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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科35巻5号

2000年04月発行

雑誌目次

特集 脊椎外科最近の進歩―長期予後からみた問題点を中心として―(第28回日本脊椎外科学会より)

序:脊椎外科最近の進歩―長期予後からみた問題点を中心として

著者: 平林洌

ページ範囲:P.360 - P.361

 本特集号では,免疫組織化学や生化学的研究,遺伝子レベルの研究や人工椎間板の基礎的研究と,内容的にも,方法論の上でも最先端の論文が掲載されている.これらの論文から,21世紀の脊椎・脊髄外科の行くべき方向性が感じられる.
 第28回日本脊椎外科学会の主題として「脊椎外科の長期予後」を選んだ理由は,超高齢化社会の到来もさることながら,医療の変革に限らず,このような科学の進歩のスピードがあまりに速いことと無縁ではない.

大孔前縁腫瘍へのSuboccipital Condylar Approach

著者: 島本佳憲 ,   河瀬斌 ,   吉田一成 ,   内田耕一

ページ範囲:P.363 - P.369

 抄録:Suboccipital condylar approachでは通常の後頭下開頭にoccipital condyleの後内側部切除を加え,さらに脊椎管内に腫瘍が進展している症例では,C1,C2半弓切除、および環椎後頭関節の部分切除を追加し,一方,斜台中下部への進展が認められる症例ではjugular tubercleを硬膜外から追加削除する.これらの硬膜外からの骨削除により、硬膜内にて脳幹の圧排を全く要さずに良好な術野にて腫瘍を摘出することが可能となる.同アプローチにて8例の大孔前縁腫瘍摘出を施行し,7例において全摘出された.2例で術後に嚥下障害を来たしたが,3カ月で経口摂取可能となった.1例は術後7病日に原因不明の呼吸停止を来たし遷延性意識障害を来たした.この1例以外は平均4.2年の経過観察において,腫瘍の再発増大はなく現在社会活動可能な状態である.大孔周辺の手術解剖に熟知し,各症例ごとに術前充分な検討を行い,必要最小限の骨削除にて腫瘍の摘出を行うことが重要である.

頭蓋頚椎移行部手術,経口的減圧術について

著者: 高橋立夫 ,   山内克亮 ,   谷口克己 ,   高田宗春 ,   今川健司 ,   桑山明夫

ページ範囲:P.371 - P.377

 抄録:頭蓋頚椎移行部病変のうち整復不可能な頭蓋底陥入症,環軸椎脱臼,脊髄の腹側に位置する硬膜外腫瘍26例に対して経口的減圧術を行ってきた.合併する他病変のための心不全による死亡例,胸椎後側弯による対麻痺の例以外は,術後の神経症状の増悪はなく術後経過は良好であった.若年者あるいは脱臼してから日時の経っていない例では,頭蓋直達牽引,Halo-vest牽引などで整復を試みるべきである.さらに,筋弛緩剤を使用し全身麻酔をかけて直達牽引し,整復できたこともある.リウマチに伴う頭蓋底陥入症では,経口的減圧術後には高率に不安定性が増悪するので,同時期に後方固定するのがよい(5例).先天奇形に伴うものも術中透視で不安定性のあった例は,後方固定を加えた(9例).Down症候群にみられた例も靱帯が極めて弱く不安定なことが多いので,後頭骨から頚椎を固定した(4例).他には,Atlantoaxial rotatory fixation(Fielding III),Spondyloepiphyseal dysplasia congenitaによるAADなどが適応となった.

10年以上前に後頭頚椎固定術を受けた慢性関節リウマチ患者の転帰―患者予後からみた手術の意義について

著者: 松永俊二 ,   井尻幸成 ,   酒匂崇

ページ範囲:P.379 - P.383

 抄録:後頭頚椎固定術を受けた上位頚椎病変を有する慢性関節リウマチ患者の最終的転帰を知ることを目的として,最短10年の追跡調査を行った.脊髄症状に対してrectangular rodを用いた後頭頚椎固定術を受けた慢性関節リウマチ患者16名を対象として,術後のX線および臨床症状の変化,術後の生活様式,生命予後について検討した.atlas-dens interval(ADI)は,術後矯正が保持されていたが,垂直脱臼は最終的には矯正は術前の状態に戻っていた.後頚部痛は全例消失あるいは改善していた.脊髄症状は16例中12例(75%)がRanawatの評価で一段階以上の改善を認めた.術後の生命予後は術後10年での生存率は38%であった.慢性関節リウマチ患者に対する後頭頚椎固定術は頑固な後頚部痛の消失と脊髄症状の改善,そして患者の生命予後からも意義ある治療法であると考える.

RA頚椎病変術後の長期予後―術後10年以上を経過した症例の追跡調査結果

著者: 鷲見正敏 ,   片岡治 ,   池田正則 ,   向井宏

ページ範囲:P.385 - P.390

 抄録:RAは慢性進行性疾患であるため,頚椎病変に手術を考慮する際には,その長期予後について知る必要がある.筆者らは10年以上前に手術を施行したRA頚椎病変45例中35例を対象として追跡調査を行った.調査期間中の死亡例は24例で69%と高率であった.非脊髄症症例の術後成績は全例良好であった.脊髄症症例の成績は不良で,術後10年以上経過例の改善はみられなかった.病態別では環軸関節前方亜脱臼の成績は良好であったが,下位頚椎部病変や環軸関節垂直亜脱臼は不良であった.日整会点数は術後5年までは術前より改善していたが,術後5年以降から悪化していた.移動能力が術前に自立していた症例も術後5年を境として悪化例を認めたが,術前要介助例では術後2年とより早期に悪化例を認めた.環軸関節前方亜脱臼以外の長期成績は不良で,死亡率は高いが,術後2年から5年の間は良好な成績が期待されるため,積極的に手術を考慮すべきであると考える.

頚椎椎間板ヘルニアに対する顕微鏡視下経硬膜的髄核摘出術

著者: 藤本吉範 ,   馬場逸志 ,   住田忠幸 ,   田中信弘 ,   生田義和

ページ範囲:P.391 - P.396

 抄録:顕微鏡視下経硬膜的髄核摘出術(Microsurgical Transdural Discectomy with Laminoplasty,MTDL)は,脊柱管拡大と同時にヘルニアを摘出することによる,脊髄の直接かつ即時的な除圧を目的とした手術法である.1988~1998年の11年間に頚椎椎間板ヘルニア30例(正中ヘルニア4例,傍正中ヘルニア23例、傍正中~外側ヘルニア3例)にMTDLを行った.手術成績をJOAスコアを用いて評価すると,術前平均12.3点,術後平均14.9点(改善率平均70.0%)であった.硬膜切開に伴う合併症として考えられる偽性髄膜瘤および髄液漏等はなかった.MTDLの適応は,正中ヘルニアを除く多椎間の椎間板変性および脊柱管狭小化を伴う頚椎椎間板ヘルニア例であり,脊柱管狭小化のない一椎間のヘルニア例には従来からの前方除圧・固定術が適応である.

頚椎前方除圧固定術の長期成績―術後10年以上

著者: 持田潔 ,   小森博達 ,   河内敏行 ,   安部理寛 ,   新井嘉容 ,   大川淳 ,   四宮謙一

ページ範囲:P.397 - P.400

 抄録:頚椎前方除圧固定術施行後10年以上経過した63例の成績を検討した.平均follow-up期間は13.0年,疾患の内訳は頚椎椎間板ヘルニア10例,頚椎症性脊髄症26例,頚椎後縦靱帯骨化症27例,であり,除圧固定椎間数は平均2.4椎間であった.対象全体の経過中の最高点での改善率は平均70%であったが,最終では改善率55%であった.63例中46例(73%)では2点以内の変動はあるものの,最終follow-up時まで獲得点数を維持できており,満足すべき結果と考えられた.しかし,経過中に症状の再悪化が17例(27%)に認められ,そのうち9例(14%)では再手術(初回手術後平均7.9年)が行われた.主に後方法が追加されたが,初回術前からみた最終的な改善率は41%であった.再発の原因は,隣接椎間障害やOPLL症例での骨化進展であった.再発を回避できる除圧固定範囲の選択や術式の検討,さらに後方法とのprospectiveな比較研究が必要と考えられた.

頚椎症性脊髄症に対する前方除圧固定術の長期成績―術後10年以上における成績不良例の検討

著者: 高石官成 ,   松本守雄 ,   渡辺雅彦 ,   丸岩博文 ,   千葉一裕 ,   藤村祥一 ,   平林洌 ,   戸山芳昭

ページ範囲:P.401 - P.407

 抄録:前方除圧固定術を施行した頚椎症性脊髄症49例に対して,10年以上の長期追跡調査を行い,成績不良例の病態について考察した.JOAスコアは,術前平均9.1±1.7点,最終経過観察時で13.8±2.2点(改善率59%)と漸減傾向にあったが,長期的にもほぼ安定していた.固定椎間数や固定椎体角度は,術後の頚椎弯曲形態に関与しており,不良アライメントに伴う隣接椎間病変は遅発性の臨床成績悪化に有意に影響を与えていた.また,術後MRIにおいて,改善率と髄内高輝度信号強度比には相関を認めなかったが,脊髄横断面積には相関がみられた.術後長期経過例において観察された灰白質の高輝度領域を伴う広範囲の脊髄萎縮は,除圧後の循環改善が期待できない非可逆性の状態に加齢変化が加わった,重度脊髄障害の終末像と考えられた.

頚椎症性脊髄症に対する片開き式脊柱管拡大術の長期成績―術後10年以上

著者: 丸岩博文 ,   千葉一裕 ,   渡辺雅彦 ,   松本守雄 ,   藤村祥一 ,   平林洌 ,   戸山芳昭

ページ範囲:P.411 - P.416

 抄録:頚椎症性脊髄症に対し片開き式脊柱管拡大術を施行し,術後10年以上経過した27例(調査率54%)の手術成績を調査した.JOAスコアならびに平林法による改善率(%)は,術前平均8.4点が術後3年13.8点(58.4%),最終調査時13.1点(55.5%)と術後3年で最高となり,以後漸減するものの最終調査時まで概ね良好に維持されていた.後頭骨を含めた頚椎の前後屈可動域は約3分の2に減少していたが,ADLに支障のない症例では,ある症例に比し可動性が有意に保たれていた.遅発性悪化例を8例に認めたが,その多くは明らかな原因を認めず,加齢による運動能力の低下もその一因と思われた.しかし,8例中5例は非前弯型の弯曲形態を有していたことから,弯曲形態の変化も術後成績に影響を与えている可能性が示唆された.したがって,本法の長期成績をより向上させるには頚椎前弯位と可動性の保持に留意すべきと思われた.

頚椎症性脊髄症の術後長期成績についての検討

著者: 田口敏彦 ,   河合伸也 ,   金子和生 ,   加藤圭彦 ,   米村浩

ページ範囲:P.417 - P.420

 抄録:術後10年以上追跡調査可能であったCSM手術例において前方法と後方法の術後成績の検討を行った.術式の選択はdecision nodeを罹患椎間数にし,2椎間以内を前方法,3椎間以上を後方法(椎弓形成術)として検討した.平均19年の追跡期間では,前方法と椎弓形成術に成績の差はなく,Kaplan-Meier法での術後成績の安定推定期間は,それぞれ14年と11年であった.術後成績に影響を与える因子としては,1年以上の罹病期間(p<0.001)があり,前方法では,13mm以内の脊柱管前後径(p<0.05),後方法では,頚椎の弯曲異常(p<0.05)であった.術後10年以上経過して成績の低下する症例は,頚椎疾患以外によるものが多い.前方法,後方法ともに術後10年以上の安定した成績が得られており,今後の課題は術式の選択よりも術前にいかに脊髄の非可逆的変化を捉えるかが問題になってくると思われる.

頚椎後縦靱帯骨化症に対する骨化浮上術の長期成績―術後10年以上経過例

著者: 松岡正 ,   山浦伊裟吉 ,   黒佐義郎 ,   中井修 ,   進藤重雄 ,   水野広一 ,   大谷和之 ,   肱黒泰志 ,   四宮謙一

ページ範囲:P.421 - P.428

 抄録:頚椎後縦靱帯骨化症に対する骨化浮上術の長期成績について調査した.1975年より1988年10月までに骨化浮上術を施行し,術後10年以上経過観察できた63例を対象とした.手術成績はJOAスコア,改善率を用い評価した.平均改善率は術後最高時(術後平均3年6カ月)に72.0%,術後10年時に66.5%,最終調査時(術後平均13年)に59.3%となった.最終改善率50%以上の症例は41例(65%)を占めた.最終成績は罹病期間,術前脊髄最小面積,術前JOAスコア,最終調査時年齢に関連し,骨化占拠率,骨化厚に関連はなかった.脊柱関連の成績悪化因子として除圧不良,術後骨化進展を認めた.適切な除圧範囲が設定されれば,骨化の進展は抑制された.Hyperostosis症例では,尾側骨化横切部以下での骨化進展に注意を要した.骨化浮上術の長期成績は,満足できるものである.

頚椎後縦靱帯骨化症の長期手術成績―10年以上経過例の検討

著者: 井尻幸成 ,   武富栄二 ,   松永俊二 ,   石堂康弘 ,   領木良浩 ,   酒匂崇 ,   小宮節郎

ページ範囲:P.429 - P.432

 抄録:後縦靱帯骨化症の術後10年以上経過例の成績を調査した.対象は前方除圧固定術32例,椎弓切除術13例,椎弓形成術41例であった.これらの術後経過観察期間は最小10年,平均13.9年である.臨床成績の評価をJOA scoreにて評価し,特に術後成績の推移に影響を与える因子について検討した.成績有効群は術後1年で各群とも約70%,最終調査時で約50%であった,3群間に臨床成績の統計学的有意差はなかった.前方除圧固定術後の隣接椎間不安定性出現例と,椎弓形成術後の胸腰椎脊柱管狭窄症例で有意に術後成績の悪化がみられた.この研究による長期成績は,前方法と後方法で同程度の術後成績を示したが,それぞれに成績低下例があり,これらの因子を検討することが今後の手術成績の向上につながると考える.

腰椎椎間板ヘルニアに対するLOVE法の長期成績―術後10年以上

著者: 依光悦朗 ,   千葉一裕 ,   清水健太郎 ,   渡辺雅彦 ,   藤村祥一 ,   平林洌 ,   戸山芳昭

ページ範囲:P.433 - P.439

 抄録:腰椎椎間板ヘルニアに対するLOVE法72例の10年以上の長期成績を調査した.JOA scoreによる平均改善率は73.5%,再手術に至ったのは9例(12.5%)で,概ね良好な成績が維持されていた.しかし,術前既に椎間板変性が進行していた活動性の高い青壮年層に遺残性腰痛を認めた.また,X線上椎間板高が維持されていた群の術後成績は,狭小群に比し良好であったが,再手術に至った症例も同じく椎間板高は維持されていた.術後の椎間板高の変化は少なからず術中髄核摘出量を反映していると考えられ,摘出量を少なくすれば椎間板機能が維持され良好な成績が期待できる反面,再脱出の可能性も高くなると推測された.以上より,本法の予後は,術前椎間板変性度,術中髄核摘出量,さらに術後の機械的負荷に依るところが大きいと考えられた.

腰部椎間板ヘルニアに対する経皮的髄核摘出術―10年以上の経過観察からみた意義と問題点

著者: 持田讓治

ページ範囲:P.441 - P.445

 抄録:腰部椎間板ヘルニアに対する経皮的髄核摘出術症例の10年以上の経過観察43例を検討した.椎間板の可及的後方部から1g程度の少量髄核摘出を行った18例では2年以内に4例で再手術が行われたが,2年時の有効群率はその後よく維持され,10年以上の最終経過観察時の有効群率は72%と良好であった.一方,椎間板母髄核部も含めた広範椎間板摘出を行った群では,2年以内の再手術例は11例と多く,6カ月時に有効群であった症例の56%が最終経過観察時に無効群であり,最終の有効群率は36%と極めて不良であった.この群では,経皮的髄核摘出術後2年時までの急激な椎間板高の狭小化が,腰痛を含めた臨床症状の悪化と相関していた.椎間板に対する愛護的な手技によって,臨床上,画像上,安定した長期的結果が得られることが明らかにされた.

腰椎椎間板ヘルニアに対する前方固定術の長期成績―術後10年以上

著者: 名倉武雄 ,   千葉一裕 ,   藤村祥一 ,   平林洌 ,   戸山芳昭

ページ範囲:P.447 - P.451

 抄録:腰椎椎間板ヘルニア(LDH)に対し前方固定術(ASF)を行い,術後10年以上経過した38例について臨床成績の推移,隣接椎間のX線変化を調査した.Follow-up期間は平均12年7カ月,固定椎間は1椎間25例,2椎間13例で,うち34例にAO螺子締結法が併用されていた.
 術後中期(3~5年),10年以降でのJOAスコアを用いた平均改善率は83.2%,78.4%と良好であった.改善率25%未満の成績不良例は3例(8%)で,うち2例は固定下位椎間(L5/S)でのヘルニア新生のため再手術を要した.最終調査時,隣接椎間のX線上の変化として,椎間狭小化を6例(20%),不安定性または後方すべりの発生を4例(13%)に認めたが,いずれも臨床症状との相関はなかった.LDHに対するASFは術後10年以降も安定した成績を示した.長期経過に伴う固定隣接椎間の変化を33%の症例に認めたが,そのうち症状を呈し再手術に至ったのは2例(7%)のみであり,臨床成績に及ぼす影響は予想より小さかった.

L4-5腰椎椎間板ヘルニアに対する後方椎間板切除術と前方固定術の術後10年以上の成績

著者: 長田龍介 ,   石原裕和 ,   金森昌彦 ,   安田剛敏 ,   木村友厚 ,   辻陽雄 ,   松井寿夫

ページ範囲:P.453 - P.459

 抄録:L4-5椎間板ヘルニアに対する後方椎間板切除例と前方椎体間固定例の術後10年以上の成績を,後方椎間板切除例37例および前方固定例25例について検討した.術後1年の自他覚症状の合計点(15点満点)は後方椎間板切除例,前方固定例ともに良好であったが,最終調査時の平均点はそれぞれ13.5点(改善率82.4%),14.3点(89.9%)となり,前方固定例の成績がより安定していた.後方椎間板切除後に再手術を要した症例は3例で,その原因はいずれも局所の再発ヘルニアであった.前方固定後の再手術は2例で,その原因はL3-4の脊柱管狭窄とL5-Sのヘルニアであった.L4-5単椎間のprotrusionあるいはsubligamentous extrusionで,高い活動性を要求される比較的若い症例には,発達性狭窄および隣接椎間変性の有無を厳密に除外した上で前方固定を行うことにより,長期の安定した成績が期待できると考えられた.

腰椎椎間板ヘルニアにおける多数回手術例の検討

著者: 米倉徹 ,   高橋寛 ,   新井克佳 ,   岡島行一

ページ範囲:P.461 - P.469

 抄録:腰椎椎間板ヘルニアの多数回手術例の頻度と要因を知る目的で追跡調査を行った.1979年以降の手術例で術後10年以上経過し直接検診し得た92例(調査率71.9%)のうち,多数回手術例は12例13%で,初回手術は全例後方法であった.再手術の主因と頻度は再発8例8.7%,新生2例2.2%,その他2例2.2%などであった.性別は全例男性で,初回手術高位はL4/5:8例,L5/S1:4例であった.再手術法は再発例では主に固定術を,新生例では当該椎間に対していわゆるLove法を施行した.調査時におけるJOA scoreの改善率は再発70.5%,新生76.6%などであった.初回手術での椎間板摘出量と再発とは無関係であったが,タイプ別にはsubligamentous extrusion typeが多かった.X線学的不安定性と再発や新生ヘルニアとの間に相関はなかった.直接検診し得ず電話アンケートで確認した他医での再手術例2例を含めると,再手術率は12.3%と高頻度であった.

腰椎すべり症に対するpedicle screw fixationの10年以上経過例

著者: 徳橋泰明 ,   松崎浩巳 ,   若林健 ,   石川博人 ,   小谷野誠司

ページ範囲:P.473 - P.480

 抄録:pedicle screw fixation(以下PS)を併用した後側方固定術の術後10年以上経過例について検討した.疾患は変性すべり症20例,分離すべり症14例で,使用implantはVSP 33例,CD 1例であった.術後経過観察期間は10~12年,平均10.8年であった.骨癒合,臨床成績,術後の就労状況,合併症,X線上のすべりの変化や固定隣接椎間の変化,骨萎縮度について検討した.骨癒合率は90.6%で,JOA点数改善率も変性すべり症で68%,分離すべり症59.2%と良好であった.就労復帰とその維持も職種によらず良好であった.一方,当時のpsシステムの剛性に頼ったすべりの矯正・維持は後側方固定術では困難であった.合併症として固定隣接椎間障害が最も問題で,21例(65.6%)に隣接椎間にX線上異常可動性を認めた.うち9例に下肢症状発症し,6例(17.6%)は再手術に至ったが,術中操作に問題のある症例も多かった.また,後弯位癒合予防には後方開大程度によっては椎体間固定の導入が必要と考えられた.

腰椎変性すべり症に対する前方固定術の長期成績―術後10年以上

著者: 西澤隆 ,   千葉一裕 ,   渡辺雅彦 ,   藤村祥一 ,   平林洌 ,   戸山芳昭

ページ範囲:P.481 - P.487

 抄録:腰椎変性すべり症に対して前方固定術を行い,術後10年以上経過した27例(男性10例,女性17例)の長期成績と隣接椎間に与える影響について検討した.JOAスコアの経時的変化は,術後5年で最も高値を示し,以後漸減傾向を認めるものの、最終調査時12.8点(改善率68.8%)と良好な成績が維持されていた.前方固定術後の問題点として,隣接椎間の不安定性増大が危惧されるが,本研究の結果から,隣接椎間における最終調査時の椎間可動域ならびに椎間高は、術前と比べてむしろ有意に減少し,椎間は安定化する傾向にあることが示された.また,長期的にみた隣接椎間の変化は加齢による影響も大きく,必ずしも前方固定術のみによる変化とはいえなかった.DSに対する前方固定術は,その長期成績と隣接椎間に与える影響の点からみて,長期的にも良好な成績が期待できる術式といえる.

腰部脊柱管狭窄に対する開窓術の長期成績―術後10年以上経過例での検討

著者: 関修弘 ,   木田浩

ページ範囲:P.489 - P.496

 抄録:腰部脊柱管狭窄に対する開窓術の長期成績を術後10年以上経過した症例を対象に検討した.開窓術は,術後長期においても明らかに症状・所見の改善が得られ,除圧の効果が維持されていた.開窓術の長期成績には脊椎症と変性すべり症の間には差異は認められなかった.神経障害形式では,馬尾型は神経根型に比較し,術前・調査時のJOA scoreが低く,改善率も低かった.腰痛は,疾患や神経障害形式と関係なく有症率が術前より調査時において増加していた.症状の残存は,下肢痛と歩行能力は少ないが,下肢のしびれが多かった.特に,術前すでに馬尾障害を有し,神経障害が高度な混合型・馬尾型で下肢のしびれの残存が多かった.X線学的には,椎間高が減少し,腰椎前弯が減少する傾向が認められた.椎間不安定性は長期成績とは関連していなかった.長期成績に影響を与える因子は,JOAscoreからみた場合では術前の神経障害形式であり,予測因子として有用である.満足度には歩行能力の改善が影響していた.

腰部脊柱管狭窄症に対する非固定広範椎弓切除術の術後10年以上の超長期成績

著者: 中山潤一 ,   井口哲弘 ,   栗原章 ,   藤原朗 ,   山崎京子 ,   佐藤啓三 ,   笠原孝一 ,   松本英裕

ページ範囲:P.497 - P.501

 抄録:腰部脊柱管狭窄症に対して非固定広範椎弓切除術を行い,術後10年以上経過した37症例について長期成績を調査した.手術時の平均年齢は60.9歳で,術後追跡期間は平均13.1年である.臨床成績はJOA点数を用いて評価した.全体の平均改善率は55.2%であり,75%以上改善した優は35%,50%以上の良は22%で,優良合わせて57%を占めていた.項目別では腰痛の改善率が低値を示した.
 固定術を追加した症例はなく,再手術例は除圧椎間部での椎間板ヘルニア発症による3例のみであった.術後の成績不良に関与する因子としては,多椎弓切除および10°以上の椎間可動角があげられ,後者がより重要な因子と考えられた.非固定椎弓切除術は長期にわたり良好な成績が維持されており,原則的に固定術を併用しなくても十分な成績が維持され,推奨できる手術法といえる.

腰部脊柱管狭窄症に対する腰椎椎管拡大術の長期成績

著者: 小田裕胤 ,   河合伸也 ,   淵上泰敬 ,   伊藤裕 ,   國司善彦 ,   金子昇

ページ範囲:P.503 - P.510

 抄録:1976年以来,当教室では腰部脊柱管狭窄症に対し,腰椎椎管拡大術を実施してきた.椎間不安定性ありとして脊椎固定術が選択されることが多い腰椎変性すべり合併の狭窄症に,初期には腰椎椎管拡大術に脊椎固定術を併用し,その後,変性すべりの発生機序の解明からすべりの発生に深く関与する椎間関節の制動効果に着目して非脊椎固定で対応を,さらに,すべり下位椎後上縁の切除を含む全周性除圧へと術式に若干の変遷を来した経緯がある.今回の5年以上,平均7.6年の長期術後成績では優+良が88%と良好で,10年以上経過例においても優+良が76%と腰椎椎管拡大術の長期的にも安定した効果を確認するとともに,約半数を占める腰椎変性すべり合併の狭窄症の術式別の評価では,すべり下位椎の後上縁切除群が最も良く,脊椎固定群よりも優の頻度が高かった.切除群の3D-CT所見での前方へシフトした円筒形の新たな脊柱管の形成が,全周性除圧の治療効果を如実に反映していた.

腰仙椎後側方固定術の遠隔成績―20年以上経過例についての検討

著者: 田島直也 ,   後藤啓輔 ,   瀬良敬祐 ,   田口厚 ,   鳥越雄喜 ,   小西宏昭

ページ範囲:P.511 - P.517

 抄録:腰仙椎後側方固定術の20年以上(平均24年7カ月)経過例12例17椎間の遠隔成績を検討した.臨床上,日整会腰痛疾患治療成績判定基準の総合点は,25.7点であった.術後10年時の平均25.2点と変化なく,長期成績は安定していることが確認された.固定部位のangular displacement(以下AD)が1.1℃以内,horizontal displacement(以下HD)が4.4%であった.術後10年時のAD 2.5℃以内,HD 5.2%以内の結果と変化なく,骨癒合は10年前の状態が保たれていた.

腰椎変性疾患に対するPLIFの長期成績

著者: 大河内敏行 ,   大和田哲雄 ,   山本利美雄

ページ範囲:P.519 - P.526

 抄録:腰椎変性疾患に対する一椎間の後方進入椎体間固定術(PLIF)の長期成績について報告する.症例は213例で,疾患の内訳は椎間板ヘルニア(LDH)が154例,変性すべり症(DS)が29例,分離すべり症(SO)が30例で,手術時の平均年齢はLDH群が40.3歳,DS群が57.1歳,SO群が39.9歳であった.術後の平均経過観察期間はLDH群が13.8年,DS群が13.2年,SO群が13.9年であった.平均改善率はLDH群が85%,DS群が59%,SO群が78%であった.隣接椎間の変性進行による追加手術はLDH群の7.8%(12例),DS群の14%(4例)に行われているが,SO群ではなかった.これら以外の例で隣接椎間にみられた変性進行の頻度は,椎間腔の狭小化がLDH群で27%,DS群で41%,SO群で21%,また不安定性がそれぞれ6%,18%,4%であった.DS群に狭小化,不安定性を高率に生じていた.腰椎変性疾患全体としては,PLIFは少なくとも10年間は良好な手術成績を維持できた.しかし,変性すべり症は経年的に成績が低下する傾向があり,隣接椎間の不安定性がこの一因となっていると考えられた.

腰椎分離すべり症に対する前方固定術の術後10年以上の長期成績

著者: 石原裕和 ,   長田龍介 ,   金森昌彦 ,   川口善治 ,   大森一生 ,   木村友厚 ,   辻陽雄 ,   松井寿夫

ページ範囲:P.527 - P.533

 抄録:腰椎分離すべり症に対し腰椎前方固定術を施行し,術後10年以上経過した全35例中,死亡2例,追跡不能10例を除く23例(調査率66%,男性19例,女性4例,手術時年齢16~57歳,平均38歳)の術後10年以上の長期成績から,その価値と問題点を明らかにした.JOAスコアの経年的推移をみると,全体として良好な成績を維持しているが,術後5年以降やや成績が低下する傾向が認められた.項目別では,腰痛スコアの低下傾向が強かった.腰椎前方固定術は椎間板を十分に切除し,椎間を拡大位で固定することで,神経根除圧とすべりのある程度の整復を得ることができる.しかし,自家骨移植のみでは骨癒合までに移植骨の圧壊が生じ,ほぼin situの固定となった.移植骨癒合率は83%であった.偽関節例では経年的に腰痛スコアが悪化する傾向が認められたが,すべりの戻り,移植骨圧壊,骨癒合と臨床成績の間に有意な関係は認められなかった.X線上は多くの例に隣接椎間変性の進行を認めたが,これも臨床成績に影響を及ぼさなかった.

経皮的レーザー椎間板除圧術(PLDD)のあと再治療を要した症例の検討

著者: 鈴木省三 ,   宮内晃 ,   岩崎幹季 ,   山本利美雄 ,   米延策雄 ,   福田和也 ,   橋本一彦 ,   太田信彦 ,   満田基温

ページ範囲:P.537 - P.543

 抄録:他施設で受けたPLDDの成績に不満足なため当科および関連施設を受診した22例を対象症例とした.全例Nd-YAGレーザーを使用したPLDDによるものであった.適応は妥当と考えられるが,効果不十分であったものは2例で,適応に問題があると考えられる症例が12例,神経根損傷を疑わせる症例が2例存在した.局所合併症としては,4例に化膿性椎間板炎を,14例に椎体終板損傷を認めた.椎体終板損傷はMRIではT1低輝度,T2高輝度を呈し,CTでは骨硬化像で中心部に骨欠損を伴う症例もあった.治療は,随核摘出術を8例に,PLIFを6例に,前方固定術を2例に,開窓術を3例に行った.椎間板炎の2例と神経根損傷の1例には保存的治療を選択した.

骨粗鬆症による脊椎圧迫骨折後の後弯変形に対する脊椎後方短縮術

著者: 星野雅洋 ,   松崎浩巳 ,   小田博

ページ範囲:P.545 - P.550

 抄録:骨粗鬆症患者における胸腰椎移行部の圧迫骨折は,時に進行し後弯変形の増強,遅発性麻痺が発症し,脊椎除圧矯正固定術を要することがある.この病態に対し,脊椎後方成分を短縮することで椎体前方を開大せずに後弯を矯正し,同時に脊髄前方の除圧が可能であり,pedicle screwの後方脱転力を減少できる脊椎後方短縮術を9例に施行し良好な結果を得たので報告する.また,初期においては5椎体固定と前方法に比べ広範囲固定であったが,フックシステムの併用や椎弓根内へのハイドロキシアパタイトの移植により3椎体固定が可能であった.
 脊椎後方短縮術は骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折後の後弯変形に対する手術法の選択肢の一つになりうると考える.

慢性圧迫に伴う脊髄内神経栄養因子(BDNF,NT-3)とその受容体(trkB,C)の発現量の変化

著者: 内田研造 ,   馬場久敏 ,   前澤靖久 ,   久保田力 ,   吉澤今日子 ,   古川昭栄

ページ範囲:P.551 - P.557

 抄録:慢性圧迫状態にある脊髄の生存,維持のメカニズムを明らかにするために,後環軸膜の石灰沈着巣により脊髄が後方より圧迫を受ける遺伝性骨軟骨異常マウス(twyマウス)を用い,神経栄養因子である脳由来神経栄養因子(BDNF),ニューロトロフィン-3(NT-3),その高親和性レセプターであるチロシンキナーゼ(trkB,C)の免疫組織学的検討を行った.BDNF,NT-3およびtrkB,Cの免疫活性は,最大圧迫部において減弱し,その隣接部では強い活性を示した.イムノブロット法による各高位別の発現量の比較でも同様な結果が得られた.圧迫程度との関係では,リガンドおよびレセプターはその程度に対し発現量は増加し,それぞれ異なる発現パターンを示した.このことは,転写調節が異なった機序で行われ,機械的圧迫によって引き起こされるニューロンへの刺激伝達障害,軸索内輸送伝達障害,または周囲のアストロサイトによる神経栄養因子産生が誘因となり,各遺伝子発現パターンが変化しているためと考えられた.

後縦靱帯骨化症候補遺伝子COL11A2の多型によるmRNA発現の差

著者: 前田真吾 ,   古賀公明 ,   井ノ上逸朗 ,   酒匂崇

ページ範囲:P.559 - P.564

 抄録:われわれはこれまでHLA領域の罹患同胞対連鎖解析の結果から,コラーゲン11α2遺伝子を後縦靱帯骨化症候補遺伝子として変異(多型)を検索したところ,19カ所の多型を見い出している.患者・対照関連試験にて頻度の比較を行った結果,4カ所の多型で強い有意差を認めている.その中でも最も強い有意差(p=0.0004)を認めたのは,イントロン6(-4)の多型(T/A)である.イントロン変異なので、選択的スプライシングに影響を与えることが予想された.かつ,イントロン6周辺は複雑な選択的スプライシングが起こることがすでに示されている.頚椎棘間靱帯細胞を用いたRT-PCR法にてin vivoで観察し,イントロン6(-4)遺伝子型の違いによりスプライシングパターンが変化することを示すことができた.そこでさらにエクソン・トラッピング法にてin vitroでのスプライシングを解析し,イントロン6(-4)の多型がエクソン6のスキッピングに何らかの形で関わっていることを確認できた.コラーゲン11α2遺伝子の多型により発現するエクソンの組み合わせが異なるということは,OPLL発症における「遺伝的罹りやすさ」を考える上で興味深い.

椎間板ヘルニアのマトリックス分解におけるMMPの作用―MMPノックアウトマウスを用いた椎間板ヘルニアin vitroモデル

著者: 波呂浩孝 ,   ,   四宮謙一 ,   小森博達 ,  

ページ範囲:P.565 - P.573

 抄録:椎間板ヘルニアの手術検体を用いた研究で,ヘルニア塊には炎症性細胞浸潤と新生血管の増生が認められ,浸潤したマクロファージと椎間板ヘルニア内の軟骨細胞がプロテオグリカンやコラーゲン分解に強い作用をもつマトリックスメタロプロテアーゼ(Matrix Metalloproteinase;MMP)を強発現していることを確認した.外来性の浸潤マクロファージと椎間板内在の軟骨細胞の相互作用が,これらMMPの活性化に関与していると推測し,MMPの特異的作用について検討するため,MMP欠損マウスを用いたヘルニア急性期モデルを椎間板組織や軟骨細胞とマクロファージをコカルチュアーするvitroの系により作成した.
 軟骨細胞とマクロファージのコカルチュアーではプロテオグリカン分解に強い作用をもつMMP-3(ストロムライシン)とMMP-7(マトリライシン)が強発現していた.このコカルチュアーサンプルはカセイン分解活性を有し,様々な酵素阻害剤を使ってこの活性がMMPによるものであることが判明した.さらに,MMP-7は椎間板内へのマクロファージ浸潤に,MMP-3はマクロファージ走化因子の遊離に関与している可能性が示唆された.

全置換型人工椎間板の開発と臨床応用の展望

著者: 小谷善久 ,   金田清志 ,   鐙邦芳 ,   高田宇重 ,   角家健 ,   島本則道 ,   松本聡子 ,   海老原響 ,   廉澤剛 ,   藤永徹 ,   敷波保夫

ページ範囲:P.575 - P.580

 抄録:生体適合性微細繊維を多軸三次元立体形状に織り上げ,表面に生体活性セラミックス粉体を吹き付け処理した人工椎間板(3-DF Disc)を開発し,その生体活性と人工椎間板自体の力学的特性について検討した.さらに,成羊を用いた腰椎椎間板全置換術の有用性を生体力学的・組織学的に検討した.生体外において,3-DF Discは人腰椎椎間板類似の引張-圧縮,捻り特性を有していた.ウサギ𦙾骨を用いた静的条件下の生体内評価では,術後8週で骨梁と3-DF繊維は間隙なく接していた.羊腰椎を用いた人工椎間板全置換術において,内固定非使用群では術後6カ月の椎間可動性が著明に減少し,骨癒合も部分的であったが,内固定使用によりほぼ生理的な椎間可動域と優れた界面の骨癒合を示した.今後の臨床応用に向けての生体内吸収性材料を応用した人工椎間板置換術や解決すべき材料面での問題点についても述べた.

頚部脊髄硬膜と後縦靱帯の神経支配―免疫組織化学二重染色による検討

著者: 山田仁 ,   菊地臣一 ,   八木沼洋行 ,   杉浦康夫

ページ範囲:P.581 - P.586

 抄録:頚椎組織に分布する知覚神経と交感神経については未だ不明な点が多く,特にその形態学的な相互関係については,ほとんど明らかにされていない.われわれは,免疫組織化学的に二重染色法を用い,知覚神経と交感神経を同定し,頚部脊髄硬膜と後縦靱帯の神経分布と相互関係を検討した.硬膜の知覚神経と交感神経は髄節性の分布を示していた.一方,後縦靱帯のそれは非髄節性であった.また,知覚神経と交感神経の伴走が認められた.これらの神経やその分布形態は,頚椎由来の様々な臨床症状に関与している可能性がある.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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