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視座
100年を越えて残るもの
著者: 吉川秀樹1
所属機関: 1大阪大学医学部整形外科
ページ範囲:P.1315 - P.1315
文献購入ページに移動物理学者ウィルヘルム・コンラッド・レントゲン(当時50歳)は1895年の暮,ドイツのビュルツブルグ大学の研究室にて,未知の線(X線)が物質を透過し,本やアルミは透過するが,鉛は透過できないことを発見しました.即ち,この未知の線を使うことにより,その透過度の差により目に見えない体内の構造を像として写し出すことに初めて成功したのであります.妻の手の骨のX線写真を添えて,『新しい種類の線に関する研究,第一報』と題した論文を投稿し,1896年1月1日に出版されました.肺の写真ではなく,手の骨のレントゲンが最初の論文に掲載されたことは,われわれ整形外科医にとって感慨深いことであります.このセンセーショナルな発見に,『驚嘆すべき科学上の大発見』と称賛する学者,『神を冒涜するものである,人類を死の恐怖に陥れるものである』と中傷する者,『私は,もっと以前に実験中にX線を観察していた』といった妬み,様々な称賛,非難が世界中を交錯しました,新しい大発見というものは,いつもこのような経過をたどるのは避けられないようです.
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