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ついである記・49
北ウェールズの夏
著者: 山室隆夫1
所属機関: 1京都大学
ページ範囲:P.1126 - P.1128
文献購入ページに移動1976年の夏は英国では珍しく雨の少ない日々が続いた.私と家内と2人の子供達(当時13歳の娘と9歳の息子)はOswestryから北へ7kmほどの距離にあるケイリョグ(Ceiriog)渓谷のほとりのChirkbankと呼ばれる小さな集落の中に一軒の家を借りて住むことになった.私をOswestryのRobert Jones & Agnes Hunt Orthopaedic Hospitalの客員教授として迎えて下さったMr. Rowland Hughes(英国では外科医はDr.とは呼ばれず,Mr.と呼ばれる)の家がケイリョグ渓谷の対岸の丘の上に建っていた.私と家族が慣れない土地で生活をするのだから,自分の近くに住まわせて面倒をみてやろうというMr. Hughesの配慮があって,この借家が私達の住居として選ばれたのだろうと思われた.事実,私達は事あるごとにMr. Hughesの家へ招かれたり,共に旅をしたり,彼の親戚縁者とも親しくなり,まさに家族同様に遇された.
私達の借りた家の前には一本の田舎道が通っており,その道路に沿って5~6軒の人家があった.家の直ぐ後ろは牧場になっていて30頭ほどの牛が毎日草を食んでいた.家の前の道路が北へ突き当たる丘の上に小さな教会があり,そこを左折するとさらに7~8軒の人家があり,その先は広い牧場が森に連なっていた.
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