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文献詳細

雑誌文献

臨床整形外科35巻12号

2000年11月発行

文献概要

視座

100年を越えて残るもの

著者: 吉川秀樹1

所属機関: 1大阪大学医学部整形外科

ページ範囲:P.1315 - P.1315

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 20世紀もあと数カ月となり新世紀が間近に迫りましたが,19世紀末になされ,すでに100年を経た,ある医学・物理学界の大発見について,ここに紹介し,100年を越えて残るものとは何かを考えてみました.
 物理学者ウィルヘルム・コンラッド・レントゲン(当時50歳)は1895年の暮,ドイツのビュルツブルグ大学の研究室にて,未知の線(X線)が物質を透過し,本やアルミは透過するが,鉛は透過できないことを発見しました.即ち,この未知の線を使うことにより,その透過度の差により目に見えない体内の構造を像として写し出すことに初めて成功したのであります.妻の手の骨のX線写真を添えて,『新しい種類の線に関する研究,第一報』と題した論文を投稿し,1896年1月1日に出版されました.肺の写真ではなく,手の骨のレントゲンが最初の論文に掲載されたことは,われわれ整形外科医にとって感慨深いことであります.このセンセーショナルな発見に,『驚嘆すべき科学上の大発見』と称賛する学者,『神を冒涜するものである,人類を死の恐怖に陥れるものである』と中傷する者,『私は,もっと以前に実験中にX線を観察していた』といった妬み,様々な称賛,非難が世界中を交錯しました,新しい大発見というものは,いつもこのような経過をたどるのは避けられないようです.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1286

印刷版ISSN:0557-0433

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