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症例報告
文献概要
抄録:出血性の腫脹を繰り返し,保存療法に抵抗する前𦙾骨滑液包炎を呈した83歳の女性に対して,関節鏡視下に嚢腫切除を行った.手術は腰椎麻酔下に鏡視用バイポーラーとシェーバーにて嚢腫底を中心に可及的に嚢腫壁を切除した.術中の嚢腫の虚脱を防ぐため,嚢腫上の皮膚から直接には関節鏡を刺入せず嚢腫縁から約1cm離れた部位より皮下に関節鏡外筒を進め,嚢腫の近位と遠位それぞれ1カ所にポータルを作成した.術後3カ月にて嚢腫の消失を認めた.創治癒の遷延,有痛性瘢痕といった合併症を認めなかった.術後1年現在,嚢腫の再発はなく術前の痛みは消失している.膝立てなどの日常動作に制限はない.鏡視下手術は観血的手術に比較して低侵襲であり有用な方法と思われた.鏡視下切除においては全切除にこだわることなく,可及的な嚢腫壁切除により術後の癒着による嚢腫の消失を待つことが皮神経損傷などの合併症を回避するためによいと考えた.
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