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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科34巻8号

1999年08月発行

雑誌目次

巻頭言

第14回日本整形外科学会基礎学術集会を開催するにあたって

著者: 玉井進

ページ範囲:P.962 - P.964

 奈良市におきまして,1999年10月7,8日の2日間にわたり第14回日本整形外科学会基礎学術集会を開催させていただきますことは,私ども奈良県立医科大学整形外科学教室一同ならびに同門会員にとりまして誠に名誉なことで,このような機会を与えて下さいました会員各位に厚く御礼申し上げます.教室挙げてその準備にあたっておりまして,既にプログラミングは終了いたしております.
 今学会では『組織の修復と再生』をメインテーマといたしまして,それに関連した特別企画を計画いたしました.

論述

頚椎前方除圧固定術の長期成績

著者: 金子徳寿 ,   小田剛紀 ,   美馬弘 ,   田中裕之 ,   塚本泰徳 ,   加藤泰司 ,   藤田悟 ,   冨士武史

ページ範囲:P.967 - P.972

 抄録:頚椎前方除圧固定術の5年以上の成績を調査した.対象は1978年から1992年の間に頚部脊髄症に対して手術を施行し,5年以上経過観察が可能であった31例(男性20例・女性11例)である.疾患は頚椎症性脊髄症13例,頚椎椎間板ヘルニア18例で,経過観察期間は平均10年4カ月であった.臨床成績は日本整形外科学会頚部脊椎症性脊髄症治療成績判定基準(JOA score)・改善率を用いて評価し,単純X線側面像より隣接椎間の変化を検討した.平均JOA scoreは術前8.8点,術後5年14.5点(改善率72.5%),最終時14.3点(改善率67.4%)であった.固定隣接椎間のX線変化は,椎間板腔の狭小化が25例,骨棘の形成が18例,2mm以上のすべりが6例であった.脊髄症状再悪化により追加手術を要した症例は4例であり,そのうち3例は固定隣接椎間の椎間板膨隆による脊髄圧迫が主因であった.

超音波法(アキレス)による骨量の地域差

著者: 佐々木康夫 ,   佐藤晋介 ,   山田芳久 ,   筑紫聡 ,   近藤喜久雄 ,   長谷川幸治

ページ範囲:P.973 - P.975

 抄録:超音波骨評価装置のアキレスを使用し,都市部と,農業と漁業の町のstiffnessを比較した.対象は,名古屋逓信病院外来を受診した女性患者347名と北海道山越郡八雲町の住民検診に訪れた女性649名.測定機器はLunar社製アキレス.両住民のstiffnessを10歳ごとの年齢層別と,各年齢でのstiffnessの平均値の年齢に伴う変化について比較した.その結果,stiffnessの年齢階層別の値は40歳未満,40歳代,50歳代(p<0.01),の各年齢において八雲町で高く,60歳代(p<0.05),70歳代(p<0.01),80歳以上では名古屋市が高かった.stiffnessの平均値は名古屋で40歳代と70歳以上で特に低下した.八雲町も名古屋と同様の低下傾向を示した.
 年齢層別の比較で60歳代未満で八雲町の値が高いのは,女性でも比較的肉体労働に従事する機会が多い八雲町の特徴と思われた,stiffnessの平均値が名古屋,八雲町とも70歳以上で低下を示したことは,アキレスの測定値が活動性の影響も受け得ると考えられた.

上腕骨外上顆炎に対する筋膜切開術

著者: 福田昇司 ,   久下章

ページ範囲:P.977 - P.979

 抄録:筋膜切開術を施行した難治性上腕骨外上顆炎16例17肘の臨床成績を検討した.性別は男性13例,女性3例であり,手術時平均年齢は54.6歳であった.術後経過観察期間は平均21.9カ月であった.Nirschlらの評価法による臨床成績は術後3カ月で76.5%が優または良であり,最終評価時まで成績に低下はみられなかった.小さな侵襲で合併症の少ない本法は難治例に対して有効な手術方法である.

ペルテス病の保存治療成績

著者: 西山正紀 ,   二井英二 ,   飯田浩次 ,  

ページ範囲:P.981 - P.985

 抄録:当院ではペルテス病に対し,1975年以降Batchelor型外転免荷装具とTachdjian装具(trilateral socket hip containment orthosis)の併用を中心に保存的治療を行ってきた.今回,X線学的予後調査を行ったので報告する.対象は一次治癒以降に達した40例45関節である.発症年齢は平均6歳5カ月,調査時年齢は平均12歳8カ月であった.治療は原則として入院し,就学児であれば,隣接する養護学校に通いながら行った.介達牽引にて疼痛,拘縮の軽減後Batchelor装具を着用し,股関節可動域訓練,外転筋力訓練も積極的にすすめた.その後,病型分類,年齢,股関節可動域を考慮し,Tachdjian装具による歩行を開始したが,Batchelor装具も併用した.評価方法は,調査時Stulberg分類,AHI,ATD,Mose法について検討した.治療成績はStulberg Ⅰ型11関節,Ⅱ型31関節,Ⅲ型3関節であり,Ⅰ型,Ⅱ型の比率は93.3%と,ほぼ満足のいく結果であった.

軟部悪性線維性組織球腫の治療成績

著者: 平田正純 ,   楠崎克之 ,   中村紳一郎 ,   村田博昭 ,   福録潤 ,   平澤泰介

ページ範囲:P.987 - P.991

 抄録:軟部悪性線維性組織球腫(以下MFH)21例の治療成績について検討した.症例は男性11例,女性10例の21例.初診時年齢は38~82歳,発生部位は大腿部11例,肩,前腕,上腕,下腿が各2例で,殿部,膝が各1例であった.Surgical stageはstage Ⅱ 18例,stage Ⅲ 3例であった.手術は20例に施行し,その内訳は,切断2例,広範囲切除12例(追加広切3例を含む),辺縁切除4例,病巣内切除2例であった.化学療法は14例(6例:系統的,8例:非系統的)に施行した,経過観察期間は4~116カ月(平均32カ月)であった.成績はCDFが6例,NED 3例,AWD 3例,DOC 3例,DOD 6例であった.全例の累積5年生存率は66%,stage Ⅱでは72.3%であった,系統的化学療法施行群の半数に遠隔転移を生じ,今後MFHの生命予後を改善するためには有効な化学療法薬剤が必要と考えた.

検査法

コンピュータナビゲーションシステムの画像診断への応用

著者: 上村幹男 ,   江原宗平 ,   伊東秀博 ,   木下哲也 ,   立岩裕 ,   湯沢洋平 ,   高橋淳 ,   高岡邦夫

ページ範囲:P.993 - P.999

 抄録:イメージガイドシステム(StealthStationTM)は,手術中にプローブなどの位置や方向を3次元的にモニター上のCTに表示し,ナビゲーションを行うシステムである.このシステムの高速の画像処理システムを応用することで任意のポイントでCTのデータから瞬時に3方向の再構成CTを作成し,詳細な画像表示が可能である.さらに,脊柱変形のある症例でも,脊柱に直行した面でのCT画像を作成することが可能である,CT撮影装置を使用することなく手術室などで術者自身で自分が得たい撮像面を再構成可能なこのシステムは,詳細な画像診断に非常に有用である.

手術手技 私のくふう

リウマチ母指に対する指関節固定術

著者: 政田和洋 ,   橋本英雄 ,   吉中康高 ,   藤田悟

ページ範囲:P.1001 - P.1004

 抄録:リウマチ母指の指節間関節や中手指節関節に対する関節固定術の方法を紹介する.この方法はSwansonの方法に準じたものであるがcup and cone状に骨を新鮮化し,骨移植を併用し3本の鋼線を用いて固定する方法である.1本目の鋼線を髄内釘にした後に鋼線を折り曲げて固定角度を決めることに最大の特徴がある.これまで14例に対してこの方法を行ったが,偽関節例はなく良好な成績が得られているので紹介する.

整形外科/知ってるつもり

CORA

著者: 土屋弘行

ページ範囲:P.1006 - P.1008

 CORAとはcenter of rotation of angulationの略で変形の中心を意味する.Paleyらにより提唱され,本来イリザロフ創外固定器のヒンジシステムによる変形矯正を念頭においたものである.

境界領域/知っておきたい

クリティカル・パス(critical paths)

著者: 石名田洋一

ページ範囲:P.1010 - P.1011

【クリティカル・パス(critical paths)とは】
 この言葉は表記以外に,クリティカル・パスウェイ(critical pathways),クリニカル・パスウェイ(clinical pathways),ケアマップ(care maps),MAPs(multidisciplinary action plans)等いろいろな言い方がある.これは元々NASAにおいて,月着陸ロケット等宇宙工学の分野で,複雑で込み入った多数の部品・工程をコンピュータ管理の下に,よどみなく完成に向け調整する工程管理に使われた方式で,以来PERT/CPM(Program Evaluation and Review Technique/Critical Path Method)と呼ばれ,工業生産の分野で広く用いられてきた.
 クリティカル・パスの手法を最初に病院に導入したのは,アメリカのニューイングランド・メディカルセンターのカレン・ザンダーという看護婦で,DRG/PPSが入院医療に導入されたことがその発想の発端と言われている.従って本手法の当時の概念は「基準の入院期間内で標準的な結果を得るために,患者に行うべき手順と時間の一覧表」といわれ,看護職と他の職種との連携を企図したものであった.

講座

認定医トレーニング講座―画像篇・34

著者: 野沢雅彦 ,   黒澤尚

ページ範囲:P.1013 - P.1017

症例:53歳,女性
 1997(平成9)年1月14日,横断歩道を歩行中に乗用車にはねられて受傷.救急車にて直ちに搬送された.意識は清明であったが,左股関節痛と腰痛を強く訴え,左側腹部から大転子部にかけての広範な皮下出血と腫脹があり,血圧の低下と貧血および血尿を認めた.また,下肢はやや外旋位を呈していた.
 初診時の単純X線像を示す(図1).

整形外科英語ア・ラ・カルト・79

整形外科分野で使われる用語・その41

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.1018 - P.1019

●protein(プロテイン)
 この言葉は,すでに日本語化しているが,一般の人々は蛋白質のこととは知らず,健康食品や栄養補助食品の特別な物質と思っている.
 蛋白質の“蛋”の字は“鳥の卵”を意味しており,蛋白質は“鳥の卵の白身”のことである.ドイツ語では“Eiweiss”や“Protein”と言う.“Ei”は卵,“weiss”は白を意味している.

ついである記・37

Sydney

著者: 山室隆夫

ページ範囲:P.1020 - P.1021

●隔離された大陸
 オーストラリア大陸に人が住み始めたのは第4氷河期の中頃に当たる約4万年前のことであるといわれている.その頃には地球の海面の高さが今と較べて200mほども低かったので,人々がアジア大陸からオーストラリア大陸へ比較的容易に渡ることができたのであろうと考えられている.この人々がオーストラリアのアボリジニの祖先である.その後,解氷とともに海面が上昇し,オーストラリア大陸は他の大陸から完全に孤立してしまった.そのため,オーストラリアの動物は他の大陸の動物と接することなく独特の淘汰と進化の過程を経て今に到り,珍らしい種が保存されてきたのである.人間の方も,他の大陸では農耕文化が約一万年前から発達してきたが,オーストラリア大陸では農耕文化を知らないアボリジニの生活が近世まで続いてきた.
 15世紀に入って初めてパプア人や中国人とアボリジニとの交易が僅かながら始まり,16~17世紀の大航海時代になるとポルトガル人やオランダ人がオーストラリア大陸の一部を調査したという記録が残っている.1770年になって英国のキャプテン・クックがシドニー近郊に上陸し,「英王室はオーストラリア東部を領有する」と一方的に宣言したのは有名な話である.そして,1788年1月26日に英国の初代総督アーサー・フィリップがやってきて白人によるオーストラリア支配が始まった.

臨床経験

膝蓋骨に発生した痛風結節の1症例

著者: 斉藤修 ,   森雄二郎 ,   藤下彰彦 ,   品田充美

ページ範囲:P.1025 - P.1027

 抄録:膝蓋骨に骨変化をきたした痛風結節は,われわれが渉猟した限りでは国内報告16例と比較的稀である.われわれは,膝蓋骨に嚢胞状陰影を認め,初診時に骨腫瘍を思わせた痛風結節の1例を経験したので報告する.症例は右膝関節痛を主訴とする36歳の男性である.1996(平成8)年1月より右膝痛が出現.1998(平成10)年5月近医を受診し,単純X線で膝蓋骨に異常陰影を指摘され,腫瘍性疾患の疑いで同年6月紹介来院された.初診時の画像からは膝蓋骨内側に嚢胞状陰影を認め骨腫瘍が疑われたが,背景に高尿酸血症が存在することから痛風結節も考えられ,関節鏡による観察と病変部の生検を行った.膝蓋骨背面に小皮切を加え膝蓋骨に到達すると,白色塊が認められた.膝蓋骨より採取した病理組織では,尿酸塩結晶が認められ,典型的な痛風結節の所見であった.走査電顕および分析電顕での検討では,結晶の形態はより明確になり,また結晶が主にNaで構成されていることが明らかになった.

軸椎椎体後部骨折の1例

著者: 飯塚伯 ,   清水敬親 ,   長谷川亘 ,   高岸憲二

ページ範囲:P.1029 - P.1032

 抄録:われわれは稀な軸椎椎体骨折を生じた症例を経験したので報告する.症例は73歳男性.主訴は項部痛であり,約1mの高さより落下し受傷した.受傷機転は不明であった.来院時,神経学的異常はなく,頭部にも特に外傷を認めなかった.X線像およびCTにて,軸椎椎体後部および片側の棘突起に骨折を認めたが,転位も軽度なためハローベストによる保存的治療を開始した.9週にてハローベストを除去しフィラデルフィアカラーとした.受傷後8カ月時における,X線像およびCT像では骨癒合は完成していた.本症例では頭部の強打部位が明らかでなく,片側の棘突起剥離骨折を合併している点から判断して,受傷時の記憶もはっきりしないため明確なことはいえないが,flexionとaxial rotationが作用し,受傷したことが疑われた.

FDG-PETを放射線,化学療法の効果判定に用いた成人横紋筋肉腫の1例

著者: 中西りか ,   清水和也 ,   石部達也 ,   石田勝正 ,   岡嶋馨 ,   樋口佳世子 ,   小野講三 ,   中本裕士

ページ範囲:P.1033 - P.1036

 抄録:成人の仙骨近傍に生じた巨大横紋筋肉腫に対し,対射線,化学療法を施行し治療効果判定にFDG-PETを用いた.本症例においては放射線治療が奏功し,MRI像とFDG-PETより完治かと思われたが,治療終了後11カ月目に局所再発を来たした.FDG-PETにおけるStandarized uptake value(SUV)値は腫瘍の縮小増大に比例して推移し,MRIとの併用により治療効果判定に有用であるが,残存腫瘍細胞検出には限界があると考えられた.

先天性腓骨偽関節症の1治療例

著者: 岩本淳 ,   芝昌彦 ,   藤田郁夫 ,   鍋島祐次 ,   藤井英夫

ページ範囲:P.1037 - P.1040

 抄録:稀な先天性腓骨偽関節症の1例を経験した.症例は12歳男子で,左足関節部痛を主訴として来院した.外傷の既往はない.腓骨は前方凸に弯曲し,遠位3分の1の部分に偽関節を認めた.脛骨には明らかな異常を認めなかった.立位時,足関節に10°の外反変形を認め,Dooleyの分類のgrade 3,Andersenのfibular typeに相当した.同側腓骨骨幹部より採取した骨を偽関節部へinlay graftし,良好な骨癒合と外反変形の矯正が得られた.術前に撮影したMRIでは,偽関節部はT1強調像で不均一な低信号域を,造影T1強調像では網目状の不均一な増強効果を,T2強調像では肉芽組織が主体であると考えられる高信号域と線維化が主体であると考えられる低信号域が混在しており,本症の病態をよく表わしていた.

徒手整復不能であった膝関節脱臼の1例

著者: 佐野栄 ,   永原健 ,   青柳康之 ,   中川晃一 ,   三橋繁 ,   藤田耕司 ,   佐粧孝久 ,   三橋稔

ページ範囲:P.1041 - P.1044

 抄録:スキー中に転倒し,徒手整復不能であった膝関節脱臼(54歳,男性)の1例を報告した.初診時,X線写真で脛骨の外方亜脱臼,前・後十字靱帯のそれぞれの脛骨付着部での裂離骨折を認め,MRIでは顆間窩での介在物を認めた.介在物は内側膝蓋支帯と関節包であり,受傷後12日目にこれを整復した後,内側側副靱帯修復および前・後十字靱帯pull-outを施行した.術後1年の現在,動揺性,可動域制限は認めない.内側膝蓋支帯と関節包がボタンホール状に裂け,大腿骨内側顆が突出する例などがいくつか報告されているが,本症例では関節包と膝蓋支帯がそれぞれ2カ所で裂け,帯状に顆間窩に嵌頓するといった特殊な形態を呈していた.

非定型的症状を呈した遠位上腕二頭筋腱断裂の1例

著者: 佐々木政幸 ,   小川清久 ,   浪花豊寿 ,   堀内行雄 ,   戸山芳昭

ページ範囲:P.1045 - P.1047

 抄録:遠位上腕二頭筋腱断裂は,主にその特徴的な症状と所見,特に筋の上方移動による異常な膨隆とその下方の陥凹,肘窩部の腱消失によって診断される.今回われわれは,大量出血や尺骨神経不全麻痺などの非定型的症状を呈した症例を経験したので報告する.患者は64歳男性で,約30kgの缶を両手で抱えるように胸の位置まで持ち上げた際,異音とともに痔痛のため右肘関節運動が不能となった.初診時,上腕から前腕は著しく腫脹しており,翌日には右尺骨神経領域の知覚鈍麻も出現した.大量出血の存在から上腕二頭筋の遠位筋腱移行部あるいは筋腹部における断裂を疑ったが,術中所見はlacertus fibrosusの筋引き抜き損傷を伴った遠位腱断裂であった.非定型的症状の主因となった大量出血は,lacertus fibrosus付着部の筋引き抜き損傷,上腕二頭筋の著しい短縮による栄養血管の損傷が,また,尺骨神経不全麻痺の原因は,上腕前方コンパートメントの圧上昇が原因と推測された.

第1第2楔状骨間離開を伴った第1楔状骨骨折の1例

著者: 土川拓也 ,   二橋宏嘉 ,   小山新太郎 ,   長野昭

ページ範囲:P.1049 - P.1052

 抄録:第1第2楔状骨間離開を伴った第1模状骨骨折の1例を報告する.症例は19歳男性で,オートバイ事故にて左へ転倒し受傷した.右足背部に擦過傷,圧痛,腫脹が認められるものの,著明な変形は見られなかった.単純X線,断層撮影,CTにて第1第2楔状骨間離開を伴う第1楔状骨骨折と診断した.中空海綿骨螺子1本にて観血的整復固定術を行った.術後3週間の外固定後,足底板を用いて8週より全荷重を許可した.術後約15カ月の現在,楔状骨間は整復され,骨癒合を得,疼痛なく日常生活を送っている.受傷機転としては,転倒時に前足部で踏ん張り,底屈位になったところへ第1撰状骨直上に直達外力が働いたためと推察される.第1第2楔状骨間離開のある症例では単純X線像だけでは骨折が見逃される可能性があるので,断層撮影,CTによる精査が必要である.治療としては離開部の整復保持のため,手術療法が必要である.

自家筋力による膝蓋腱皮下断裂の1例

著者: 久光淳士郎 ,   荻野透 ,   根本哲治 ,   大瀬眞人 ,   渡辺英詩 ,   守屋秀繁

ページ範囲:P.1053 - P.1056

 抄録:比較的稀な自家筋力による膝蓋腱断裂の1例を経験したので報告する.症例は41歳の男性である.バスケットボール練習中受傷した.基礎疾患を持たず,骨片を含まない症例は,われわれの渉猟し得た範囲では,過去40年間に25例であった.診断は局所所見と画像所見とにより困難ではないが,初診時に誤診されることが多いとの報告があり,膝の外傷における鑑別診断の1つとして大切である.われわれは受傷早期に絹糸法にて手術を施行し,ギプス固定を6週間行った.術後7カ月の時点で,屈曲伸展制限はともになく,良好な結果が得られた.近年の中高年者のスポーツ参加に伴い,基礎疾患や外傷の既往がなくても,今後,本症例のような腱断裂が増加することが予想される.

両足舟状骨脱臼骨折の1例

著者: 山村成載 ,   吉野信之 ,   野口昌彦 ,   松井英司 ,   平澤泰介

ページ範囲:P.1057 - P.1060

 抄録:今回われわれは両足舟状骨単独脱臼骨折の1例を経験したので報告する.われわれの渉猟しえた限りでは本骨折の両側例の報告は1例のみで本邦では報告がない.症例は25歳,男性.2階から転落し受傷した.両側の足舟状骨体部に脱臼骨折を認め,キルシュナー鋼線による内固定術,および楔状骨-距骨間の創外固定術を施行した.調査時(術後17カ月)には単純X線像で左側に一部骨癒合不全を認めたが,関節症性変化はなかった.MRI(T1強調像)では,右側になお低信号域が残存しており骨壊死と考えた.しかし,疼痛や可動域制限はなく日常生活動作に支障を認めず,日整会足部疾患治療判定基準では右95点,左100点であった.なお,治療法としての創外固定は内側アーチと内側アライメントの保持に有用であった.極めて稀な両足舟状骨単独脱臼骨折に対し,観血的骨接合術を行い,良好な結果を得たので報告した.

腰仙部片側椎間関節脱臼の1例

著者: 野末高史 ,   武者芳朗 ,   徳永祥一郎 ,   秋山敬 ,   岡島行一

ページ範囲:P.1061 - P.1064

 抄録:稀な腰仙部片側椎間関節脱臼の1例を経験した.症例は34歳男性で,しゃがみ込んでの作業中左背部を強打して受傷.神経症状は認められず,左第1-5腰椎横突起骨折,足趾骨折の診断で前医に入院3週間後起立歩行を開始したところ,腰痛・右下肢しびれ感が出現したため当科へ転入院した.入院時,右のS1神経根障害を認めたが,膀胱直腸障害はなかった.単純X線像では脱臼を思わせる所見に乏しかったが,MR像,脊髄造影像でL5/S1高位の椎間板ヘルニア,動態撮影で同部の不安定性を認め,CT,3D-CT像で,左L5/S1椎間関節片側脱臼が明瞭に描出された.片側脱臼例では初診時神経症状を認めることは少なく,単純X線上脱臼も不明瞭であり,見逃されることがある.片側性多発横突起骨折を認めた場合,本症を考慮して,CT scanおよび3D-CT等を用いて精査する必要がある.治療では,pedicle screw法と後側法固定に後方椎体間固定を併用し,良好な骨癒合が得られた.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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