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文献概要
連載 整形外科と蘭學・3
福澤諭吉と「蘭学事始」
著者: 川嶌眞人1
所属機関: 1川嶌整形外科病院
ページ範囲:P.334 - P.335
文献購入ページに移動慶應2(1866)年,神田孝平が本郷通りを散歩していたときにたまたま見つけた古びた「蘭学事始」の写本は,杉田玄白が門人の大槻玄沢に贈ったものであった.先を争ってこの本を写しとった神田の学友たちのなかに,津山出身の蘭学者で箕作秋坪というものがいた.秋坪は交友の厚かった福澤諭吉と対坐して繰り返しこれを読み,「艪舵なき船の大海に乗り出せしが如く,茫洋としてよるべきかたなく,ただあきれにあきれて居たるまでなり」のあたりでは,ともに感涙に咽び泣いた.その後江戸は明治維新の動乱にまきこまれていったが,諭吉は上野の彰義隊と官軍との戦いの最中も,ウェーランドの経済書を慶應義塾で平然と講義し慶應義塾のある限り日本は文明国であるといった.
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