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雑誌文献

臨床整形外科35巻11号

2000年10月発行

雑誌目次

視座

中小病院存亡の危機の到来

著者: 角南義文

ページ範囲:P.1185 - P.1186

 当院は昭和55年,欧米の整形外科単科病院の医療技術,学際的基盤にあこがれて創設した111床の整形外科単科病院である.
 当院の現状は病院およびサテライト診療所,病床数111床,新看護2.5対1,理学療法(II),作業療法(II).職員数163名.平成11年度:入院患者数1,484名,手術件数1,333である.全国公私病院連盟の調査によれば,職員数は100床あたり平均116.7人であるが,当院では146.9人となっている.職員数が多いとよく言われるが,これでも米国でなら638人必要という(高岡善人:病院が消える,講談社,1993).

シンポジウム スポーツによる肘関節障害の診断・治療

緒言 フリーアクセス

著者: 荻野利彦

ページ範囲:P.1188 - P.1189

 スポーツ人口の増加に伴いスポーツによる外傷と障害が増加している.一般に,スポーツによる傷害は肩関節や膝関節に多いことが知られているが,各スポーツにより特有の障害が引き起こされることも良く知られている.野球肘あるいはテニス肘などはこれらのスポーツが肘関節障害を来しやすいために付いた呼び名である。肘関節のスポーツ障害には,腕の使い過ぎによる肘関節の内側部痛と外側部痛,変形性肘関節症,遅発性尺骨神経麻痺などの絞扼性神経障害,肘頭骨端炎などがある.腕の使い過ぎによる肘関節の内側部痛は内側型のテニス肘あるいは野球肘と呼ばれ,これには上腕骨内上顆炎,肘関節内側側副靱帯損傷,上腕骨内上顆骨端線障害あるいは同部の骨端核の骨化障害などが含まれる.肘関節の外側部痛は外側型のテニス肘あるいは野球肘と呼ばれ,上腕骨外上顆炎,上腕骨小頭の離断性骨軟骨炎などが含まれる.

スポーツによる肘関節障害のMRI診断

著者: 岡村良久 ,   原田征行

ページ範囲:P.1191 - P.1197

 要旨:スポーツによる肘関節障害のうち一般的に遭遇する機会の多いものについてMRIを中心とした診断について述べた.上腕骨小頭離断性骨軟骨炎では,関節軟骨自体の病態の把握はMRIにてもいまだ難しく,軟骨下骨の連続性から病巣と母床の結合の有無を観察することが治療方針の決定に有用である.内側上顆炎では,保存的治療に抵抗性であり、筋付着部切離術など手術的治療を考慮するような症例において,筋腱内の不可逆性変化をMRIにて診断できる可能性がある,内側側副靱帯損傷においては,靱帯の損傷状態を画像として診断するにはMRIが非常に有用である.肘頭疲労骨折では,見逃されがちな障害を早期に診断する方法としてMRIが有効である.MRIは軟骨,靱帯など軟部組織の診断に非常に有用であるが,スポーツ障害の予防の見地からすると,いかにMRIを早期にスクリーニング的な手段として使用していくかが,今後の課題である.

スポーツによる肘関節障害の診断(超音波断層法)

著者: 高原政利 ,   荻野利彦 ,   佐々木淳也

ページ範囲:P.1199 - P.1207

 要旨:上腕骨小頭離断性骨軟骨炎の30例(平均年齢14歳)に超音波診断を行った.MRIか手術が行われた21例において超音波評価の正確性をみると,19例で超音波評価が正しかったが,2例では超音波評価が誤っていた.また,X線評価では不安定性なしと評価された2例において,超音波検査が不安定性を示し,手術時に不安定性が確認された.X線診断のみでは診断を誤る場合があり,超音波検査は有用な補助診断になることが示唆された.次に,大学野球部員30名(平均年齢22歳)の肘関節内側の超音波診断を行った.腕尺関節の関節裂隙は投球側で有意に増大していた.投手と野手を比較すると,関節裂隙の増大は投手に著明であった.尺側側副靱帯の変形が9例にみられ、靱帯の変形と関節裂隙の増大に相関がみられた.超音波診断は肘関節内側の関節裂隙の増大と靱帯の変化を同時に評価することが可能であり,不安定症の診断に有用であることが示唆された.

スポーツによる肘関節離断性骨軟骨炎の治療

著者: 村上恒二 ,   重信浩一

ページ範囲:P.1209 - P.1215

 肘離断性骨軟骨炎の47例に対して骨釘移植を中心とした手術的治療を行い術後成績に検討を加えた.術前のX線診断は,三浪の分類と岩瀬の分類を併せ用いて分類した.手術は小頭部の骨軟骨片の術中直視下所見により骨釘移植のみ,海綿骨移植と骨釘移植,そして遊離体の摘出と骨釘移植の3群にわけ行った.術前のX線診断と術中直視下所見の両者を対比したところ,一致しない症例が多く見られ,透亮期が必ずしも早期病変とは言えないことが明らかであった.小頭部の形状修復は骨軟骨片に剥離がなく安定した骨釘移植のみの群に最も良好な成績がみられた.遊離体期の症例で最も成績が劣っており,早期の手術の有用性が明らかとなった.

スポーツによる肘関節離断性骨軟骨炎の治療

著者: 島田幸造 ,   秋田鐘弼 ,   濱田雅之 ,   中田研 ,   吉田竹志

ページ範囲:P.1217 - P.1226

 要旨:肘関節の離断性骨軟骨炎に対する治療法について述べた.その進行の程度により治療法が異なるため病期に応じた治療指針を明確にしておく必要があり,その診断にはX線像のtangential viewやMRIが有用である.治療の原則は投球中止と安静による保存療法であるが,実際には病期が進行してから病院を訪れるケースも多い.保存療法で改善しない病変に対しては外科的に病巣の再接合、切除・掻爬,再建術などが必要となる.関節鏡の導入による小侵襲手術手技の発達と骨軟骨移植など新しい再建法により,従来の方法に勝る成績が得られつつある.今後も長期にわたる経過観察が必要であるが,現在われわれは,分離前期には骨接合術、分離後期以降では小病変では関節鏡視下掻爬術,大きな病変では症例に応じて自家骨軟骨移植などの再建術を選択すべきと考えている.

スポーツによる肘関節側副靱帯損傷の診断と治療

著者: 仲尾保志 ,   高山真一郎 ,   堀内行雄 ,   伊藤恵康 ,   竹田毅

ページ範囲:P.1227 - P.1233

 要旨:スポーツによる肘関節側副靱帯損傷は,肘関節の疼痛や不安定性を生じてスポーツ活動を障害する.新鮮例の治療は保存療法が中心となるが,動揺性が著しい場合は靱帯に加えて関節包や筋群の断裂を合併しているため,観血的修復が必要になる.一方,陳旧例の場合は様々な病態が疼痛の原因となっており,病態を正確に診断することが治療のカギとなる.早期復帰のため保存療法を主体に治療する場合も多く,手術にいたっても遊離体の切除のみで軽快する症例も少なくないが,靱帯が瘢痕化して不安定性を有する症例には靱帯再建手術が適応となる.この際,biomechanicalな研究の知見から,内側では前斜走靱帯,外側では外側尺側側副靱帯が主な再建の対象となる.近年は,手術法の工夫によって,靱帯再建後も早期にスポーツ活動へ復帰することが可能となってきている.

スポーツによる上腕骨外上顆炎

著者: 薄井正道

ページ範囲:P.1235 - P.1241

 要旨:テニス肘に関する最近の動向について述べるとともに,テニス肘の発症に把持動作における手関節伸筋の収縮が関与するという筆者の考えを述べた.この考え方で,テニス,ソフトテニスのみならず,スポーツ以外による発症機序をも説明できる.治療法については、保存療法と難治例に対する手術療法について筆者の経験を紹介し,日常生活上の注意点,テニススタイルの改善などに関する諸家の報告と併せて考察した.

スポーツと変形性肘関節症

著者: 三原研一

ページ範囲:P.1243 - P.1249

 要旨:現役野球投手143名の両側肘関節X線像から,投球側の関節症変化の部位と程度を検討した.骨棘の形成は肘頭先端,鉤状突起内側に最も多く,鉤状突起先端,肘頭内側,滑車内側にも多く認めた.しかし,橈骨頭や上腕骨小頭周囲の骨棘は少なかった.関節症変化は野球歴が長いほど,年齢が高いほど高度であった.
 個々の骨棘について検討すると,肘頭先端,鉤状突起先端,鉤状突起内側、肘頭内側の骨棘および内上顆基部の骨片は比較的野球歴の短い症例でも高率に認めた.また,内側の骨棘は合併するものが多く,内側の関節症変化が高度になるほど可動域制限も高度であった.

論述

超高齢者の大腿骨頚部骨折の機能予後・生命予後に影響を及ぼす諸因子の検討

著者: 石田洋一郎 ,   小川清吾 ,   川原慎一郎 ,   村田秀雄

ページ範囲:P.1251 - P.1257

 抄録:当科で治療した90歳以上の超高齢者の大腿骨頚部骨折の機能予後および生命予後について検討した.対象は1994(平成6)~1998(平成10)年の5年間に当科で治療を行った46例(男性5例,女性41例)であり,合併症の悪化による術前死亡1例を除く全例に観血的治療が施行された.生命予後に有意な影響を与える因子として,術前全身状態・受傷前歩行能力・骨折タイプ・術式が挙げられ,術前全身状態が悪く,受傷前の歩行能力が低く,内側骨折例,人工骨頭例での生命予後が劣っていた.痴呆は術後の歩行再獲得との間に有意差を認め,痴呆の重い症例ほど術後の歩行再獲得率は劣り,退院後の居住先にも大きく影響した.超高齢者の大腿骨頚部骨折の治療には医療以外の社会環境的要因の関与も大きく,狭義の医学的アプローチに固執することなく,心理的・社会的アプローチをも含めた多方面からの総合的アプローチが必要である.

血友病患者における骨粗鬆症

著者: 竹谷英之 ,   阿部純久 ,   馬場久敏 ,   河﨑則之

ページ範囲:P.1259 - P.1262

 抄録:血友病では廃用性骨粗鬆症が報告されているが,実際にBMD(Bone mineral density)を計測した報告は少ない.今回,腰椎部でのBMDを計測し検討したので報告する.15例21検体を対象にBMD,X線にて下肢関節の状態,歩行能力を評価した.血友病Aは14例,血友病Bは1例で,全例凝固因子活性1%未満の重症例であった.凝固因子阻害物質を有するインヒビター例は2例あった.止血管理が難しく活動が制限されるインヒビター例で腰椎BMDは低い値を示した.腰椎BMDと下肢関節症の程度を比較すると,杖歩行をしていても関節症が重症で活動性の低い例や,関節内出血が重度で荷重ができなかったため関節破壊を起こさなかった車椅子移動例ではBMDは小さかった.血友病性関節症の骨粗鬆症の原因として廃用性の骨萎縮が考えられたが,慢性関節リウマチや関節破壊により見られる傍関節性の骨萎縮について今後検討する必要があると考えている.

専門分野/この1年の進歩

日本手の外科学会―この1年の進歩

著者: 平澤泰介

ページ範囲:P.1264 - P.1266

■学術集会のトピックスより
 1.手の外科の治療の進歩と問題点
 手および前腕の皮膚欠損には有茎鼠径あるいは腹壁皮弁が,また広範囲な組織の欠損に対しては遊離(筋)皮弁が用いられてきた.本学会では直径0.5mm前後の筋内穿通血管を茎とするperforator flapを用いる方法で手の組織欠損の再建を行った症例が報告された.前腕の変形,短縮に対するWagner法および仮骨延長法の術後成績の比較検討が報告され,少ない手術回数で済む仮骨延長法を第一選択として考え,仮骨形成不良例にはWagner法も考慮することが指摘された.上肢先天異常に対する足趾関節の遊離移植により成長可能で動きの良い,疼痛のない関節を再建できた症例が報告されたが,donor足趾の欠損に関する問題も十分に考慮にいれた適応がなされなければならない.

日本脊椎外科学会―この1年の進歩

著者: 吉澤英造

ページ範囲:P.1268 - P.1271

 2000年という20世紀最後の年に開かれた第29回日本脊椎外科学会では,椎間板ヘルニアを主題に採り上げた.MRIの出現を契機としてヘルニアの病態解明が一段と進み,一方でminimally invasive surgeryの名のもとに色々な新しい手術手技が導入され,21世紀に向けて椎間板ヘルニアの治療が大きく変わる兆しが生じている.そこで,腰椎に限らず頚椎,胸椎を含めた椎間板ヘルニアの治療の現状と今後を展望できればと考えたからである.以下にその要点を示す.

整形外科/知ってるつもり

Epicondylar line(Transepicondylar line)

著者: 鈴木昌彦

ページ範囲:P.1272 - P.1274

【定義】
 膝関節の屈伸時の回転軸を,インスタントセンター法(膝関節を10°程度づつ,順に屈曲して撮影した側面X線撮影から作図により回転中心を求める)により求めると大腿骨顆部付近に集合していることから,epicondylar lineが膝の回転軸を代表すると考えられている8).また,epicondylar lineは,人工膝関節置換術において大腿骨コンポーネントの回旋を決定する指標となることから詳細な検討が行われている.
 Epicondylar lineには,①外側上顆突起(lateral epicondylar prominence)と内側上顆溝(medial sulcus)を結んだsurgical epicondylar line3)と,②外側上顆突起と内側上顆突起(medial epicondylar prominence)を結んだclinical epicondylar line3,11)がある.外側上顆突起は,外側側副靱帯の付着部であり,内側上顆溝は内側側副靱帯深層の付着部である.内側上顆突起は,内側上顆溝の周囲にある三日月状の骨隆起(内側側副靱帯浅層の付着部)で最も突出している部分である.図1では,内側上顆溝の後方となっているが,症例によっては前方のこともある.

境界領域/知っておきたい

アトピー性脊髄炎

著者: 吉良潤一

ページ範囲:P.1276 - P.1278

【アトピー性脊髄炎とは】
 アトピーは,通常はダニやスギ花粉など無害で普遍的に存在する環境抗原に対して,高IgE応答を呈する体質をいう.アトピー性皮膚炎や気管支喘息では約8割が血清全IgE値が高くアレルゲン特異的IgEが陽性であることから,これらのアトピー性疾患はアトピー体質を背景に発症すると考えられている.近年,日本を含めた先進諸国でアトピー性疾患が激増しているが,アトピーにより中枢神経が侵されるような疾患は知られていなかった.
 ところが,最近われわれは,アトピー性皮膚炎患者に臨床的に特徴ある脊髄炎が発症することに気づいた2~4).この特徴を以下にまとめる.

国際学会印象記

『第27回国際腰椎学会』に参加して

著者: 高橋和久

ページ範囲:P.1280 - P.1281

 平成12年4月9~13日まで,オーストラリアアデレード市のコンベンションセンターにて第27回国際腰椎学会International Society for the Study of the Lumbar Spine(ISSLS)が開催された(写真1).本学会は例年6月に行われるが,今年はシドニーオリンピックの関係もあり,4月に開かれることとなった.学会の印象と発表論文について報告する.

整形外科英語ア・ラ・カルト・92

整形外科分野で使われる用語・その54

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.1282 - P.1283

●smart(スマート)
 通常,われわれがよく知っている“smart”は形容詞形であるが,辞書で“smart”の動詞のところを見て頂くと,創(キズ)などが“しみる”と書いてある.イソジン消毒などで創がしみると患者は,“It smarts”(イッ・スマーツ)と言う.

ついである記・50

Oswestryへの郷愁

著者: 山室隆夫

ページ範囲:P.1284 - P.1285

 1976年に私がOswestryのRobert Jones & Agnes Hunt Orthopaedic Hospitalに客員教授として滞在したのは7カ月間で,その間に私と家族とが一緒に暮らしたのは僅かに3カ月間であった。そんなに短い期間であったにも拘らず,私はその辺りに10年も住んでいる人間のように北ウェールズの地理にも詳しくなり,病院の職員は言うに及ばず,多くの村人とも親しくなって気軽に話し合える仲になっていた.それは,この土地が私の肌に合っているとしか言いようのない自然な近親感を初めから私に抱かせてくれたことと,この土地の人々が素朴で人なつこく余所者を差別することなく受け入れてくれたことなどによる.そのお蔭で,私はこの土地に住んでいる間,自分が外国人であることを忘れていることが多かった.

臨床経験

Klippel-Feil症候群に伴う頭蓋底陥入に対し後方除圧・整復固定術を施行した1症例

著者: 金明博 ,   納田真也 ,   山田将雄 ,   小坂理也 ,   阿部宗昭

ページ範囲:P.1289 - P.1293

 抄録:Klippel-Feil症候群に伴う頭蓋底陥入に対し、後方除圧とinstrumentによる整復固定術を行い良好な結果を得たので報告する.症例は14歳,男子.外傷などの誘因なく頚部から両肩にかけての疼痛と上肢の筋力低下にて発症した.来院時には上肢の挙上困難とふらつき歩行を呈していた.単純X線では頚椎の癒合椎と高度の頭蓋底陥入を,MRIでは大後頭孔内に陥入した歯突起と環軸椎亜脱臼に伴う環椎後弓による脊髄圧迫像を認めた.Halo-vestを装着し整復を試みたが困難であった.手術は後頭下減圧・環椎後弓切除および後頭骨頚椎間整復固定術(C0-C3)を施行した.術中,instrument(CCD-Cervical)のrodを利用した整復操作を加え,wake-up testにて新たな麻痺が生じていないことを確認した後,骨移植し手術を終了した.術後13カ月の現在,疼痛は消失し上肢の挙上,ランニングとも可能となっている,本法は術前に整復不可能な頭蓋頚椎移行部病変に対し有効な一手術方法と考える.

大腿骨転子間部に発生した類腱線維腫の1例

著者: 陣内均 ,   園田万史 ,   広野正邦 ,   高畑正人

ページ範囲:P.1295 - P.1298

 抄録:類腱線維腫は,稀な良性骨腫瘍である.われわれは,大腿骨転子間部に発生した本症の1例を経験した.
 症例は55歳女性で,右大腿部の鈍痛を主訴としていた.X-Pで,右大腿骨転子間部に嚢腫状陰影を認めた.MRIで,病巣はT1で低,T2で高輝度を示し,モザイク様であった.手術所見で,硬化壁内部は空洞で,壁面より弾性硬,灰白色の組織が採取された.病巣掻爬を行い,腸骨より採取した海綿骨とHAを充填した.病理組織では,典型的な類腱線維腫の所見であった.
 本症報告例のMRI所見は多彩で,これは術中所見も考えると,本症はある程度の大きさで内部に空隙を持ちつつ成長するのではと推測される.

腰椎固定術後に椎間板ヘルニアを発生した破壊性脊椎関節症の1例

著者: 宮下智大 ,   山縣正庸 ,   高橋和久 ,   田内利幸 ,   畠山健次 ,   平山次郎

ページ範囲:P.1299 - P.1303

 抄録:破壊性脊椎関節症(DSA)に対して腰椎後側方固定術を行ったが,術後5カ月で隣接椎間に椎間板ヘルニアを発生した症例を経験した.ヘルニア塊摘出と当該椎間の固定を行い,術後症状の軽快をみた.ヘルニア塊の病理組織像にはアミロイドの沈着を認めた.DSA患者では脊椎の不安定性と椎間板の脆弱性があり,固定術は隣接椎間板への影響が著明に生じる.本症例では術前からL5/S1椎間板の変性を認め,線維輪の易損性が高かったためヘルニアが生じたと思われる.DSA患者に対する脊椎固定術を行う際には隣接椎間への影響を含め詳細な検討が必要である.

舟状骨背側近位部に認めた偽関節の1例

著者: 関庄二 ,   中野正人 ,   平野典和 ,   酒井清司

ページ範囲:P.1305 - P.1308

 抄録:症例は19歳男性、主訴は右手関節痛であった.明らかな外傷の既往はなかったが,右手関節背側部に腫脹,疼痛,圧痛があり,圧痛の部位は嗅ぎタバコ盆のやや尺側に位置していた.可動域制限はなく,背屈強制時に著しい疼痛を認めた.単純X線像の45回外位にて舟状骨背側に遊離骨片が確認された.ストレス撮影,断層撮影,CTにより舟状骨背側近位部の偽関節と診断した.同部のキシロカインブロックが有効であったため,骨片摘出術を施行した.骨片は舟状骨の有頭骨関節面に位置し背側手根弓状靱帯に付着していた.術後は手関節の背屈を強制しても、痛みは認められなかった.今回,報告した近位部での裂離骨折の報告は,われわれが渉猟しえた限りでは,新鮮例の1報告のみであった.診断に際しては,度重なる背屈動作を行う柔道等のスポーツ歴の有無と45回外位X線像が重要であると考えられた.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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