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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科36巻7号

2001年07月発行

雑誌目次

視座

“選ぶ”ということ

著者: 宮岡英世

ページ範囲:P.813 - P.814

 われわれは,いろいろな時々で,いろいろなことを選んでいる.たとえばこの症例ではこの方法を選ぼうとか,食事は今日は和食にしようとか….
 しからば選ぶということはどのようなことかと考えれば,「他を捨てる」ことである.ということは,「選ぶ」ということは重大なことである.しかしわれわれは,いとも簡単にいろいろなことを選んでいる.岐路に立つという言葉があるが,これも選択であるので他は捨てて片方の路を選ぶことである.この決定ができないと目的とするところに到達できない.残念ながら時に選択の誤りという結果になるが,一般的には遠回りであったり,より困難な状況に遭遇したとしても,少しずつでも前進すれば目的に達することができる.しかし一から出直しということも全くないわけではない.ゴルフでは,OB,ロスト・ボール,ウォーターハザード,アンプレアブルなど種々のペナルティーは科せられるが,救済処置がとられプレーを続けることができる.これが人生と同じようであるということで人気があるし,自己責任でプレーを行うということで最近流行りの自己責任を身近に感じる.私達がしているゴルフは遊びであるので,ペナルティーを科せられることはあたりまえのように感じているが,私達がこれまで選んできた路は果たしてペナルティー無しで歩んでこられたものであろうか,はなはだ疑問である.私などはOBと思ったボールが木にあたり,フェアウェイに出てきて,ラッキーと思う場面が多々あったと思う.

論述

骨粗鬆性脊椎圧迫骨折における骨吸収マーカーの臨床的検討

著者: 宮坂健 ,   大井利夫 ,   小山忠昭 ,   老沼和弘 ,   徳永誠 ,   常泉吉一 ,   政木豊

ページ範囲:P.815 - P.819

 抄録:骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折症例における骨代謝の状態を,骨吸収マーカーである尿中デオキシピリジノリン(Dpd)を用いて測定し,治療における臨床的意義につき検討した.
 新鮮脊椎圧迫骨折にて入院した閉経後女性48例に対してDpdを測定したところ,受傷後2週以内のDpd値は骨折群で有意に高値を示し,初回測定後約4週目では初回測定値より有意に増加を認めた.3例で長期にわたりDpdを測定し得た.軽快例ではDpdは正常化し,再受傷例では一度正常化したDpdは再上昇し,偽関節例ではDpdは高値を維持した.

腰部脊柱管狭窄の国際分類と神経障害型式―手術例の検討

著者: 武田明 ,   菊地臣一 ,   紺野慎一

ページ範囲:P.821 - P.824

 抄録:腰部脊柱管狭窄と診断して手術を施行した138例について,国際分類(Arnoldiら)と神経障害型式の対比を行った.神経障害型式は神経根型,馬尾型,および混合型の3群に分類し,国際分類の神経障害型式の特徴を明らかにした.脊椎症の外側型狭窄の神経障害型式は全例で神経根型であった.中心型狭窄における神経障害型式は神経根型39%,馬尾型13%,混合型48%であった.すなわち,画像は中心型狭窄であっても馬尾症状を呈するとは限らず,単一の神経根障害を来す症例が約40%存在した.一方,変性すべり症の神経障害型式はそれぞれ24%,36%,40%であった.変性すべり症では,脊椎症による中心型狭窄に比べ馬尾型を呈する頻度が高いことが判明した.
 脊椎症の外側型狭窄を除き,画像と神経障害型式は必ずしも一致しないことに留意する必要がある.

腰椎変性すべり症における除圧術にて改善される腰痛の臨床的特徴

著者: 西村行政 ,   常岡武久 ,   原寛徳 ,   弓削七重 ,   坂本和隆

ページ範囲:P.825 - P.828

 抄録:腰椎変性すべり症に対して後方除圧術のみを行った60例の腰痛の治療成績を検討した.腰痛の改善は良好であり,JOA scoreで術前平均1.75点が術後6カ月では2.70点となっていた.腰痛の改善度と術前の不安定性の有無との関連は認めなかった.腰痛の改善良好群と改善なし群とに分け,それぞれの術前の臨床症状や画像所見に差があるかどうかを調べた.その結果,改善良好群における腰痛は,歩行時に下肢痛とともに増強し,lateralityも存在するという臨床的特徴が認められ,改善なし群と差があった.しかし画像所見には,改善良好群と改善なし群との間に明らかな違いはなかった.すなわち,上記のような性質の腰痛を呈する例では,その腰痛は除圧術だけでも改善することが期待され,神経根に由来する可能性が示唆された.

遠位橈尺関節における変形性関節症―関節症の進行過程とX線進行度分類

著者: 井上貞宏 ,   工藤悟

ページ範囲:P.829 - P.834

 抄録:遠位橈尺関節(DRUJ)に変形性関節症(OA)を認める110例(男性67例,女性43例,平均年齢68歳)についてOAの発生,進行過程を検討し,X線所見をもとにしたOAの進行度分類を作成した.OAのX線所見では骨棘形成が最も多く認められ,次いで関節裂隙狭小化,骨硬化像の順であった.骨棘は尺骨頭の周囲と尺骨切痕の辺縁に形成されていた.OAの進行とともに尺骨手根骨間,肘関節のOAを高率に合併し,さらに,ulnar variance(UV)が増加していた.以上の結果より,DRUJのOAの要因にはUVの増加が重要ではあるが,肘関節や手関節の影響,解剖学的な素因,前腕回外・回内運動の影響なども重要であり,DRUJのOAは手関節尺側の変形性変化の一つとして進行することが考えられた.さらに,OAの進行過程では骨棘形成,関節裂隙狭小化,骨硬化像の所見が順に出現し,重複していくので,これらのX線所見に基づいてOAの進行度を分類することが可能であると考えられた.

股関節固定術に対する満足度の評価―10年以上経過例を対象として

著者: 稲尾茂則 ,   佐藤友合子 ,   松野丈夫

ページ範囲:P.835 - P.839

 抄録:1989(平成元)年までに股関節固定術を行った10年以上経過例に対してアンケート調査による患者視点での評価を行った.症例は19例(女性15例,男性4例)で,手術時平均年齢は39歳(24~53歳),平均術後経過期間は16.3年(10.9~23.8年)であった.原疾患は先天性股関節脱臼が16例,その他が3例であった.固定肢位はほぼ良肢位であり,実用脚長差は固定側で平均2cmの短縮であった.当該股には全例疼痛はなかったが,支持脚は2例を除き非固定側であった.隣接関節痛の訴えは,腰部が14例,同側膝が8例,反対側膝が8例であった.日常生活上最も不自由を感じる動作は,靴下の着脱・爪切りであった.手術に対しては58%が満足と回答したが,当時と同じ状況で再度固定術を受けることに68%が消極的な回答であった.本手術の選択は,除痛効果に加え不自由度や隣接関節障害等に関して患者側と十分話し合った上で慎重に決定される必要があると考える.

腎細胞癌の脊椎転移の治療経験

著者: 南部浩史 ,   川原範夫 ,   小林忠美 ,   赤丸智之 ,   村田淳 ,   富田勝郎

ページ範囲:P.841 - P.848

 抄録:〔目的〕腎細胞癌の脊椎転移症例に対する手術適応,術式選択について検討した.
 〔対象〕1990年からの10年間に手術を施行した腎細胞癌の脊椎転移症例14例を対象とした.

MRIからみた腰椎椎間板ヘルニア再発の危険因子と初回手術対策

著者: 村山岳 ,   村瀬正昭 ,   林義裕 ,   浜脇純一

ページ範囲:P.849 - P.852

 抄録:腰椎椎間板ヘルニア再発例はいかなる方法を選択しても皆無ではない.今回われわれは,再発ヘルニアを予防する目的で腰椎椎間板ヘルニア再手術例の危険因子を,椎体終板輝度変化の有無に着目し,術前のMRIからretrospectiveおよびprospectiveに検討した.Retrospectiveには再発にいたった11症例中9例(82%)に終板輝度変化を認め,その9例中7例(78%)は終板後方での輝度変化を認めた.Prospectiveには,初回にLove変法を行った111症例中,38例(34%)に終板輝度変化を認め,中でも後方の終板輝度変化を含むものは21例(19%)であった.同一椎間に再発を認めたものは111例中2例であり,このいずれも後方に終板輝度変化を認めた.術前のMRIにて後方終板輝度変化を認めるものに再発の可能性が高いことが判明した.

整形外科基礎

馬尾慢性圧迫モデルに対するLipo prostaglandin E1の効果―デジタルハイスコープビデオシステムを用いての検討

著者: 五十嵐環 ,   菊地臣一 ,   紺野慎一 ,   大谷晃司 ,   青木良仁

ページ範囲:P.853 - P.858

 抄録:イヌ馬尾慢性圧迫モデルを用いて,機械的圧迫による馬尾血流の低下と血流改善に及ぼすLipo prostaglandin E1の効果を検討した.馬尾圧迫モデルは,第7腰椎椎弓腹側と硬膜との間に挿入したバルーンにこんにゃくを注入し15分間加圧することにより作成した.7日後,圧迫部位より尾側の馬尾を露出し,デジタルハイスコープビデオシステムを用いて,馬尾の血流を経時的に記録した.記録した画像上でLipo prostaglandin E1投与前後の血流の変化を判定した.Lipo prostaglandin E1投与群では,馬尾血流の増加が対照群と比べ有意に認められた.Lipo prostaglandin E1には低下した馬尾の血流を改善する効果があると思われた.

最新基礎科学/知っておきたい

ES細胞:embryonic stem cell

著者: 岩本範顕 ,   岡野栄之

ページ範囲:P.860 - P.861

 胚性幹細胞(embryonic stem cell:ES細胞)は胚盤胞の内部細胞塊より作製された幹細胞で,三胚葉すべての細胞に分化することができる(全能性).ES細胞株は1981年にマウスを用いて初めて樹立され4),ヒトでは1998年に樹立された10).受精卵が図のように分裂を繰り返すと胚盤胞が生じる.胚盤胞は胎盤形成にあずかる外側の栄養外胚葉と内側の内部細胞塊から構成され,体を構成するすべての細胞は内部細胞塊から生じる.ES細胞はこの内部細胞塊を培養して得られ,未分化な状態で無限に増殖することが可能である.また,培養条件を変えることで神経細胞5),グリア細胞5),骨格筋細胞8),平滑筋細胞3),心筋細胞2),脂肪細胞1),血液細胞6)など,三胚葉すべての細胞に分化することができる.

講座

専門医トレーニング講座―画像篇・48

著者: 田中靖久

ページ範囲:P.863 - P.866

症例:58歳,主婦
 主訴:右手指のしびれならびに巧緻運動障害
 現病歴:3カ月前に,誘因なく右の肩甲骨部に痛みが生じた.2週間後に,頚部から右の上肢・全手指に放散する,びりびりとしたしびれが加わった.同時に右手が使いづらくなり,箸使い,書字,ボタンかけに支障が生じるようになった.しびれは,朝に軽く,起床後に増強し,上肢で内側に,手指で小指に最も強かった.左手指および両下肢には異常がなかった.

整形外科philosophy

整形外科のフィロソフイー

著者: 黒川髙秀

ページ範囲:P.867 - P.870

 整形外科が専門分野として認知されて200年以上,わが国の大学に講座が開かれてから間もなく100年になります.近代整形外科は19世紀末のX線発見にはじまり,20世紀後半の麻酔・抗生剤・人工材料の進歩が好環境となって成長しました.
 21世紀の初頭に立って20世紀の整形外科をふりかえると,これまで深くは詮索しなかった事柄のなかに,自他ともに明確にしておくべきものがあるように思われます.哲学の心得のない者がフィロソフィーと題するのは僭越ですが,理念あるいは基本的な考えという意味にご理解ください.

ついである記・58

ウィーンのBillroth-HausとLorenz-Haus

著者: 山室隆夫

ページ範囲:P.872 - P.874

 わが国では満60歳になると還暦の祝いをするが,欧米でも第60回目の誕生日には親戚や知人を呼んで大きなお祝いをする習慣がある.ウィーン大学整形外科の主任教授でSICOTの理事長を務めているコッツ教授(Rainer Kotz)は2001年の2月に満60歳の誕生日を迎えて,極めて豪華なパーティーや国際シンポジウムを以って多くの人々からお祝いを受けた.私もSICOTの元理事長でもありコッツ夫妻とは15年間に亘る親交があるので,招かれてそのお祝いの行事に出席した.彼我の祝宴のやり方にセンスの違いがかなりあって興味深く思ったので,まずそのことについて書いてみよう.

臨床経験

当科における鎖骨骨折(中1/3)の治療成績

著者: 渡邉航太 ,   吉田祐文 ,   松村崇史 ,   相羽整 ,   八代忍 ,   井上浩 ,   城本雄一郎

ページ範囲:P.877 - P.879

 抄録:鎖骨骨折91例の治療成績を保存療法群,手術療法群に分類しretrospectiveに検討した.手術療法群の骨癒合率は100%で,経過中のピンに関する合併症が16%に認められた.保存療法群の骨癒合率は96.3%で,治療中・治療後の愁訴はほとんどなかった.保存療法群では「転位の程度」と「骨癒合までの期間」との間に有意な相関を認めた.これより1.0横径以上の転位例では,手術療法群より骨癒合が遅延することが理論上明らかとなった.しかし手術療法群では相関を認めず症例によりばらつきが大きいため,1.0横径以上の転位例で手術療法を選択しても,必ずしも治療期間が短縮される結果にはならなかった.以上より,当科での鎖骨骨折の治療方針は基本的に保存療法とし,転位が著しく,確実な骨癒合を希望した症例に限定して手術療法を適応することと考察した.

高齢者の歯突起骨折―その臨床像と治療成績について

著者: 松本守雄 ,   千葉一裕 ,   西澤隆 ,   中村雅也 ,   丸岩博文 ,   藤村祥一 ,   戸山芳昭 ,   渡辺公三

ページ範囲:P.881 - P.884

 抄録:65歳以上の高齢者歯突起骨折13例(男9例,女5例,平均年齢74歳)の臨床像,治療成績について調査した.受傷原因は転倒・転落が多く,頚髄損傷を伴うものが4例(31%)であった.65歳未満の歯突起骨折62例と比較して,後方転位例が多かった.治療は保存療法が3例に,手術が10例に行われた.手術は歯突起螺子固定法が8例,後方鋼線固定法が2例であった.保存療法では3例中2例(いずれもAnderson type Ⅱ)が偽関節となった.歯突起螺子固定法では8例中7例(88%)で骨癒合が得られた.術後4カ月で1例が誤嚥性肺炎で死亡したが,残りは調査時生存していた.高齢者では長期臥床やhalo-vestによる固定が困難であることから,早期離床,骨癒合の獲得を目指して,歯突起螺子固定法を積極的に行うのがよいと思われた.

症例報告

仙骨に生じたinsufficiency fractureの2例

著者: 藤井隆太朗 ,   正富隆 ,   杉本瑞生 ,   冨士武史 ,   小野啓郎

ページ範囲:P.885 - P.888

 抄録:仙骨のinsufficiency fractureの認識が欠如していたために診断に難渋した2症例を報告する.症例は86歳男性,67歳女性で,2症例とも主訴は遷延する腰仙部痛.骨シンチで仙骨に集積像を認めたため,骨髄炎や転移性骨腫瘍を疑った.症例1はCT,骨生検施行するも腫瘍性病変認めず,確定診断が得られなかった.症例2は,MRIで仙骨骨髄内にびまん性の輝度変化を呈し,CTでは仙骨前面に骨皮質の断裂を認め,確定診断に至った.症例2を経験した後,症例1を再検討したところCTで骨折線を認めた.仙骨のinsufficiency fractureは骨シンチでは特徴的なH型の集積像を呈するとされており,今回の2例ともH型の集積像を呈していた.仙骨のinsufficiency fractureの診断には骨シンチ,CTが有用であった.高齢者の腰仙骨部痛を診察する際には念頭において診察すべきである.

中手骨より発生したBizarre parosteal osteochondromatous proliferation(Nora's lesion)―術後経過観察中に,残存石灰化組織の縮小傾向を示した1例

著者: 野澤聡 ,   高橋真 ,   四方實彦 ,   田中千晶 ,   池永稔 ,   中山富貴 ,   嶋田俊秀

ページ範囲:P.889 - P.892

 抄録:Bizarre parosteal osteochondromatous proliferation(以下BPOP)は,1983年Noraらによって提唱された,主に中手骨,指節骨,中足骨,趾節骨に傍骨性に発生する稀な骨軟骨性の増殖性病変である.中手骨に発生したBPOPを経験したので報告する.症例は56歳女性で,主訴は4年来の左手掌の腫脹と左示指の屈曲制限である.左示指MP関節の近位掌側に皮下腫瘤を認めたが,疼痛,炎症所見を認めなかった.X線像・CT・MRI等にて左第2中手骨骨幹部掌側に基底骨骨髄腔と連続性のない骨性腫瘤を認め,1999年5月,腫瘍切除術を施行した.病理組織所見にて,軟骨細胞は多形性でbizarreな核形態を呈しておりBPOPと診断された.術後1年5カ月の現在,残存した石灰化組織の縮小傾向がみられた.文献上約半数に再発がみられるが,X線像上縮小傾向を示した報告はなく,特記すべきことと思われた.

変形矯正,脚延長術を施行した大腿骨遠位骨端線損傷の1例

著者: 西山正紀 ,   二井英二 ,   明田浩司 ,   上野起功

ページ範囲:P.893 - P.896

 抄録:4歳時の大腿骨遠位骨端線損傷後,12歳時に4回目の手術で変形矯正,脚延長術を施行し,経過の良好な1例を経験したので報告する.症例;12歳,女児.主訴;左大腿骨遠位外反変形および短縮.現病歴;4歳時に左大腿骨遠位端骨折を受傷.前医にて保存的に骨癒合が得られた.その後左大腿骨遠位の外反変形が出現し,3回の手術が施行されたが外反変形は再発し,早期骨端線閉鎖により脚長差も著明となった.12歳当センター受診時,femoral angle 60°の外反変形と約7cmの脚長差を認めた.左大腿骨遠位にて骨切りを行い,約20°の内反矯正と末梢骨片の外側へのtranslationを行った.また近位骨幹部に脚延長用の骨切りを行い,Orthofix創外固定器にて固定した.7.6cmの脚延長後,抜釘時に膝関節鏡視下剥離術を要したが,経過は良好である.今後は,自然矯正された𦙾骨近位の内反変形を伴うため,関節症性変化に注意を要する.

von Recklinghausen病に伴う成人側弯症に対する前後合併手術の経験

著者: 細江英夫 ,   赤池敦 ,   西本博文 ,   坂口康道 ,   清水克時 ,   左合哲

ページ範囲:P.897 - P.900

 抄録:von Recklinghausen病に伴う骨組織の脆弱性を基盤とする脊柱変形は治療が困難である.手術的治療は,前方解離術,除圧術,腫瘍切除,脊椎インストゥルメンテーションなどを症例によって組み合わせて行う.症例は39歳男性で,腰痛と右下肢痛を主訴に来院した.全身のカフェオレ斑と椎体のdystrophic changeを伴うCobb角78°の左胸腰椎側弯を認めた.四点支持手術台上で腹臥位をとらせることにより症状が軽減するため,除圧や積極的な変形矯正は行わず,椎間板切除と椎間肋骨移植に後方脊椎インストゥルメンテーションを加えた一期的な前後合併手術を行った.その結果,腰痛,右下肢痛は消失した.一期的手術は入院期間の短縮,早期の社会復帰に,前後合併手術は確実な骨癒合,矯正損失の防止に有効であった.

頚椎症性脊髄症を伴ったnail-patella syndromeの1例

著者: 山本秀三 ,   津村暢宏 ,   高田正三 ,   辻本和雄 ,   水野敏行 ,   幸野秀志 ,   藤田久夫

ページ範囲:P.901 - P.904

 抄録:Nail-patella syndromeは爪の形成不全,膝蓋骨の形成不全や脱臼,肘関節の異常,腸骨外側の角状突起を4主徴とする比較的稀な遺伝性疾患の一つである.症例は35歳の男性,右膝の脱臼感,不安定感を主訴に来院し,爪の形成不全および右膝蓋骨の亜脱臼を認めた.23歳時に頚椎の異常を指摘され保存的加療を受けた既往があり,X線所見でも上位頚椎に限局した変形と四肢の不全麻痺を認め,頚髄症を伴ったnail-patella syndromeと診断した.右膝蓋骨の亜脱臼に対しては𦙾骨粗面内方移行術を行い,良好な結果を得た.頚椎病変に関しては,本疾患との関連も考慮に入れて今後とも注意深い経過観察を行っていく予定である.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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