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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科4巻10号

1969年10月発行

雑誌目次

骨腫瘍カラーシリーズ

1.Enchondroma/2.Osteochondroma

著者: 骨腫瘍委員会

ページ範囲:P.755 - P.758

症例1:19歳,男,右中指中節骨に生じたEnchondroma, solitary.約1年前よりの局所の疼痛を主訴として来診した.局所所見で圧痛は認められるが,腫脹,局所熱感等はなく腫瘤も触知しない.
症例2:28歳,女,左手に生じたEnchondroma, multiple.指の変形を主訴として来診した.

視座

長期関節固定の恐しさ

著者: 池田亀夫

ページ範囲:P.759 - P.759

 先天股脱の治療において幼若股関節を長期間にわたつて固定すると,好ましからざる結果を招来することは周知の事実であり,Pavlikらによる運動許容療法発展の一理由でもある.しかしながら,この治療法の理念は主として思惟的,経験的なものであつて,基礎的,実験的事実に立脚したものとはいえない.
 もともと,関節は運動に最も適応するように構成されており,これに反して固定は関節機能を障害し,その退行変性を促進し,変形性関節症発生の起点となることは幾多の臨床研究によつても明らかにされている.

論述

慢性関節リウマチの金療法

著者: 伊藤久次

ページ範囲:P.760 - P.767

はじめに
 慢性関節リウマチの治療は容易ではなく,ことに治療剤には決定的のものはまだないために金製剤の効果が改めて注目され,その価値が再認識され,わが国治療界でも取り上げられたのは,この10数年来のことである.しかし実際上は金療法の作用機転もまだ明らかでなく,その効果は遅効性であり,副作用もあり,中には使い方や適応性の選び方が分らないなどその他の条件が重つているためか,社会保険の薬価基準中にも昭和38年1月より収録されているにもかかわらず,リウマチ専門家以外には一般医家にはあまり普及しているとは思われない現状である.私はここに最近までの金療法に関する交献を通覧し,またリウマチ学会方面の動向を紹介し,私自身の臨床経験を併せ述べて諸賢の治療上の参考に供したい.

予後調査成績よりみた幼小児上腕骨顆上骨折の垂直牽引療法

著者: 鴇田征夫

ページ範囲:P.768 - P.777

緒言
 幼小児上腕骨顆上骨折は,整形外科領域において比較的頻度の高い骨折であるとともに,副損傷を発生することが多く,治療の困難な骨折の一つといえる.
 本骨折に対して,内外諸家15)16)21)24)29)により多数の治療法が考案されているが,慶大整形外科では古くから垂直牽引療法を愛用し,優秀な成績を収めている1)4)10)

手術手技

人工骨頭の適応と手術手技

著者: 片山良亮

ページ範囲:P.779 - P.785

 股関節の関節形成術に関するかぎり,中間挿入膜による手技からmold arthroplastyに変換しつつあるのは世界的趨勢である.日本もまた,例外ではない.しかしあれほど大きな異物を生体内へ入れるのであるから,当然そこには物理的にも,化学的にもなんらかの生体反応がなければならないはずであるから,不用意な人工骨頭の応用は常に慎しまねばならない.そこで大切なのは適応症および人工骨頭の形態と材質の選択である.

カンファレンス

骨腫瘍—これはなんでしよう(26)

著者: 骨腫瘍症例検討会 ,   宇野秀夫

ページ範囲:P.786 - P.789

 A:患者は26歳の男.1968年の8月に1mくらい上から落ち,右足のレントゲン像に異常所見があるということで,当科に紹介されて来ました.その時は歩行時の右足痛が軽度にありました.bone cystの診断で手術をすすめられましたが,あまり痛みがないので放置しておりました.今年の3月にまた疼痛を訴えて来まして4月15日病巣掻爬,骨移植術を行ないました.その後,経過は良好です.
 血液生化学などの検査はすべて正常でした.

臨床経験

股関節cup arthroplasty術後の理学療法

著者: 田中清介 ,   伊藤鉄夫

ページ範囲:P.790 - P.794

 股関節疾患に対するvitallium製cupによるarthroplastyはSmith-Petersenが1939年に発表して以来,今日米国では広く行なわれつつある手術である.本邦においてはcupの使用は報告はみられるが,まだ一般化される段階には至つていない.cup arthroplastyの手術成績を左右するものは,他の手術におけると同様,①正しい手術適応,②習熱した手術手技,③適切な後療法であつて,そのうちどれ一つが不適当であつても予後は不良に終る.後療法についてはcup arthroplastyが広く行なわれている米国においても,病院により,医師によりまちまちであり一定していない.
 京都大学整形外科では,昭和41年10月以来cup arthroplastyを主として変形性股関節症に行なつている.後療法は昭和43年1月までの6例には主としてStinchfieldの方法に従つて行なわれたが,成績は必ずしも良くなかつた.昭和43年2月以降はStinchfieldの方法からBoston方式に変更して,良い成績を得るようになつた.Boston方式はAufrancの著書にみられる方法であるが,実際にはBostonにおいてもその著書に記載されている後療法がすべて行なわれている訳ではない.実際に行なえる後療法というものは簡単で行ないやすくなければならず多忙なPTが行ないうる訓練内容というものは繁雑なものでなく,簡単なものでなければ長続きしない.われわれは実際Bostonで行なわれている方法に改良を加えた方法を行なつているので,その概要を記述したいと思う.

神奈川県交通救急センターにおける整形外科活動の概況

著者: 桜田允也 ,   野末洋 ,   新垣敏雄 ,   小林慶二 ,   杉本智透 ,   大森一紀

ページ範囲:P.795 - P.800

はじめに
 交通機関の発達は近代社会の大きな特徴の一つであり,それに伴う交通災害の増加はさけることのできない現状である.
 交通問題に関係する分野は広く,交通法規,道路施設,関連産業,交通保険,災害医療,交通裁判,さらには,中央,地方行政にもとづく都市,道路計画のあり方までも,交通災害の増加およびその性質を左右する因子となつている.

膝蓋骨Aneurysmal Bone Cystの1例

著者: 前田秀也 ,   小山田喜敬 ,   田沢睦夫

ページ範囲:P.801 - P.804

 近年,aneurysmal bone cystの報告はしばしば見られるが,膝蓋骨に発生するものはきわめて稀とされている.
 われわれは最近その1例を経験したので報告する.

エオジン好性細胞骨肉芽腫の2例

著者: 長島隆彌 ,   小林浩

ページ範囲:P.805 - P.808

 骨に網内系細胞の増殖と好酸球の浸潤を特徴とするエオジン好性細胞骨肉芽腫(E. G.と略す)については,Finziが1929年に発表したとされ,1940年にはOtaniら9)がsolitary granuloma of boneとして,またLichtensteinとJaffe4)はeosinophilic granuloma of boneとして発表している.本邦においても,最近この疾患の報告がかなりみられるようである.われわれも最近本疾患と思われる2症例を経験したので報告する.

慢性骨髄性白血病とfibrosarcomaの併発した1例

著者: 矢野悟 ,   高原伸雄

ページ範囲:P.809 - P.814

 われわれは慢性骨髄性白血病と左大腿軟部組織に発生したfibrosarcomaとの併発例を経験した.本症例は初め腫瘍の骨髄転移による類白血病様反応と考えられたが,骨髄細胞中に慢性骨髄性白血病に特有な異常染色体philadelphia-1が発見されたことから,いわゆる重複悪性腫瘍と考ええる症例であつたので,若干の考察を加えて報告する.

前上腸骨棘摧裂骨折の8例

著者: 田平浩也 ,   本間一弘 ,   岩永安弘 ,   安倍竜太郎

ページ範囲:P.815 - P.820

緒言
 青少年の主としてスポーツ時に好発する外傷のうち筋肉の強い牽引によつて惹起される骨折の一つに前腸骨棘摧裂骨折があるが,本骨折は近年スポーツの隆盛に伴いしだいにその数を増してきている.
 われわれは某病院において最近4年間に,両側同時に発生した稀な1例を含む8例の本骨折患者を経験し,うち骨片転位のみられた6例に対して観血的治療を行ない,早期にしかも良好な成績を得たので若干の考察を加えて報告する.

肩関節内旋位拘縮の1症例—肩胛下筋短縮症(仮称)

著者: 梁復興

ページ範囲:P.821 - P.824

 肩関節拘縮をきたす疾患はごく稀である.三角筋のintermediate partの線維化で肩関節の外転位拘縮をきたした症例の報告は内外文献をつうじ数例を数えるのみである.
 最近われわれは肩関節内旋位拘縮をきたし,いまだ報告例をみないため,診断に困つた症例に遭遇した.手術の結果,肩胛下筋の線維化を認めたので,若干の文献的考察を加えて報告する.

Morton病の2治験例

著者: 加藤恭之 ,   高沢晴夫

ページ範囲:P.825 - P.828

緒言
 第3,第4足指に放散する特有の電撃様疼痛を主訴とするMorton病は,1876年Mortonにより報告された,その後欧米では多数の報告がみられるが,本邦では長谷川,朝田の報告をみるに過ぎない.
 われわれは,最近本症の2例を経験し,観血的に治癒せしめえたので報告する.

老人になつて発見されたEhlers-Danlos症候群の1症例について

著者: 立沢喜和 ,   井上四郎 ,   阪本庸人

ページ範囲:P.829 - P.833

 本疾患は1862年Meekrenによつて過伸展性,弾力性に富む皮膚の状態を呈する一疾患として記載されたのがはじめてであるが,1901年Ehlersが関節弛緩と皮下出血傾向を,1908年Danlosが皮膚および皮下組織の腫瘍を伴なうことを報告し,以来一般にEhlers-Danlos症候群と呼ばれるようになつた.
 本疾患は小児期に既に特徴的な変化が現われるため,小児科領域における報告例が多かつたが,最近では整形外科領域における報告例も散見されるようになつた)2,17〜19,21〜24)

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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