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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科37巻3号

2002年03月発行

雑誌目次

視座

高齢化社会と整形外科

著者: 松末吉隆

ページ範囲:P.215 - P.216

 21世紀を迎え,いよいよ高齢化社会の到来となり,医療,看護,介護,福祉の分野でそれぞれ効率の良い運営と相互の協力関係についての論議がなされている.国民医療費の伸びの抑制は避けられないものの,健保本人の三割負担など見境のない削減策が提案されるなど,開業医は勿論のこと大病院で働くわれわれにとっても看過できない状況となってきている.難しい手の凝った手術をしても人件費や諸経費を引くと赤字になるようなシステムのなかで,本当にいい治療を行っていく医療機関が報われるような保険システムに変えて欲しいと願うものである.介護保険の導入により,医療と福祉の分別化がなされたが,医療と福祉とを全体での国民医療費として捉え,そのなかで真に必要な分野と治療法に支出していくべきであろう.3年目の医師と20年目のベテランの医師の手術料を含めた技術料が同じで,整形外科専門医と一般内科医の整形外科疾患での治療費が同じであるといった矛盾の解決はなかなか進んでいない.医療技術の進歩は新しい需要を生み出す一方,高齢化による有病患者数の増加により,医療費の自然増は当然のことといえる.また,最近増加率が鈍ってきたとはいえ,医師実数の増加は,必然的に医療費を増やす.

論述

脊髄くも膜嚢腫の拍動と髄液流―術中超音波検査による観察

著者: 杉山誠一 ,   細江英夫 ,   山本孝敏 ,   宮本敬 ,   吉田実 ,   清水克時

ページ範囲:P.217 - P.223

 抄録:脊髄症を来した胸椎部の硬膜内くも膜嚢腫6例に対して嚢腫摘出術を実施した.術中に超音波検査を実施し,Bモードで硬膜管内部の位置関係を,カラードップラーモードで髄液流を観察した.超音波画像は心拍周期および呼吸周期とともにS-VHSビデオテープに記録し,0.04秒間隔の1コマずつの画像に分解して解析した.全例でくも膜嚢腫は脊髄の背側に位置し,心臓収縮終末期にその上端の交通孔を通じて頭側のくも膜下腔から髄液の流入が繰り返されていた.くも膜嚢腫は人工呼吸の吸気相では心拍周期と同一のリズムで拡張と縮小を繰り返しながら徐々に増大し,反対に呼気相では拡張と縮小を繰り返しながら徐々に縮小していた.くも膜嚢腫の大きさは吸気終末期に脊髄を最も圧迫するように最大となり,呼気終末期に最小となっていた.交通性くも膜嚢腫では,嚢腫による静的圧迫因子とその拍動による動的圧迫因子の両者が脊髄障害の原因となりうることが推測された.

胸椎椎間板ヘルニアと脊椎症の単純X線像とMR像からみた鑑別法

著者: 後藤伸一 ,   山崎伸 ,   石井祐信 ,   佐藤哲朗

ページ範囲:P.225 - P.230

 抄録:胸椎椎間板ヘルニアと脊椎症を単純X線像とMR像から鑑別する方法を検討した.対象は椎間板ヘルニア10例,脊椎症8例の計18例である.単純X線側面像でヘルニアと脊椎症のspur indexを比較し,MR矢状断像で罹患高位の上下椎体後方隅角部の形状を捉えた.spur indexはヘルニアでは全例20%以下であり,脊椎症では全例30%以上であった.後方隅角部の形状はヘルニアでは全例が丸かったが,脊椎症では4例が嘴状で,残りの4例は把握できなかった.日常臨床においては,単純X線像でspur indexを求めて椎間板ヘルニアと脊椎症を鑑別するのがよいと思われる.

変形性股関節症が仙腸関節に与える影響

著者: 斎藤昭 ,   菊地臣一 ,   矢吹省司 ,   武田浩一郎

ページ範囲:P.231 - P.236

 抄録:変形性股関節症が仙腸関節に与える影響を明らかにすることを目的とした.対象は変形性股関節症の男性7例,女性130例の合計137例である.変形性股関節症の罹患側は,右側が46例,左側が50例,そして両側が41例であった.これらの症例に対し,仙腸関節痛,変形性股関節症の罹病期間,肥満度,出産回数,そして股関節可動域を調査した.さらに,単純X線像から仙腸関節部の骨硬化像,脚長差,および骨盤輪不安定性の有無を検討した.その結果,仙腸関節痛を認めた症例は27例(19.7%)であった.仙腸関節痛は,比較的若年者や骨盤輪不安定性を有する症例に出現しやすい.仙腸関節部の骨硬化像は78例(56.9%)に認めた.この所見は比較的若年者や変形性股関節症の罹病期間が長い症例に認めやすい.また,脚長差が大きい症例や下肢長の長い側に骨硬化像が出現しやすい.しかし,仙腸関節部の骨硬化像の存在が疼痛を直接反映するとはいえない.

成人の腰椎分離症・分離すべり症の保存的治療例の経過について

著者: 笠原孝一 ,   栗原章 ,   井口哲弘 ,   山﨑京子 ,   佐藤啓三

ページ範囲:P.237 - P.242

 抄録:当院における30歳以上の腰椎分離症・分離すべり症に対する保存的治療例の経過について調査した.最終治療成績は,ADL上支障のないものが78.1%と良好であった.しかし,初診時にJOAスコアが10点未満で,下肢症状を有する症例は予後不良となる場合が多く,特に初診時の点数が8点未満の症例では手術に至るものが多かった.治療成績を経過から検討すると,初診後1年までは寛解率は上昇するが,それ以後は変化なく,保存的治療の限界は約1年であると考えられた.また治療法では初期からのブロック療法は有用で,寛解までの期間を短縮できる可能性が高いといえた.さらに,初診時の単純X線所見と予後の関連性の検討から,側面機能撮影で2mm以上のすべりの増強を認める症例で予後不良となる場合が多く,患者の指導や予後の予測に有用であると考えられた.

頚椎症性脊髄症(軽症・中等症)入院保存的治療例の予後

著者: 本間大介 ,   黒石昌芳 ,   鷲見正敏 ,   池田正則 ,   向井宏

ページ範囲:P.243 - P.248

 抄録:頚椎症性脊髄症(以下,CSM)に対する保存的治療の効果の持続性について検討するために,入院による頚椎持続牽引法を施行したCSM 48例を対象として予後調査を行った.追跡調査期間は1年以上,平均4年4カ月であった.治療前日整会点数は13.0±2.1点で,退院時には14.0±2.0点へと改善していたが(p<0.01),調査時には13.5±2.9点へと軽度悪化していた.調査時に退院時より1点以上減点した悪化例は15例(33%)であった.悪化例は治療前13点未満例,Ⅱ型・Ⅲ型(服部)例に多くみられた(p<0.05).また,動的脊柱管狭窄因子陽性例,脊髄扁平率25%未満例,脊髄断面積35.0mm2未満例,脊髄横断面形態が三角型の症例にも悪化例が多くみられた(p<0.05).CSMに対して保存的治療を考慮する際には,これらの臨床所見,画像所見を参考にして予後を推測する必要があると考える.

男女間における腰椎変性すべり症の臨床像の違いについて―後方除圧術例の分析

著者: 西澤隆 ,   千葉一裕 ,   中村雅也 ,   松本守雄 ,   丸岩博文 ,   藤村祥一 ,   戸山芳昭

ページ範囲:P.249 - P.255

 抄録:1椎間の腰椎変性すべり症(以下DS)に対して後方除圧術のみを行った38例(男性18例,平均手術時年齢66.3歳;女性20例,平均手術時年齢68.3歳)の術後成績と画像所見を調査し,男女間における臨床像の違いについて比較検討した.後方除圧術後のJOAスコアの改善率は,男性群が60.8%,女性群が56.9%とおおむね良好であったが,女性群の腰痛スコアには有意な改善がみられなかった.画像所見では,男女ともすべりの進行とともに椎間高の狭小化と椎間可動域の減少が認められたが,術後のすべりの進行と最終調査時の最大すべり率は女性群で男性群より大きかった.また,女性群の骨棘形成は男性群より軽度であった.今回の分析より,DSには変形性変化の過程で生じる骨棘形成の高度なDSと,元来すべり症を発症する素因を持った骨棘形成の軽度なDSの2つのタイプが存在し,男性群には前者が,女性群には後者が多く存在することが推察された.

L5-S1椎体骨棘による第5腰神経障害―解剖学的および臨床的検討

著者: 松本守雄 ,   野尻賢哉 ,   石川雅之 ,   西澤隆 ,   中村雅也 ,   丸岩博文 ,   千葉一裕 ,   戸山芳昭 ,   市原眞仁 ,   西川雄司

ページ範囲:P.257 - P.262

 抄録:Lumbosacral ligament(LSL),仙骨翼およびその周囲組織で構成されるlumbosacral tunnel内における第5腰神経の絞扼について解剖学的および臨床的に検討した.解剖学的には29体の屍体を用いて,LSLの起始・停止,骨棘の有無,lumbosacral tunnel内での狭窄の有無について調査した.LSLの起始・停止は多彩であったが,仙骨翼からL5椎体あるいは椎体・横突起に付着するものが多かった.骨棘は7体(24%)に認められ,骨棘ありの群では86%,なしの群では4.5%で狭窄を認め,前者で有意に高頻度であった.臨床例ではL5-S1椎体骨棘による第5腰神経障害の4例(男2例,女2例,平均年齢57歳)に対し,3例には後方より仙骨翼の部分切除を,1例には前方より腹腔鏡視下に骨棘切除を行い,良好な除痛が得られた.以上より,L5-S1椎体骨棘により第5腰神経障害が起こり得ることが明らかとなった.L5領域の神経障害を呈するにもかかわらず,画像上明らかな脊柱管内病変を認めない症例では鑑別診断として本症を考慮する必要がある.

900℃焼成ハイドロキシアパタイトスペーサーを用いた頚部脊柱管拡大術の検討

著者: 金村在哲 ,   井口哲弘 ,   栗原章 ,   山崎京子 ,   佐藤啓三 ,   笠原孝一

ページ範囲:P.263 - P.269

 抄録:骨形成が良好といわれる900℃焼成ハイドロキシアパタイトスペーサーを用いた頚部脊柱管拡大術32例の臨床成績およびスペーサーの骨癒合について検討した.術後6カ月以降で撮影したCT像にて157椎弓全体で骨癒合は58.0%,骨新生は89.8%であったが,1年以上では骨癒合76.3%,骨新生96.1%と良好であった.しかしスペーサーの破損が4.5%に認められ,強度的には問題があると思われた.骨癒合に影響する因子としては,術後経過期間と術後の脊柱管前後径の関与が示唆され,良好なスペーサーの骨癒合を得るためには,十分な脊柱管の拡大が得られ,しかも棘突起があまり長すぎない位置にスペーサーを固定するのがよいと思われた.また骨癒合の指標として,スペーサーのCT値を計測したところ,CT値と撮影時期とは正の相関を認めた.さらに骨接触部および骨癒合群で有意に高いCT値を示したことから,CT値は骨癒合の指標になりうると考えられた.

専門分野/この1年の進歩

第29回日本リウマチ・関節外科学会を開催して

著者: 立石博臣

ページ範囲:P.270 - P.273

 第29回日本リウマチ・関節外科学会を2001年10月5日(金),6日(土)の両日,神戸市の神戸国際会議場で開催した.主として関節の二大疾患である変形性関節症,慢性関節リウマチの保存療法および手術療法についての検討を行い,通常は手術療法がほとんどであるが,今回は手術療法ばかりでなく,保存療法についても十分な検討を行った.

統計学/整形外科医が知っておきたい

3.一標本,二標本のノンパラメトリック検定―tよりU勢?

著者: 小柳貴裕

ページ範囲:P.275 - P.282

◆パラメトリック検定の大前提からの脱却
 元来歴史的にも統計学は実験データの分析に対する要請から進歩してきたものである.Pearsonの時代は,偶然変動の影響しか受けない正規分布だけを考慮していればよかった.しかし現代,観察による抽象的なデータや,順序によるデータの評価が繁用されるようになり,またその変動要因も多様化したため,仮定の厳格なt検定をはじめとしたパラメトリック検定より,たとえ検出力が落ちてもよりゆるい仮定のもとで適用できるノンパラメトリック検定のほうへと指向が変わってきた.ノンパラメトリック手法とはdistribution free,すなわち正規分布によらない手法と考えてよいようだ.正規分布の条件に縛られることへの批判から生まれてきたものといえる.

整形外科/知ってるつもり

変形性膝関節症と肥満

著者: 戸田佳孝

ページ範囲:P.284 - P.286

【意外に研究されていない減量の効果】
 変形性膝関節症(膝OA)と肥満の関連性については欧米人を対象とした調査からよく知られている.しかし,2000年に米国リウマチ協会のOA治療ガイドライン委員会から出された総括でさえも「減量と膝OAの症状改善度との関連性についての無作為化前向き試験はTodaらの結果が唯一のデータである」としてわれわれの過去の文献を引用している1,5).このように,肥満した膝OA患者に対する減量療法の効果を定量的に評価する研究は肥満の本場(?)欧米でもあまり進んでいない.

整形外科英語ア・ラ・カルト・105

整形外科分野で使われる用語・その67

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.288 - P.289

 あと2~3回で,この10年間継続した「整形外科英語ア・ラ・カルト」は終了する予定である.終了後はノンキに過ごすつもりであったが,次の連載を断りきれず,引続き,私の医学的趣味の「医学の歴史」について書くつもりである.

臨床経験

腰椎椎間孔部・椎間孔外部での圧迫性神経根障害の手術成績

著者: 林信宏 ,   中川幸洋 ,   吉田宗人 ,   川上守 ,   山田宏 ,   玉置哲也

ページ範囲:P.291 - P.296

 抄録:外側椎間板ヘルニアを除外した,椎間孔部・椎間孔外での圧迫性神経根障害18例の臨床症状,術中所見,術後成績について検討した.術前に強い下肢痛を訴えるものが多く,約半数は下肢痛のため歩行不能であった.骨形成的片側椎弓切除術は圧迫因子の確認に適しており,椎間孔部狭窄の14例では従来いわれていた椎弓根部と上関節突起での圧迫(up-down stenosis)よりも椎体後縁と上関節突起腹側での圧迫(front-back stenosis)のほうが多く,86%と大半を占めていた.椎間孔外での圧迫因子はL5横突起,仙骨翼,瘢痕組織,椎体骨棘,OPLLなどであり,圧迫とtetheringによるものであった.また,単一神経根が2カ所以上で圧迫されている症例が5例あり,このような症例では術中に神経根の可動性が得られるまで,十分追尾することが重要である.骨形成的片側椎弓切除術は,棘突起をT-sawで縦割し椎弓の環納を行えば,術後の骨癒合も良好で優れた術式である.

Débridementを要したネコによる外傷症例の検討

著者: 玉置康之 ,   百名克文 ,   麻田義之 ,   大谷茂 ,   林良一 ,   渡辺慶 ,   太田英吾 ,   中江聡

ページ範囲:P.297 - P.300

 抄録:Débridementを要したネコによる外傷症例について検討したので報告する.対象は2000年12月から過去7年間の4例(男性2例,女性2例),年齢は平均50歳(9~68歳).全例飼いネコで,咬傷が3例,ひっかき病が1例であった.受傷部位は,手背2例,下腿1例,足関節外側1例,受傷から当科初診までの期間は平均10.5日(1~19日)であった.腱鞘炎のみは1例で他の3例は腱,骨に及んでいた.起炎菌はPasteurella multocidaが全例に検出され,混合感染は3例であった.当科で行った手術的治療は平均1.9回(1~3回),治療期間は平均50.5日(10~120日)であった.全例腱鞘に沿って感染が拡大しており,初期治療が適切に行われなかった症例に機能障害を残すものが多かった.動物による外傷の特徴を認識し,適切な初期治療を行うことが大切である.

鎖骨骨折新鮮例に対する経皮ピンニング法の経験

著者: 佐々木真一 ,   大川淳 ,   後藤敏 ,   江黒日出男 ,   細川譲 ,   三森甲宇 ,   四宮謙一

ページ範囲:P.301 - P.304

 抄録:鎖骨骨折新鮮例に対するKirschner鋼線による逆行性経皮ピンニング法の手技と成績につき報告する.Kirschner鋼線を骨折部から経皮的に中枢骨片髄腔内に刺入,骨折を整復した後,逆行性に遠位骨片を貫き固定する.1994年から2000年までに観血的整復固定術を施行した24例(ORIF群)と経皮ピンニング法を施行した17例(PCP群)の2群を,手術時間,骨癒合に要した時間,合併症につき比較した.平均手術時間は,ORIF群72.0分に対し,PCP群では17.8分,骨癒合に要した期間はORIF群平均82.5日に対し,PCP群では平均50.2日で,いずれも両群において有意差を認めた.偽関節はORIF群に1例認めた.本法は骨膜への侵襲が最小限で手術も短時間であり,また手術瘢痕をほとんど残さないため,保存的治療と観血的治療双方の利点をもつ治療法として有用である.

症例報告

von Recklinghausen病に合併した上位頚髄腫瘍の1例

著者: 永野昭仁 ,   宮本敬 ,   若原和彦 ,   坂口康道 ,   細江英夫 ,   清水克時

ページ範囲:P.305 - P.307

 抄録:上位頚髄腫瘍を伴うvon Recklinghausen病の1例に手術療法を施行した.腫瘍はC1~2椎体後方に存在し硬膜内外に連続していた.本疾患に伴う脊髄腫瘍は時間的空間的な多発性を示すため,完全摘出は過大侵襲になると考え,脊髄圧迫因子となっていた硬膜外部分のみ切除を行った.硬膜内部分は可及的焼灼にとどめた.術後神経症状の改善は軽度であったものの,患者のQOLの改善がみられその満足度は高かった.本疾患はその多発性のため手術療法が躊躇されることも少なくないが,今症例の手術療法は有用であったと考えられた.しかしながら,今後再発を念頭に置いた長期間のfollow upが必要になると思われた.

窒息性胸郭異形成症(Jeune症候群)の1例

著者: 友田良太 ,   西山正紀 ,   須藤啓広 ,   山崎征治 ,   平山雅浩 ,   二井英二

ページ範囲:P.309 - P.312

 抄録:7歳まで経過した窒息性胸郭異形性症の1例を経験した.胸郭の狭小と四肢の短縮を主徴とし,その特徴的な胸郭,骨盤,手の単純X線所見を示した.生下時より頻回の呼吸障害により長期臥床を余儀なくされ,5歳時では筋緊張低下を伴い独歩不可であった.成長とともに単純X線所見は正常に近づき,また,呼吸障害が改善し,活動性が増すにつれ,筋緊張は正常化し独歩可能となった.骨格の奇形や活動性の低下が,運動発達の遅延の一因であると考えられた.

肋骨肋軟骨釘移植術を行った上腕骨小頭離断性骨軟骨炎の1例

著者: 三尾太 ,   佐藤和毅 ,   山下裕 ,   稲見州治 ,   神野巳奈子 ,   神蔵宏臣 ,   山中芳 ,   細谷俊彦

ページ範囲:P.313 - P.316

 抄録:上腕骨小頭離断性骨軟骨炎・分離期の症例に対し,肋骨肋軟骨移行部をdonorとする骨軟骨釘移植術を行ったので報告する.症例は24歳,男性,自動車整備工である.右肘関節痛,可動域制限を主訴に来院した.外側の右肘関節裂隙に一致して圧痛があり,肘関節の屈伸に伴い激しい疼痛とclickを生じた.単純X線像では上腕骨小頭に分離した骨片を認め,MRI像ではT1強調画像で同部に低信号領域を認めた.以上より右上腕骨小頭離断性骨軟骨炎と診断し手術となった.病巣部にドリリングを行い,右第5肋骨肋軟骨移行部からの骨軟骨釘移植術を行った.術後可動域は大幅に改善し,肋軟骨片の癒合は良好である.肋骨肋軟骨釘移植術には硝子軟骨と軟骨下骨を一塊として移植できること,移植した時点で関節軟骨に欠損部が生じない利点がある.また骨釘移植に比べ,fragmentをより強固に固定することができる.一方,肋骨肋軟骨釘の採取に多少の技術を要することがある.

同側のTHA,TKA後のRA患者に生じた大腿骨骨折に対してCable-Ready plateを用いた1例

著者: 水野直樹 ,   滝秀虎 ,   古橋範雄

ページ範囲:P.317 - P.320

 抄録:人工関節周囲骨折の治療は,しばしば困難になることがある.今回われわれは,RA患者の同側のTHAのステムとTKAとの間に大腿骨骨折を生じ,治療に難渋した症例を経験したので報告する.症例は75歳女性,RA患者.1999年11月自宅で転倒し受傷.Dall-Miles plateにて固定した.2カ月間免荷し徐々に荷重をかけたが,次第に内反変形進行し,偽関節,ケーブルの折損を来したため,2000年7月,Cable-Ready plateにて再固定し,骨癒合を得ることができた.人工関節周囲骨折の治療には,Cable-Ready plateが固定性も良好で,有用であった.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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