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アポトーシス(Apoptosis)
著者: 松野博明1
所属機関: 1富山医科薬科大学医学部整形外科
ページ範囲:P.1128 - P.1131
文献購入ページに移動細胞は増殖状態に陥った時,それをコントロールするためアポトーシスによる細胞死を発現する.このことからアポトーシスは,生体の恒常性維持における普遍的メカニズムの一つと考えられている.アポトーシス(Apoptosis)とは,ギリシャ語のapo=offとptosis=fallが合成された言葉で“a falling off”の意味を持つ細胞の自殺死であり,アポトーシスと呼ばれる細胞死は個体の発生や生体の恒常性維持に重要な役割を担っている.アポトーシスに関与する分子は線虫から哺乳類まで種を越えて存在しているが,近年では哺乳類の生理的な意味を持つ細胞死をアポトーシス(細胞死を促す酵素であるプロテアーゼはカスパーゼファミリー)と呼び,線虫における細胞死をプログラム細胞死(プロテアーゼはCED)と区別して呼ぶことも多い.細胞におけるアポトーシスの働きは多種多様であり,免疫学.腫瘍学・発生学などの研究領域において近年特に注目を集めている.例えば,発生段階でミット状の手が分離して一本ずつの手指が形成されるのも,このアポトーシスの働きによるものであるし,胸腺における細胞のセレクションもこのアポトーシスの働きによる1).
正常状態における細胞死と考えられているアポトーシスに対抗する細胞死としてネクローシスがある.ネクローシスは病的な状態で細胞が死に到る細胞死であり,細胞の膨化破裂によって起こる細胞の不慮の事故死である.
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