icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科34巻1号

1999年01月発行

雑誌目次

巻頭言

第72回日本整形外科学会総会学術集会を主催するにあたって

著者: 腰野富久

ページ範囲:P.2 - P.3

 第72回日本整形外科学会学術集会は来る平成11年4月8日~11日までの4日間,パシフィコ横浜での開催に向け,横浜市立大学整形外科学教室,また同窓一同が一丸となり,開催の準備をしております.

論述

膝前十字靱帯再建術後のX線学的変形性変化の検討―内側側副靱帯損傷合併の影響

著者: 豊田敬 ,   松本秀男 ,   大谷俊郎 ,   徳永祐二 ,   笹崎義弘 ,   井上元保 ,   牛久尚彦 ,   関口治 ,   中山新太郎 ,   冨士川恭輔

ページ範囲:P.5 - P.10

 抄録:内側側副靱帯(MCL)損傷の合併が前十字靱帯(ACL)再建術後の変形性変化(OA変化)の進行に与える影響を検討した.陳旧性ACL損傷に対しLeeds-Keio人工靱帯による再建術を施行した71例を対象とした.このうち,MCL損傷を合併していない45例をMCL損傷(-)群,ACL再建術の際に合併するⅡ度MCL損傷を放置した26例をMCL損傷(+)群とした.X線学的検討は各コンパートメントにおけるOA変化をscore化し,2群間で比較検討を行った.術前のOA scoreは,大腿骨内側顆の骨棘形成がMCL損傷(-)群に比べMCL損傷(+)群で有意に高かったが,術後のOA scoreの増加量は,各コンパートメントとも2群間で明らかな差を認めなかった.陳旧性ACL損傷に合併するⅡ度のMCL損傷は,ACL再建術の際にこれを放置しても,手術により良好なACLの安定性が得られれば,術後のOA変化の進行には明らかな影響を与えないと考えられた.

透析患者における下肢切断例についての検討

著者: 三谷誠 ,   坂田敏郎 ,   冨岡正雄 ,   坪田次郎 ,   佃政憲

ページ範囲:P.11 - P.15

 抄録:透析患者の下肢壊疽症例のうち下肢切断を行った症例の臨床像や予後を調査し,治療上の問題点について検討を行った.症例は11例16肢(男性7例,女性4例)で,手術時年齢は47~70歳(平均60歳),透析歴は3カ月~15年(平均5.3年),基礎疾患は,糖尿病8例,慢性糸球体腎炎2例,多発性嚢胞腎1例であった.初回手術時の切断高位は,下腿が8肢,足・趾が8肢であった.1年以内に再手術を施行したものは8肢(約50%)で,最終切断高位は大腿3肢,下腿11肢,足・趾2肢であった.移動能力は,退院時では下腿切断例では屋外歩行可能1例,屋内歩行可能5例,車椅子1例,死亡1例であった.透析患者の下肢壊疽における切断の場合,足・趾の切断を行っても創治癒が得られないことが多く下腿切断を要することが多い.患者のQOLを考え,中足骨切断の適応となる症例でも下腿切断を第1選択とすることが賢明と考える.

再発を繰り返した悪性軟部腫瘍症例の検討

著者: 村田博昭 ,   楠崎克之 ,   中村紳一郎 ,   平田正純 ,   橋口津 ,   平澤泰介

ページ範囲:P.17 - P.20

 抄録:再発を繰り返し3回以上の手術治療を受けた悪性軟部腫瘍の7例を経験した.最終切除時の組織診断による内訳は皮下発生の皮膚隆起性線維肉腫と平滑筋肉腫が各々2例,深部発生の高分化型脂肪肉腫が3例であった.再発を繰り返した例は全例初回手術時に病巣内切除術を受けていた.このような症例では,腫瘍が表在性で小さかったため安易に単純切除が行われていたか,あるいは病巣が深層部にあり病巣部を小さくするために病巣内切除が行われていた.また,初回手術時の病理組識学的診断が7例中5例で良性であったことも再発を繰り返した原因であった.これらの点から悪性軟部腫瘍については初回の病理組織診断および切除縁の評価が大切で,初回に広範囲切除術を行うことが再発防止には重要である.

腰椎変性すべり症における腰痛の治療成績―後方除圧術単独例

著者: 西村行政 ,   常岡武久 ,   大久保喬志 ,   稲田善久 ,   小関弘展

ページ範囲:P.21 - P.26

 抄録:腰椎変性すべり症による脊柱管狭窄症に対して後方除圧術のみを行った場合の腰痛の治療成績がいかなるものであるかを明らかにするために,JOA scoreを用いて検討した.対象は32例で,手術時平均年齢66歳,術後経過期間は平均5年9カ月であった.これらについて術前と調査時の腰痛scoreを調べ,すべり進行の有無や不安定性の有無と腰痛の改善との関係を検討した.その結果,腰痛の改善は後方除圧術単独でも良好であり,術前平均1.78点が調査時には平均2.5点となった.さらに,すべり進行の有無や不安定性の有無との関連も認められず,本症における腰痛の多くは,後方除圧操作により改善される因子に由来している可能性が示唆された.これらのことから,腰椎変性すべり症による脊柱管狭窄症では腰痛の改善や予防という点からも固定術の適応は限られるものと思われた.

転移性上位胸椎腫瘍における単純X線正面像の評価

著者: 浜名俊彰 ,   高橋満 ,   宮城憲文 ,   兵藤伊久夫

ページ範囲:P.27 - P.32

 抄録:圧壊により急速な脊髄麻痺を来たしやすいが,日常診療での単純X線像で見逃しやすい上位胸椎転移症例に関して,retrospectiveに単純X線像をMRIと対比検討した.上位胸椎転移では,cost-vertebral jointの破壊による脊柱のangulationが早期に出現することが多かった.この時点で保存的治療を開始した大部分の症例で麻痺回避とADLの維持が得られた.上位胸椎転移では,angulationを不安定性の初期,すなわちimpending collapseと認識して,早期に治療を開始することが重要である.

腰椎椎間板ヘルニアにおけるVertical Migrationについて

著者: 笠原孝一 ,   井口哲弘 ,   栗原章 ,   山﨑京子 ,   佐藤啓三 ,   松本英裕 ,   石本勝彦

ページ範囲:P.33 - P.39

 抄録:手術治療を行った腰椎椎間板ヘルニア60例について,vertical migration(頭尾側方向へのヘルニア塊の脱出遊離移動)をきたしたものをMRIで椎体高の1/2を越えて脱出するもの(20例),1/4を越えるが1/2を越えないもの(20例)とに分類し,椎間板レベルにとどまるヘルニア(20例)と,その臨床像や脱出形態などを比較検討した.ヘルニアの脱出方向は尾側が67.5%と多かった.脱出方向を決定する因子としては,腰椎の前弯よりも椎間板上下の脊柱管と硬膜外腔の広さが重要と思われた.臨床症状と手術成績を日整会腰痛疾患治療成績判定基準でみると,椎体高の1/2を越えて脱出したヘルニアは椎間板レベルにとどまるヘルニアと比較して,術後の知覚および筋力の点数が有意に低く,また術後点数およびその改善率も有意に劣っていた.以上より,椎体高の1/2を越えて脱出したヘルニアは神経症状が残存しやすいことを念頭において治療方針を決定すべきである.

手術手技シリーズ 最近の進歩 手の外科

特発性腱断裂―手関節部の伸筋腱皮下断裂に対する減張位早期運動療法について

著者: 石黒隆 ,   池上博泰

ページ範囲:P.41 - P.46

 抄録:特発性腱断裂として関節リウマチ,キーンベック病,変形性遠位橈尺関節症などによる手関節部での伸筋腱の皮下断裂がある.断裂腱の断裂部は腱の摩耗や変性が起きており,再建としては遊離腱を用いての架橋移植,残存腱を用いての腱移行あるいは隣接指への端側縫合のいずれかが選択される.
 腱移植や腱移行術後は手関節背屈,MP関節軽度屈曲位に固定する従来の後療法を行なわざるを得ずMP関節の屈曲制限をきたしていた.われわれは断裂腱を隣接指に端側縫合した上でテーピングにより減張位を保持する早期運動療法を考案した.術後に手の使用が可能で隣接指と同じかそれに近い伸展可動域が全例に得られ,伸展力に不満を訴えるものもなくほぼ正常な屈曲可動域が獲得されている.残存する腱が一本あれば本法は可能で,術直後からの積極的な指の屈伸運動によって筋の萎縮を最小限におさえることのできる優れた方法といえる.

整形外科/知ってるつもり

五十肩

著者: 高岸憲二

ページ範囲:P.50 - P.51

 40歳以降に肩関節部の疼痛と運動制限を訴えて整形外科外来を受診する患者は多く,その大部分はいわゆる五十肩と診断されている.その病態は様々であるが,診断技術の進歩とともにその中から原因の明確ないくつかの疾患,いわゆる腱板断裂や石灰沈着性腱炎などが除外されている.ここではその定義と病態について述べる.

整形外科philosophy

医学教育改革について

著者: 田中清介

ページ範囲:P.53 - P.57

●今,間われる医学教育改革の必要性
 21世紀を間近にする今,医学教育改革の必要性が問われています.20世紀はあらゆる分野の科学が驚異的に発展した世紀でありました.医学についても同様であり,とくに20世紀後半の進歩は著しいものがあります.1980年以降になると,コンピュータの発達が科学,産業の上で果たした役割は目をみはるものがあります.コンピュータ技術の進歩により,コンピュータは顕微鏡をはじめとして種々の医療機器に組み込まれています.その代表がCT,MRIであり,CTに使われるコンピュータは透過するX線量を計算する電算機にとどまらず,その画像情報は蓄積,管理,再生,さらには他所に伝達することができます.つまりコンピュータはインターネットを通して情報交換することができ,そのような情報交換の代表としてのEメールは今日では広く使われつつあります.さらにはコンピュータシミュレーションにより,バーチャルリアリティを表現したり,体験することができます.これを手術に応用すると,術前に正確な手術プランニングを行うことができるようになります.また,保存管理の悩みの種であった大量のカルテやX線フィルムがコンピュータ入力によりカルテ不要,X線フィルム不要になるのも間近いことでしょう.
 戦前において医師はヒポクラテスの誓いを医の倫理の基準にしていました.

講座

認定医トレーニング講座―画像篇・28

著者: 持田譲治

ページ範囲:P.58 - P.61

症例:36歳,男性
 2年前から漸増する腰痛を認め,長時間の立位前屈作業や重量物運搬後には左殿部から下腿内側に及ぶ疼痛としびれ感がみられる.中学生時代から柔道選手として活躍したが,腰痛のため腰部軟性コルセットを着用した時期がある.左膝蓋腱反射はやや低下しているが,筋力低下は認められない.図1は単純X線腰椎立位側面および斜位像,図2はMRI T1強調画像の矢状断像である.

整形外科英語ア・ラ・カルト・73

整形外科分野で使われる用語・その36

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.62 - P.63

●osteon(オステオン)
 先月“os”について述べた.これはラテン語の骨と口を意味する言葉であるが,“os”のギリシャ語が“osteon”である.症状や診断名を書くときには,慣習に従い,通常このギリシャ語を使うことになっている.

ついである記・31

オーストラリア―Ayers Rockに登る

著者: 山室隆夫

ページ範囲:P.64 - P.65

 オーストラリアへは今までに3度行ったことがあるが,日本との間に時差が殆ど無いので飛行時間が9時間に及ぶものの疲れは少ない.1997年6月のブリスベン(Brisbane)への2週間余の旅も全くその通りで,疲れの少ない気楽な旅であった.私は今までに講演の予定のない海外旅行をしたことがないが,1997年のオーストラリアへの旅だけは例外で,いわば家内の永年の苦労に対する私の定年後のねぎらいの気持ちを,ブリスベンに住んでいる私達の娘夫婦と孫娘に逢いに行くことによって表そうというものであった.その上,私自身はオーストラリアの臍ともいわれる奇岩(Ayers rock)に登ってみたいというかねてからの念願を歳を取りすぎるまでに果たしたいという気持ちもあった.幸い,今までに貯めておいた或る航空会社のボーナス・マイレージがあったので,私達は無料でオーストラリア往復の塔乗券を入手することができた.その上,娘達の家に泊めてもらったので文字通りの無銭旅行となった.

臨床経験

腓腹筋内に発生したガングリオンの2例

著者: 前田啓志 ,   矢野悟 ,   山田昌弘 ,   箱木知也 ,   板倉良友 ,   本田久樹

ページ範囲:P.67 - P.71

 抄録:今回われわれは,腓腹筋内に発生したガングリオンの2例を経験した.
 症例は8歳女児と64歳男性で,主訴はいずれも下腿内側部の腫瘤であった.2例とも皮膚との癒着はなく,深部との可動性はなかった.矢状面T2強調MR画像では筋肉内に境界明瞭な紡錘状の,横断面では円形のhigh signalの陰影を認めた.術中,腓腹筋内側頭内に多房性腫瘤を認め,中枢端は腱内に終わり,末梢端は筋肉内で盲端となっていた.病理組織像では,筋膜と付着した多房性の嚢胞を認め,壁は線維性結合組織よりなっていた.筋肉内ガングリオンは,1952年にBrooksが最初に報告し,本邦では殿谷の報告以来自験例も含め46例であり,うち腓腹筋内発症は13例であった.本症例においては,軽微な外傷あるいは機械的ストレスを契機として粘液様変性を呈しながら腓腹筋腱内より腓腹筋内へと拡大していったものと考えられた.

環軸椎関節貫通螺子固定に併用したチタンケーブルのゆるみ

著者: 阿部栄二 ,   島田洋一 ,   佐藤光三 ,   森田裕美 ,   石澤暢浩 ,   楊国隆 ,   荻野正明 ,   江畑公仁男

ページ範囲:P.73 - P.77

 抄録:関節貫通螺子でアラインメントが保たれ,骨癒合しているにも関わらず,Magerl法で環軸椎間固定を行った14例において,その71%に椎弓間および移植骨を固定したチタンケーブルにゆるみを認めた.ケーブルのゆるみによる症状は全くなく,ゆるみは術後2~4カ月の間に出現し,Brooks法(0/3)よりGallie法で91%(10/11)と多く見られた.また,ゆるみはDanek cableで67%(6/9),Sofwireで80%(4/5)に,リウマチ性環軸椎亜脱臼で80%(4/5),非リウマチ性のもので63%(5/8),C2歯突起の遊離(+)で80%(4/5),遊離(-)で67%(6/9)にみられた、椎弓間固定ケーブルと移植骨固定ケーブルを完全に分離して用いたGallie変法の9例では,移植骨固定ケーブルのゆるみの方が椎弓間固定ケーブルのゆるみに比べて大きいものが67%(6/9)あった.ケーブルのゆるみは移植骨萎縮例で75%(9/12)に,骨萎縮のない2例では1例にみられた.また,C2棘突起の骨萎縮例では71%(5/7)に,骨萎縮のない4例では50%にゆるみを認めた.以上の点から,ケーブルのゆるみは移植骨とC2棘突起の骨萎縮とケーブルの弾性変形による持続的な骨の圧迫が関連すると考えられた.

大腿骨頚部骨折後に生じた片側下肢多発性骨端線早期閉鎖の1例

著者: 葉國璽 ,   亀ヶ谷真琴 ,   篠原裕治 ,   雄賀多聡

ページ範囲:P.79 - P.83

 抄録:症例は,大腿骨頚部骨折後に患側下肢に多発性骨端線早期閉鎖を合併し,6cmの脚長差を生じた1例である.7歳時に4階から転落し,左大腿骨頚部骨折を受傷し骨接合術を受けた.その後,大腿骨頭壊死を生じ,2年3カ月後に大腿骨内反骨切り術が施行された.しかし,4年5カ月後6cmの脚長差を生じたため,当科にて12歳時に脚延長術を施行した.本例に見られた6cmの脚長差を生じた原因としては,大腿骨頭壊死による大腿骨近位骨端線早期閉鎖および大腿骨内反骨切り術による短縮に加えて,多発性骨端線早期閉鎖が主因であると考えられた.早期閉鎖が多発性であること,早期閉鎖までの時間的経過が長いこと,骨性架橋など外傷を示唆するX線所見がなく,変形を伴わない等の特徴より,早期閉鎖の原因としては3年2カ月間の長期免荷による廃用性萎縮が最も考えられた.

腰仙椎硬膜外血管脂肪腫の1例

著者: 松﨑尚志 ,   寺本健二 ,   鈴木聡 ,   中井一成 ,   新井達也 ,   杉田光 ,   金井泰貴 ,   光野芳樹 ,   野坂健次郎

ページ範囲:P.85 - P.88

 抄録:稀な腰仙椎硬膜外血管脂肪腫の1症例を経験した.症例は48歳女性.主訴は左股関節部のつっぱり感.神経学的異常所見は認めなかった.腫瘍はL5からS1レベルの硬膜外後方から左側に存在し,左S1/2仙骨孔から仙骨前面に達するダンベル型を呈していた.MRIではT1強調像で一部高信号,T2強調像で高信号,ガドリニウムで造影される像を呈した.第5腰椎および仙椎の部分椎弓切除を行い腫瘍を摘出した.硬膜・神経根との剥離および仙骨孔内の腫瘍の切除に超音波外科用吸引装置(CUSA)を使用した.脊髄血管脂肪腫は全脊髄腫瘍の1%未満という稀な腫瘍であり,その中で胸椎発生例が8割以上を占める.仙椎に病変が存在した例は本例を含めて3例が報告されている.MRI所見は特徴的であり,術前診断に有用である.仙骨孔内腫瘍の切除にCUSAが有用であった.

椎間孔に発生し第5腰椎に骨破壊を生じた神経鞘腫の1例

著者: 野々村諭香 ,   坂口康道 ,   西本博文 ,   細江英夫 ,   清水克時

ページ範囲:P.89 - P.91

 抄録:今回われわれは,椎間孔に発生し第5腰椎に骨破壊を生じた稀な神経鞘腫の1例を手術的に治療し,良好な結果を得たので報告する.症例は55歳,男性.主訴は腰痛,左下肢痛.左下腿外側に軽度の知覚低下,および左1趾の軽度の筋力低下が認められた.各種画像診断より左L5/S1椎間孔を中心として,いわゆる砂時計腫がL5椎体を破壊していることが描出された.手術は後方経路により侵入して,L5神経根を温存しつつ腫瘍を摘出した.病理診断は神経鞘腫であった.術後,神経脱落症状もなく良好に経過している.

兄弟に発症したOto-Palato-Digital Syndromeに手根骨癒合を合併した2例

著者: 石田博英 ,   川村大介

ページ範囲:P.93 - P.97

 抄録:兄弟に発症したOto-Palato-Digital Syndromeに手根骨癒合を合併した2例を経験したので報告する.症例1は12歳男性で,低身長であり,小児科で手根骨により骨年齢を定期的に観察していたが,手根骨の形態異常を指摘され当科を初診した.初診時,Oto-Palato-Digital Syndromeに特有なボクサー様顔貌を認め,単純X線では両側の手根骨に多発性の骨癒合を認めた.定期的に撮影した手根骨のX線では,癒合が経時的に明らかになっていくのが確認された.症例2は11歳男性で症例1の弟である.症例1と同様にボクサー様顔貌を認め,有頭骨-有鈎骨間に骨癒合を認めた.症例1の経時的X線所見から,本症例のような遺伝性疾患に合併した手根骨癒合症の場合,多発性に生じるのが特徴であるが,その癒合は無秩序に起こるのではなく,骨核の出現時期が近い手根骨間に限局して生じやすいことが示唆された.

重症筋無力症に対するステロイド治療中に発生した両側大腿骨・𦙾骨骨髄炎の1例

著者: 北村淳 ,   丸毛啓史 ,   漆原信夫 ,   油井直子 ,   鈴木秀彦 ,   藤井克之

ページ範囲:P.99 - P.102

 抄録:重症筋無力症に対するステロイド治療中に発生した多発性化膿性骨髄炎の1例を経験した.症例は50歳の女性で,両側の大腿骨遠位ならびに𦙾骨近位の骨幹端部を病巣として瘻孔を形成し,膿の細菌培養検査でMRSAが検出されたが,保存療法が無効であったため病巣掻爬術を施行し,2週間の持続洗浄を行った.術後6週間,経静脈的にミノマイシン200mg/dayとバンコマイシン2g/dayを併用したところ,赤沈値,CRP値,白血球数は正常化した.その後,セフジトレンピボキシル300mg/dayを1カ月間,経口投与し,術後2年まで1カ月に1週間の間欠投与を行った.術後2年6カ月の現在,骨髄炎の再発はみられない.本症例は,免疫能の低下を基盤として多発性に発症したものと推察されることから,今後とも再発に留意し,経過観察を行うことが必要である.

小児大腿骨遠位骨端部類骨骨腫の1例

著者: 川原英夫 ,   和田真 ,   安藤正郎 ,   馬場久敏 ,   今村好章

ページ範囲:P.103 - P.106

 抄録:成長期に骨端の骨硬化性病変を見ることは稀である.今回われわれは成長期の大腿骨遠位骨端部に発生した類骨骨腫の1例を経験したので報告する.症例は11歳女児で,夜間に増強する右膝関節痛を主訴として来院した.単純X線写真,CTで右大腿骨遠位骨端部に周囲と中心に骨硬化像を伴う境界明瞭な直径6mmの円形の透亮像を認めた.MRIではT1強調画像で低信号,T2強調画像で中心に低信号域を伴った高信号,骨シンチグラフィーでは病巣に一致して集積を認めた.血液生化学検査は基準値内であった.抗生剤の投与により症状は軽減せず,消炎鎮痛剤の投与により疼痛は軽快した.確定診断と治療を目的として病巣掻爬を施行した.Brodie骨膿瘍も疑われたが,培養で菌が検出されなかったことや,病理組織診断,さらにCT像などから最終的に類骨骨腫と診断した.病巣掻爬により術前の疼痛は完全に消失し,2年経過した現在,症状の再発は認められない.

腓腹神経絞扼障害の1例

著者: 西口薫 ,   岩田淳 ,   申寳榮

ページ範囲:P.107 - P.109

 抄録:靴による圧迫が原因と考えられる腓腹神経絞扼障害の1例を経験したので報告する.症例は20歳,女性.約1カ月前から左第5足指にしびれ感を生じるようになり,1週間前からは左足背外側全体に安静時痛も生じるようになり来院した.受診前2カ月間履いていたパンプスは左足関節外果周囲を強く圧迫しており,これによって腓腹神経に絞扼状態を生じたものと考えた.保存療法が無効であったため手術を行った.術中所見では,腓腹神経の扁平化と下腓骨筋支帯の腫脹を認めた.神経剥離術後,翌日から症状は完全に消失した.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら