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整形外科philosophy
運動器外科を意識した整形外科の位置付け
著者: 桜井実12
所属機関: 1東北中央病院 2東北大学
ページ範囲:P.629 - P.633
文献購入ページに移動整形外科という言葉は東京大学初代の田代義徳教授がドイツ語のOrthopedieを日本語に翻訳したものであることはよく知られている.そして,殆どの教科書の緒言にその経緯が述べられているように,18世紀のフランスのNicolas AndryがL'Orthopédieなる医学書を出版したのがきっかけで,身体corpsの変形defformitétesを矯正しcorrigerかつ予防prévenirする医学の領域を提唱して冠した名称であった.-pédieはギリシャ語のpediaに通じる子供の意味と,足を表わすラテン語のpedesも兼ね備えた上に,pedagogyという教育学の響きをも持っている.筆者も長い間,学生の講義を担当していたがその冒頭で,わが整形外科のロマンティックな哲学を説いたものであった.三木威勇治先生の整形外科学入門をひもとくと,最初の整形外科の定義が拡大解釈されて,形のみでなく機能の回復を狙ったものであることが強調されているが,von Lorenzの先天股脱に血道を挙げていた日本の整形外科の実態はどうも診療科名に暗示されていた気配を感じない訳ではない.
整形外科は漢字だから中国由来の言葉だが,今現在,台湾を含み中国ではplastic surgeryを言い,orthopaedicsは骨科というそうである.
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