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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科33巻8号

1998年08月発行

雑誌目次

巻頭言

第13回日本整形外科学会基礎学術集会を開催するにあたって

著者: 岩田久

ページ範囲:P.942 - P.945

 このたび,名古屋市において1998年9月25,26,27日の3日間にわたり,第13回日本整形外科学会基礎学術集会を開催することになり,誠に光栄に存じます.この学会を開催するにあたり,種々お世話になりました日整会会員各位に深く感謝申し上げます.

シンポジウム 骨組織に対する力学的負荷とその制御―日常臨床に生かす視点から

緒言

著者: 中村利孝

ページ範囲:P.946 - P.949

 骨の量と形は力学負荷に応じて変化する.骨の形態は,個々の細胞の機能だけで維持されているのではない.細胞の数や細胞集団が,骨組織を形成したり吸収したりする部位や,一定の時間内で吸収される量と形成される骨量とのバランスなどが重要な要因となる.最近,このような細胞集団の機能を調節するメカニズムには,組織の歪みや微小な破壊が関与している可能性が指摘されつつある.本シンポジウムでは,この分野で著明な6人の先生方に,日頃の研究結果についてご報告をお願いした.研究のスタートとなる現象は,いずれも整形外科の日常診療でよく経験される事実である.しかし,内容によってはやや分かりにくいところもあるかも知れない.そこで本稿では,読者の理解を容易にするために,この分野の最近の進展状況を簡単に概説する.

尾部懸垂ラットモデルによる骨組織の反応

著者: 小玉嘉昭

ページ範囲:P.951 - P.956

 抄録:骨代謝,骨形態,骨強度の維持には力学的負荷が必要であり,免荷による力学的負荷軽減,あるいは宇宙飛行での微小重力環境により骨量は著明な低下を来す.整形外科領域では,骨折治療での免荷や術後の長期固定などでこの骨量減少が見られるほか,骨折治癒過程において物理的刺激が深く関与していることが知られている.
 力学的負荷軽減による骨量減少は,骨形成の低下が主な病態であると考えられている.われわれは尾部懸垂ラットによる力学的負荷軽減モデルを用いた組織学的検討により,皮質骨において外骨膜に含まれる骨芽細胞機能の低下によって外骨膜側の骨形成が障害される結果,皮質骨量と骨強度が低下することを見出した.尾部懸垂ラットの海綿骨での骨量減少を防止させる薬剤はいくつか報告があるが,この皮質骨での骨量減少を防止させる有効な手段は見出されておらず,今後の課題であると考えられる.

骨の屈曲ストレスと骨形成の反応

著者: 萩野浩

ページ範囲:P.957 - P.962

 抄録:運動負荷によって骨量増加が得られたり,麻痺や免荷で骨萎縮が生じることから明らかなように,骨は加わったストレスによって,骨形成をコントロールされている.屈曲ストレスが加わると,骨は発生したひずみに応じて反応する.すなわちひずみがある閾値以上になるとモデリングが活性化されると考えられている.そこで,骨に加わる力学的ストレスと骨形成の活性化との関係を明らかとするために,4点曲げ装置を用いて,ラット脛骨に25-35Nの力を加えた.その結果,ひずみが1,000μstrain以上となると外骨膜性骨形成が増加し,1,500μstrain以上で線維性骨形成が見られた.本稿では,これまでに4点曲げ装置を用いて得られた知見を中心に,骨の屈曲ストレスと骨形成の関係について概説する.

骨の適応的リモデリングに関する実験的研究

著者: 高久田和夫

ページ範囲:P.963 - P.968

 抄録:骨は力学的環境に対する適応機能を有しており,荷重状況に応じて適応的に形状を変化させる.例えば長管骨が骨折し曲がった形状に修復してしまっても,より力学的に好ましい真直な形状に戻る.このとき圧縮側の骨膜面および引張側の骨髄腔面では骨形成,圧縮側の骨髄腔面および引張側の骨膜面では骨吸収となるような骨形成および吸収が同時に生じる必要があるが,どのような機構によりこのような適応的リモデリングが生じるかは明らかでない.ラット脛骨の3点曲げ実験系により,成長期の動物における力学的刺激による骨のリモデリングを調べた結果,骨の形成は年齢,荷重条件,骨の部位に大きく影響されて生じる極めて複雑な現象であることが分かった.適応的なリモデリングの発生を示唆する場合もあるが,説明のつけられない骨形成も観察されている.骨の力学的刺激への応答機構を分子レベルで明らかにすることは極めてチャレンジングな問題である.

マイクロCTを用いた骨梁微細構造の評価および力学的特性との相関

著者: 内山徹 ,   谷澤龍彦 ,   村松日和 ,   遠藤直人 ,   原利昭 ,   高橋栄明

ページ範囲:P.969 - P.974

 抄録:ヒト海綿骨の力学的特性と骨量および微細構造との関連を検討した.ヒト椎体海綿骨部を一辺8mmに機械加工した立方体20個を対象とした.骨量の指標としてDXAおよびpQCTにて骨密度を求めた.micro-CTにより対象の連続断面像を撮影して,3次元微細構造指標として骨形態計測値(骨梁数(Tb. N),骨梁間隔(Tb. Sp)),connectivity density,fractal dimensionを求めた.同時に準静的非破壊的圧縮試験を頭尾側,内外側,前後の3方向において行い,力学的特性として弾性率を求めた.頭尾側方向の弾性率は他の2方向のそれに比べ有意に高かった.3方向の弾性率は骨密度と,3次元的微細構造指標は頭尾側方向を除いた他の2方向の弾性率と有意の相関を示した.3次元的微細構造指標間は有意の高い相関があった.3方向の弾性率の比較および3次元再構築画像より対象とした海綿骨は異方性を持つことが示された.本検討で求めた微細構造指標は構造複雑性の定量化には適していたが,構造異方性の評価には不十分と考えられた.海綿骨の力学的特性は骨量および3次元的微細構造指標に依存するが,微細構造指標として構造異方性を加味した評価がさらに必要と思われた.

骨の微細損傷とその修復―骨疲労の病態生理

著者: 森諭史

ページ範囲:P.975 - P.981

 抄録:生体の骨組織内にはmicrodamageが分布していて加齢により増加する.繰り返し荷重環境に置かれている骨格で骨疲労が起きることは生理的現象で,その修復も生理的骨代謝機構で行われている.microdamageは骨組織内の骨細胞ネットワークで感知され,骨リモデリングによって修復される.骨疲労の進行は非常に緩徐なため近年までその重要性が不明であったが,日常の荷重環境下で長期間にわたり骨強度を維持するにはmicrodamageの発生と修復のバランスを維持されなければならない.microdamageの発生と修復にアンバランスが生じる病態では骨疲労は進行し骨は脆弱化し骨折に至る.

牽引力に対する骨細胞の反応―ラット大腿骨のdistraction osteogenesis

著者: 佐藤宗彦 ,   安井夏生 ,   中瀬尚長 ,   杉本瑞生 ,   木村友厚 ,   越智隆弘

ページ範囲:P.983 - P.988

 抄録:骨延長の基礎メカニズムを解明するため,ラットを用いた再現性の高い骨延長実験モデルを確立し,分子生物学的手法を用いて検討した.これにより,1)延長初期では主に軟骨内骨化により,次に延長後期では膜性骨化により骨形成が行われる,2)牽引メカニカルストレスにより骨基質蛋白・BMP4の遺伝子発現が持続的に誘導される,3)延長組織においては,軟骨内骨化,膜性骨化のどちらにも分類できない第三の骨形成のメカニズムであるtranschondroid bone formationが存在する,ことがわかった.

論述

MRIによる20代成人の腰・下肢痛と椎間板障害の検討

著者: 高橋寛 ,   米倉徹 ,   奥秋保 ,   香取勧 ,   井形聡 ,   岡島行一 ,   茂手木三男

ページ範囲:P.993 - P.998

 抄録:MR画像上における椎間板の所見と根症状および腰痛との関連を明らかにする目的で対象を20代成人に限定し,根症状群,腰痛群,非腰痛群の3群について,椎間板変性度,椎間板突出度,HIZ,Schmorl結節,椎体輝度変化の5項目について検討を行った.根症状と腰痛を発現する条件とは近似し,根症状群ではL4/5,L5/S1高位で椎間板突出度がprotrusionあるいはextrusion,mild以上の変性椎間板で,なおかつHIZを有する症例が有意に多かった.また,L4/5,L5/S1高位において椎間板変性度は,非腰痛群,腰痛群,根症状群の順に進行しており,椎間板変性の進行過程で,根症状発現の前段階として腰痛を生じる可能性があるものと考えられた.しかしながら,椎間板変性や椎間板突出が存在しても無症候者が少なくないことから,腰痛,根症状の発現に,変性椎間板による神経根に対する炎症性刺激の関与も想定された.

手術手技 私のくふう

慢性関節リウマチに対するmodified Sauvé-Kapandji法

著者: 藤田悟 ,   政田和洋 ,   冨士武史 ,   小松原良雄

ページ範囲:P.999 - P.1002

 抄録:慢性関節リウマチ(RA)に対してSauvé-Kapandji法を行う際の問題点は,尺骨の遠位関節面がすでに破壊されているため不整な関節面で手根骨を支持することと,骨吸収のため十分な大きさの棚が形成できないことである.この欠点を補うためにわれわれは切除した尺骨頭を90°回転させて橈骨に差し込む方法を開発し,良好な短期成績を得ているので手術法を紹介する.全例骨癒合は良好であり,当初危惧された尺骨頭の骨吸収は認めなかった.本法はRAに対する従来のSauvé-Kapandji法の欠点を補い,良好な初期固定性が得られる優れた方法である.

講座

認定医トレーニング講座―画像篇・23

著者: 松本秀男

ページ範囲:P.1003 - P.1005

症例:25歳,男性.ラグビー選手(図1)
 ラグビーの試合中にタックルを受け,膝関節を受傷した.膝関節内側上顆周辺に腫脹と圧痛を認めたが,放置してラグビーを続けていた.受傷後4週目になっても腫脹と疼痛が軽減しないため,来院した.

整形外科英語ア・ラ・カルト・68

整形外科分野で使われる用語・その31

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.1006 - P.1007

●milligram(ミリ・グラム)
 これは,前回述べた長さの単位“millimeter”に対する重さの単位である.ご存知のように,“1g”の“千分の1”が“1mg”である.さらに,“1mg”の“千分の1”が“1μg”(マイクログラム)である.“μ”(マイクロ)は“百万分の1”を意味し,“10-6”と表示でき,“1μg”は“10-6g”である.さらに,“1μg”の“千分の1”が“1ng”(ナノグラム)であり,“10-9g”である.これは10億分の1グラムとなる.この“nanogram”の覚え方は,“nanogram”の“n”とマイナス9乗分の1の“nine”が一致するので覚え易い.これは星座で10月の星座を覚えるとき,10は英語で“ten”であるから“天秤座”であるとすると簡単なのと同じことである.さらに,この“1ng”の“千分の1”は“1pg”(ピコグラム・picogram)である.これは“10-12g”であり,1兆分の1グラムである.現在,環境ホルモンが問題になっているが,このホルモンの量は“picogram”の世界である.この“picogram”は満水のプールの中に一滴のホルモンが入るような極めてわずかな量のことである.

ついである記・26

IzmirとEphesus

著者: 山室隆夫

ページ範囲:P.1008 - P.1009

 現在のトルコにはギリシャ,ローマ,オスマン・トルコなどの数千年に亘る古い文明の跡が堆積しているので,小アジア地方の歴史を前もって少し勉強しておかないと,観光に行ってもその国の面白さは十分に理解できないであろう,という意味のことを前回書いた.ところが,私自身も不勉強であったので,トルコのイズミール(Izmir)とその周辺を初めて旅した時には,ギリシャやローマ文明の数々の大遺跡をまのあたりにして歴史の迷路に迷い込んでしまったような錯覚に陥った.トルコのエーゲ海沿岸地方は紀元前は古代ギリシャの支配する土地であったわけだから,そこにギリシャの遺跡があるのは当然なのだが,実際にその地に行ってみるまではトルコにあれほど壮大なギリシャやローマの遺跡が数多くあるとは予想していなかった.

特別寄稿

ジャンクサイエンスとの戦い:医療訴訟における専門委員会の活用

著者: ジョセフ・M・プライス ,   エレン・S・ローゼンバーグ

ページ範囲:P.1011 - P.1020

 ジャンクサイエンスという言葉は,訴訟で用いられる場合,科学や医学の本流からは明らかに外れたものと定義される.ジャンクサイエンスの信頼性は実証されておらず,世間一般にも受け容れられていない.しかし,科学的な信憑性に欠けているにもかかわらず,医療責任が問われる裁判において,ジャンクサイエンスが証人となる専門家や陪審員の間で因果関係を判定する根拠として使われる傾向が強まっている.信頼性の高い科学的な証拠が存在する場合でも,裁判所はジャンクサイエンスを採用してきた経緯がある.
 米国におけるシリコーン製豊胸材の埋め込み手術(シリコーン製豊胸インプラントorシリコーンバッグ)をめぐる訴訟は最も顕著な例である.こうした豊胸手術が合併症を引き起こすかどうかの問題は,科学者や医師の間で論議を呼んでおり,また手術を受けた女性にとっては感情的にならざるを得ない問題であるが,ジャンクサイエンスを支持する弁護士や専門家の証人にとっては,恰好のビジネスチャンスとなっている.訴訟の対象となった疾病や症状について,ジャンクサイエンス側は短期間で都合のいい答えを陪審員に示したが,信頼できる科学者らがシリコーン製豊胸材の埋め込み手術との因果関係は認められないと判断するまでには数年を要した.シリコーン製豊胸材の埋め込み手術の訴訟は,ジャンクサイエンスに基づく判断と科学的方法や事実や現実に基づく判断との間にありがちな決定的な食い違いを浮き彫りにしている.

臨床経験

尺側列形成不全を合併した先天性𦙾骨欠損症の1例―本邦報告例の集計

著者: 建部将広 ,   渡部健 ,   浦田士郎 ,   矢崎進

ページ範囲:P.1023 - P.1028

 抄録:今回われわれはともに非常に稀である先天性𦙾骨欠損症と尺側列形成不全を合併した新生児の症例を経験した.36週6日正常分娩で出生した男児.妊娠経過,家族歴に特記すべきことはなく,初診時,足趾の変形,両側の高度内反足,左膝は高度の屈曲拘縮を呈していた.Jones分類では右は2型,左は1a型であった.左手は環小指問にcleftを認め,小指はやや低形成であり,小指列の形成不全を認めた.
 先天性𦙾骨欠損症について調査し得た本邦報告例は総数155肢であった.男児49例,女児33例とやや男児に多く,片側例は65例,両側例は35例.Jones分類86例中,1a:18肢,1b;27肢,2:28肢,3:2肢,4:11肢.合併奇形は78例中,下肢の奇形を除くと裂手が17例,指欠損9例,多合指4例,先天性股関節脱臼4例に見られた.尺側列形成不全は本症例を含めて3例に見られた.

小児の膝関節に発生した色素性絨毛結節性滑膜炎の1例

著者: 笠次良爾 ,   杉本和也 ,   中山正一郎 ,   石村雅男 ,   宮内義純 ,   藤沢義之

ページ範囲:P.1029 - P.1032

 抄録:小児の膝関節に発生した限局型の色素性絨毛結節性滑膜炎の1症例を経験した.症例は6歳の男児で,右膝関節痛と関節可動域制限を主訴として来院した.発症後18日目に関節鏡検査を施行し,関節内滑膜に茎を有する黄褐色の結節性腫瘤を確認し,これを鏡視下に摘出した.病理組織所見は,滑膜絨毛増殖,炎症細胞浸潤,多核巨細胞,ヘモジデリン沈着,泡沫細胞が認められた.以上の所見より,この腫瘤は色素性絨毛結節性滑膜炎であると診断した.術後1年の時点で可動域制限はなく,再発も認めず経過良好である.
 6歳という低年齢での限局型色素性絨毛結節性滑膜炎の報告例は本邦において過去になく,本症例が本邦最年少例であると考えられる.

atypical hangman's fractureの治療経験

著者: 金井泰貴 ,   寺本健二 ,   鈴木聡 ,   中井一成 ,   新井達也 ,   杉田光 ,   松崎尚志 ,   光野芳樹 ,   野坂健次郎

ページ範囲:P.1033 - P.1036

 抄録:軸椎椎体骨折,いわゆるatypical hangman's fractureの1例を経験したので報告する.症例は,60歳男性.飲酒し,転倒受傷.初診時,頚部痛を訴え,骨折の転位を認めたが,神経学的異常は認めなかった.直達牽引下に整復,保持,ケアーは回転ベッドを用いた.途中,転位を来し,SKAT(spine kyphosis anterior translation)を防止することでアライメントを回復,神経麻痺を惹起することなく,良好な骨癒合を得た.
 軸椎椎体骨折は比較的稀で,Levine分類4)に該当せず,Burkeら2)はatypical hangman's fractureとしている.

Sauvé-Kapandji法後に伸筋腱皮下断裂をきたした1例

著者: 坂本相哲 ,   小谷博信 ,   三木尭明 ,   千束福司 ,   上尾豊二

ページ範囲:P.1037 - P.1040

 抄録:Darrach法後の伸筋腱皮下断裂の報告はあるものの,Sauvé-Kapandji法後に伸筋腱皮下断裂を生じた報告はあまりない.今回われわれが経験した症例は,遠位橈尺関節障害および環指,小指伸筋腱断裂に対し,Sauvé-Kapandji法および断裂腱を中指伸筋腱への腱移行術を施行し,後療法を石黒の減張位早期運動療法で行ったところ,術後6週に中指伸筋腱断裂をきたした.その原因として,ulnar stumpの不安定性,鈍化,被覆の不十分,早期運動療法が考えられた.ulnar stumpの不安定性を最小限に抑えるにはulnar stumpは遠位であることが望ましい.なおかつ,伸筋腱が伸筋支帯とulnar stumpとで挟まれない程度近位であるためには,ulnar stumpの位置は,ulnar distanceが25mm程度が適当と考えられる.

大腿神経に発生したlocalized hypertrophic neuropathyの1例―手術所見を中心に

著者: 杉木正 ,   竹田毅 ,   堀内行雄 ,   鎌田修博 ,   関敦仁 ,   矢部裕 ,   厚東篤生 ,   倉持茂

ページ範囲:P.1041 - P.1047

 抄録:localized hypertrophic neuropathy(LHN)は,末梢神経の局所的腫大を主病変とし,その支配領域の進行性の筋萎縮を来す極めて稀な疾患である,本例はこれまでに全く報告のない大腿神経に発生した例である.症例は緩徐に進行する左大腿部の筋萎縮と筋力低下を主訴とする20歳女性である.筋電図と画像検査により,左大腿神経の中枢部に発生した腫瘍性疾患などが疑われ,手術を施行した.大腿神経は腸腰筋筋枝との分岐部より遠位で約5cmにわたり正常部の約3倍の太さに紡錐状に腫大していた.病理組織学的にはHE染色でonion bulb様円形構造を呈し,免疫染色ではS-100蛋白陰性,EMA陽性で,Schwann細胞でなく,神経周膜細胞の増生を示唆する所見であった.以上よりLHNと診断した.
 本疾患のclinical entityは不明な点も多いが,mononeuropathyを呈する疾患の鑑別にあたっては念頭におく必要がある.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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