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テロメアとテロメラーゼ
著者: 土屋弘行1
所属機関: 1金沢大学医学部整形外科
ページ範囲:P.314 - P.317
文献購入ページに移動テロメア(染色体末端粒,telomere)とは,染色体の両端にあるTTAGGG(脊椎動物)という塩基の繰り返し配列で(図1),染色体の安定化に寄与している.テロメアは特異的な蛋白質を介して核膜と結合してDNA末端同士の融合を妨げ,異常染色体の発生を防止している.このテロメアは細胞分裂ごとに短縮していき,あるポイントまで短縮すると核膜との結合がなくなり,染色体の異常な結合や末端結合による転座を生じる.この大きな染色体異常により,それ以上の生存が不能となり細胞は死滅する.これが正常細胞の寿命に限りがある所以である.
DNA合成酵素(DNAポリメラーゼ)は細胞分裂に際して染色体の末端まで複製しない(図2,末端修復問題).これは染色体複製に際して宿命的な現象である.したがって,細胞分裂のたびごとに,染色体の末端は少しずつ短縮する.テロメアはあたかも細胞分裂のために必要な回数券のようなものと言われている.このようにテロメアは「分裂時計」としての作用を持ち,ヒトテロメア長は加齢とともに次第に短小化することが明らかにされ細胞の老化と深く関係している.
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