椎間では,それがC3/4椎間である場合や術前に椎体後方すべりがみられた椎間にDF増強例が増加していた.固定椎の尾側椎間では,それがC5/6である場合や固定椎角度が後弯位の場合にDF増強例が多く認められた.

三角線維軟骨複合体の手根骨付着部損傷について

著者: 西川真史 ,   相澤治孝 ,   新井弘一 ,   竹内和成 ,   小渡健司 ,   楠美智巳 ,   佐々木和広

ページ範囲:P.849 - P.853

 手関節鏡による診断と治療においてTFCC手根骨付着部損傷と思われる例を経験したので解剖学的検討を加えて報告する.
 臨床的にTFCC損傷を疑って手関節造影やMRIを施行するがTFCCに異常を確認できず,2ヵ月間の保存療法を施行し,症状の持続した21例22関節に手関節鏡を施行した.TFCに異常は認めず,TFCC尺側周囲の滑膜の増生とTFCCを基部として手根骨尺側関節面に弁状の軟部組織の乗り上がりを認めた.これをシェーバーとパンチで切除し全例とも早期に症状消失した.切除した組織は線維軟骨であった.
 今回報告した損傷はTFCCから手根骨関節面に向かう弁状組織で,切除後に三角骨関節面が尺側で欠損していたこと,切除組織が線維軟骨であったことから本来三角骨尺側に関節軟骨と連続して付着していたTFCCの一部が三角骨から剥離して関節問に乗り上がり,手関節尺側に障害を生じたと考えている.

手術手技 私のくふう

胸郭出口症候群に対する末梢神経刺激脊髄誘発電位の有用性と腋窩進入鏡視下第1肋骨切除術の経験

著者: 岩﨑博 ,   玉置哲也 ,   川上守 ,   安藤宗治

ページ範囲:P.855 - P.860

 抄録:胸郭出口症候群の病態診断には各種誘発テスト,血管造影や末梢神経伝導速度検査などが用いられているが,これらの検査が胸郭出口症候群診断に寄与するかどうかについては疑問の点も残されているといわねばならない.また,手術法としては第1肋骨切除術が広く用いられているが,前方進入・腋窩進入それぞれに問題点がある.今回われわれは,末梢神経刺激脊髄誘発電位を用いて機能診断を行った28歳女性の胸郭出口症候群症例に対して,従来の手術方法の欠点を改良すべく腋窩進入鏡視下第1肋骨切除術を施行した.
 同手術は長時間を要し,気胸および肋間上腕皮神経障害を合併したが,小さな皮切で良好な視野が得られ術後疼痛も少なかった.今後,本術式を完全に行うためには手技の習熟や肋骨切除用手術器具の開発が必要であるものの,本法は評価すべき手術法の一つとするべきであると判断した.

講座

認定医トレーニング講座―画像篇・22

著者: 宮城登

ページ範囲:P.861 - P.864

症例:15歳,男(図1)
 主訴:右膝部痛
 3ヵ月前からサッカーの練習中に右膝の疼痛が出現するようになった.膝を打撲したことは数度あるが,病院へ行って診断を受けたことはない.安静時には疼痛は消失する.

整形外科英語ア・ラ・カルト・67

整形外科分野で使われる用語・その30

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.866 - P.867

●Langer's line(ランガーズ・ライン)
 この言葉は日本語でランゲル裂線や裂隙線と訳されている.皮膚が裂けるとき,抵抗の少ない方向に裂けていくが,この現象を発見したオーストリアの解剖学者ランゲル(Carl R. von E. von Langer 1819-1887)に因んで,ランゲル線(Langer's line)と呼ぶ.
 裂隙に墨などを注入して裂線の方向を見い出す方法がある.これは真皮の膠原繊維が体の部位によって特定の方向に偏向して走行するためである.この線は成人では一定であるが,成長の過程において成長がときには不等であることがあり,一定でない場合もある.

ついである記・25

Istanbul

著者: 山室隆夫

ページ範囲:P.868 - P.869

●アジアとヨーロッパの懸け橋
 日本の先天股脱予防普及会の奨学金を受けて数年前に日本にやってきたトルコの若い整形外科医ゲクサン君(Süleyman Bora Göksan)が面白いことを言っていた.「私は自国では毎日アジア大陸とヨーロッパ大陸の間を通勤している」と.これは誇大な表現に聞こえるが,イスタンブールに住んでいる人々にとってはごく当り前のことであって,アジアとヨーロッパの境界部に位置するイスタンブールという町の地理的な特長をよく物語っている話だ.衆知のように,アジア大陸とヨーロッパ大陸は黒海,ボスフォラス海峽,マルマラ海,そしてダーダネルス海峽で境されている.しかし,ボスフォラス海峽の幅は狭いところでは700m程しかないので,アジア大陸とヨーロッパ大陸はつい目と鼻の先に対峙して見える.東ローマ帝国の都であったコンスタンチノープルはそのヨーロッパ側の東端に発達した町であったが,現在のイスタンブールはコンスタンチノープルの旧市街とアジア側の西端に新しく開けた新市街をも含めて,ボスフォラス海峽を跨ぐようにして発達した人口600万人の大都市である.そして,イスタンブールには両大陸を繋ぐために2つの長い橋が架かっている.イスタンブールの人たちは,そのうちの第2ボスフォラス大橋は日本企業の援助によって架けられたのだと言って,このことを日本人に対して好感を持つ理由の1つとしている.

座談会

日本の人工関節の現状を検証する

著者: 上野良三 ,   黒木良克 ,   立石哲也 ,   寺山和雄 ,   山室隆夫

ページ範囲:P.872 - P.890

 山室(司会) 人工関節の開発は整形外科領域における20世紀後半の最も顕著な出来事であり,多くの患者に福音をもたらしました.しかし,その使用経験が30年に及んで参りますと,人工関節に特有の極めて難しい合併症もかなり頻繁に見られるようになり,人工関節手術に対する反省や批判の声も聞かれるようになりました.そこで,この座談会では,整形外科医や人工関節のディーラーに反省をうながすという意味で,1)人工関節手術の適応,2)人工関節の機種の選択,3)人工関節の価格設定は適正か,等々に焦点を当てて討論していただきたい.今日は,股関節外科を長年にわたってやってこられた先生方が多いので,人工関節のうちでも主として人工股関節の問題について,忌憚のないご意見,討論をお願いしたいと思います.

臨床経験

大腿骨頚部内側骨折術後のMRI評価

著者: 川崎雅史 ,   田島宝 ,   杉山晴敏 ,   森山明夫

ページ範囲:P.893 - P.898

 抄録:大腿骨頚部内側骨折の術後MRIを2カ月,6カ月,12カ月の3回のうち2回以上経時的に撮像し,かつ1年以上観察しえた24例をMRIの異常像出現時期,Type分類そして予測される予後について検討した.MRIで異常を確認した症例は24例中11例で46%を占め,Garden分類のstage III,IVに高い確率で認めた.MRIの異常像は大部分では術後2カ月で出現したが,6カ月にならないと確認できないものもあった.Suganoらの分類でType 1:1例,Type 2:6例,Type 3:3例でType 2が多くを占めた(今回分類できなかったもの1例をType 4とした).X線像上骨頭陥没に陥った症例は7例でいずれもType 2,3に属し術後24カ月以内には出現していた.以上よりMRIの異常は術後6カ月以内に出現し,骨頭荷重部広範囲に及ぶ帯状低信号域を示すType 2,3に多く,これらは24カ月以内に骨頭陥没へ移行する可能性が高いと考える.

中高年のスキーによる大腿骨骨折

著者: 成重知花 ,   藤原稔泰 ,   近藤亜里

ページ範囲:P.899 - P.903

 最近増加してきている中高年のスキーによる大腿骨骨折の症例を調査し,その特徴と予防法について検討した.対象は中高年(40歳以上)の大腿骨骨折19例である.中高年の大腿骨骨折の特徴は,40歳未満の26症例と比較すると,①他のスキーヤーと衝突して受傷した例が相対的に多い,②初級者が多い,③女性が多い,④右大腿骨が多い,⑤大腿骨近位部の骨折が多い,⑥骨幹部骨折が少ない,⑦中斜面での受傷が多い,⑧入院期間は長期となることである.受傷時にスキー板がはずれた者は27.3%と少なかった.手術治療が14例,保存療法が4例,近くの医療機関に搬送したのが1例であった.受傷前の日常生活レベルに復帰するのに平均4ヵ月を要し,1年以上経過しても完全に回復したのは34.4%に過ぎなかった.年齢と体力に見合ったゲレンデで滑り,適度に休みを取り,疲労する前にスキーを中止することが重要で,ビンディングもやや弱めに設定するのが安全と考える.

脊柱後側弯症における術後junctional kyphosisの治療経験

著者: 夏目直樹 ,   川上紀明 ,   三浦恭志 ,   松原祐二

ページ範囲:P.905 - P.908

 抄録:junctional kyphosisとは脊柱の矢状面弯曲異常であり,固定上下位端における局所後弯である.
 症例は18歳の女性.6歳時,側弯を指摘され装具療法にて経過観察するも側弯は進行し,11歳時に側弯矯正固定術を受けた.術8年後背部上位胸椎部の疼痛が出現し,X線上固定上位端にて局所後弯と,骨シンチにて同部位にhot spotを認めた.固定上位端における局所後弯が疼痛の原因であると考え,脊柱再建術(抜釘と内固定を使用した後方骨切り矯正固定術)を行い良好な結果を得た.

広範な硬膜外膿瘍を伴い両下肢不全麻痺を生じた腰椎化膿性脊椎炎の1例

著者: 村田雅明 ,   新宮彦助 ,   木村功 ,   那須吉郎 ,   塩谷彰秀 ,   米井徹 ,   橋口浩一 ,   馬場賢治

ページ範囲:P.909 - P.913

 抄録:症例は65歳,女性.誘因なく腰部激痛が出現し,体動困難となり約1週間後に当院を受診した.初診時神経学的には異常はなく,単純X線像でL2/3の椎間腔の狭小化を認めた.MRIではL1からL4レベルにおよぶ硬膜外膿瘍を伴うL2/3,3/4の化膿性脊椎炎の像を呈した.入院後抗生剤投与と安静にかかわらず腰痛の改善なく,両下肢の筋力低下が出現した.このため入院5日後にL2/3,3/4の前方病巣掻爬固定術を施行した.術後は腰痛消失し,術後3ヵ月で下肢筋力も正常化した.術後3ヵ月のMRIで硬膜外膿瘍は消失していた.本症例のように膿瘍が広範に及ぶ場合は病巣を完全に掻爬することは困難である.しかし,炎症の発生源であるL2/3,L3/4椎間板を掻爬し,多くの炎症組織を取り除いて病巣を縮小したことにより,術後の抗生剤の使用で炎症を鎮静化しえたものと考えている.

腰部脊柱管内に発生した滑膜嚢腫の1例

著者: 日浅匡彦 ,   辺見達彦 ,   兼松義二 ,   坂本林太郎 ,   浜田佳孝 ,   四宮禎雄

ページ範囲:P.915 - P.918

 抄録:腰部脊柱管内に発生し,馬尾性間欠跛行を呈した滑膜嚢腫の1例を報告した.患者は,66歳男性.腰痛,両下肢痛,および間欠性跛行を主訴に来院した.入院時所見は,両下肢,肛門周囲に知覚障害を認め,排尿障害もあった.JOA scoreは8点であった.MRIでは,L4/5高位の硬膜外背側にT1強調画像で低信号,T2強調画像では高信号の腫瘍性病変を認めた.とくに,T2強調画像では腫瘍性病変の頭側および腹側が線状の低信号を呈し,カプセルを疑わせる所見であった.造影MRIでは,腫瘍性病変の辺縁が厚く造影された.手術所見は,両側L4/5間に2つの腫瘤があり,椎間関節との連絡を確認した.病理所見では多数の嚢胞を認め,嚢胞壁には多数のlining cellがみられた.以上より,両側性のL4/5椎間関節由来の滑膜嚢腫と診断した.術後11ヵ月の現在,JOA scoreは25点で改善率81%と経過は良好である.

転移性脊椎腫瘍麻痺例に対する手術療法の検討

著者: 加藤浩 ,   吉野恭正 ,   飯田惣授 ,   平澤洋一郎 ,   大坪隆

ページ範囲:P.919 - P.921

 抄録:1989年以降当科で加療した転移性脊椎腫瘍で,術前下肢麻痺のため歩行不能であった12例の術後成績を検討した.麻痺高位は胸椎8例,腰椎4例,手術時年齢は平均61歳であった.麻痺症状を初発としたものは7例で,最終的には全例で原発巣が判明した.全例後方から可及的に徐圧し,内固定材を併用し固定した.平均手術時間は3.5時間,平均出血量は1,200mlであった.全例で疼痛や下肢痛は改善したが,歩行可能となったのは5例,6ヵ月以上歩行可能であったのは4例で,その原発巣は甲状腺,前立腺,乳腺,悪性リンパ腫各1例であった.下肢麻痺を来した症例で原発巣が不明な場合には,まず生検をかねて広範囲後方除圧固定が良いが,すでに原発巣が判明している場合には,症例によっては手術的治療の意義は少ない.

胸椎椎弓部より発生した孤立性骨髄腫の1例

著者: 中島新 ,   高井宏夫 ,   加治木秀隆 ,   南昌平 ,   高橋和久 ,   長尾孝一

ページ範囲:P.923 - P.927

 抄録:胸椎椎弓部より発生した稀な孤立性骨髄腫の1例を経験し,手術する機会を得たので報告する.症例は59歳,男性.両下肢のしびれ,冷感が主訴であったが,次第に両下肢筋力低下をきたしたため入院した.神経学的には前𦙾骨筋以下の弛緩性麻痺を呈していた.単純X線像では明らかな異常はなかったが,MRIにて第4-5胸椎の後方要素を占拠し,脊髄を後方から圧排する腫瘍塊を認めた.骨シンチでは第4-5胸椎以外に集積はなく,第5胸椎椎弓より骨生検を行ったところ,病理診断は骨髄腫であった.術前の血液,免疫電気泳動検査では明らかな異常はなかった.手術は椎弓切除と可及的広範囲な腫瘍掻爬を行った.術後は化学療法を施行したが,術後6ヵ月の時点でMRIにて第5胸椎椎体部への腫瘍の進展が明らかとなり,放射線治療を行った.本症の長期経過の中には多発性骨髄腫へ発展していく場合が多く,今後も注意深い経過観察が必要である.

進行性全身性硬化症に合併した多発性骨壊死の1例

著者: 乾義弘 ,   土井田稔 ,   佐浦隆一 ,   黒坂昌弘 ,   水野耕作 ,   中山志郎

ページ範囲:P.929 - P.933

 抄録:症例は59歳,女性.1980年頃から進行性全身性硬化症(以下PSS)の診断のもとプレドニン10mg/日を投与されていた.1993年より特に誘因なく右膝関節痛出現し症状が増悪してきたため,1997年に精査加療目的で当院紹介となった.単純X線写真とMR像より,右𦙾骨外顆の陥没と大腿骨顆部の骨壊死を認め,人工膝関節置換術を行った.同時に左距骨の骨壊死を認めた.本症例ではPSSによる関節局所の血管病変に加えて,ステロイドの全身的影響から多発性骨壊死をきたしたと推測される.

腕立て伏せにより上腕三頭筋に生じたrhabdomyolysisの2例

著者: 永沼亨 ,   小島忠士 ,   日下部明 ,   西平竹志 ,   佐藤哲朗 ,   国分正一

ページ範囲:P.935 - P.937

 抄録:腕立て伏せにより上腕三頭筋にexertional rhabdomyolysisが生じた2例を報告する.症例は16歳男性と25歳男性で,いずれも腕立て伏せの後に,両上腕三頭筋の疼痛が出現した.腫脹,硬結,筋力低下,知覚障害はなかった.MR像で,両側上腕三頭筋の内側頭と外側頭の全域にT1強調像で等信号域,T2強調像で高信号域の変化がみられ,筋生検でrhabdomyolysisと診断された.しかし,長頭にはMR像の異常がなかった.腕立て伏せでは,上腕三頭筋の内側,外側頭にconcentricとeccentricの負荷が加わる.長頭は肩の肢位により筋起始と停止間の距離が変化し,内・外側頭に比して運動負荷が小さい.この運動負荷の違いがcompartmentと無関係に内側・外側頭にrhabdomyolysisが生じた理由と考えられる.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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