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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科39巻11号

2004年11月発行

雑誌目次

視座

交ざる

著者: 高橋啓介

ページ範囲:P.1379 - P.1380

 構造改革,情報公開,規制緩和などの言葉が毎日のようにテレビや新聞を賑わせている.世の中の仕組みが急速に変化し,その変化に対応して改革できない組織は,どんなに巨大な組織であっても潰れていく,そんな時代である.同じく以前から続いていた制度でも,時代の変化とともに合わなくなったものは,やはり消えていく運命にある.
 現在,われわれの多くが所属している,大学の医局講座制という制度も,その中の1つかもしれない.もちろん医局講座制にもいくつもの利点がある.しかし,大きな問題点の1つはその制度の閉鎖性にある.
 通常,医局に入局すると,その同門の1人となる.極端な言い方をすると,同門であれば味方であり,同門以外は敵ではないにしろ味方ではない.そのような同門意識がどこの医局にもあるように思う.そして同門内には他の流派が入ってくることを拒む空気が存在する.

論述

原発性仙骨腫瘍に対する手術治療の成績と問題点

著者: 松本守雄 ,   千葉一裕 ,   石井賢 ,   小川祐人 ,   高石官成 ,   中村雅也 ,   矢部啓夫 ,   戸山芳昭

ページ範囲:P.1383 - P.1388

 抄録:原発性仙骨腫瘍手術例21例の臨床成績について調査した.脊索腫9例,巨細胞腫5例,神経鞘腫4例,軟骨肉腫2例,ユーイング肉腫1例であった.脊索腫では仙骨全摘・再建を2例に,仙骨切断を7例に行ったが,後者では全7例で再発を認めた.巨細胞腫は掻爬を4例,仙骨切断を1例に行い,4例で再発を生じ,再手術を要した.脊索腫2例と軟骨肉腫の1例が腫瘍死し,その他の症例は生存していた.合併症は感染,難治性下肢痛が各5例,instrumentation failure 2例などであり,排尿障害は76%に認めた.本腫瘍は治療法の選択,合併症対策など今後解決すべき様々な問題がある.

関節リウマチ軸椎下病変に対する脊柱管拡大術の治療成績と問題点

著者: 須田義朗 ,   斉藤正史 ,   塩田匡宣 ,   河野仁 ,   田村睦弘 ,   柴崎啓一

ページ範囲:P.1389 - P.1395

 抄録:関節リウマチ軸椎下病変により脊髄症状を呈した19例に対して脊柱管拡大術を行った.術後に頚椎可動域は61.2%に減少し,術後の弯曲異常や不安定性の進行は少なく,おおむね満足すべき結果が得られた.したがって脊柱管拡大術は,その除圧と制動効果によって関節リウマチ軸椎下病変に対する有効な手術方法と考えられた.しかし,術前から後弯のみられた症例ではその進行が認められたことから,本法の適応は少ないと考えられる.また,術後に椎間強直が生じた症例では隣接椎間に不安定性や狭窄が生じる可能性がある.

高齢女性の変形性膝関節症患者に対する足関節固定付き足底板の臨床的効果

著者: 戸田佳孝 ,   月村規子

ページ範囲:P.1397 - P.1402

 抄録:過去のわれわれの研究では,平均年齢65歳の女性変形性膝関節症(膝OA)患者に対する足関節固定付き足底板(新型足底板)は従来の靴の中敷き型足底挿板に比べて,大腿けい骨角(FTA)の外反矯正度も臨床症状の改善度も有意に優れていた.しかし,新型足底板が高齢者にも適応があるか否かは不明であった.今回は70歳以上の高齢女性膝OA患者を対象に調査を行った.74例の膝OA患者を対象に誕生日が奇数の者(n=39)には新型足底板を,偶数日の者(n=35)には靴中敷き足底挿板を8週間装着させた.足底板装着前後での患側片脚立位FTAの変化は,新型足底板群では中敷き型足底挿板群に比べて有意に高い外反矯正角度を示した(p<0.0001).治療前後でのLequesneの重症度指数の変化も新型足底板群では中敷き足底挿板群に比べて有意に改善した(p=0.031).新型足底板群で転倒による骨折や捻挫を受傷した者は皆無であった.以上の結果より,高齢女性膝OA患者に対しても新型足底板は効果のある保存的療法である.

虚血性足部壊死症例に対する切断術の治療成績およびその予後に関する検討

著者: 渡辺隆洋 ,   冨田文久 ,   羽場等 ,   田崎悌史 ,   佐藤達也 ,   多胡秀信

ページ範囲:P.1403 - P.1407

 抄録:当科にて切断術を施行した虚血性足部壊死症例47例56肢の治療成績およびその予後を調査した.最終切断レベルは足部22肢,下腿22肢,大腿12肢で,約8割の症例が下腿以下の切断で治癒していた.再手術は,14例14肢に行われ,両側罹患例や閉塞性動脈硬化症例に多く,その原因として断端部壊死が多かった.疾患別最終切断レベルは閉塞性動脈硬化症単独例では足部,糖尿病単独例では下腿,閉塞性動脈硬化症と糖尿病の合併例では大腿が多かった.義足歩行は下腿切断例の約半数で可能であったが大腿切断例ではほとんど不能であり,義足歩行可能例では機能的予後,生命予後ともによい傾向にあった.切断レベルの決定に関しては,様々な情報から総合的に判断し,活動性が高く,局所の血行が保たれている症例には下腿以下での切断を行い,義足歩行を目指すのが望ましい.

腰仙椎部移行椎例の脊髄円錐下端の高位分布―MRIによる検討

著者: 森本忠嗣 ,   菊地臣一 ,   佐藤勝彦 ,   大谷晃司

ページ範囲:P.1409 - P.1414

 抄録:MRIを用いて腰仙椎部移行椎を有する症例の脊髄円錐下端高位との関係について検討した.対象症例を,腰下肢痛を主訴に当科を受診した症例のうち,脊椎退行性疾患や腫瘍性疾患などの異常所見が認められない青壮年期(18歳以上50歳以下)に限定した.対象の内訳は,正常群69例,L4/移行椎群(第5腰椎の仙椎化)12例,L5/移行椎群(第1仙椎の腰椎化)15例であった.脊髄円錐下端の高位の中央値は,L4/移行椎群ではL1椎体頭側に,正常群とL5/移行椎群ではL1椎体尾側部に存在していた.L4/移行椎群の脊髄円錐下端の高位分布は,正常群やL5/移行椎群より約1椎体分頭側に局在している.この事実は,L1破裂骨折の場合,L4/移行椎群では脊髄障害が惹起されるのに対し,正常群やL5/移行椎群では馬尾障害が惹起される可能性が高いことを示唆している.すなわち,腰仙椎部移行椎の存在は,惹起される神経障害の病態に影響を与える可能性がある.

整形外科/基礎

慢性馬尾圧迫下の神経根内血流障害に対する血流改善効果―選択的EP4受容体アゴニストとプロスタグランジンE1誘導体投与後の血流量の比較検討

著者: 関口美穂 ,   菊地臣一 ,   紺野慎一

ページ範囲:P.1415 - P.1420

 抄録:慢性馬尾圧迫下において,EP4受容体アゴニストの神経根内血管に対する血管拡張と血流量改善作用を,プロスタグランジンE1誘導体と比較した.雑種成犬25頭を用いて慢性馬尾圧迫モデルを作製した.実験系はOP-1206α-CD(プロスタグランジンE1誘導体)3ng/kg/min投与群(n=5)〔以後OP(3)投与群〕,10ng/kg/min投与群(n=5)〔以後OP(10)投与群〕,ONO-4819・CD(EP4受容体アゴニスト)3ng/kg/min投与群(n=5)〔以後EP4(3)投与群〕,10ng/kg/min投与群(n=5)〔以後EP4(10)投与群〕と,対照群として生理食塩水投与群(n=5)(以後コントロール群)の5群を設定した.薬剤投与後10分ごとに神経根内血管の血管径と血流量の計測を行った.OP(3),OP(10),EP(10)投与群では血管が拡張し,血流量が増加した.特に,EP(10)投与群では他の4群に比較して有意に血流量が増加した.これに対して,EP(3)投与群では血管が収縮し,血流量が減少した.以上の結果から,高濃度のEP4受容体アゴニストは,腰部脊柱管狭窄による神経根内血流を改善させる可能性があるといえる.

調査報告

心理的評価からみた慢性腰痛に対する抗うつ薬の有効性と問題点

著者: 佐藤勝彦 ,   菊地臣一 ,   丹羽真一 ,   増子博文

ページ範囲:P.1421 - P.1425

 抄録:慢性腰痛(下肢痛を含む)を有する症例に対する抗うつ薬(トラゾドン)の有効性と投与上の問題点について心理的評価の面から検討した.対象は慢性腰痛を有する12例である.トラゾドン(25~50mg)服用前に,SDS(うつ病自己評価尺度)とBSPOP(整形外科患者に対する精神医学的問題評価のための簡易質問票)を用いて心理的評価を行い,投与後4週の時点で症状の変化と服用状況を調査した.その結果,投与前の評価で心理的影響が小さいと判定された症例では,トラゾドンは慢性腰痛を軽減させる効果を有していると判定できた.一方,投与前の評価で心理的影響が大きいと判定された症例では,トラゾドン投与による副作用が頻発した.心理的影響が大きい慢性腰痛患者は,抗うつ薬の副作用発現の可能性を説明することで,かえって軽微な体調の変化に敏感に反応してしまうと考えられる.抗うつ薬の処方時には,患者が安心して服用できる服薬指導が必要である.

器械

骨粗鬆症を伴う上腕骨近位端骨折に対する順行性直線型髄内釘法

著者: 新村光太郎 ,   勝田真史 ,   今給黎篤弘

ページ範囲:P.1427 - P.1432

 抄録:骨粗鬆症を伴う上腕骨近位端骨折に対して直線型髄内釘(ターゴンPH®)を用い,良好な機能回復を得たので治療成績と同髄内釘の特徴や手技を考察する.手術は14例(平均69歳)に行い,術後6カ月における平均可動域は屈曲163°,外旋72°,内旋Th12,JOAスコアは平均97点であった.ターゴンPH®は直線型で近位骨片に横止めスクリューを多方向に挿入できるため,転位の回避や強固な固定により早期可動域訓練が可能であった.骨折部の十分な整復と適切な挿入位置の決定,腱板の確実な保護および修復が重要である.

整形外科/知ってるつもり

ヘルシンキ宣言

著者: 中木敏夫

ページ範囲:P.1434 - P.1436

 ヘルシンキ宣言はヒトを対象とする医学研究の倫理原則を記したものであり,1964年にヘルシンキで開催された第18回世界医師会で初めて採択されたためその名がある.2000年10月にエジンバラで開催された世界医師会では5回目の修正版が採択された.これがいわゆる新しいヘルシンキ宣言である.ただし,「新しい」を付したのはあくまでも便宜的なものであり,最新版のヘルシンキ宣言のみが有効であることは世界医師会が強調していることである.最新版は2000年に採択された宣言であるが,その後一部の項目について注釈が追加された.したがって,ヘルシンキ宣言と現在呼べるのは2004年10月に採択された注釈を含めた宣言全体である.原文1)および日本医師会による邦語訳2)はインターネットで閲覧できる.
 ヘルシンキ宣言は,「A 序言(第1~9項目)」,「B すべての医学研究のための基本原則(第10~27項目)」,「C メディカル・ケアと結びついた医学研究のための追加原則(第28~32項目)」から構成されている.本稿では原文を再掲することはせず,その主旨が重要と思われる項目をトピック的に取り上げ,筆者の解釈を含めて述べる.

国際学会印象記

第9回国際肩関節学会(ICSS:International Congress on Surgery of the Shoulder)

著者: 小川清久

ページ範囲:P.1438 - P.1439

 第9回国際肩関節学会が,Robert H. Cofield(Mayo Clinic)会長のもと5月2~5日に米国Washington DCのGrand Hyatt Washingtonで開催された.本学会は1980年Londonの第1回学会以降,3年ごとに世界各地域ブロックを移動して開催され,第3回学会は1986年に福岡で高岸直人会長(現福岡大学名誉教授)のもとで開催された.
 学会前日,米国の東海岸沿いは荒天で飛行機の欠航が相次いだが,参加者総数544名,日本からの参加者も62名を数えた.口演207題,ポスター256題が,2つの口演会場とポスター会場で報告されたが,欧米では上肢外科が手と肩・肘に大別されていることを反映してElbow sessionも設けられていた.

連載 医者も知りたい【医者のはなし】 11

細菌を発見したレーベンフック(Leuwenhoek)を中心として

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.1440 - P.1442

 今回は少し九州を離れて,17~18世紀のヨーロッパ,特にオランダに飛んでみたい.日本は,17世紀の初頭以来,オランダとは深い関係がある.徳川第三代将軍家光の時代に鎖国が始まり,日本はオランダと中国のみとだけ通商を行っていた.特にオランダは,長崎の出島を通じて徳川時代260年間に,日本にいろいろな西洋文化を紹介していた唯一の国である.
 その日本において,鎖国政策が始まろうとしていた“1630”年代に,細菌と原虫など数々の微生物を発見したレーベンフックが誕生している.日本ではあの有名な貝原益軒がこの頃に生まれている.

臨床経験

RA中下位頚椎病変に対するインストゥルメントを用いない固定術

著者: 武井寛 ,   笹木勇人 ,   橋本淳一 ,   千葉克司 ,   伊藤友一

ページ範囲:P.1445 - P.1450

 抄録:上位頚椎亜脱臼に引き続き,あるいは上位頚椎固定術後に生じた多関節破壊型RA患者の中下位頚椎病変に対し,脊髄の除圧と脊柱の安定性を獲得する目的で,脊柱管拡大術に加え腸骨移植による椎間固定,椎弓間固定を図る手術を行った.全例で同時に,あるいは前回手術時に上位頚椎の固定が図られ,結果として全頚椎固定を目的とした.術後1年以上経過した5例を調査の対象とし成績を評価した.2例2椎間でわずかな動きが残ったが,他の全椎間に骨癒合が得られた.ADLや神経症状は全例で不変,あるいは改善した.後頭部~後頚部痛も全例で消失した.

症例報告

正中神経に生じた巨指症を伴わないfibrolipomatous hamartomaの1例

著者: 守屋拓朗 ,   阿部圭宏 ,   廣田延大 ,   國吉一樹 ,   守屋秀繁

ページ範囲:P.1451 - P.1454

 抄録:巨指症を伴わないfibrolipomatous hamartomaの1例を経験したので報告する.
 症例は35歳,女性.左手関節部掌側に腫瘤を認めた.腫瘤に圧痛はなく,Tinel's sign陽性,母指球筋の萎縮を認めた.MRI T1,T2強調像とも,高信号と低信号の混在した構造を示し,矢状断面像では線状の縞模様像を示した.手根管開放術を行った.手術所見では手首皮線近位から,運動枝・総指神経のレベルまで神経の肥大を認めた.Fascicleの1本を分離採取し,生検を行った.病理所見では緻密な膠原線維の中に小血管・成熟脂肪細胞を認めた.術後,しびれ感は消失し,知覚,母指対立機能ともに改善した.

脊柱側弯を伴った異形成性脊椎すべり症の1例

著者: 池川直志 ,   高橋和久 ,   南昌平 ,   大鳥精司 ,   青木保親 ,   小谷俊明 ,   赤澤努 ,   男澤朝行 ,   守屋秀繁

ページ範囲:P.1455 - P.1459

 抄録:脊柱側弯を伴った異形成性脊椎すべり症の1例を経験したので報告する.症例は13歳,女性で,主訴は両下肢痛と脊柱変形であった.画像上,L5前方形成不全を伴うL4すべりと,右胸椎・左腰椎凸の側弯を認めた.この症例に対し後方進入腰椎椎体間固定術を施行した.術後,両下肢痛は消失し,側弯は一部改善した.本症例は特発性側弯に坐骨神経痛に由来する疼痛性側弯が合併したものであり,腰椎手術により体幹バランスは改善した.

四肢麻痺を呈した頚椎化膿性脊椎炎の1例

著者: 上野岳暁 ,   桝田義英 ,   島岡宏行 ,   三浦太士 ,   伊東勝也 ,   吉村和憲 ,   下林幹夫

ページ範囲:P.1461 - P.1465

 抄録:四肢麻痺を呈した頚椎化膿性脊椎炎の1例を経験した.症例は50歳の女性で,関節リウマチ(RA)の加療中であった.2001年6月に,特に誘因なく背部痛が出現,翌日当院を受診した.疼痛のため歩行困難であり,精査目的にて入院した.6月13日施行のMRIにて,C4/5からC7にかけて硬膜外に膿瘍を疑わせる病変が存在したため,頚椎硬膜外膿瘍と診断し,抗生剤の点滴を開始した.6月14日より意識レベルが低下,6月16日には四肢麻痺となったが,敗血症,膿胸を併発しており,手術的加療は全身状態の悪化を考慮して実施せず,保存的に加療した.発熱,炎症反応は次第に鎮静化し,四肢筋力は徐々に回復,一本杖歩行が可能となり退院した.RAなどの易感染性を有する患者に発生した急性の強い背部痛は,化膿性脊椎炎も念頭に置いた加療が必要であると考えられる.

上腕部引き抜き切断端をfree fillet flapで被覆した1例

著者: 岩田勝栄 ,   谷口泰徳 ,   大浦晴夫 ,   本田高幹 ,   石元優々 ,   吉田宗人

ページ範囲:P.1467 - P.1470

 抄録:症例は58歳,男性.2003年3月中旬,掘削機に左上肢を巻き込まれ受傷した.左上肢は上腕骨骨幹部中央レベルで完全切断され,三角筋は残存していたが,皮膚は肩関節部から剝脱していた.切断された上肢側の前腕部では橈骨,尺骨の開放性骨折と手指の不全断裂を認めた.全身合併症のため再接着術は不可能と判断し,同日切断肢を利用したfree fillet flap移植を施行した.上腕動脈とその伴走静脈を端々吻合し,断端部を皮弁で被覆した.術後10カ月の肩関節可動域は屈曲80°,外転75°である.Free fillet flapを用いることにより肩関節機能を温存でき,術後追跡期間は短期ではあるが経過良好である.外傷性の切断肢で再接着術が不可能で,緊急に創の被覆が必要な場合,free fillet flapは安全かつ有用であると考えられる.

少年期に診断された骨形成不全症の1例

著者: 大野一幸 ,   小野剛史 ,   秋山慶輔 ,   樋口周久 ,   清水信幸 ,   吉川秀樹

ページ範囲:P.1471 - P.1476

 抄録:大腿骨骨幹部骨折,胸腰椎多発圧迫骨折を契機に診断された骨形成不全症(Ⅰ型)に対して,骨生検・骨形態計測を行った.骨形成,骨吸収ともに亢進し,高回転型の骨代謝の像を呈しており,両者の不均衡により骨量は減少していた.Glorieuxらの方法に準じて1年間に計3回pamidronateの投与を行ったところ,初回投与時のみ発熱,軽度の低カルシウム血症の出現をみたが,腰背部痛の消失,腰椎・大腿骨の骨量の増加,脊椎椎体高の回復をみた.少年期に増加した骨折例の場合,骨形成不全症も考慮に入れる必要がある.

脊椎後部カリエスの1例

著者: 田村睦弘 ,   斉藤正史 ,   河野仁 ,   須田義朗 ,   塩田匡宣 ,   町田正文 ,   柴崎啓一

ページ範囲:P.1477 - P.1481

 抄録:骨結核は血行感染であるため,骨皮質が厚く海綿骨に乏しい椎弓や棘突起などには病巣を作ることは極めて稀である.症例は86歳,男性で強い腰背部痛を認めた.X線像では第1腰椎の圧潰,CTならびにMRI像では第4腰椎棘突起の骨破壊,右腸腰筋膿瘍を認めた.病巣掻爬術(L4棘突起,右腸腰筋)と腰椎前方固定術(T12-L2)を行い,術後経過は良好である.本疾患は脊柱変形を来すことは稀であり,膿が背部に流出することが多いため麻痺は起こりにくい.治療の基本は抗結核薬投与であるが,病巣掻爬も有効である.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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