特集 脊椎脊髄病学最近の進歩 2003(第31回日本脊椎脊髄病学会より)
腰椎不安定症に対する可動性を温存した脊柱再建術―新しいSpine Dynamic Stabilization System(DYSS)の開発とその生体力学的特性
著者:
白土修1
放生憲博1
三浪明男1
但野茂2
所属機関:
1北海道大学大学院医学研究科高次診断治療学専攻機能再生医学講座整形外科学分野
2北海道大学大学院工学研究科機能科学専攻設計機能工学講座
ページ範囲:P.509 - P.516
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抄録:本論文の目的は,筆者らが開発した動的脊椎安定化術の新しいsystemを紹介し,その生体力学的特性を評価することである.このsystemは,従来のGraf systemのscrew基部に改良を加え,ダクロン性人工靱帯とチタン製スプリングを同時に使用するものである.さらに,椎骨へのanchorとしてSG(Self-Grasping)hookを開発し,椎弓把持性に関する評価も施行した.実験には仔牛腰椎6体を使用し,材料試験機に設置後,圧縮(100N),前・後屈(5N-m),側屈(5N-m),回旋(10N-m)の5種類の荷重を負荷した.まず 1)健常群,2)除圧群(L4/5に内側椎間関節切除術)を評価後,3)Graf system,4)SG hook+Graf人工靱帯,5)screw+人工靱帯+スプリングの3種類の再建術を無作為に施行し,評価した.新しいsystemは,従来のGraf systemと比し,前屈では同程度の,後屈,側屈では優れた安定性を示した(p<.05).しかし,回旋での安定性は同等の値であった.SG hookの固定性は良好であった.隣接椎間の変位は,新systemで大きくなる傾向にあったが,統計学的有意差はなかった.今回開発したsystemは,従来のGraf systemと比し,より多方向への安定性を示した,しかし,回旋方向への安定性は不十分であり,systemの耐容性と併せて,さらなる改良が必要である.