シンポジウム 腰椎変性すべり症の治療
腰椎変性すべり症の治療―非固定とGraf制動術,後側方固定術併用との比較
著者:
紺野慎一1
菊地臣一1
所属機関:
1福島県立医科大学医学部整形外科
ページ範囲:P.249 - P.255
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要旨:変性すべり症に対し,非固定群,グラフ群,そして後側方固定群の3群の治療成績の比較を行った.検討の対象は手術を受け3年以上経過した103例とした.非固定群は42例,グラフ群は46例,後側方固定群は15例であった.3群間で性,手術時年齢,神経障害形式,責任高位,日整会腰痛疾患治療成績判定基準による点数(JOAスコア),および罹病期間に有意差はなかった.これらの3群間で,術後1年と3年経過時の手術成績を対比検討し,以下のような結果が得られた.1)制動術や固定術の併用は,術後残存腰痛の防止に有効である.2)制動術や固定術を併用しても,神経症状の改善は非固定術よりも明らかによいとはいえない.3)制動術や固定術の併用により下肢症状の再燃・再発は,非固定術よりも明らかに低く抑えられるとはいえない.4)制動術や固定術の併用により,すべり率の進行の抑制と椎間可動角の減少が期待できる.
Graf systemと後側方固定により術後残存腰痛の頻度が低下していたことから,X線学的不安定性と腰痛との関連はある可能性が高いといえる.しかし,術後3年以内では,3群間で治療成績に明らかな差はなく,制動術や固定術を併用しても,神経症状のさらなる改善や下肢症状の再発・再燃は抑えられないと考えられる.制動術と固定術の利害得失の結論には,さらなる症例の集積と経過観察の継続が必要である.