臨床経験
大腿神経に発生したlocalized hypertrophic neuropathyの1例―手術所見を中心に
著者:
杉木正15
竹田毅2
堀内行雄1
鎌田修博1
関敦仁1
矢部裕1
厚東篤生3
倉持茂4
所属機関:
1慶應義塾大学医学部整形外科学教室
2慶應義塾大学医学部スポーツクリニック
3慶應義塾大学医学部神経内科
4慶應義塾大学医学部病理学教室
5荻窪病院整形外科
ページ範囲:P.1041 - P.1047
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抄録:localized hypertrophic neuropathy(LHN)は,末梢神経の局所的腫大を主病変とし,その支配領域の進行性の筋萎縮を来す極めて稀な疾患である,本例はこれまでに全く報告のない大腿神経に発生した例である.症例は緩徐に進行する左大腿部の筋萎縮と筋力低下を主訴とする20歳女性である.筋電図と画像検査により,左大腿神経の中枢部に発生した腫瘍性疾患などが疑われ,手術を施行した.大腿神経は腸腰筋筋枝との分岐部より遠位で約5cmにわたり正常部の約3倍の太さに紡錐状に腫大していた.病理組織学的にはHE染色でonion bulb様円形構造を呈し,免疫染色ではS-100蛋白陰性,EMA陽性で,Schwann細胞でなく,神経周膜細胞の増生を示唆する所見であった.以上よりLHNと診断した.
本疾患のclinical entityは不明な点も多いが,mononeuropathyを呈する疾患の鑑別にあたっては念頭におく必要がある.