シンポジウム 腰椎変性すべり症の治療
腰椎変性すべり症に対する後方手術例の成績―固定・非固定例の分析
著者:
松本守雄1
西澤隆1
中村雅也1
丸岩博文1
千葉一裕1
戸山芳昭1
所属機関:
1慶應義塾大学医学部整形外科
ページ範囲:P.271 - P.277
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要旨:中期から後期腰椎変性すべり症(DS)92例(男36例,女56例,平均年齢63.6歳)に対する後方手術法の術後成績を調査した.除圧術を行った除圧群は54例,固定術(全例PLIF)を併用した固定群は38例であった.JOAスコア改善率は除圧群で平均60.2±26.2%,固定群69.5±28.2%であった.成績に有意に関連する術前因子は除圧群,固定群とも明らかではなかった.改善率50%未満の成績不良例は除圧群で31%であり,原因は再狭窄,術前重度神経障害などであった.一方,固定群の成績不良例は21%であり,原因は遺残性腰痛,術前重度神経障害,術中神経根損傷などであった.合併症発生率は除圧群で7.4%,固定群で21.1%と固定群で有意に高かった.年齢,性別,すべり率などのX線所見をマッチさせて改善率を両群間(両群26例ずつ)で比較すると,固定群の成績がやや良好であったが両群間に有意差はなかった(除圧群55.7%,固定群64.8%).
中・後期DS例に対しては両術式ともにほぼ満足すべき結果が得られ,一方,合併症は除圧術で少なかったことから,手術法としては除圧術を第一選択とし,固定術は比較的若年者で不安定性の著しい症例に限定するのがよいと考えられた.