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総説
骨肉腫予後と血管新生―新たな治療戦略の開発に向けて
著者: 加谷光規1 和田卓郎1 名越智1 川口哲1 山下敏彦1 平賀博明2 井須和男2 石井清一3
所属機関: 1札幌医科大学整形外科 2国立札幌病院整形外科 3東北海道病院
ページ範囲:P.1273 - P.1279
文献購入ページに移動近年の化学療法の導入と,外科的手術手技の進歩により骨肉腫患者の機能的予後,あるいは生命予後は劇的に改善した.その一方,約40%の骨肉腫患者は原発巣の根治手術後に肺転移が生じ予後不良な経過をたどる.肺転移が生じた場合には化学療法剤に対して抵抗性を示すことが多く,その制御ははなはだ困難となる.骨肉腫の予後をさらに向上させるためには,①原発巣に対する根治手術後に肺転移巣が出現しやすい骨肉腫患者を明らかにすること,②原発巣根治手術後に肺転移巣が発現増大する機序を明らかにすることが問題解決への糸口を与えることになる.
Folkmanら6)が癌の増殖や転移巣形成の際の血管新生の重要性を提唱して以来,胃癌,食道癌,子宮癌,腎癌など様々の癌腫で増殖と進展における血管新生の関与が研究されている.1998年以来,われわれも骨肉腫肺転移成立に血管新生が関与しているとの仮説を立てて研究を行ってきた.現在までに明らかになった知見をふまえ,骨肉腫肺転移成立における血管新生の役割を解説し,骨肉腫に対する新たな治療戦略を考えてみたい.
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