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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科35巻1号

2000年01月発行

雑誌目次

巻頭言

第73回日本整形外科学会を主催するにあたって

著者: 水野耕作

ページ範囲:P.2 - P.3

 第73回日本整形外科学会学術集会は平成12年4月6日(木)から9日(日)までの4日間,神戸国際会議場,国際展示場ならびにポートピアホテルにて開催いたします.全国各地から諸先生を迎えるべく神戸大学整形外科学教室ならびに同門一同は開催準備に励んでおります.
 本学会は20世紀最後の日本整形外科学会学術集会でありますので,「20世紀の歩み」をテーマとして掲げました.最近は周知の如く,医学研究,医学教育,卒後研修や専門医制度などの医学面のみならず薬価や診療報酬の改定などの健康保険制度の見直しや介護保険制度の新設に代表されるように,医療の面でも大きな転換期を迎えております.これらの諸問題を解決し新たな展望を切り開くための学会となることを願っています.国際的には,bone and joint decadeの出発点にもあたります.この機会に国際的に著名な学者を招聘して討論し,世界に向かってnew decadeの発信地となることをも願っております.

論述

Scapulohumeral rhythmに関する新しい知見―運動の速さとリズムの関係

著者: 原田拓 ,   菅本一臣 ,   町田明敏 ,   宮本隆司 ,   竹内英二 ,   冨田哲也 ,   越智隆弘

ページ範囲:P.5 - P.11

 抄録:scapulohumeral rhythmの研究は1900年代初期のCodmanやInmanら以降,数多くなされてきた.今回われわれは健康成人男性6例11肩を対象とし,上肢挙上下降運動速度の違いがscapulohumeral rhythmに及ぼす影響について検討した.方法は,挙上下降運動をfluoroscopyを用いて撮影し,動態画像をコンピュターに取り込み,各画像ごとにNIH image softを用いて角度を測定,GH/ST比を算出した.その結果,上肢挙上下降運動速度の違いによりscapulohumeral rhythmが様々に変化すること,左右間・個体間でrhythmが異なることが明らかとなった.このことはいままでのrhythmに関する概念を変えるものであり,動作の多様性という運動生理学見地からみると非常に合目的であると思われた.

脊柱管拡大術を施行した頚椎症性脊髄症における術前椎間不安定性の臨床的意義

著者: 川上守 ,   玉置哲也 ,   吉田宗人 ,   安藤宗治 ,   山田宏 ,   松本卓二 ,   阪中淳也 ,   延与良夫

ページ範囲:P.13 - P.19

 抄録:後方支持組織温存脊柱管拡大術を施行した頚椎症性脊髄症67例を用いて,立位X線動態像で椎間不安定性があり,臥位でその不安定性に変化のない症例を“不変”群(n=21),臥位で椎間不安定性が新たに出現するか,増大する症例を“増強”群(n=22),椎間不安定性のみられない症例を“なし”群(n=24)と分類し,軸性疼痛,神経症状,画像所見を比較検討した.“不変”群,“増強”群はより高齢で罹病期間が短かった.前方への不安定性を有した症例は前弯が乏しく,神経症状が重篤であった.調査時,椎間不安定性を有する症例はなく,3群間には軸性疼痛の有無や脊髄症状の改善に有意な差異はなかった.また,調査時頚椎可動域やMRIの髄内輝度変化にも差はなく,頚椎可動域は調査時43.5%に制限されていた.頚椎症性脊髄症に脊柱管拡大術を選択する場合,術前椎間不安定性は臨床成績に影響なく,無視し得る術前因子である.

脊柱管内に異所骨形成を伴った腰椎椎間板ヘルニアの病態と治療

著者: 松本英裕 ,   井口哲弘 ,   栗原章 ,   山崎京子 ,   佐藤啓三 ,   笠原孝一

ページ範囲:P.21 - P.26

 抄録:異所骨形成を伴う腰椎椎間板ヘルニアの病態を調査し,それを伴わない腰椎椎間板ヘルニアと,臨床症状や治療成績を比較検討した.対象は,手術を行った異所骨形成を伴う腰椎椎間板ヘルニア25例(A群)と異所骨のない腰椎椎間板ヘルニア25例(B群)で,両群間に性別,年齢,椎間板高位と数,および術後追跡期間に差はない.A群の25症例27カ所に異所骨を認めた.異所骨の部位はS1上縁が10例と最も多かった.原因として,22例は後方椎体縁損傷の遺残,4例は後縦靱帯骨化,1例はヘルニア壁の骨化と思われた.SLRテスト両側陽性例はA群に有意に多かった.A群の手術はヘルニアの摘出に加え,必要に応じての異所骨の切除,打ち込みを基本とした.術後成績には差がなく,神経根を圧迫しない限り,異所骨を積極的に切除する必要はないと考える.

変形性膝関節症における関節軟骨のMRI所見―単純X線像との対比

著者: 山本宣幸 ,   名越智 ,   河村正朋 ,   渡辺吾一 ,   森末博之

ページ範囲:P.27 - P.32

 抄録:内側型変形性膝関節症(OA膝),80名83膝に対してMRI撮影を行い,大腿骨・𦙾骨の関節軟骨の厚さを計測した.関節軟骨の厚さの加齢による変化を観察するとともに,OA膝の病期との関係を分析した.関節軟骨の撮像には脂肪抑制を用いたField Echo 3D法を用いた.大腿骨内・外顆,𦙾骨高原内・外側の4カ所における荷重部の軟骨の厚さを測定した.加齢とともに内側関節軟骨の厚さは減少していた.一方,外側では70歳代までは変化なく,80歳代で有意に減少していた.関節症変化が北大X線病期分類でstage Ⅱ以上に進行すると大腿骨,𦙾骨の内側関節軟骨の厚さは急速に非薄化していた.しかし,関節症変化がstage Ⅳ以上に進行すると,外側関節軟骨の厚さはむしろ増加する傾向を示していた.内側型関節症が進行すると,大腿𦙾骨関節の内側に荷重が集中し,外側では負荷が減少するために軟骨の膨化や軟化が生じたためと推測した.

内側型変形性膝関節症に対する逆V型高位𦙾骨骨切り術の検討―楔状骨切り術との比較

著者: 三上将 ,   安田和則 ,   辻野淳 ,   葛城良成 ,   酒井俊彦 ,   中野秀昭 ,   宮城登 ,   青木喜満 ,   金田清志

ページ範囲:P.33 - P.38

 抄録:内側型変形性膝関節症(OA)に対する逆V型高位𦙾骨骨切り術(HTO)の臨床成績を楔状(W型)HTOのそれと比較した.逆V型HTOを受けた症例(逆V群)は44例48膝,W型HTOを受けた症例(W群)は54例55膝である.術前のOA重症度,FTAおよび臨床成績に関して両群間に差はなかった.全荷重時期は逆V群で平均72日,W群で92日と逆V群で早く,創外固定抜去時期は逆V群で71日,W群で73日と差がなかった.術後1年間に𦙾骨傾斜角が3°以上再内反した症例は,逆V群で6%,W群で29%に,遷延治癒は逆V群で6%,W群で24%に認め,有意にW群で多かった.平均5年の臨床成績は両群とも約90点と差はなかった.本研究は,逆V型HTOが手技的に容易であり,生体工学的利点を有するため良好な骨癒合が得られ,さらに骨量も温存されるため推奨できる術式であることを示唆した.

胸椎後縦靱帯骨化症―術後症状悪化例の検討

著者: 松山幸弘 ,   佐藤公治 ,   川上紀明 ,   岩田久

ページ範囲:P.39 - P.46

 抄録:1985年3月より1997年10月までの間に手術的治療を行った18例中,4例が術後に神経症状の悪化をきたした.これらの4症例を報告し,麻痺の原因を検討した.症例1:37歳女性.T2-T3の嘴状OPLLであった.C3-7 laminoplasty,T1-T4 en bloc laminectomy直後にSEP検出が困難となった.症例2:56歳女性.T6-T7の嘴状OPLLであった.T5-8 laminectomyを行った時点でSEPが描出不能となり,術後症状は悪化した.症例3:51歳男性.C3-C5,T3-T6の嘴状OPLLであった.初回手術はC3-T2 laminoplasty,T3-T9 en bloc laminectomyを行ったがT4前方すべりを生じた.T1-L2間の固定術を施行し麻痺は改善した.症例4:52歳男性.T3-T5の嘴状OPLLであった.T1-T6 en bloc laminectomy後,T4-T5間を後方進入前方除圧した.術後両下肢麻痺を生じた.
 嘴状の胸椎OPLLに対しては,後方除圧よりも前方除圧を優先すべきと考えた.

変形性股関節症の疫学―1,601例の病院受診者に対する調査

著者: 斎藤昭 ,   菊地臣一

ページ範囲:P.47 - P.51

 抄録:本邦における変形性股関節症と臼蓋形成不全の頻度を明らかにすることを目的とした.泌尿器科と産婦人科の外来,または入院患者の静脈性腎盂撮影X線前後像で,両股関節が観察できた男性931例,女性670例,合計1,601を対象とした.平均年齢は男性が64.2±15.9歳,女性が49.0±15.3歳であった.X線写真で変形性股関節症の所見を認めた症例は,男性で19例24関節(2.0%),女性で50例73関節(7.5%)で,合計69例97関節(4.3%)であった.そのうち二次性股関節症は,男性17例,女性47例であり,女性に有意に多かった.臼蓋形成不全を認めた症例は,男性は9例13関節(1.0%),女性で42例58関節(6.3%)で,合計51例71関節(3.2%)であり,女性に有意に多かった.臼蓋形成不全を有する症例で疼痛が出現したのは,CE角の小さい症例に多かった.

手術手技 私のくふう

成人側弯症に対し胸腔鏡と腹腔鏡を併用した前方解離術の経験

著者: 遠藤健司 ,   武田裕介 ,   ,  

ページ範囲:P.53 - P.58

 抄録:背部痛を主訴とする,胸椎から腰椎にわたる可撓性の乏しい成人側弯症2例に対し,胸腔鏡と腹腔鏡を使用して一期的に前方解離を行い,1週間後に後方矯正固定術を行った.胸椎では側臥位で,腰椎では仰臥位でカーブの凸側から進入し,鏡視下に前方解離をした.分節動静脈を温存し,椎間板と骨棘を切除し椎間可動性を得た.1週間後,後方矯正固定術を行い,2症例の胸椎,腰椎カーブのいずれでも60%以上の高い矯正率を得た.神経損傷や大血管損傷などの手術合併症はなく背部痛は改善した.

整形外科英語ア・ラ・カルト・84

整形外科分野で使われる用語・その46

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.62 - P.63

 今回は“R”の項の第2回目である
 resuscitation(リサ・ステイション)
 これは蘇生のことである.この言葉の語源(etymology-エティモロジィ)は,“再び”を意味する“re-”と“下から上向きに”を意味する“sub”,さらに“動かす”や“述べる”を意味する“citare”の合成語である.“sub”は次に続く“citare”の最初の“c”のために音便変化し“sus”となる.“suspend”(サスペンド・吊り下げる)や“suspicion”(サスピション・疑い)などの“sus”も同様に“sub”の音便変化形である.
 このように,“resuscitation”は“下から上へ再び持ち上げる”という意味であり,そこから“蘇生”の意味となる.蘇生とは,一旦心肺停止を起こした患者が“蘇える”とき,または外傷や熱傷,その他に出血や脱水で体調がダウンしている患者が補液や輸血,その他の医療処置を受け元気になることも“resuscitation”という.

ついである記・42

アメリカの良心を覆う暗い陰

著者: 山室隆夫

ページ範囲:P.64 - P.66

 私はこの10年ほどはアメリカへ行くことをできるだけ避けてきた.かつて,私はシカゴのノースウエスターン大学へ留学したこともあり,その後も十数回に亘ってアメリカの各地を訪れ,個人的には親しい友人も何人かはいる.しかし,近年,私は以前にも増してアメリカ社会が好きになれなくなってきた.したがって,どうしても行かなければならない場合以外は招待されても断わることにしている.私がそれほどにアメリカ嫌いになった理由は単純ではないが,簡単に言えば,半分はアメリカの物質文明に対する私のアレルギーが原因であり,他の半分はアメリカ社会の明らかな悪に起因している.

整形外科philosophy

整形外科医40年の経験から―勤務医から開業医へ,そしてPauwels先生のこと

著者: 上野良三

ページ範囲:P.67 - P.71

●勤務医から開業医へ
 医科大学で教職を29年,厚生年金病院長を8年体験し,昨年3月定年退職後は診療所を開設し日夜診療に従事して1年あまりが経過した.地元の医師会では,彼は何故開業したのかということが話題になったようであるが,定年後も整形外科の診療を継続したいことが唯一の理由である.ゴルフなどの趣味もなく,学問に精進する意欲に欠けることが根底にあるのではないかと反省している.
 大阪大学,アーヘン工科大学臨床部門(当時アーヘン市立病院),奈良医科大学,デュッセルドルフ大学,香川医科大学における教職,星ヶ丘厚生年金病院での病院の管理運営を通じて,現在の保険医療行政の一端にも触れ,医師として経験のないのは開業医のみとなり,開業に対する興味があったのも事実である.

専門分野/この1年の進歩

骨・軟部腫瘍学術集会―この1年の進歩

著者: 武内章二

ページ範囲:P.72 - P.75

 第32回日本整形外科学会骨・軟部腫瘍学術集会は,1999年7月16日,17日の2日間,岐阜市の長良川国際会議場を中心に開催しました.
 学術集会のテーマは“Reconsideration and Prospect for the Next Century”,すなわち「21世紀に向けての反省と展望」とし,先人が積み重ねられた大きな業績を基盤とし,また発展の陰にある問題点を反省し,さらなる飛躍を目標にプログラムを編成しました.

日本リウマチ・関節外科学会―この1年の進歩

著者: 井上明生

ページ範囲:P.76 - P.78

 1999(平成11)年9月30日(木),10月1日(金)の2日間,久留米石橋文化センターにおいて,第27回日本リウマチ・関節外科学会を開催した.本学会は1973(昭和48)年に慢性関節リウマチの外科的側面を討議しようと,第1回は日本医大・吉野槇一先生を世話人に,「リウマチ外科研究会」として同好会的な形式でスタートした.しかし,その後,参加人員が増え,1981(昭和56)年,第9回から対象疾患を慢性関節リウマチに限らず関節疾患全般に広げ,日本リウマチ・関節外科学会と名称を変更して再スタートした.今回の学会は,再スタートしてから19回目であった.
 その間,毎回の学会長が問題意識をもって,自分のもっとも得意とすることをメインテーマに選んでシンポジウムを組んできたが,私は「変形性股関節症の関節温存手術の工夫」と,「人工膝関節術後の感染に対する対応」を取り上げた.

講座

認定医トレーニング講座―画像篇・39

著者: 小田裕胤

ページ範囲:P.80 - P.85

症例:53歳,女性(図1)
 3年前より,時に右腰殿部から大腿の外側にかけての疼痛が出現し,その度に薬物療法で寛解していた.9カ月前より右腰殿部から大腿の外側にかけて疼痛とともに,両側の下腿から足部にかけてのジンジンしたしびれ感が出現し,さらに500mの歩行で間欠性跛行を認めるようになった.この跛行は坐位および前屈位で軽快する馬尾性間欠性跛行であり,以後も跛行で歩行が可能な距離は次第に短縮し,100m以内と増悪したので,当科を受診した.
 現症:診察所見ではラセーグ徴候は左右とも90°で陰性.腱反射は膝蓋腱反射が左右とも正常であるが,アキレス腱反射は左右とも消失していた.徒手筋力テストでは長母趾伸筋が両側Gと低下し,両側足背部に軽度の触覚障害を認めた.腰椎の後屈位および左回旋を伴った後屈位で右側腰・殿部から大腿の外側にかけての疼痛が誘発された.

臨床経験

小胸筋による胸郭出口症候群の1例

著者: 白石元 ,   斉鹿稔 ,   大井律子 ,   片山稔 ,   花岡篤哉 ,   篠原道雄

ページ範囲:P.87 - P.88

 抄録:3年間持続する右上肢の疼痛としびれ感を訴える58歳の女性に対し,小胸筋を切離することで症状が軽快した.術前Wrightテストは陰性で右上肢を下垂すると症状が悪化し,むしろ挙上すると症状が軽快した.CT,MRI所見および臨床経過から小胸筋による胸郭出口症候群と診断した.

結核性脊椎後弯変形の上位隣接椎間障害により発症した脊髄不全麻痺の1例

著者: 川崎展 ,   熊野潔 ,   夏山元伸 ,   内田毅 ,   長谷川敬和 ,   川西誠 ,   竹田智則 ,   横尾冠三

ページ範囲:P.89 - P.92

 抄録:結核性亀背変形に伴う上位隣接椎間障害による脊髄不全麻痺を経験したので報告する.症例は54歳男性.胸腰椎にかけて高度亀背を呈する.両下肢知覚障害,両下肢痛,歩行障害を主訴に来院.9歳時に脊椎カリエスの既往有り.所見として,両下肢痙性不全麻痺を認めた.X線写真上Th11-L4の癒合を認め,MRI・CT上,癒合頂椎部の上位隣接椎間に高度の骨棘形成,脊柱管の狭窄を認めた.上位隣接椎間を痙性不全麻痺の原因と考え,前方除圧固定術を施行し,症状の改善を認めた.
 通常,癒合頂椎部の骨性圧迫が麻痺の原因の一つとされているが,本症例では上位隣接椎間障害が原因であると考えられる点で珍しい.上位隣接椎間に不安定性が存在したために骨棘が形成されたと考えられる.

スキーによる長母指伸筋腱停止部での新鮮皮下断裂の1例

著者: 和田誠之 ,   末綱太 ,   牧野明男 ,   毛糠英治 ,   中井倫子 ,   田名部誠悦

ページ範囲:P.93 - P.95

 抄録:スキー外傷による長母指伸筋腱停止部での新鮮皮下断裂(mallet thumb)の1例を報告する.症例は56歳,女性.スキー滑走中に転倒し,右手をついて受傷した.右母指指節間(以下IP)関節の伸展障害にて,受傷後2日目に当院紹介受診となった.IP関節の自動伸展が不能であり,単純X線では骨折は認められなかった.当科受診当日に手術を施行した.EPL腱は末節骨付着部付近Zone T1での断裂であり,近位断端部はIP関節レベルにあった.mattress縫合にて腱縫合を行い,IP関節伸展位にてキルシュナー鋼線で固定した.術後MP関節,手関節ともに伸展位でシーネ固定した.術後7カ月の現在,IP関節の伸展は0°,屈曲は45°でADL障害はない.本症例では観血的治療にて満足な結果を得た.

腰椎MRIが診断の契機となった続発性ヘモクロマトーシスの1例

著者: 荒木勉 ,   東福要平 ,   横川明男 ,   富田喜久雄 ,   高橋志郎 ,   鈴木潮人

ページ範囲:P.97 - P.100

 抄録:腰椎MRIが診断の契機となった続発性ヘモクロマトーシスの1例を経験したので報告する.
 症例は83歳女性で,腰痛の精査加療目的に入院した.腰椎単純X線写真では骨粗鬆症と変形性腰椎症の所見を認め,腰痛の原因と考えられた.腰椎MRIを施行したところ,T2強調像において全椎体にびまん性の強い低信号を認めた.腰椎生検の結果,骨髄にはヘモジデリンを貧食したマクロファージを多数認め,鉄染色陽性であった.さらに,鉄剤の長期服用歴,血清鉄およびフェリチンの高値,肝臓の特徴的なCT・MRI像が判明し,続発性ヘモクロマトーシスと診断することができた.一般にヘモクロマトーシスでは自覚症状が乏しく,肝臓のCTやMRI,あるいは本症例のように腰椎MRIが診断の契機となることがあり,画像診断には十分な注意が必要と考えられた.

鎖骨疲労骨折の1例

著者: 友田良太 ,   山田総平 ,   浦和真佐夫 ,   中瀬古健 ,   畠中節夫 ,   竹原慎介 ,   辻井雅也 ,   細井哲

ページ範囲:P.101 - P.103

 抄録:極めて稀な鎖骨疲労骨折の1例を経験した.これまで根治的頚部廓清術後やスポーツが原因とされる報告がみられる.症例は20歳の男性で,生来健康で配管工に従事しており,特に誘因なく右肩痛を自覚し当科を初診した.他覚的,X線学的にも特に異常を認めなかったが,疼痛は軽快しなかった.初診より約1カ月後の単純X線写真により骨折線が認められた.上肢を反復使用する職業上の作業が鎖骨への介達力となり,その軽微な介達力が繰り返されることにより,鎖骨中央部で疲労骨折を生じたものと考えられた.

指末節骨に転移した肺癌の1例

著者: 小林恵三 ,   裏辻雅章 ,   柴沼均

ページ範囲:P.105 - P.107

 抄録:悪性腫瘍の手指骨への転移は極めて稀である.肺扁平上皮癌が右環指末節骨に転移した1例を経験したので報告する.症例は73歳,男性.右環指の腫脹と疼痛があり,当科受診.X線像上,悪性腫瘍の指骨転移が疑われた.既往歴に大腸癌があり,また両下肺野に腫瘤影を認めたため内科入院精査となり,肺癌の骨転移が疑われた.疼痛の軽減と原発部位の確定を目的に基節骨レベルで切断した.病理検査にて扁平上皮癌と診断され,肺癌よりの転移と診断した.悪性腫瘍の指骨転移は臨床的に,発赤,腫脹,疼痛等の炎症所見を伴うことが多く,発症時には,骨髄炎,関節リウマチ,痛風等として治療を受けることもあると報告されている.炎症性疾患として治療を受けることで診断が遅れたとの報告もあるが,骨X線所見に注意し,悪性腫瘍の指骨転移の可能性も考慮にいれれば,診断はそれほど難しくないと考える.予後は悪いため治療は多くの場合切断術の適応となる.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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