特集 脊椎脊髄病学最近の進歩(第30回日本脊椎脊髄病学会より)
高齢者頚髄症(70歳以上)に対する脊柱管拡大術の術後成績不良因子についての検討
著者:
中川幸洋1
玉置哲也2
吉田宗人3
川上守2
林信宏4
安藤宗治2
山田宏2
岩崎博2
筒井俊二2
高見正成2
寺尾賢秀5
所属機関:
1済生会有田病院整形外科
2和歌山県立医科大学整形外科
3和歌山県立医科大学リハビリテーション科
4和歌山労災病院整形外科
5社会保険紀南綜合病院整形外科
ページ範囲:P.423 - P.427
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抄録:脊柱管拡大術による手術的加療を行った70歳以上の高齢者頚髄症患者について,その術後成績を調査するとともに,高齢者にしばしば伴う術前合併症が術後成績にいかに影響するかを調査した.高齢者頚髄症患者群105例の罹病期間は34.5カ月,術前JOAスコアは8.0点,術後JOAスコアは12.6点,改善率は49.6%,追跡期間は29.3カ月であった.対照として用いた60歳以下の非高齢者頚髄症患者群に対して,高齢者群では術前,術後JOAスコア,改善率のいずれも有意に低かった.また高齢者の頚髄症患者は術前腰部脊柱管狭窄症や変形性膝関節症,糖尿病をそれぞれ35.2%,16.2%,11.4%に合併しており,これらを合併している群の術後の改善率は合併症のない群に比べても有意に劣っていた.高齢者の場合,術前合併症がJOAスコアや改善率の数値に影響を及ぼしている可能性がある.