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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科37巻10号

2002年10月発行

雑誌目次

視座

IT革命―ペーパーレスの時代

著者: 井樋栄二

ページ範囲:P.1147 - P.1148

 IT革命が叫ばれ,情報の多くはコンピュータを介して入ってくる時代になった.ペーパーレスの時代とも言われ,通信は従来の手紙に代わって,電子メールが主流になりつつある.電子メールは大変便利な通信手段である.相手が外国であっても,送信後数分で返事がくるということもしばしば経験する.英語では瞬時に届く電子メールに対して,日数を要する手紙をカタツムリ・メール(snail mail)とおどけて呼ぶこともある.スピードだけではない.電話のように無理やり相手の時間に割り込むことはないので,時間の暴力などと言われることもない.4年前にワシントン大学に見学に行ったとき,医局内の連絡が電子メールで行われているのをみて驚いたが,今ではうちの医局でも医局内の連絡事項は電子メールを使うのが一般的になっている.先月には,大学の事務から学内の連絡事項も,書面よりも電子メールを優先して使うとの連絡があった.時代は正に電子メールの時代に入った.手紙に続いて,雑誌,書籍も電子化されつつある.主だった雑誌は電子化され,その最新号は,雑誌が手元に届く前に,インターネット上でみることができる.図書館でも電子雑誌の購入が始まった.電子雑誌でしか流通しない雑誌も出始めている.電子雑誌には省スペースなどの利点に加えて,ビデオなどの動画を載せることができるという大きな魅力もある.さらに情報公開,医療の標準化という点からカルテの電子化も始まっている.

論述

鏡視下肩峰下除圧術後の造影MRI所見―Prospective study

著者: 宍戸裕章 ,   菊地臣一 ,   紺野慎一

ページ範囲:P.1149 - P.1151

 抄録:インピンジメント症候群や腱板断裂に対する手術後の造影MRI所見と症状との関連についてはいまだに不明である.本研究の目的は,鏡視下肩峰下除圧術後の造影MRIの臨床的意義を明らかにすることである.インピンジメント症候群と腱板断裂に対し鏡視下肩峰下除圧術を行った21例21肩を検討の対象とした.術前と術後にMRI脂肪抑制併用造影T1強調像を撮像し,肩峰下滑液包の造影効果の有無を検討した.さらに,MRI撮像時における肩関節痛とimpingement signの有無を調査し,MRI造影効果との関連を検討した,術後に疼痛やimpingement signが消失しても,術後平均4.4カ月(3~6カ月)の時点では,MRI造影効果は約70%の症例で消失しなかった.MRI造影効果のみでは術後の臨床的治療成績の評価を行うことはできないと考えられる.

腰椎変性すべり症の臨床所見の検討―単椎間すべりと多椎間すべり,前方すべりと後方すべりの比較

著者: 真鍋道彦 ,   井口哲弘 ,   栗原章 ,   山崎京子 ,   佐藤啓三 ,   笠原孝一 ,   西田康太郎

ページ範囲:P.1153 - P.1159

 抄録:種々の形態の腰椎変性すべりを分類し,その特徴的な臨床症状と所見を調査した.対象は腰下肢症状のため受診した3,259例のうち腰椎変性すべりを認めた183例である.これらを単椎間すべりと多椎間すべり,単稚間および多椎間での前方すべりと後方すべりに分類し,その症状を比較した.多椎間すべりは単椎間すべりより筋力低下が強く,低下した筋の数も多かった.単椎間すべりのうち前方すべりは下肢痛・しびれが最も頻度が高かったが,後方すべりでは腰痛が主であった.痛みの部位では前方すべりは殿部や下腿の疼痛が優位で,後方すべりは大腿部痛が多く,殿部痛は少なかった.また前方すべりでは,反射や筋力低下などの神経学的異常の頻度が高かったのに対し,後方すべりでは少なかった.本調査により種々の腰椎変性すべりにおける症状の差異が明らかとなった.各型の特徴に合わせた治療法の選択を考える必要がある.

手術手技 私のくふう

片側脊柱筋群を温存した椎弓形成術

著者: 細野昇 ,   坂浦博伸 ,   山崎勇二 ,   清水広太 ,   佐藤巌 ,   向井克容 ,   多田浩一 ,   吉川秀樹

ページ範囲:P.1161 - P.1166

 抄録:椎弓形成術においては時に術後のアライメント悪化や不安定性出現が認められる.これを克服するべく片側の傍脊柱筋を温存した椎弓形成術を考案したので術式を紹介し初期成績を報告する.片開き式椎弓形成術(C3~7)を基本にした.蝶番側では傍脊柱筋をほとんど剥離せず,その隙間に超音波硬組織メスを挿入して側溝を作成した.本術式を施行した24例が対象で,観察期間は平均25.0カ月(17~30),経時的に単純X線,CTを施行した.アライメント変化,すべり出現は各1例に認めたが,いずれも程度は軽かった.4例において拡大した椎弓の戻りをわずかに認めたが,これによる症状はなかった.従来の後方要素温存法は筋や棘突起をいったん切離して再建する方法であり,再建部の癒合に不確実性が残る.本法では筋肉・棘突起・その接合部をそのまま温存しているので,術直後から筋肉の力が棘突起を介して有効に頚椎に働くという利点を有している.

シリーズ 関節鏡視下手術―最近の進歩

Microendoscopic discectomy手術手技の実際

著者: 吉田宗人

ページ範囲:P.1167 - P.1175

 抄録:Microendoscopic discectomy(MED)は傍脊柱筋の剥離を要しないため術後創部痛が軽微で早期社会復帰が可能である.手技の習得が必要であるが,斜視鏡を用いた視野は直視下には見えない部位が確認でき,また従来法と違った内視鏡特有のアプローチで操作できる.筆者の経験した200症例は男性136例,女性64例,平均年齢は36.7±15.2歳であった.疾患の内訳は椎間板ヘルニア164例,腰部脊柱管狭窄症22例,椎体後方終板障害12例,嚢腫病変2例であった.罹患部位はL1/2からL5/S1に及び,下位2椎間が約8割を占めた.隣接2椎間アプローチはL3/4,L4/5が5例,L4/5,L5/S1が10例に施行された.手術成績は術前平均JOA scoreは13.8±1.9が術後平均27.4±1.8に改善した.手術時間は1椎間平均68分,出血量が31mlであった.本稿では筆者が行っているMEDの手術手技の実際と問題点や合併症対策について述べた.

専門分野/この1年の進歩

日本脊椎脊髄病学会―この1年の進歩

著者: 田島直也

ページ範囲:P.1176 - P.1179

 脊椎外科における病態の理解や治療法の開発・評価において脊椎・脊髄のバイオメカニクス研究の果たす役割は今後ますます重要になると考え,本学会としては初めて脊椎のバイオメカニクスを主題に取り上げた.幸い予想を上回る多数の先進的研究や新しい視点からの生体力学的研究結果が報告された.また,パネルディスカッションには臨床的に未解決で,学会として参加者にup to dateな流れをつかんで頂けるような問題を取り上げたところ,こちらもほとんどのセッションで白熱した討論が行われた.以下に主なセッションのみ抽出しその概要を述べる.

整形外科philosophy

海外における整形外科プライマリケアの現状

著者: 片田重彦

ページ範囲:P.1181 - P.1186

●はじめに
 卑近な話題で恐縮であるが,以前私は腰痛もちで,例えば車を運転して,降りようとするとき,また診察室の椅子から立ち上がって患者を診察するときに軽い疼痛があった.軽い痛みであるから真剣に悩むこともなかったが,これが何年も続いていた.あるとき手技療法であるAKA(後述)を友人の医師に試しに施術してもらったところ,この腰痛が全く消失してしまった.
 もうひとつ,腰痛の予防としてわれわれが学んだ方法がほとんど間違いであったことを知ったのはMckenzie法を知ってからである.車の運転のときlumber supportを腰椎の前弯部にあてることで腰痛を防げることを実体験して,いかにわが国の腰痛に関する知見が遅れているかに気がついたのである6)

整形外科/知ってるつもり

SAPHO症候群

著者: 大類広

ページ範囲:P.1188 - P.1190

 【概念】
 SAPHO症候群は,synovitis,acne,pustulosis,hyperostosis,osteitis syndromeの頭字語であり,骨関節病変と皮膚病変により構成される症候群である.
 従来より,前胸部に好発する無菌性の肥厚性骨病変の存在が知られており,胸肋鎖骨肥厚症,chronic sclerosing osteomyelitis,condensing osteitis of the clavicle,Tietze's syndromeなどの名称で呼ばれていた.このような骨関節病変は,脊椎,仙腸関節,四肢の関節にもみられ,ときに血清反応陰性脊椎関節症と類似した病変を示す.一方,慢性反復性多発性骨髄炎chronic recurrent multifocal osteomyelitis(CRMO)と呼ばれる疾患が報告されている8).この疾患は,小児期や青年期に,長管骨の骨幹端などに異時性,多発性,しばしば左右対称性の硬化性骨病変を生じ,局所の疼痛,腫脹,発熱などを伴うものである.これらは,しぼしば掌蹠膿疱症,膿疱性乾癬,痤瘡acneなどの皮膚病変を合併する11).Windomらは,1961年,acne conglobataと関節炎の関係を報告し,佐々木は,1967年,両側鎖骨の骨髄炎と掌蹠膿疱症の合併した症例をはじめて報告した10)

境界領域/知っておきたい

NK細胞

著者: 二木康夫 ,   谷田部拓 ,   松本秀男

ページ範囲:P.1192 - P.1196

【はじめに】
 NK細胞は,1975年にHerbermanによって,腫瘍細胞に全く曝露されていない正常なリンパ球のなかで,ある種の腫瘍細胞に対して強い細胞障害性を示す細胞として見いだされた.この標的細胞を破壊する現象は,自然に発揮されることからnatural killingといわれている.その後,NK細胞は癌細胞のみならずウイルス感染細胞に対しても抗原の事前感作なしに強いnatural killingを発揮することが明らかとなり,初期の免疫反応に重要であると考えられている.
 また,最近ではNK細胞を中心とした免疫システムは,大脳皮質の発達した人類において感情やストレスなどの精神状態に大きな影響を受けることも明らかにされている.ストレス刺激によってアトピー性皮膚炎が悪化したり,関節リウマチ(RA)の発症やその活動性が悪化したりすることも神経系-内分泌系-免疫系のネットワークが存在しNK細胞が自己免疫反応にも関与することの証拠である10).整形外科領域では,ラットのストレスモデルで末梢神経の再生や骨癒合が遷延することが報告され,少なからずNK細胞がこれらの治癒機転にも絡んでいる可能性がある.

運動器の細胞/知っておきたい

滑膜細胞

著者: 榎本宏之

ページ範囲:P.1198 - P.1199

【はじめに】
 人体に滑膜の存在する可動性関節はおよそ220あるとされている.関節腔は滑液を含む空間を関節包で囲われており,その内層を構成する滑膜は滑液の産生や吸収,血液との液性成分の交換を担っていると考えられている.本稿では滑膜の起源や特徴,さらに滑膜炎を伴う代表的疾患である関節リウマチ(RA)における滑膜病変についても述べる.

講座

専門医トレーニング講座―画像篇・57

著者: 渡辺秀臣 ,   篠崎哲也 ,   柳川天志 ,   高岸憲二

ページ範囲:P.1201 - P.1203

症例:16歳,男性
 主訴:左臀部痛
 現病歴:1年前より,高校の野球部に所属して右投げのピッチャーとして活躍している.2カ月前より,ピッチングの際に左足に重心をかけるときに左臀部痛を自覚するようになった.疼痛が持続したため近医を受診し,左坐骨の異常陰影を指摘され骨腫瘍を疑われて当科初診となった.

連載 医者も知りたい【医者のはなし】・1

貝原益軒(1630-1714)

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.1204 - P.1206

※はじめに
 貝原益軒は,福岡黒田藩の儒学者である.また医学の知識にも造詣が深かったので,医学者としても尊敬されている.このシリーズ第1回目は日本の整形外科の皆様に,この有名な益軒を紹介させて戴く.

医療の国際化―開発国からの情報発信

世界を繋ぐ草の根の国際協力―(1)ハイチでのこと

著者: 小原安喜子

ページ範囲:P.1208 - P.1210

 “ジョアス(仮名)が殴り殺されました.有り金も盗まれていたそうです”.送信文を読む目が涙に霞んだ.大きな,ラグビー・ボール型の実が拳ほどに小さく見える高い椰子の下で,兎眼の顔一杯に笑みを見せた姿が,霞の中に現れては消えた.
 ハンセン病で知覚を失った足に難治性潰瘍のできた彼は,1993年,初めて会ったとき既に両下腿切断となっていた.両上肢は,橈骨・正中・尺骨神経麻痺で廃用手に近く,日本の身体障害等級なら1級に該当する.

臨床経験

結核性脊椎炎に対するinstrumentationの術後成績

著者: 河村光廣 ,   井澤一隆 ,   岩名大樹 ,   鍋島隆治 ,   米延策雄

ページ範囲:P.1213 - P.1218

 抄録:当科では結核性脊椎炎に対し多椎間の病巣掻爬前方固定術を行った症例で,骨粗鬆または後弯変形が強い例に対しVarigrip systemを用いた後方固定を併用している.今回術後成績を多椎間固定で前方固定術のみ行った症例と比較し,その意義と問題点を検討した.対象は1990年6月から2001年1月までに前方固定術を行った症例のうち,15例(前方固定のみの症例7例:A群,Varigrip system併用8例:V群)である.術直後から観察時までの後弯角の平均矯正損失はA群14.7°,V群12.4°で,骨癒合はA群で平均14.1カ月,V群で平均12.2カ月を要した.平均臥床期間はA群18.1週,V群11.6週であり,固定範囲別では2椎間以上の固定でV群の方が期間が短く,早期離床に有用と考えた.しかし骨質が悪く強度が不十分な場合,移植骨や椎弓の骨折が生じており,これをカバーする支持力には限界がある.

症例報告

RA環軸椎不安定性に伴う環軸椎部後方腫瘤により頚髄症を呈した1例

著者: 高橋英也 ,   菅原修 ,   白川久統 ,   津村敬 ,   入江徹 ,   森末昌諭 ,   末松典明

ページ範囲:P.1219 - P.1223

 抄録:症例は75歳女性,ムチランス型のRA stage Ⅳ class 3で立位,歩行不能,坐位保持困難.神経学的所見は両手および下腿に末梢優位の知覚鈍麻,四肢の広範な筋力低下,上肢深部腱反射,膝蓋腱反射の亢進,右Babinski反射が認められ高度な頚髄症を呈し,JOAスコア5点であった.X線所見はRanawat値6mm,ADI前屈7mm後屈5mm,atlantoaxial angleは前屈0°後屈12°であった.MRIでは軸椎椎弓の腹側にT1低信号T2高信号の腫瘤を認めた.治療は後頭骨から第7頚椎までの後方整復固定を施行し,術後15カ月の臨床症状は,独歩可能となり経過良好である.環軸椎部後方の椎弓間部の腫瘤により脊髄を後方から圧迫した例は極めて稀である.環軸椎後方椎弓間部の腫瘤の発生機序は環軸椎不安定性が環椎軸椎間膜にたわみを生じさせ,慢性的な刺激が靱帯肥厚,腫瘤形成に関与していると推察した.

骨内ガングリオンを伴った両側舟状骨―第1楔状骨間癒合症の1例

著者: 李相亮 ,   北澤久也 ,   中山潤一 ,   前澤範明

ページ範囲:P.1225 - P.1228

 抄録:症例は32歳,男性.5年前より,特に誘因なく左足内側部痛が出現し,当科を受診した.単純X線,CT上,両側の舟状骨-第1楔状骨関節の底内側部に関節裂隙の狭小化と関節不整像を認め,両骨の相対する部位に骨嚢腫像を認めた.MRIにて,癒合部が確認された.以上より舟状骨-第1楔状骨間癒合症と診断した.保存的療法に抵抗したため,関節固定術を施行した.嚢腫内の病理組織は,ガングリオンであった.術後10カ月の現在,経過は良好である.足部内側部痛を愁訴とする患者に対しては,本疾患も念頭に置くことが重要である.

鎖骨重複骨折の1例

著者: 小林恵三 ,   黒田司 ,   綿谷和男

ページ範囲:P.1229 - P.1230

 抄録:鎖骨骨折は,日常よくみられる外傷であるが,重複骨折は比較的稀である.今回われわれは,鎖骨重複骨折の1例を経験したので報告する,症例は61歳,男性.交通事故で受傷し,右鎖骨の両端部に骨折を認めた.発生機序は,胸鎖関節に向かって外側からの介達外力により,靱帯で強固に固定されている胸鎖関節は脱臼せず,近位端に斜骨折を生じた.また肩鎖関節を含めた肩部が固定される肢位で受傷したため,遠位骨片が下内側に移動することにより,遠位端に斜骨折を起こしたと推測された.本症例は転位の程度が小さく,保存的に加療し良好な結果を得た.

開放性距骨完全脱臼の1例

著者: 渡辺隆洋 ,   石田博英 ,   柳橋寧

ページ範囲:P.1231 - P.1234

 抄録:非常に稀な開放性距骨完全脱臼の1例を経験したので報告する.症例は52歳の男性で,自動車の助手席に乗車中に運転手が急ハンドルを切った際,車外に投げ出され,その直後に横転した車の下敷きになり受傷し,同日当科外来に搬送された.初診時に左足部外側の開放創より遊離はしていないものの距骨が完全に脱出しているのが確認された.このため直ちに洗浄とデブリードマンならびに距骨を整復した.術後は距骨の無腐性壊死発生を調査するためにMRI撮影を行った.術後早期にはT1強調画像でlow intensity,T2強調画像でhigh intensityと壊死を疑わせる所見が認められた.しかしながらこれが経過とともに変化し,術後10カ月経過時にはMRI上明らかな壊死を疑わせる所見を認めなかった.本症例では距骨への血行は途絶していると考えられるが,受傷後早期に脱臼を整復しており,これが壊死を生じなかったひとつの要因である可能性が示唆された.

早期死亡したmetatropic dysplasia(変容性骨異形成症)の1例

著者: 明田浩司 ,   西山正紀 ,   二井英二 ,   山川徹 ,   小川邦和 ,   平田仁 ,   内田淳正

ページ範囲:P.1237 - P.1240

 抄録:Metatropic dysplasia(変容性骨異形成症)は,成長とともに四肢短縮型から体幹短縮型小人症へと変容する稀な骨系統疾患である.通常,非致死性であるが,臨床上およびX線像において,幅広い変異形(variant)が存在することが報告されてきている.今回,われわれは生後12週で突然死した1例を経験した.全身像およびX線像は本症に特徴的であり,さらにX線上高度な変形を認めており,本症における稀な変異形である致死型であると考えた.

後十字靱帯に発生した膝関節内ガングリオンの1例

著者: 中前敦雄 ,   出家正隆 ,   小林健二 ,   安本正徳 ,   新田泰章 ,   生田義和

ページ範囲:P.1241 - P.1243

 抄録:膝十字靱帯に発生するガングリオンは比較的稀である.今回われわれは後十字靱帯(PCL)に発生したガングリオンの1例を経験した.症例は25歳の女性.主訴は左膝痛と屈曲障害.MRIにてPCLガングリオンと診断し,後内側アプローチを併用した鏡視下切除術を施行した.術後,疼痛や可動域制限は消失し,MR像上もガングリオンの残存・再発を認めていない,PCLガングリオンの鏡視下切除術では関節内後方部分の十分な観察が必要であり,後内側ポータルからの鏡視は有用であった.

膝蓋下脂肪体内に発生し嵌頓症状を呈した限局型色素性絨毛結節性滑膜炎の1例

著者: 伊崎輝昌 ,   内田洋子 ,   平井伸幸 ,   浅川康司 ,   葉山泉

ページ範囲:P.1245 - P.1247

 抄録:色素性絨毛結節性滑膜炎(pigmented villonodular synovitis:PVS)は,稀な疾患で膝関節に発生することが多い.本論文で報告する限局型PVSは嵌頓症状を初発症状とし歩行時痛を主訴に受診した.病歴と理学所見から半月板障害を疑いMRI検査を行ったところ,膝蓋下脂肪体内に腫瘍病変を認めた.限局型PVSの膝蓋下脂肪体内の発生報告は過去に4例のみであるが,本例のように嵌頓症状を呈したものはない.本例に対しては鏡視下腫瘍摘出術を行い,術後速やかに日常生活に復帰した.術後20カ月の時点で関節痛や可動域制限なく,再発の兆候を認めない.

特発性脊椎硬膜外脂肪腫症の1例

著者: 須田義朗 ,   斉藤正史 ,   塩田匡宣 ,   佐々木政幸 ,   柴崎啓一

ページ範囲:P.1249 - P.1251

 抄録:特発性脊椎硬膜外脂肪腫症の1例を経験した.症例は61歳の男性で,左下肢痛と間欠跛行を訴えて来院した.MRIにてT1,T2強調画像ともに高輝度の硬膜外脂肪組織により,硬膜管が著明に圧迫されているのが認められた.椎弓切除および硬膜外脂肪の摘出を行って,症状は軽快した.ステロイド投与歴や肥満を伴う中年男性では,本症の存在を念頭に置く必要がある.

胸椎脱臼骨折の整復後に椎間板組織の嵌頓をみた1例

著者: 瀧上伊織 ,   宮本敬 ,   細江英夫 ,   青木隆明 ,   西本博文 ,   清水克時

ページ範囲:P.1253 - P.1256

 抄録:症例は24歳,男性.スノーボード外傷にて第11胸椎脱臼骨折,両側椎間関節ロッキングを受傷し両下肢不全麻痺を呈した.即日,観血的に脱臼を整復し,後方固定術を行った.術後,症状はやや改善を認めたが脊髄造影を施行したところT11/12に前方よりの圧迫のため完全ブロックを呈していた.受傷から5週後に前方除圧固定術を施行した.除圧の際に椎間板組織の脊柱管内への嵌頓を認めたため,それを摘除した.両側椎間関節ロッキングに対して後方からの整復を行った際に生じうる本病態は,特に不全麻痺を呈する症例において見過ごしてはならないものと考え,報告した.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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