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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科36巻3号

2001年03月発行

雑誌目次

視座

臨床研究者としての重要な視点

著者: 芝啓一郎

ページ範囲:P.241 - P.241

 我が国での先駆的な大変優れた基礎,臨床の業績が何故か日本の教科書に文献すら記載がないことがあるのはどうしても理解できない.先輩,教室,あるいは国内の論文,なかでも臨床研究が大切にされているだろうか.われわれは,日本の先人達による数多くの素晴らしい独創的な業績を把握し,それを後輩に伝える使命がある.しかし,日本の論文ではそれらの業績の紹介が抜け落ちていることが少なくなく,引用は海外論文で氾濫している.文献に記さないどころか,意外に我が国の先輩の論文を知らないのではないか.
 医療は医学を核とし肉付けされ血の通うものとなり,この得体の知れないものに探りを入れるところに臨床研究の面白さがある.われわれが本当に知りたいのは治療後の患者のQOLであるが,これを科学的に検証する確かな手法を持たない.臨床医の専門的判断は,論文にすることはできない様々な経験や技術によって磨き上げられる.諸外国とは患者の生活環境や習慣,体質や体型のみならず,保険制度も異なるため,我が国の臨床研究には海外では評価され難い一側面もあろうが,国外の論文では味わえない臨場感と言おうか,親近感さえ覚える.それが真に患者に役立つものであれば追試し,その研究を紹介しながら考察し,少し前進した論文にまとめることが臨床研究者の一つの任務である.

論述

矢状面の変化から見た腰椎変性すべり症のX線学的検討

著者: 若見朋晃 ,   井口哲弘 ,   栗原章 ,   佐藤啓三 ,   笠原孝一 ,   丸野英人

ページ範囲:P.243 - P.248

 抄録:腰下肢症状を伴った3,259名の外来患者のうち,立位中間位側面像で3mm以上の腰椎変性すべりを認めた患者は284例で,その存在率は8.7%であった.単椎間すべりは132例(66%)で,そのうち前方すべりは93例,後方すべりは39例に認めた.前方すべりは女性でL4に多く,後方すべりに比べ,すべり度が有意に大きかった.後方すべりは男性にやや多く,L2やL3の上位椎に多かった.多椎間すべりは69例(34%)に認められ,そのうち2椎間すべりが65例,3椎間すべりが4例であった.2椎間すべりをすべり方向の組み合わせにより前方型,後方型,混合型に分類すると,前方型は有意に女性に多く,しかもL3・L4に多かった.後方型は男性に有意に多く,L2・L3に多かった.混合型は性差はなく,L2の後方・L4の前方すべりの組み合わせが多かった.このうち臨床的に最も問題となるのは前方型と思われるが,今後詳細な症状との関連の検討が必要である.

𦙾骨高原骨折に対するbook-open法による治療成績

著者: 廣田健 ,   石山照二 ,   山本隆文 ,   太田信彦 ,   西塔進

ページ範囲:P.249 - P.254

 抄録:Book-open法による手術治療を行った12例につき治療成績を検討し,その有用性を評価した.骨折型はHohl分類B型2例,C型5例,D型1例,F型4例であった.𦙾骨前面をノミを用いて長軸方向に骨切りし,観音開き状に開大し,陥没骨片を関節面から約1cm遠位の部分で骨ノミにて切離,近位骨片を一塊にして持ち上げ整復,生じた骨欠損部には腸骨からの移植骨を採型してブロック状の骨移植を行い,内固定するという方法である.治療成績はHohl & Luckの評価法において,解剖学的評価で優6例,良4例,可1例,不可1例,機能的評価で優8例,良3例,不可1例であった.これは諸家の報告による成績と比較しても良好である.以上のように,𦙾骨高原骨折に対するbook-open法による骨移植術は良好な臨床的,X線学的成績が得られることがわかった.

自家腱を用いた膝内側側副靱帯補強・再建術

著者: 漆原誠 ,   大越康充 ,   山本一樹 ,   長崎晋矢 ,   橋本友幸 ,   多田博 ,   重信恵一 ,   金山雅弘 ,   山根繁

ページ範囲:P.255 - P.259

 抄録:新鮮膝内側側副靱帯(以下MCL)損傷に対する治療は保存的治療が一般的であるが,保存治療後の再受傷例や不安定性が残存し陳旧化した症例も少なからず存在する.このような症例に対し,筆者らは自家ハムストリング腱を用いたMCL補強・再建術を行っている.本論文の目的は,術式の紹介およびその臨床成績を報告することである.症例は19例19膝,平均年齢34.4歳,術後経過観察期間は平均28.3カ月であった.単独損傷は4例(うち陳旧例1例),複合靱帯損傷は15例(うち陳旧例6例)であった.臨床成績はIKDC評価法を用いて評価した.結果,徒手外反ストレステストは全例が陰性であった.Final evaluationはAが16例,Bが3例と,成績は良好であり,したがって,本術式は治癒傾向のない新鮮Ⅲ度MCL損傷,再断裂例および陳旧例の治療において有用であると考えられた.

慢性関節リウマチの足底荷重分布と荷重中心について

著者: 長紹元 ,   小黒賢二 ,   山根友二郎 ,   安部隆尚 ,   清水大

ページ範囲:P.261 - P.266

 抄録:靴底に設置した左右各1,260のセンサーをコンピュータに連動した測定装置Footscan systemを用いて外来通院中の慢性関節リウマチ(RA)患者45例の歩行時の足底圧の分布,荷重時間と荷重中心の移動を調べた.対照は患者と同年輩の正常人10人で,被検者をトレッドミルの上で時速500mで歩行させて測定した.
 RA患者の歩行時の荷重パターンは,①全趾荷重型(正常型),②母趾のみの荷重型,③足趾欠損型の三型に分けられる.荷重時間(立脚時間)は742msecで,正常人の荷重時間1,321msecに較べてかなり短い.患者は体をやや前傾させ小歩幅で歩行し,荷重中心はほとんど後足部にはなく,身体の前進に伴い,中足部から前足部に向かって移動する.正常人では歩行時荷重中心が後足部から中足部,前足部へとほぼ直線的に移動する.膝関節痛や足部の変形,疼痛,それらの手術による疼痛の解除,RAの活動性などは,RA患者の荷重時間とは相関しない.

手術手技 私のくふう

当科における手・指関節鏡用簡易牽引方法の工夫

著者: 西川真史 ,   小野睦 ,   長尾秋彦 ,   佐々木資成 ,   入江伴幸 ,   河野輝生

ページ範囲:P.267 - P.270

 抄録:手関節および指関節鏡視における簡易牽引装置の考案と,臨床応用について報告した.
 【方法】日曜大工工具店より購入したセミブルック(滑車)とベンチバイス(万力)を消毒して組み合わせ,滑車部が上になるように万力部分で滑車を固定する.次に,万力の作業台固定部分を手術用手台の角に滑車部が患肢軸を向くようにして固定する.手関節鏡の場合は示指・中指に,指関節鏡の場合は対象指にフィンガートラップをつけ,トラップの尖端に包帯を結びつけ滑車を通し,包帯の先に重錘をつけて牽引する.鏡視は2.7mm径の小関節鏡を用い,手関節鏡ではⅢ・Ⅳ・Ⅳ・Ⅴ portalから,指関節鏡では伸筋腱の両側から鏡視する.

慢性関節リウマチに対する新しい棚形成術―modified Sauvé-Kapandji法

著者: 藤田悟 ,   政田和洋 ,   橋本英雄 ,   冨士武史

ページ範囲:P.271 - P.277

 抄録:慢性関節リウマチの遠位橈尺関節障害に対して,Sauvé-Kapandji法を改良した新しい棚形成術を行い,良好な結果が得られたので報告する.この方法は切除した尺骨頭を90°回転させて橈骨の尺側に差し込んで固定するものである.術後1年以上経過した25例30手について,臨床症状とX線学的検討を行った.症例は男性9例,女性16例,手術時年齢は平均60歳,術後追跡期間は平均19カ月(12~34カ月)であった.X線学的にはcarpal height ratio(CHR),carpal translation index(CTI),palmar carpal subluxation ratio(PCSR)を評価した.術後全例に骨癒合が得られ,疼痛は全例とも消失もしくは著明に軽減した.前腕の回内外は術後平均17°増加した.CHRは術前平均0.47から最終調査時平均0.46になった.同様に,CTIは0.33から0.34,PCSRは0.22から0.22となり,いずれの値も術前後で統計学的有意差はなかった.本法は簡便であり,特に尺骨遠位端の関節破壊や骨吸収を伴う症例に有用である.

シリーズ 関節鏡視下手術―最近の進歩

膝半月板損傷の鏡視下手術

著者: 木村雅史

ページ範囲:P.279 - P.283

 抄録:近年,サイトカインや遺伝子を利用した半月板の修復,tissue engineeringを利用した半月板移植などの基礎的,臨床的研究が盛んに行われている.本稿では,それらの最先端の研究成果には触れずに,既に確立されている基本的な切除術と縫合術の実際について紹介した.新しい術式にはside effectを伴う危険性も認識し,さらにここに記した基本的な半月板手術の術式を踏まえて,安全で確実な,また成績向上を目指した鏡視下半月板手術が望まれる.

座談会

21世紀の整形外科医療の役割を考える―“The Bone and Joint Decade 2000-2010”・骨と関節の10年のスタートに呼応して

著者: 黒川髙秀 ,   平林洌 ,   大井利夫 ,   富田勝郎

ページ範囲:P.285 - P.297

 富田(司会) 「2000-2010年・骨と関節の10年」を一般整形外科医にPRして認識してもらいたいという趣旨で座談会を開かせていただきます.どういった方々の意見を聞きましょうかと編集委員会で検討致しました結果,最高峰の方々ばかりをご指名してしまいました.皆様,ご多忙中にもかかわらず本日はお越し頂き,ありがとうございます.

整形外科philosophy

婆娑羅(バサラ)教授夜話―臨床医として,大学人として(後篇)

著者: 赤松功也

ページ範囲:P.301 - P.306

 さあーて皆様方,十分にお休みになられたでしょうか.予定によりますと,いま暫くお付き合いいただくことになっております.このまま我慢してお目を拝借できればもっけの幸い.面倒くさい,打っちゃっちまえとお思いになれば,それも結構.では.

専門分野/この1年の進歩

日本足の外科学会―この1年の進歩

著者: 今給黎篤弘

ページ範囲:P.308 - P.311

 2000年6月30日,7月1日の2日間,東京新宿の京王プラザホテルにおいて,第25回日本足の外科学会が開催された.本学会は1976年に足の外科研究会として発足し,今回で25回を迎えた.二十世紀最後の学会であり,四半世紀が経ち,25周年記念学会として企画された.
 この記念すべき学会には,記念文化講演として早稲田大学教授・歌人の佐々木幸綱先生により「旅と詩歌~人の名前・土地の名前~」の題で講演がなされた.また,記念学術特別講演には長崎大学医学部名誉教授・鈴木良平先生による「足の履物の雑学」,大阪市立大学医学部名誉教授・島津 晃先生による「乳幼児扁平足の発症と緩解」,昭和大学医学部名誉教授・藤巻悦夫先生による「足関節脱臼骨折の病態と治療」の3題がなされ,いずれも格式の高い講演であり,会員に深い感銘を与えた.

日本肩関節学会―この1年の進歩

著者: 高木克公 ,   井手淳二

ページ範囲:P.312 - P.313

 第27回日本肩関節学会は,2000年11月10日・11日の2日間,熊本市の熊本市民会館と熊本ホテルキャッスルを会場として開催された(写真).
 本学会が目指したのは,21世紀へ向けて肩関節外科学の礎となる学会とすることであった.肩関節外科のメインテーマである肩腱板断裂と肩関節不安定症を中心に,その基礎研究を交えて発表・討論していただいた.

最新基礎科学/知っておきたい

テロメアとテロメラーゼ

著者: 土屋弘行

ページ範囲:P.314 - P.317

【テロメア】
 テロメア(染色体末端粒,telomere)とは,染色体の両端にあるTTAGGG(脊椎動物)という塩基の繰り返し配列で(図1),染色体の安定化に寄与している.テロメアは特異的な蛋白質を介して核膜と結合してDNA末端同士の融合を妨げ,異常染色体の発生を防止している.このテロメアは細胞分裂ごとに短縮していき,あるポイントまで短縮すると核膜との結合がなくなり,染色体の異常な結合や末端結合による転座を生じる.この大きな染色体異常により,それ以上の生存が不能となり細胞は死滅する.これが正常細胞の寿命に限りがある所以である.
 DNA合成酵素(DNAポリメラーゼ)は細胞分裂に際して染色体の末端まで複製しない(図2,末端修復問題).これは染色体複製に際して宿命的な現象である.したがって,細胞分裂のたびごとに,染色体の末端は少しずつ短縮する.テロメアはあたかも細胞分裂のために必要な回数券のようなものと言われている.このようにテロメアは「分裂時計」としての作用を持ち,ヒトテロメア長は加齢とともに次第に短小化することが明らかにされ細胞の老化と深く関係している.

講座

認定医トレーニング講座―画像篇・47

著者: 矢吹省司

ページ範囲:P.319 - P.322

症例:53歳,女性(図1)
 主訴:頚部から後頭部の痛みと重苦しさ,両手のしびれ
 家族歴・既往歴:特記すべきことなし.

国際学会印象記

『第15回North American Spine Society(北米脊椎外科学会)』に参加して

著者: 千葉一裕

ページ範囲:P.324 - P.325

 2000年10月25~28日の4日間にわたり,米国南部ルイジアナ州ニューオリーンズ市Hilton New Orleans Riversideにおいて,「第15回North American Spine Society(北米脊椎外科学会)」がNeil Kahanovitz会長のもとで開催されました.

整形外科英語ア・ラ・カルト・97

整形外科分野で使われる用語・その59

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.326 - P.327

 第95回の“straight leg raising”の項で,ラセーグ徴候(Lasègue Sign)の発音を間違って“ラセグー”と表記した.仮名の表示が誤っていた.御指摘を受けたので,訂正する.
 彼のフルネームは“Ernest Charles Lasègue”であり,フランス流発音で“ラゼーグ”と“s”が濁るが,英語では“ラセーグ”と濁らない.

ついである記・55

チェンマイの友

著者: 山室隆夫

ページ範囲:P.328 - P.329

 私はタイ王国とは少なからぬ縁がある.それは全く別々の機会に親しくなった何人かのタイ人医師との交友を通して太くなってきた縁である.この人達は夫々に強い個性を持った人達ばかりであるが,不思議に共通した国民性のようなものを持っている.それは接した場合に人としての当りが大変柔らかく,しかも信義に厚い人柄である.

臨床経験

指尖部に発生した悪性腫瘍の1例

著者: 目貫邦隆 ,   政田和洋 ,   吉中康高 ,   橋本英雄 ,   青木康彰

ページ範囲:P.331 - P.334

 抄録:70歳女性の右環指指尖部に発生した悪性腫瘍の1例を経験した.組織学的にはエクリン汗腺由来と考えられる悪性腫瘍で,遠位指節間関節離断術を行った.エクリン汗腺由来の悪性腫瘍は非常に稀で,文献的考察を加えて報告した.

母指MP関節亜脱臼の1例

著者: 谷野善彦 ,   堀内行雄 ,   菊地淑人 ,   小原由紀彦 ,   仁平高太郎 ,   西澤隆 ,   野村栄貴 ,   木原未知也

ページ範囲:P.335 - P.337

 抄録:外傷や慢性関節リウマチ(RA)などでも母指MP関節のみが掌側への亜脱臼を生じることは稀である.われわれは,原因の明らかでない母指MP関節亜脱臼の1例を経験したので報告する.主訴は右母指MP関節の疼痛であり,関節可動域は,MP関節伸展-20°,屈曲60°と可動域制限が認められ,IP関節も伸展-10°,屈曲40°と制限されていた.X線像でも健側の母指関節に変形を認めないのに対し,患側母指では基節骨が,中手骨に対して掌側亜脱臼位をとり,IP関節にも形態異常と側方への骨棘形成が認められた.保存的治療に抵抗したため,MP関節の観血的整復と関節包の縫縮を施行した.関節内に滑膜の増殖が認められ,中手骨背側の関節軟骨は,ほとんど消失していた.術後6カ月の現在,MP関節伸展-5°,屈曲20°と可動域の減少が認められるものの疼痛は消失し,日常生活動作に不自由はない.

症例報告

救命しえた頚椎化膿性脊椎炎による降下性壊死性縦隔炎の1例

著者: 西田英司 ,   鳥畠康充 ,   毛利良彦 ,   渡部公正 ,   鹿野尚英 ,   沼田仁成 ,   塗谷栄治 ,   広田幸次郎 ,   斎藤裕

ページ範囲:P.339 - P.342

 抄録:頚椎化膿性脊椎炎から進展し,早期の外科的治療で救命しえた降下性壊死性縦隔炎を経験した.症例は71歳,男性.発熱,後頚部痛,左上肢の筋力低下を主訴に入院した.単純X線,MRIにて第6頚椎椎体炎および硬膜外膿瘍と診断し,抗生剤を投与したが,9日目に急に呼吸困難を訴えた.胸部単純X線で縦隔陰影の増強を,CTで頚部から縦隔まで膿瘍を認めたため緊急縦隔ドレナージを行った.その後も炎症症状は持続し膿の排出が続いたため,2週間後に頚椎腐骨掻爬術,6週間後に硬膜外膿瘍除去術を行い救命できた.培養では混合感染の状態であった.
 降下性壊死性縦隔炎は通常,歯性,咽喉頭部感染が原発のことが多いが,本症例は化膿性脊椎炎より発症した初めての報告例である.

帝王切開後の仙骨疲労骨折の1例

著者: 小林良充

ページ範囲:P.343 - P.345

 抄録:症例は31歳の女性.双胎(第2後頭位,殿位)により妊娠37週で帝王切開を施行された後歩行時に右側の仙腸関節部,尾骨部痛を自覚した.初診時所見は右側仙腸関節部の圧痛,パトリックテスト,右側片脚起立で痛みを誘発できた.骨盤X線像で骨粗鬆症などの異常を認めず,産後4週で施行したMRIでは仙骨右側に典型的な疲労骨折像がみられ,骨折線が仙骨腹側から始まることを示唆する像を得た.安静により産後1カ月で軽快した.
 分娩後の仙骨疲労骨折は本例を含め2例経験している.産褥期の腰痛,特に仙腸関節部痛を訴える婦人には仙骨疲労骨折も考慮する必要がある.

胸髄から馬尾にかけて多発した脊髄神経鞘腫の1例

著者: 四戸隆基 ,   細江英夫 ,   西本博文 ,   石井光一 ,   清水克時 ,   長井肇 ,   田村清

ページ範囲:P.347 - P.350

 抄録:多発性脊髄腫瘍は比較的稀な疾患で,その殆どはレックリングハウゼン氏病を合併している.今回われわれは,同病を合併せず,胸髄から馬尾にかけて多発性の脊髄神経鞘腫を認めた1例を経験した.症例は65歳,女性.両下肢痛,両下肢筋力低下で発症し,7年前に胸椎部腫瘍,3年前に胸腰椎部腫瘍の摘出術を受けている.腫瘍は第12胸椎~第5腰椎高位に多数散在しており,部分切除にとどめたが術後2年の現在,症状の進行を認めない.多発性脊髄腫瘍で完全切除が困難でも,責任病巣の可及的切除で一定の治療効果を挙げることが可能と考えられた.

外傷後30年経過し発症した小指屈筋腱断裂の1例

著者: 西村章朗 ,   大谷和裕 ,   辻本晴俊 ,   福田寛二 ,   浜西千秋

ページ範囲:P.351 - P.353

 抄録:外傷後30年経過し発症した小指屈筋腱断裂の1例を経験した.症例は,8歳時に牛乳瓶で右手掌部に切創を受けた既往がある38歳男性である.右小指をドアのノブに引っかけ,直後より右小指DIP,PIP関節の屈曲障害に気付き当院受診した.画像所見より手掌部での屈筋腱断裂と診断した.術中,小指FDS,FDP,環指FDSの完全断裂を認め,環指FDSは瘢痕組織で連続していた.長掌筋腱を用いて腱移植術を施行した.本症例では,幼少時に完全断裂した小指屈筋腱が環指屈筋腱と癒着しており,急激な負荷で再断裂を起こしたと考えられた.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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