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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科38巻8号

2003年08月発行

雑誌目次

巻頭言

第18回日本整形外科学会基礎学術集会を開催するにあたって

著者: 中村利孝

ページ範囲:P.1002 - P.1003

 このたび,北九州市の小倉で日本整形外科学会基礎学術集会を開催させていただくことになり,まことに光栄に存じます.会期は2003(平成15)年10月16日(木),17日(金)の2日間で,これに続いて18日(土)の午後に市民公開講座を予定しています.開催場所は新幹線の小倉駅から海岸の方へ歩いて約5分の所にある北九州国際会議場です.駅から会議場の近くまで渡り廊下でつながっておりまして,会場へのアクセスに便利です.

 今学会のキャッチフレーズは「運動器疾患治療のbreakthroughを求めて」としました.平凡に聞こえるかもしれませんが,整形外科における基礎研究は,予防も含めて疾患の治療に役立つことを常に念頭に置いて進めていくことが必要であるという気持ちを込めました.

シンポジウム 難治性骨折の治療

緒言 フリーアクセス

著者: 糸満盛憲

ページ範囲:P.1004 - P.1005

 四肢の骨折は,軟部組織を含めた四肢外傷における組織損傷の一部であって,決して骨のみが独立して損傷されるものではない.たとえ皮下骨折であっても受けた外力の方向と大きさによって,骨を包む骨膜・筋組織・血管を含めた軟部組織の剥離や断裂など相応の損傷を伴うものである.骨折が難治性になる理由は大きく分けて2つある.第1は骨折の病態そのものであり,第2に治療後の続発症・合併症によってもたらされる病態である.

 生命を脅かす臓器損傷を伴う多発外傷の多くは,骨折を含めた四肢損傷を合併している.この場合,救命処置が最優先であることは論を待たない.すなわち,“Life before limb”である.しかし整形外科医が常に考慮しなければならないことは,四肢損傷が救命処置の足かせになってはならないことであり,また初期段階から救命後の運動機能の可及的早期の回復を視野に入れて対応することである.そのためにはdamage control orthopedicsの概念を理解し,治療のタイミングと方法を熟知して,段階的に四肢損傷を治療する戦略を立てなければならない.特に開放骨折は四肢の機能回復という観点からは常に緊急を要する病態であり,全身状態を考慮して短時間で再建か切断かの判断を下す必要がある.現在,早期切断の客観的指標として多くのscoring systemが提唱されているがまだ十分なものとはいえない.全身状態を考慮した外傷外科医の経験に基づく高度な判断が要求されるところである.この評価と判断の誤りは急性期の合併症,とりわけ呼吸器合併症を続発し致命的になることさえある.多発外傷・重度外傷に伴う四肢外傷の初期治療のあり方については大泉 旭氏・他,新藤正輝氏に詳しく解説していただいた.

多発性外傷における四肢外傷の治療戦略

著者: 大泉旭 ,   川井真 ,   山本保博

ページ範囲:P.1007 - P.1012

 要旨:多発外傷に伴った四肢外傷の治療は合併損傷に応じた治療を行うことが重要である.以前は他部位同時手術などに代表される受傷後24時間以内の早期内固定が有用であるとされてきたが,それにより合併損傷(特に頭部外傷)にもたらす影響が近年取りざたされ,早期内固定の有用性が疑問視されてきている.また,胸部外傷を伴った髄内釘固定では,reamingの功罪についていまだ欧米でも意見が分かれているのが現状である.循環動態の安定しない重症多発外傷の骨折治療は,全身状態の蘇生に重点を置きながらそれに見合った段階的治療―damage control surgeryの概念を取り入れ,一時的に創外固定を行って全身状態の回復を待ってからdefinitive treatmentを行なう方法が今後の主流になるものと考える.また,医療過誤が社会問題として騒がれている現在,多発外傷でついつい見逃されがちなmissed injuryにも気を配る必要があると思われる.

重度四肢外傷における温存術,切断術の適応とその後のQOLについて

著者: 新藤正輝

ページ範囲:P.1013 - P.1021

 要旨:挫滅の高度な四肢損傷に対する切断か温存かの適応については,特にGustilo type ⅢB,ⅢCの下腿骨開放骨折について議論されることが多い.その理由は,義肢装具の発達により膝下切断肢の機能が良好であることにある.したがって,温存のために行われる手術回数や入院期間,経済的負担の増加と,温存後の膝・足関節の可動域制限,下腿浮腫の持続による活動性の低下,社会復帰の遅延などを考慮すると,むしろ切断肢の機能が勝るとする報告が多かった.近年,軟部組織の挫滅創に対して,微小血管手術を用いた早期の軟部組織の再建を行うことにより,感染(骨髄炎),遷延骨癒合,偽関節などの問題が徐々に解決されるに伴い,温存肢の良好な機能成績が報告されるようになった.本稿では,重度四肢外傷における温存術,切断術の適応のための指標,その後の機能予後に対するの客観的評価法について,文献的考察を加えて検討した.

Gustilo ⅢB型𦙾骨開放骨折の初期治療から再建まで

著者: 中村光伸 ,   横山一彦 ,   脇田隆司 ,   糸満盛憲

ページ範囲:P.1023 - P.1032

 要旨:Gustilo ⅢB型𦙾骨開放骨折に対する初期治療は,まず全身評価とその分類が大切である.分類では,Gustilo分類・Hannover fracture scale・AO/ASIF分類・Arnez分類などがあるが,いまだ共通したものはなく,分類から治療方針を決めるには症例ごとの総合判断が必要である.治療は合併症〔1)感染症,2)偽関節,3)変形癒合,4)切断肢〕を防ぐことが目標となる.これには,抗生剤の投与方法・徹底的なデブリドマン・十分な骨折の固定,早期軟部組織再建,早期の予防的骨移植,を各種再建方法をイメージしながら行うことが重要である.再建方法は,様々な方法が報告されているが,1つの方法で対処できるものではなく,症例ごとに適した方法を,各々の方法の長所短所を考慮し選択する必要がある.結果としての機能評価であるが,共通したものはなく,より適切な機能評価法を望みたい.

外傷後骨欠損,短縮の骨延長,移動術による再建

著者: 寺本司

ページ範囲:P.1033 - P.1038

 要旨:骨欠損の原因としては開放骨折による骨欠損,骨髄炎に対する病巣掻爬後に生じる骨欠損などがある.短縮変形の原因としては骨端線損傷後の早期閉鎖や短縮したままの骨癒合などが考えられる.仮骨延長法は骨切りを行い,骨切り部を徐々に延長することにより,延長部に骨形成を行う方法である.しかし最近では骨延長と同時に筋肉,神経,血管など延長されるので組織延長と理解されている.骨移動術は欠損部の近位または遠位で骨切りし,骨切り骨片を徐々に移動することにより欠損部を補塡する方法である.短縮変形に対しては骨延長により脚長差の補正を行う.創外固定とアルビジア髄内釘を用いる方法があるが,髄内釘延長は大腿骨の直線的な延長に限られ外傷の場合は他の変形を合併していることも多いことから,複雑な変形を伴った短縮変形の補正にはイリザロフ創外固定器が有用である.

外傷後骨欠損・偽関節に対する血管柄付き骨移植による再建

著者: 藤哲 ,   西川真史 ,   工藤悟 ,   小川太郎 ,   坪健司 ,   三浦一志

ページ範囲:P.1039 - P.1046

 要旨:外傷後に生じた骨欠損や偽関節の治療に対する血管柄付き腓骨移植術は有効な手技であり,広範な皮膚および骨欠損を伴った開放骨折例,既に数回の手術がなされ長期経過した例や感染を伴った偽関節例に対して第1選択として行ってきた.しかし技術的に必ずしも容易ではなく,移植腓骨の血行障害の可能性や移植腓骨の骨折の頻度が高いなどが問題となる.自験例では45例中43例に骨癒合が得られ,42例で装具を必要としていなかった.合併症として1例で下肢末梢血行不全にて切断を余儀なくされた.2例で動脈血栓を認め,移植腓骨の骨折は13%に認めたが,いずれも追加治療で骨再建が得られた.治療期間を短くし移植腓骨の骨折を予防するためには,二つ折りにしたり他の移植骨を並べるなど構築学的に強い再建を行い,力学的強度が得られるまで,適度な骨への負荷が可能なIlizarov創外固定などを利用する方法が好ましい.

外傷後下肢変形の矯正法

著者: 中瀬尚長 ,   安井夏生 ,   清水信幸 ,   藤井昌一 ,   平林伸治 ,   吉川秀樹

ページ範囲:P.1049 - P.1060

 要旨:外傷後下肢変形に対し変形矯正の手術治療を行った症例の術後成績についての検討を行い,変形矯正のための重要な指標であるCORA(center of rotation of angulation)の概念(CORA法)に基づいて施行した創外固定法による変形矯正手術の有用性と問題点について考察した.症例は創外固定器を用いて一期的または仮骨延長により漸次的に矯正を行った31例32肢(大腿骨12肢,下腿骨20肢;変形治癒10肢,骨端線損傷11肢,偽関節・遷延治癒11肢)で,術後経過観察期間は0.6~5.8(平均2.3)年であった.矯正角度は,大腿骨で,内外反6~27(平均13)°,前後方凸5~25(平均18)°,内外旋15~30(平均25)°であり,下腿骨で内外反5~34(平均16)°,前後方凸4~15(平均9)°,内外旋7~30(平均17)°であり,延長距離は大腿骨で2~12(平均4.8)cm,下腿骨で1~4(平均2.3)cmであった.最終的にほぼ全例でアライメント異常と脚長差の補正効果が得られた.CORA法による創外固定を用いた変形矯正術は,重篤な合併症を生じる危険が少なく確実な矯正効果の得られる有用な方法であると同時に,その矯正原理は使用する固定デバイスにかかわらず,変形の矯正を理解するための重要な基本的概念となりうるものである.

治療に難渋する高齢者の大腿骨骨折に対する治療法

著者: 蜂谷將史 ,   三原久範 ,   竹口英文 ,   山田勝久

ページ範囲:P.1061 - P.1066

 要旨:高齢者の大腿骨骨折は重篤な併存症を有し,かつ骨の脆弱性が背景にあり,治療に難渋することも少なくない.また人工関節置換後のインプラント周囲の骨折では通常の内固定材の使用が不可能であり,早期離床が果たせないため,疾病の増悪,合併症などにより寝たきりになることも少なくない.そこで,早期離床を目的として,金属メッシュプレートと骨セメントを用いるセメント簀巻き法(蜂谷法)を考案し,1990年以後今日まで臨床応用してきた.今回は75歳以上の高齢者に本法を施行した10例について,その手術方法,適応を述べ,臨床成績について検討した.

論述

頚部脊髄症に対する片開き式脊柱管拡大術―術前頚椎アライメントから見た特徴と手術成績について

著者: 渋谷整 ,   岡史朗 ,   有馬信男 ,   菅田吉昭 ,   乗松尋道

ページ範囲:P.1069 - P.1075

 抄録:頚部脊髄症に対し片開き式脊柱管拡大術を施行した75例を,術前の頚椎アライメントから直線型(S型:14例),前弯型(L型:42例),前弯増強型(HL型:19例)に分類し,それらの臨床像の特徴や手術成績について3群間で比較検討した.前弯増強型では高齢者が多く,短期間で症状が進行する傾向にあり,術前重症度が高く,脊髄圧迫,椎間不安定性は上位椎間に生じる傾向にあった.しかし発症後速やかに手術を行うことによって,高齢者といえども良好な回復が期待でき,術後のアライメント変化は,前弯が減少しても直線,後弯型に移行することがなく,通常の片開き式拡大術のよい適応であると考えられた.一方,S型は手術時年齢が若く,術前重症度は低い傾向にあった.しかし術前後とも可動域が大きく,椎間不安定性を有する例は,術後予想以上に後弯変形が進行し,成績悪化に繋がる可能性があり,症例によっては固定術の併用も考慮すべきと思われた.

境界領域/知っておきたい

論文をどのように評価するか―EBMを理解するために

著者: 紺野愼一 ,   菊地臣一

ページ範囲:P.1076 - P.1078

【はじめに】

 整形外科分野における治療の大部分は,いまだに科学的にその有効性が証明されていない.薬剤に関しては,本邦では企業努力の欠如が以前から指摘されている.しかし,その他の治療法に関しては,われわれ医師のEBM(evidence-based medicine)に対する認識不足,努力不足といわざるを得ない.英国では既にEBMの議論は熟しており,EBMを実践すべきかどうかではなく,EBMをいかに実践すべきかが問題となっている.今後,本邦においても,医療政策上,EBMがさらに重視されることは明らかである.そこで,EBMを理解し,論文をどのように評価する必要があるのかを述べる.

運動器の細胞/知っておきたい

血管内皮細胞

著者: 滝口信 ,   新岡俊治

ページ範囲:P.1080 - P.1082

【はじめに】

 人体内において,血液の供給なしに生存している細胞はない.血液を心臓から全身に送ったり,心臓に灌流している通路が血管であり,直接血液と接しているのが血管内皮細胞である.今回は,この血管内皮細胞について,最近の知見を含めて述べる.

国際学会印象記

『日中医学大会2002』に参加して

著者: 須田康文

ページ範囲:P.1084 - P.1085

 日中国交正常化30周年に当たる2002年,11月3~6日まで,北京で日中医学大会2002が開催されました.本学会は,日本医学会・日本歯科医学会,および中華医学会が共同で主催し,日中両国間の医学交流を深め,また新しい協力の輪を広げることを主旨に行われたものです.日中医学大会は1992年にも北京で開かれ,今回は10年ぶりの開催となります.11月3日午後にオープニングセレモニーが,また4日午前に記念講演が行われた後,同日午後からは専門学会(32分野)ごとに分科会が開催されました.整形外科分科会は,11月5日午前に行われました.

連載 医者も知りたい【医者のはなし】 5

日本の衛生・医療行政の父・長與專斎―1・長崎医学校初代校長になるまで

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.1086 - P.1088

※はじめに

 このシリーズ第4回(38巻5号)で,吉野ヶ里をめぐる5人の医師の物語を書いた.その人たちの物語を詳しく書くつもりであった.するとなんだか物語の重複のような気持ちが強いので,取りやめにして,佐賀藩と同じ肥前にある大村藩の藩医であり,明治維新後,東京で明治政府のもとで活躍した「長與專斎」について書くことにする.專斎は初代長崎医学校の校長になり,明治政府のもと,内務省初代衛生局長になった人である.

臨床経験

大腿骨頚部内側骨折に施行したbipolar型人工骨頭置換術の治療成績

著者: 岡本巡 ,   高桑昌幸 ,   後藤英司 ,   松野丈夫

ページ範囲:P.1091 - P.1097

 抄録:Garden 3,4型の大腿骨頚部内側骨折(以下,頚部内側骨折)に対してbipolar型人工骨頭置換術を施行された29例31股関節を追跡調査し,その臨床およびX線学的成績を報告した.平均手術時年齢は61.5歳で,平均経過観察期間は6年3カ月であった.

 Osteolysisは29.0%で,非感染性の弛みによる再置換率は9.7%と比較的高頻度に認められた.またセメント充塡度の不良例のうち33.3%に弛みが認められたことは,やはりセメント手技の重要性が考えられた.

 Bipolar型人工骨頭置換術を使用する際には,その適応を十分に考慮し慎重な経過観察が必要である.

症例報告

摘出病巣にCOX-2発現を証明できた腰椎椎弓類骨骨腫の1例

著者: 川口洋治 ,   長谷川匡 ,   岡史朗 ,   乗松尋道

ページ範囲:P.1099 - P.1104

 抄録:類骨骨腫は,夜間痛やアスピリン著効といった特徴的臨床症状を呈し,炎症性の性格を有するが,その病態は明らかでない.今回,腰椎椎弓に発生し圧迫所見の認められない神経根に症状が発現した1例を経験し,炎症惹起物質であるprostaglandin(PG)の代謝酵素であるcyclooxygenase-2(COX-2)の発現とその意義について検討した.症例は,14歳男性.術前の臨床症状は腰痛に加え右下肢tension sign陽性で,前けい骨筋,長母趾伸筋に軽度の筋力低下を認めた.術前MRIにて第5椎弓右側にnidusを認め,nidus周囲の骨および軟部組織に強い造影効果を認めた.手術摘出標本における抗COX-2抗体を用いた免疫組織化学的検索では,nidus内の腫瘍性増殖を示す骨芽細胞の細胞質に強い染色が認められた.また,RT-PCRによる検討ではnidusにおいてCOX-2mRNAの強い発現が認められた.本症例の圧迫所見のない神経根症状は,nidus内腫瘍性骨芽細胞でのCOX-2発現によるPG産生経路の賦活化によると思われた.

同側上腕骨骨折と肘頭粉砕骨折の合併損傷(floating elbow)の2例

著者: 小林由香 ,   池田全良 ,   岡義範

ページ範囲:P.1105 - P.1109

 抄録:われわれは同側上腕骨骨幹部骨折と肘頭粉砕骨折を合併したfloating elbowの2症例を経験した.交通事故や高所からの転落など高エネルギー損傷が原因となるため,軟部組織損傷や他臓器損傷を合併する頻度が高く,受傷後早期に手術ができない場合が多い.そのため術前に十分な手術計画を行い,強固な固定と早期からのリハビリテーションが必要となる.われわれは肘頭粉砕骨折に対し,腸骨移植を用いたmultiple tension band wiringを行い強固な固定で正確な解剖学的形態を整復保持ができたことにより,術後早期からの肘関節訓練が可能となり,満足できる可動域を獲得することができた.

上肢遠位筋優位の萎縮を特徴とした頚椎後縦靱帯骨化症の1例

著者: 沖貞明 ,   今井浩 ,   河野正明 ,   日野和典 ,   加戸秀一

ページ範囲:P.1111 - P.1115

 抄録:今回われわれは,上肢遠位筋優位の萎縮を特徴とする頚椎症性筋萎縮症と同様の機序にて発症したと考えられる頚椎後縦靱帯骨化症の1例を経験した.本症例では,神経症状と画像所見から考えて,前角の病変が考えられた.上肢遠位筋優位の筋萎縮は,一般的に良好な治療成績が得られにくいといわれているが,本例では脊柱管拡大術にて良好な結果が得られた.発症後約4週間の時点で手術が行われた点,手術時の筋力が3と低下が軽度であった点より,脊髄病変に十分な可逆性があった時点で手術ができたことが,良好な結果が得られた要因と考えられた.

第3腰椎椎体に発生した血管肉腫の1例

著者: 落合淳一 ,   森下益多朗 ,   神崎浩二 ,   斉藤元 ,   立野慶

ページ範囲:P.1117 - P.1121

 抄録:血管肉腫は血管の内皮細胞を由来する軟部組織腫瘍であり,椎体からの発生は極めて稀である.第3腰椎に発生した血管肉腫の手術例を経験したので報告する.症例は37歳の男性で,腰痛と左下肢痛を主訴に来院した.X線像,CT,MRIなどから第3腰椎椎体から第2腰椎辺縁まで広がった腫瘍が認められたため,前後合併による第3腰椎の椎体切除術を施行した.術後の病理組織所見にて,異型性の強い腫瘍細胞が未熟な血管腔を形成し,免疫染色ではFactor-8,CD-34のそれぞれで腫瘍細胞が染まったため,血管肉腫と診断された.血管肉腫は,5年生存率6~8%と悪性度の高い腫瘍である.術後約1カ月よりインターロイキン2による化学療法を2週間行い,これを1クールとして6週間ごとに投与を行った.軽度の白血球減少を認めたが,術後2年6カ月の現在,腫瘍の再発はみられず現職に復帰している.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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