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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科35巻8号

2000年07月発行

雑誌目次

視座

人工関節手術を考える

著者: 山本純己

ページ範囲:P.833 - P.834

 1970年のことであるが,英国ライティングトン病院にチャンレー先生を訪問した時の印象は今だに鮮明に残っている.彼の人工股関節手術(LFA)を勉強しようと,世界各国から毎週数十名の整形外科医が訪ねて来る.研修コースではチャンレー先生の人工股関節に対する考え方の基本から,実際に患者を診察し手術の適応の検討が行われる.さらに,手術場に入り,手術の見学と術中にも詳細な手技の説明がある.病棟回診では,術後のケアから退院後の生活指導まで,研修参加者と熱心な討論が行われた.
 当時,チャンレー式人工股関節は,チャンレー先生のもとで研修した医師以外には使用させないという主旨が浸透していた.そのためもあり,世界各国から関節外科を専門とする数多くの整形外科医がライティングトン病院の研修に参加していたと思われる.今日,チャンレー式人工股関節が世界各国に普及し,しかも長期にわたる好成績を残していることは多くの整形外科医の認めるところである.このような不動の業績を残している要因の一つに,彼のところでの研修を通じて,彼の考え方,手術手技が正しく伝えられたことにあったといえよう.

論述

大腿骨近位部悪性骨腫瘍に対する患肢温存症例の治療成績

著者: 中村紳一郎 ,   楠崎克之 ,   村田博昭 ,   橋口津 ,   平田正純 ,   平澤泰介

ページ範囲:P.837 - P.841

 抄録:インプラントを用いて再建した大腿骨近位部悪性骨腫瘍21例(原発性骨腫瘍13例,転移性骨腫瘍8例)の治療成績を検討した.Ennekingの患肢機能評価は平均72.5%と比較的良好であった.合併症として感染が多かったが,セメントビーズやスペーサーでコントロールが可能であった.

脊椎・脊髄疾患に対するリエゾン精神医学的アプローチ(第2報)―整形外科患者に対する精神医学的問題評価のための簡易質問票(BS-POP)の作成

著者: 佐藤勝彦 ,   菊地臣一 ,   増子博文 ,   岡野高明 ,   丹羽真一

ページ範囲:P.843 - P.852

 抄録:整形外科患者に合併する精神医学的問題を評価するための簡易質問票(治療者に対する質問8項目と患者に対する質問10項目)を作成した.整形外科疾患を有する52例に対して,治療前にこの簡易質問票による精神医学的問題の評価を行い,得られた結果と治療後における患者の満足度を比較検討した.その結果,質問票による治療者の評価点数と患者の満足度との間には有意な相関関係が認められた.しかし,質問票による患者の評価点数と治療に対する患者の満足度との間には相関性は認められなかった.したがって,患者の精神医学的問題を評価するには,治療者による評価が重要であり,患者自身の評価では限界があると言える.今回の検討から,われわれが作成した治療者に対する簡易質問票は治療に対する患者の満足度を予測する有用な評価尺度であることが示唆された.

原発性脊椎腫瘍に対する脊椎全摘術の経験

著者: 阿部栄二 ,   村井肇 ,   小林孝 ,   鈴木哲哉 ,   島田洋一 ,   佐藤光三 ,   森田裕己

ページ範囲:P.853 - P.858

 抄録:原発性悪性脊椎腫瘍の6例に腫瘍椎を椎弓根で2分割し,それぞれを一塊として摘出する脊椎全摘術(TES;富田法)を行った.腫瘍は骨肉腫2例,巨細胞腫2例,脊索腫2例である.罹患高位はT1,T6-8,L1,L1,L4,L5で,後方TESはT1,L1,L1の罹患椎に,前方・後方一期的TESはT6-8,L4,L5に行った.術後経過観察期間は平均3.8年(2.5~5.5年),完治(NED)が4例,2例が未完治生存(AWD).局所再発は腫瘍内切除となった骨肉腫の1例のみである.椎弓根切離部での腫瘍内切除は3例あったが,この部での局所再発はなかった.後方TESでは,3例中2例に神経根切離が必要であった.TESは重篤な合併症はなく,原発性脊椎腫瘍の局所のコントロールに極めて有用な術式である.

𦙾骨高原骨折に対する直視下整復術術後の関節鏡所見

著者: 黒石昌芳 ,   吉田和也 ,   土井良一 ,   三浦寿一

ページ範囲:P.859 - P.863

 抄録:𦙾骨高原骨折に対し,半月板前角部を切離し直視下に関節面を整復固定する方法の有用性を関節鏡視により検討した.対象は,𦙾骨高原骨折に対し直視下整復固定術を施行し,抜釘時に半月板の状態を鏡視下に確認しえた11例である.男性6例,女性5例で手術時年齢は平均49.2歳,抜釘までの期間は平均9.1カ月であった.受傷時半月板損傷は5例に認められた.抜釘時関節面は,良好な整復位が得られていた.また,切離し再縫着を行った半月板は完全に修復され,解剖学的整復位が得られていた.臨床評価においても良好な成績が得られていたが,1例のみ半月板切離部のclickと圧痛を認めた.今回の調査で,𦙾骨高原骨折に対する治療法として,直視下に骨折部を整復固定する方法は正確な整復位が得られ,切離後再縫着した半月板も修復されていたことから積極的に行ってよいと考えられる.

骨巨細胞腫に対するCusaによる掻爬と同種,自家骨移植の治療成績

著者: 森本一男 ,   赤松俊浩 ,   鵜飼和浩

ページ範囲:P.865 - P.868

 抄録:骨巨細胞腫は再発しやすく,時には悪性化が見られる治療に困難な骨腫瘍である,単なる掻爬,骨移植では高率に再発するので,手術に際し何らかの補助手術が必要である.
 画像で関節破壊が少なく,骨移植の母床がある骨巨細胞腫の12例に,high speed barとCusaを用いて掻爬し,同種,自家骨移植を行った.再発は1例で合併症もなく,良好な機能成績を得た.

手術手技 私のくふう

Iliac screwを使用した腰仙部固定術

著者: 鈴木勝郎 ,   清水克時 ,   細江英夫 ,   和田栄二 ,   西本博文 ,   栄枝裕文 ,   大野義幸 ,   楊中仁

ページ範囲:P.869 - P.876

 抄録:腰仙椎移行部に病巣を有する脊椎炎等に対する固定術の際,専用のiliac screwを用いたGalveston法にてinstrumentationを施行した9例を報告した.
 患者の平均年齢は57歳(19~76歳)で,術後平均観察期間は2年4カ月であった.固定脊椎高位はL4~SからL2~Sで,固定椎間数は2~4椎間(平均3.1椎間)であった.

骨形成的片側椎弓切除術の一工夫

著者: 青山朋樹 ,   高橋忍 ,   琴浦良彦 ,   鈴木毅一 ,   石部達也 ,   尾立征一 ,   青山隆 ,   秋山泰高

ページ範囲:P.877 - P.880

 抄録:骨形成的椎弓切除術は,近藤が通常の椎間板ヘルニアに対する術式として当初報告した2)が,現在ではLove法の普及のためあまり行われなくなってきている.しかし近年,T-sawを用いた脊椎外科手術が汎用するに伴い,再度本術式が見直されてきているように思われる.今回,T-sawと螺子を用いることにより本術式の欠点を補う一工夫を行い,少数例ではあるが良好な成績を収めているので報告する.

外傷性腓骨筋腱脱臼に対する手術手技の改良―Platzgummer変法

著者: 羽柴謙作 ,   北岡克彦 ,   池田和夫 ,   山田泰士 ,   山門浩太郎 ,   富田勝郎

ページ範囲:P.881 - P.885

 抄録:腓骨筋腱脱臼は比較的稀な外傷とされているが,活動性の高い症例が多く,その治療は重要である.一般に,陳旧例には手術的治療が行われており,その方法は多岐にわたる.われわれはPlatzgummer法に工夫を加えた術式を用いることで良好な成績を得ることができたので報告する.
 Platzgummer法に代表される腓骨筋腱のリルーティングは比較的容易で低侵襲な術式であるが,腓骨筋腱が踵腓靱帯によって絞扼される危険性がある.われわれは踵腓靱帯を腓骨遠位端外側の線維軟骨様組織に縫着することでこの問題を解決することができた.

整形外科/知ってるつもり

Robotic system

著者: 米延策雄

ページ範囲:P.888 - P.890

 ロボコップという言葉を耳にされたことがあるかも知れない.映画の主人公のサイボーグ警官である.しかし,ロボドック(ROBODOCTM)という言葉をご存知の方は多くはないかと思う.ROBODOCTMはアメリカで開発された手術用ロボットで,人工股関節全置換術において大腿骨コンポーネントを設置するにあたり,テンプレートを使用した術前計画を行い,術者に代わって骨髄腔を掘削するブローチ操作を行うロボットとして考案されたものである.ロボットが手術を行う.それは夢のような話であり,考えようによっては悪夢でもある.しかし,どこまでのものができているかは別にして,ロボットが手術をすることは現実となりつつある.現に,ドイツでは,現在までに既に3,500件を超える手術がこのROBODOCTMにより行なわれており,その有効性が報告されている.
 ロボットという言葉は,チェコスロバキアの作家チャペックによる造語であることはよく知られている.彼が戯曲(ロッサム・ユニバーサル・ロボット会社)の中で意味したロボットは人に代わって辛い労働を行う自動機械であり,人々を労苦から解放するものであった.その概念は,多くの産業用ロボットとなって現実のものとなり,現在の工業社会を支える基盤技術の一つとなっている.

講座

認定医トレーニング講座―画像篇・43

著者: 西本博文

ページ範囲:P.891 - P.894

症例:76歳,女性(図1)
 主訴:歩行障害,両下肢のしびれ
 現病歴:1年前より両下腿から足部にしびれを自覚するようになり,近医にて腰部脊柱管狭窄症の診断にて,薬物療法,理学療法を受けるも次第に増悪傾向を認めた.6ヵ月前より歩行障害(つまずきやすくなった),両手指のしびれ,膀胱直腸障害が出現したため,当科を受診した.

整形外科英語ア・ラ・カルト・89

整形外科分野で使われる用語・その51

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.896 - P.897

●sesamoid bone(セサモイド・ボーン)
 胡麻の実を意味する“sesame”(セサミ)は,ギリシャ語由来の言葉で,英語で“sesamoid bone”と言えば“種子骨”を意味する.人体には多くの種子骨があるが,その中の最大の“sesamoid bone”は“patella”である.
 “patella”の語源は“patina”(広い皿)で,その縮小形“patella”は“小さい皿”を意味する.膝蓋骨を,日本語でも時々“膝の皿”ということがある.これは西洋も東洋も同じ概念である.

ついである記・47

ハワイ島

著者: 山室隆夫

ページ範囲:P.898 - P.899

●太平洋戦争の1つの歴史的意義
 われわれ太平洋戦争の時代を経験した者にとっては,ハワイといえば1941年12月8日の未明に日本の海・空軍の行なった真珠湾攻撃のことがまず脳裏に浮かぶ.もう60年も前のことになるのに,当時10歳の少年であった私の記憶にすらこの奇襲攻撃の成功は一種の快挙として今も鮮明に残っている.それは太平洋戦争の緒戦におけるこの大きな戦果が,当時の日本国民の気持ちを戦争へと昂揚させるために,日本政府や軍部によって極めて有効に利用されたからである.また,一方アメリカ側でも,この奇襲攻撃は宣戦布告をする前の卑怯な攻撃であって国際法上も許されないものであると言って国際的にも大いに喧伝し,“Don't forget Pearl Harbor”というスローガンを掲げて自国民の反日感情の昂揚に努めたといわれる.
 あの時代の世界の政治的・経済的・軍事的情勢を考えれば,真珠湾攻撃の有無に拘らず,早晩,太平洋戦争は起こらざるを得なかったと思われる.そして,アメリカ・イギリス・フランス・オランダ・ロシアなど莫大な富の蓄積を持っていた当時の植民地大国を相手に戦っても日本に勝ち目が無かったことも今なら容易に理解できるところである.それにも拘らず,世界の大国を相手に日本が戦争を始めたのは当時の軍部の独走と狂気による,と言ってしまえば簡単であるが,その背景には大きな歴史的な流れがあったように思われる.

臨床経験

側方進入法にて摘出した上位頚髄部脊髄腸嚢胞の1例

著者: 辺見俊一 ,   松岡孝志 ,   金澤淳則 ,   宮本紳平 ,   和田英路 ,   米延策雄 ,   越智隆弘

ページ範囲:P.903 - P.907

 抄録:脊髄腸嚢胞は,比較的稀な硬膜内髄外占拠性病変の一つである.今回われわれは,上位頚髄腹側に発生した脊髄腸嚢胞の1例に対し,側方進入法により嚢腫を完全切除しえたので報告する.
 症例は9歳,女児.主訴は強い後頚部痛であった.術前MRIにてC1~C4高位の頚髄腹側に嚢胞性病変を認めた.これに対し,胸鎖乳突筋の後縁より上位頚椎側面に至る側方進入法にて,嚢腫を完全に切除した.術後,後頚部の疼痛は消失し,経過観察期間は短期間であるが頚椎の不安定性や再発も今のところ認めていない.

非定型抗酸菌感染による手関節部腱鞘滑膜炎の1例

著者: 北川篤 ,   辻本和雄 ,   高田正三 ,   津村暢宏 ,   藤田久夫 ,   多田公英

ページ範囲:P.909 - P.912

 抄録:左手関節部屈筋腱腱鞘に発症した非定型抗酸菌感染症を経験した.症例は64歳の男性.1994年2月頃,左母指全体の腫脹,1995年2月頃より左手関節掌側に,大きさ5×4cmで境界明瞭,周囲との癒着のない腫瘤を認めた.単純X線上,手根骨に骨嚢胞形成,骨萎縮像を呈し,MRIでは,境界明瞭の腫瘤状陰影を認めた.1998年2月3日,病巣郭清術施行し,病理組織上,リンパ球浸潤と少数の多核巨細胞による肉芽形成を認めた.また,一般細菌,嫌気性菌培養は陰性であったが,抗酸菌培養にてMycobacterium intracellulareが同定され確定診断に至った.4月下旬より,REF・EB・CAM・KMによる多剤併用療法を開始し,1年後の現在,腫脹の消退を認めている.同菌種による整形外科領域での報告は少なく,難治性の手の腱鞘炎の診断に際しては本症を考慮する必要があると考えられた.

スノーボードにより受傷した距骨下脱臼骨折の1例

著者: 水野直樹 ,   滝秀虎 ,   来田大平

ページ範囲:P.913 - P.916

 抄録:距骨下脱臼骨折は外傷性脱臼の中では比較的稀である.その受傷原因は,主に転落や交通事故で,スポーツではbasketball footと呼ばれるように球技でのジャンプの着地の際に受傷しやすい.今回,われわれはスノーボードにより受傷した距骨下脱臼骨折の1例を経験したので報告する.症例は27歳,男性.1999(平成11)年1月6日,スノーボードでワンメイクジャンプの際,トリックをしようとして空中でボードを右手でつかむ際,誤って右ブーツのビンディングの付属のストラップを引っぱり,空中で右ブーツのビンディングが外れ,着地の際に右足を捻って受傷した.同日,当科受診した.単純X線写真にて右距骨下脱臼骨折と診断し,鋼線牽引を行い,徒手的整復を加えることにより整復でき,保存的治療にて軽快した。本症例の受傷の背景には,そのビンディング着脱の便利さから,ワンタッチでビンディングが外れるように付属のストラップを取り付けていたことがあげられる.

腰椎破裂骨折に対する体幹徒手牽引整復術の経験

著者: 成瀬隆裕 ,   花木和春 ,   斎藤晴彦 ,   大島祐之 ,   石原銀太朗

ページ範囲:P.917 - P.920

 抄録:腰椎破裂骨折は手術的な除圧・整復を要することも多いが,多発外傷となって手術を待機せざるを得ない場合もしばしばある.
 今回,筆者らは本骨折3例に対し,受傷直後に,当科の斎藤の考案した体幹徒手牽引整復術を施行し,それにより受傷早期における神経障害の改善・疼痛の軽減を図ることができた.X線像でも,骨片の脊柱管占拠率の明らかな減少を確認できた.3例とも,その後除圧せずにpedicle screwによる後方固定を施行し,術後2年以上経過した現在も椎体圧潰進行や神経障害の悪化などはみられず経過良好である.

当科における陳旧性アキレス腱断裂の治療成績

著者: 石田直樹 ,   斉田通則 ,   木村長三 ,   飯田尚裕

ページ範囲:P.921 - P.923

 抄録:陳旧性アキレス腱断裂10例に対し,腱形成術を行い,良好な成績を得たので報告する.陳旧例の原因として,腱縫合術後の再断裂が5例と最も多く,保存的療法後3例,適切な診断の遅れが2例であった.手術法はLindholm法が8例,Kirchmayer法が1例,Kirchmayer法に足底筋腱をinterlacing surureし補強したのが1例である.術後の固定肢位および期間は,現在は膝関節30°屈曲,足関節20°底屈位にて膝上ギプスを3週間行い,その後足関節中間位にて,ヒール付き膝下歩行ギプス3週間の計6週間である.ギプス除去後,漸次荷重を増やし,9週で全荷重とした.合併症は,1例の表在性創感染と,1例でperoneal spastic flatfootとなったが,自己徒手矯正のみで改善した.術後平均9カ月で,全例正常歩行・疾走可能で日常生活上の問題も特になく,良好な成績を得た.

ガスを含んだ腰椎椎間板ヘルニアの3例

著者: 安川幸廣 ,   秋月章 ,   瀧澤勉 ,   小林博一 ,   北原淳

ページ範囲:P.925 - P.928

 抄録:ガスを含んだ腰椎椎間板ヘルニアの3例を経験したので報告する.
 症例は男性1例(46歳),女性2例(72歳,73歳)であり,L4/5椎間板が2例,L5/S1が1例であった.3例ともに下肢痛で受診し,MRI上椎間板高位に嚢腫様組織がみられ,CTにてその組織内にガスを認めた.また,椎間板造影にて椎間板と嚢腫様組織との交通も認められた.2例に手術を行い,摘出した組織はいずれも椎間板組織の病理像であった.術後経過は良好であり,また保存的治療を行った1例も退院後4年を経ても症状の改善をみている.X線上,椎間板変性に伴うvacuum phenomenonはよくみられるが,ガスを含んだ椎間板ヘルニアの報告は稀である.本症はヘルニアの内容物が脱水などの作用で吸収され,そこに椎間板中央部に生じた主に窒素を主体としたガスが入り込み,あたかも風船のように膨らんで神経根を刺激し,症状を惹起しているのではないかと考えられた.

Harris-Galante Porous CupにおいてLocking Mechanismの折損をきたした2例

著者: 銅冶英雄 ,   原田義忠 ,   神川康也 ,   阿部功 ,   老沼和宏 ,   赤松利信 ,   守屋秀繁 ,   北原宏

ページ範囲:P.929 - P.933

 抄録:HGPカップロッキングメカニズムの折損をきたした2例を経験したので報告する.症例1:HGP-Ⅰセメントレスカップを用いたTHA後9年目にステムのルースニングをきたし,手術所見でロッキングメカニズムの折損が認められた.症例2:HGP-Ⅱセメントレスカップを用いたTHA後7年目にライナーの脱転をきたし,extended mode 3D-CTにてロッキングメカニズムの折損が認められた.同様な折損はHGPカップ以外の機種では報告がないため,構造上の欠点が示唆された.また,2例のライナーの回転ずれはそれぞれ異なった方向のものであり,別の機序による折損と思われた.

非外傷性に発症したAeromonas hydrophilaによる壊死性筋膜炎の1救命例

著者: 平井利幸 ,   川西弘一 ,   宮田重樹

ページ範囲:P.935 - P.938

 抄録:肝機能障害,糖尿病を有する56歳男性の足に生じたAeromonas hydrophilaによる非外傷性の壊死性筋膜炎の1例を経験した.本症は稀ではあるが,皮膚科,内科,救急領域での報告は見られる.しかしながら,重篤疾患にもかかわらず,整形外科領域での認識は薄い.本疾患は迅速な診断と治療の開始が治療効果を期待し得る唯一の手段であり,今回救命し得た1例を経験したので,臨床像および文献的考察を加え報告する.

𦙾骨外反骨切りを行ったBlount病の1例

著者: 尾下英史 ,   篠崎雅人 ,   高津敏郎 ,   入江善二

ページ範囲:P.939 - P.941

 抄録:Adolescent typeのBlount病の1例を経験した.症例は12歳の女性で,10歳頃からの右膝の変形と膝関節痛で当科を初診した.単純X線上,femorotibial angleで197°,metaphyseal-diaphyseal angleで25°の内反を認めた.外傷,感染等の既往はなかった.MRIにて骨橋の存在はなく,𦙾骨内側骨端線の不整を認めたためadolescent typeのBlount病と診断した.𦙾骨外反骨切りを行い経過良好であるが,今後再燃する可能性があり,さらに経過を観察している.

母趾多趾症に伴った先天性内反母趾の1例

著者: 井上次郎 ,   鎌田真彦 ,   萩原明彦 ,   原和比古 ,   高岸憲二

ページ範囲:P.943 - P.945

 抄録:今回われわれは,母趾多趾症に伴った先天性内反母趾の1例を経験したので報告する.症例;7カ月の男児.家族歴;特記すべきことなし.現病歴;妊娠中異常なし.正常分娩.生下時より左母趾に内反変形を認めた.現症;左母趾が内反し,さらにその内側に余剰趾様の突出があり,皮下に,中足骨から基節骨レベルにおいて硬い索状物を触れた.X線像では,MP関節にて約40°内反していた.手術では,白く硬い索状物を切除,第1中足骨より母趾外転筋の筋腹を切離した.これにても,やや内反傾向残り,これは関節の形状によるものと思われた.外見上,母趾最大内転位としてKirschner鋼線を母趾先端より刺入し,矯正位を保持した.摘出した索状物の組織学的所見は軟骨組織であった.術後,Kirschner鋼線は4週で抜去した.術後1年の現在,内反傾向の再発は認められない.自験例は母趾多趾症の不全例であった.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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