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シンポジウム 全人工肩関節置換術の成績
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著者: 高岸憲二1
所属機関: 1群馬大学医学部整形外科学
ページ範囲:P.1134 - P.1135
文献購入ページに移動人工肩関節置換術術後は,過去のいずれの報告でも除痛には優れているが,可動域の改善には必ずしも十分といえない症例も多い.Neerはその原因として腱板機能が温存されていない症例は,除痛には優れているが,機能的,特に挙上が期待できないlimited goal群としている.単純X線上の問題として,長期間経過例では各コンポーネントの緩みが問題となり,少数例ではあるが再置換を要するほどの疼痛が起こる場合もある.Neer typeの上腕骨側のコンポーネントはセメント固定を行わないと高率に緩みが生じると報告されている.他関節の人工関節ではセメント使用による問題も起こり,肩関節もコンポーネントの固定にセメントを使用しない新しい人工肩関節システムが考案されているが,これらの評価には経過観察が必要である.また,関節窩側のコンポーネントは高率に緩みが起こっており,セメントテクニックの向上などが問題にされている.そのほか,関節窩コンポーネントを併用した人工関節置換術と関節窩コンポーネントを使用しない人工骨頭置換術の間には術後成績にさほど差がないとの報告もあり,関節窩コンポーネントを用いない人工骨頭置換術にすべきとの意見もある.しかし,人工関節置換術の術後成績のほうが人工骨頭置換術に比べて良好との報告や,関節窩コンポーネントを用いないと単純X線上関節窩のびらんが進行するなどの報告もあり,まだ意見の一致をみていない.いずれにしても術後良好な成績を得るためには肩関節の解剖を理解して厳密に手術手技に従うほかに適切な後療法を行う必要がある.除痛ならびに日常生活動作の改善については良好であるが,可動域改善の程度については手術時の腱板の状態が大きく左右するので,腱板機能が温存されている時期に手術を行うことが望ましい.
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