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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科38巻9号

2003年09月発行

雑誌目次

視座

整形外科はマイナーか

著者: 山下敏彦

ページ範囲:P.1131 - P.1132

 本学の医学部5年生を対象に「整形外科はメジャー(大診療科)だと思うか,マイナー(小診療科)だと思うか」について無記名でアンケートをとった.回答のあった89名中,メジャーと答えた者が48名(54%),マイナーと答えた者が41名(46%)であった.メジャー,マイナーがほぼ相半ばしたが,整形外科が医師国家試験や卒後臨床研修の必修科目に入っていない割には,メジャーととらえている学生が意外に多いと言えるのかもしれない.

 医学教育の現場では,整形外科はマイナー科として扱われることが多い.本学を例にすると,整形外科の必修臨床実習期間はマイナー科とみなされ1週間のみである.内科などのメジャー科は2週間の配分だが,内科は第1から第4まであるので計8週間となり整形外科との差は歴然である(現在,不均衡の是正を交渉中である).厚生労働省により平成16年度(2004年)から始められる,医師免許取得後の臨床研修制度においても,必修科目は内科,外科,救急部門(麻酔科を含む),小児科,産婦人科,精神科,地域・保健医療であり,その中に整形外科は入っていない.

シンポジウム 全人工肩関節置換術の成績

緒言 フリーアクセス

著者: 高岸憲二

ページ範囲:P.1134 - P.1135

 全人工肩関節置換術の多くは,関節リウマチの肩障害,変形性肩関節症などによる肩関節破壊病変に対して用いられているが,欧米に比べて本邦では1次性変形性肩関節症が少なく,その適応はリウマチ肩が比較的多い.関節リウマチ患者において肩関節病変は比較的頻繁に認められる.しかし,関節リウマチでは多関節障害であるためか,股関節や膝関節などに比べて肩病変に対する検査所見や治療に対する報告は少ない.リウマチ肩の治療の主体は薬物療法であるが,薬物療法を行っているにもかかわらず強い肩関節痛が持続する場合には,関節リウマチ早期で関節破壊がほとんどない症例では,温熱療法やステロイド剤の関節内注入などの保存的療法や鏡視下滑膜切除術が行われることが多い.近年,人工肩関節置換術がリウマチ肩に対しても有用との報告が散見されはじめ,関節リウマチ晩期で関節破壊が進行したために関節可動域が減少し,疼痛が高度な症例には人工関節置換術もしくは人工骨頭置換術が次第に行われるようになった.頻度は少ないが,変形性肩関節症においても手術適応は関節破壊の進行による関節可動域の減少および高度の疼痛である.禁忌としては 1)活動性感染巣の存在,2)腱板および三角筋機能の消失,3)神経病性関節症の合併,4)上腕骨ならびに関節窩を含めた肩甲骨の十分なbone stockがない症例,5)患者が手術および後療法に対して理解できない場合などである.

 人工肩関節置換術術後は,過去のいずれの報告でも除痛には優れているが,可動域の改善には必ずしも十分といえない症例も多い.Neerはその原因として腱板機能が温存されていない症例は,除痛には優れているが,機能的,特に挙上が期待できないlimited goal群としている.単純X線上の問題として,長期間経過例では各コンポーネントの緩みが問題となり,少数例ではあるが再置換を要するほどの疼痛が起こる場合もある.Neer typeの上腕骨側のコンポーネントはセメント固定を行わないと高率に緩みが生じると報告されている.他関節の人工関節ではセメント使用による問題も起こり,肩関節もコンポーネントの固定にセメントを使用しない新しい人工肩関節システムが考案されているが,これらの評価には経過観察が必要である.また,関節窩側のコンポーネントは高率に緩みが起こっており,セメントテクニックの向上などが問題にされている.そのほか,関節窩コンポーネントを併用した人工関節置換術と関節窩コンポーネントを使用しない人工骨頭置換術の間には術後成績にさほど差がないとの報告もあり,関節窩コンポーネントを用いない人工骨頭置換術にすべきとの意見もある.しかし,人工関節置換術の術後成績のほうが人工骨頭置換術に比べて良好との報告や,関節窩コンポーネントを用いないと単純X線上関節窩のびらんが進行するなどの報告もあり,まだ意見の一致をみていない.いずれにしても術後良好な成績を得るためには肩関節の解剖を理解して厳密に手術手技に従うほかに適切な後療法を行う必要がある.除痛ならびに日常生活動作の改善については良好であるが,可動域改善の程度については手術時の腱板の状態が大きく左右するので,腱板機能が温存されている時期に手術を行うことが望ましい.

当科における人工肩関節置換術の成績―関節リウマチ肩の機能評価を中心に

著者: 宮本隆司 ,   菅本一臣

ページ範囲:P.1137 - P.1142

 抄録:関節リウマチ肩に対する人工肩関節全置換術,monopolar型人工骨頭置換術,bipolar型人工骨頭置換術の中・長期成績と術後の肩関節機能についての検討を行った結果,術前の疼痛の強弱に関わらずその除痛効果は優れており,術後比較的長期にわたり維持されていた.術後の挙上機能は人工関節の種類やX線所見の重症度によるのではなく,術前の腱板機能に強く影響されていた.また,bipolar型人工骨頭置換術後の肩関節の動態評価を行った結果,術前のMRIで棘上筋腱の断裂がなく,棘上筋の筋萎縮も軽度であった群では,挙上機能が比較的良好で,肩甲上腕リズムも肩甲上腕関節優位で動き出すパターンを示したのに対し,術前のMRIで棘上筋に重度の筋萎縮または腱断裂がみられた群では,挙上機能が不良で,肩甲胸郭関節優位で動き出す逆のパターンを示した.腱板機能を代償するべく開発されたbipolar型人工骨頭ではあるが,いずれの群でも腱板機能を代償するほどの挙上能は獲得され得なかった.したがって,術後の良好な肩関節機能を期待するならば,術前のMRI像や臨床所見を参考にして,腱板機能が温存されているうちに手術を行うべきであると考えられた.

全人工肩関節置換術の術後成績―術後X線変化を中心として

著者: 佐藤克巳 ,   相澤利武

ページ範囲:P.1145 - P.1150

 抄録:私たちが直接健診可能であった26例33肩を対象として,臨床評価とX線評価を行った.関節リウマチ(RA)が19例26肩,変形性関節症(OA)が7例7肩で,男性が3例,女性が23例であった.手術時年齢は平均58歳,追跡調査期間は平均5年であった.機種はPhysio shoulderが25肩,Global shoulderが7肩,classical Neer typeが1肩であった.Stemは22肩でセメント固定を行った.比較的骨質のよい11肩は,プレスフィットで行った.Glenoid componentは全例でセメントを使用した.臨床評価のJOAスコアは,術前平均44.1点が術後73.2点に改善していた.疼痛点の改善が著明であり,6.9点から28点に改善していた.可動域の改善は著明ではなかった.合併症は,創治癒不良1肩,術中のstem打ち込みの際の骨折が1肩,烏口突起切離9肩中,再接着に失敗し偽関節になったもの1肩であった.X線評価では,stemのゆるみはなかったが,3肩に術後早期からstem周囲に1mm程度のradiolucent zoneがみられた.プレスフィット症例中2肩にstemの沈下がみられた.Glenoid componentについては,1mm程度のradiolucent zoneが10肩にみられた.2mm以上のradiolucent zoneが4肩に,glenoid componentの脱転が1肩にみられた.

慢性肩疾患に対する全人工肩関節・人工骨頭置換術の術後成績―歴史を中心に

著者: 濱田一壽 ,   柳沢和裕 ,   内山善康 ,   中島知隆 ,   福田宏明

ページ範囲:P.1153 - P.1158

 抄録:人工肩関節・骨頭置換術手術を行い1年以上の経過観察が可能であった22症例の成績を分析・検討した.内訳は関節リウマチ(RA)7肩(RA群),変形性肩関節症13肩,上腕骨頭無腐性壊死2肩(後2者あわせて非RA群)である.人工関節・骨頭は当初の一体型のNeer typeから現在ではmodular typeを主に使用している.最近の1肩には第3世代の人工骨頭を使用した.

 肩関節可動域は,自動外旋は術前の16.8°が最終経過観察時には47.5°に,自動伸展は28.3°が38.2°に有意に増加した.X線所見ではstemのlooseningはみられず,glenoid component周囲のlucent lineは15例中10例にみられた.Neer scoreは術前の38.6点が最終経過観察時には65.5点(有意差あり)になり,RA群,非RA群とも有意に術後の点数が高かったが,2群に有意差はなかった.術後2年までの短期成績で一体型のNeer typeとmodular typeを比較すると,両者に有意差はないが,modular typeの平均点は一体型よりも高く,成績のばらつきも小さかった.術後の合併症として2例にcoracoid impingementを起こし,これらには再手術を行った.

 上腕骨頭の大きさ・頚体角・後捻角は個人差が大きく,著しく変形した症例では適切に人工肩関節を設置することは容易ではない.この問題を解決するには頚体角と上腕骨頭のoffsetを変形した解剖に適合できる第3世代の人工肩関節の使用が考えられる.

全人工肩関節置換術と人工骨頭置換術の術後成績の比較

著者: 末永直樹

ページ範囲:P.1159 - P.1163

 抄録:骨破壊の強い関節リウマチ肩および変形性肩関節症に対する観血的治療としては人工骨頭置換術または全人工肩関節置換術が行われることが多い.しかし,その適応に関してはいまだcontroversialである.本稿では当科で施行した37例37肩の関節リウマチ肩および変形性肩関節症に対する人工骨頭置換術と全人工肩関節置換術の術後成績を調査し,glenoid component置換の必要性について検討した.臨床成績では人工骨頭置換術と全人工関節置換術の成績はほぼ同等であった.Ⅹ線学的検討では全人工関節置換術のglenoid componentの全例にlucent lineが存在し,今後のlooseningの発生が危惧され,glenoid resurfacingの適応は修復不能な腱板断裂や軟部組織の拘縮がなくnonconcentricなglenoidで,glenoidの再建を要する症例に限定すべきと考えられた.

人工肩関節置換術の術後成績―ADLの改善を中心として

著者: 竹内公彦 ,   大沢敏久 ,   高岸憲二 ,   桜井武男 ,   井上博 ,   佐野潔 ,   磯武信

ページ範囲:P.1165 - P.1169

 抄録:関節リウマチ14関節,変形性肩関節症1関節,上腕骨頭壊死症2関節に対して施行した人工肩関節全置換術,および人工骨頭置換術の術後成績について検討した.使用機種は,NeerⅡ型2関節,京セラ製バイオセラム9関節,Kirschner Modular型6関節である.日整会肩関節疾患治療成績判定基準に従い疼痛,機能,可動域の3項目について臨床評価した.関節窩側,上腕骨側コンポーネント周囲の透亮像,ルースニングの有無をX線学的に評価した.両群とも疼痛,機能,可動域は改善し,人工肩関節全置換術施行群では,統計的有意差を認めた.長期経過よりみたX線評価では,セメント固定した関節窩側コンポーネント周囲の骨透亮像が11例中9例にみられ,腱板機能不全を伴っていた.上腕骨側コンポーネントもセメント非使用群に骨透亮像の高率な出現を認めた.術後ADLでは肩関節の回旋運動を要する動作に改善が認められた.関節リウマチのみを対象とした人工肩関節全置換術においては,肩可動域は,術前に腱板機能が温存されているほうが術後有意に改善されたが,上肢機能の改善は腱板機能の差として反映されなかった.

論述

臨床症状に関与する腰椎不安定性の重要度―前後への椎体動揺性か? 椎間可動角か?

著者: 金村在哲 ,   井口哲弘 ,   栗原章 ,   笠原孝一 ,   赤浦潤也 ,   山崎京子 ,   佐藤啓三

ページ範囲:P.1171 - P.1178

 抄録:腰下肢症状を主訴に来院した1,090例を対象に,L4/5椎間で動的不安定性因子である前後への椎体動揺性と椎間可動角について,臨床症状との関連性を調査した.機能射側面X線像にて,椎体動揺度3mm以上,椎間可動角10°以上を不安定性ありとし,なし群も含めた4群間で比較した.結果は椎間可動角が10°以上の群は,10°未満の群に比べて有意に年齢が若く,若年者は椎間可動性が大きいと言えた.また3mm以上の椎体動揺度と10°以上の椎間可動角は,ともに臨床症状に影響する因子であった.さらに3mm以上の椎体動揺度は単独でも症状に影響を与えるが,10°以上の椎間可動角は単独では影響せず,椎体動揺性に合併した場合に症状を増強させる因子になると考えられた.

麻痺を伴った胸腰椎破裂骨折に対する後方進入除圧固定術の成績

著者: 松原吉宏 ,   山崎伸 ,   川原央 ,   渡邊長和 ,   石井祐信

ページ範囲:P.1179 - P.1184

 抄録:麻痺を伴った胸腰椎破裂骨折に対し後方進入で除圧と2椎間固定を行い,1年以上経過観察した16例17破裂椎体を対象として骨癒合,合併症,麻痺の改善,固定部の矢状面アライメントの変化を調べた.全例で骨癒合が得られた.合併症はインストゥルメントの破損が3例にみられた.2例がスクリューの折損,1例がスクリューキャップの脱転であった.いずれも骨癒合完成後に生じたもので,症状およびアライメントに影響しなかった.神経障害,感染あるいは血管損傷はなかった.麻痺の改善は12例にmodified Frankel分類で1段階以上の改善が得られた.胸腰椎移行部,下位腰椎部を合わせた矯正損失は12.6°となっていた.本骨折に対する後方進入除圧・固定術は麻痺の改善が良好で合併症も少なく,術後の矯正損失はあるものの侵襲の少ない有用な術式と考える.

手術手技/私のくふう

頚髄腫瘍に対する低侵襲後方切除術―白石の進入法を用いて

著者: 川北敦夫 ,   谷戸祥之 ,   吉田宏 ,   池上健 ,   白石建

ページ範囲:P.1187 - P.1192

 抄録:1999年,われわれは棘突起付着筋を最大限に温存できる新しい頚椎後方進入を考案した.この進入路を用いて頚髄症に対する様々な後方除圧術を行い,良好な成績を得てきた.今回,同進入法を応用して,頚椎後方の支持組織をほぼ完全に温存したまま,39歳の男性に生じたEden分類2型の上位頚椎砂時計腫を摘出したので報告する.その術式は,軸椎の椎弓と棘突起の左半分をその付着筋を付けたまま一塊として切断し,これを左外側に翻転することにより脊柱管内の腫瘍を露出した.腫瘍を摘出したのちに翻転した左椎弓・棘突起片を解剖学的位置に戻し,左右の棘突起同士を縫着した.頚椎後方法は脊柱管内の展開に優れているが,従来法では深層伸筋を含めて頚椎後方の軟部支持組織が損傷される欠点があった.その結果,術後に頚椎弯曲異常や項部症状の原因となる可能性があった.そこで,われわれは従来法と同等の術野を確保できるうえに,頚椎後方の動的支持組織である棘突起付着筋を温存し,さらには骨性脊柱をも解剖学的に再建できる,新しい頚髄腫瘍の摘出術を開発した.本稿ではその術式の詳細を示し,その有用性を考察する.さらには,頚髄腫瘍全般への応用について検討する.

境界領域/知っておきたい

硬膜外麻酔

著者: 佐々木剛

ページ範囲:P.1194 - P.1196

【はじめに】

 硬膜外麻酔(以下,硬麻)は脊椎麻酔(脊髄くも膜下麻酔,脊麻)と並んで,整形外科医の得意とする治療手段の1つであろう.硬膜外穿刺や腰椎穿刺手技の上手な整形外科医は数多くおられると思うので,硬麻についての解説は釈迦に説法の感もあるが,臨床麻酔に携わる麻酔科医からの話題提供として,読者の心に留めおかれるものがあれば幸いである.硬麻の生理,手技,合併症,禁忌等については成書4)を参照されたい.

運動器の細胞/知っておきたい

後根神経節と後根神経節細胞(脊髄神経節と脊髄神経節細胞)

著者: 大谷晃司 ,   菊地臣一 ,   本多たかし

ページ範囲:P.1198 - P.1200

【はじめに】

 後根神経節細胞は,疼痛伝達の第1次ニューロンとして痛みの伝達に直接関与している.本稿では,後根神経節(脊髄神経節)および後根神経節細胞と痛みの形成との関係について概説する.

専門分野/この1年の進歩

JPOA日本小児整形外科学会―この1年の進歩

著者: 松尾隆

ページ範囲:P.1202 - P.1204

 近年の小児整形外科分野における進歩は著しく,大きく疾患の実態やあり様が変わってきているかの印象を受けるほどです.実態としては
①乳幼児,新生児期検診の普及による発達性股関節脱臼の減少
②感染症に対する適切な抗生剤の使用,手術療法の併用による,骨髄炎,関節炎の減少
③適切な手術療法の採用による,各種小児骨折の治療期間の短縮と治療後良肢位の獲得
④脚延長手技の進歩による各種変形,下肢脚長差の治療,是正
⑤各種骨切り術によるペルテス病の治療期間の短縮
⑥各種腱移行,関節固定術を使った弛緩性麻痺治療の進歩
⑦各種骨切り術による下肢の肢位異常,回旋異常の治療
⑧手術治療,抗生剤の進歩による骨,軟部腫瘍治療の進歩
⑨側弯症など体幹変形治療の進歩
⑩肩を含めた上肢,手の外科の進歩
⑪選択的痙性筋解離術の開発による脳性麻痺治療の進歩

など枚挙にいとまがないほどです.

 一方で,放置された発達性股関節脱臼に対する補正手術も,立派な手術手技を発達させてきていますが,発達性股関節脱臼の発症が減少する中で,これらの治療技術の継承も大きな問題となってきております.

連載 整形外科と蘭學・5

整骨術と蘭学

著者: 川嶌眞人

ページ範囲:P.1206 - P.1207

 蘭学の鼻祖,中津藩の医師前野良沢に蘭学を教えた長崎の蘭方医,通詞外科医の吉雄耕牛(1724~1800)は,塾生たちに整骨術を伝授していたことで知られている.蒲原宏氏は耕牛が整骨術を吉雄外科の必須科目として教えていたため,長崎で耕牛の下で蘭学を学んだ医師たちが全国に伝播させていったと述べている1)

 もともと長崎は整骨術と関係の深い町であった.元和5年(1619),長崎に渡来した中国人陳によって中国拳法が伝えられ,武術とともに救急法も伝えられた.長崎の浪人吉原元棟は柔術救急法に基づいて正術13法を骨子とした杏蔭斎流正骨術を創業,この救急法が耕牛に認められ,吉雄塾で教授されたことから杏蔭斎流正骨術が世に普及することになった.

臨床経験

頚椎部に発生したdumb-bell型神経鞘腫の治療成績

著者: 吉原永武 ,   松山幸弘 ,   後藤学 ,   辻太一 ,   酒井義人 ,   中村博司 ,   石黒直樹

ページ範囲:P.1209 - P.1214

 抄録:頚椎部の砂時計腫は腫瘍の大きさにより全摘出が難しい例がある.今回,頚椎部に発生した砂時計腫の手術例について検討を行った.1989~2001年に手術を行った14例.年齢は平均47歳.術後経過観察期間は平均23カ月.術前・術後症状,手術術式,腫瘍全摘の有無,再発または増大の有無,について検討した.術前JOAスコアは4~17点,平均11.6点,術後のJOAスコアは13~17点,平均16点で,1例を除き症状は改善した.手術は,前方後方より腫瘍を全摘出した例が1例,後方アプローチのみが13例で,うち全摘出が6例,部分摘出が7例であった.全摘出例では再発はなく,部分摘出の7例のうち,残存腫瘍の増大のため再手術に至った例は1例のみであった.前方アプローチの併用は侵襲が大きい.後方アプローチのみで可及的に腫瘍切除を行うことで十分満足のいく結果が得られた.

小児悪性骨腫瘍に対する延長型人工関節の使用経験

著者: 吉田行弘 ,   川野壽 ,   大幸俊三 ,   龍順之助

ページ範囲:P.1217 - P.1221

 抄録:延長型人工関節は小児悪性骨腫瘍に対する患肢再建方法においては,将来的な脚長差を補正できる有用な再建方法の1つである.今回われわれは延長型人工関節を用いて患肢再建を行った5例についての機能評価や,問題点などを検討した.機能的にはほぼ満足する結果ではあるが,X線上大腿骨遠位置換例の2例において,International Symposium of Limb Salvage(ISOLS)のX線評価では,bone remodelingはともにfairであった.小児例の患肢温存方法の選択は腫瘍の部位,年齢,さらに化学療法の効果などを考慮して検討しなくてはいけない.特に延長型人工関節は一期的に脚長差を改善し,患肢再建が可能であるが,延長方法や延長量,人工関節に伴う諸問題など解決すべき課題はあると思われた.

症例報告

脊髄性間欠跛行を呈した頚椎症性脊髄症の1例

著者: 田中領 ,   細江英夫 ,   伏見一成 ,   児玉博隆 ,   宮本敬 ,   清水克時

ページ範囲:P.1223 - P.1227

 抄録:脊髄性間欠跛行を呈した72歳男性の頚椎症性脊髄症に対し,前方除圧固定術を行ったところ間欠跛行が消失した.安静時には自覚症状はなく,他覚的所見も乏しかった.歩行負荷試験にて自覚的には体幹から下肢にかけての絞扼感,下肢のしびれ,脱力が生じ,他覚的には深部腱反射の亢進,足クローヌスの出現,知覚障害の増悪を認めた.さらにわれわれは,頚椎カラー着用にての歩行負荷試験を行うことで発現する自覚症状および他覚的所見が軽減することを確認した.頚椎カラーを使用した歩行負荷試験は本症の診断に有用であると思われた.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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