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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科4巻11号

1969年11月発行

雑誌目次

骨腫瘍カラーシリーズ

3.Ecchondroma/4.Benign chondroblastoma

著者: 骨腫瘍委員会

ページ範囲:P.835 - P.838

症例4:22歳,女,約半年前に自動車のドアで左手指をはさんだことがあるが,3カ月前より第IV指中節部の腫脹に気づき,指の運動に際し疼痛があったという(日本医大)
症例5:38歳,女,約10年前より左中指,中節に膨隆のあるのに気づき,指を使った後に時折疼痛,局所熱感を訴え,少しずつ大きくなってきている(東医歯大).

視座

足の問題

著者: 青池勇雄

ページ範囲:P.839 - P.839

 小外科という言葉がある.これはいろいろの意味を含んでいるのであろうが,だいたいは小さい切り傷とか表在性の腫瘍などを切除する程度の簡単な小切開で済んで,生命には何の影響も及ぼすことのないような手術の外科と解されてよい.したがつてその対象の器官といえば,手,足のような末梢部位が多いことになるが,しかし小外科という意味は決して手術をおろそかにしてよいというものではない.爪一つ切り取るにしても,あとに痛みが残らないように細かい注意が必要となり,かえつてそういう点ではいつそうやりにくいともいえる.このことをいましめて,昔から,小外科医(おそまつな外科医)はあつても小外科というものはないとの警句がある.メスを握るもの常にこの警句を念頭に入れておかなければならない.
 足の病気は幸いに手のものに較べると少ない.一番難物であつた先天性内反足の治療もかなりよい成績が得られるようになつたし,またポリオの麻痺足はほとんど見られなくなり,むしろ最近はリハビリテーションの進歩に伴つて,片麻痺患者の足の問題が浮かびあがつてきている.足で一番困ることは起立,歩行に際しての疼痛であつて,変形の終局も結局は疼痛につながるわけで,疼痛を除くことが目標となる.

論述

脳血管障害の病態および予後を規定する諸因子—臨床的および病理学的考察

著者: 亀山正邦

ページ範囲:P.840 - P.846

はじめに
 脳血管障害(CVAと略)例では,いつたん急性期を経過しえても,その原因となつた血管病変,高血圧などは,いぜんとして存続している.したがつて,常に再発の危険にさらされている.CVAの治療の中で,rehabilitationはもつとも重要なもののひとつであるが,rehabilitationの実施そのものの中にも,このようなCVA再発のriskがひそんでいる.一方,CVA後遺症の経過と予後には,治療の適不適のみならず,個人差が関係する面も少なくない.
 この論文は,CVAの予後を規定する諸因子のうち,年齢,血圧,脳の病巣部位および錐体交叉のvariationの問題を,臨床と病理の面から解明することを目的としている.

若年性関節リウマチの病態

著者: 塚本行男 ,   山本真 ,   佐竹孝之 ,   星野鉄士 ,   喜多正鎮 ,   桑野茂

ページ範囲:P.847 - P.855

 幼少年期に起こる関節リウマチが,若年性関節リウマチ,あるいはStill病と呼ばれて成人慢性関節リウマチと区別される理由は単に発症期の差異ではなく,若年性関節リウマチには成人とは異なつた病像が多々含まれ,また成人よりはるかに多彩な病像を示すためである.
 その病像の多彩さは,成人慢性関節リウマチの診断が定型的な場合には極めて容易であり,困難な場合にも主として結合織病相互間の鑑別が問題であるのに,若年性関節リウマチでは,重篤な感染性疾患と混同される危険性を含む一方,単なる外傷性関節炎として看過される可能性をも含んでいる.すなわち若年性関節リウマチの診断は少なくともその発症早期には困難な点が少なくない.

検査法

Osteoporosisの骨質の定量法

著者: 若松英吉 ,   日下部明 ,   佐藤光三 ,   土肥千里

ページ範囲:P.856 - P.863

まえがき
 骨質の定量法には大きくわけて①骨のX線写真,あるいは骨自体のX線的濃度を濃度計で測定するX線学的方法,②採取骨片について,それが不規則な形をしているならアルキメデスの原理を使つて,あるいはそれが直方形とか正方形といつた整形のものであるなら直接の計測で体積を測り,一方骨片の重量を測り,重量と体積との比を求める物理的方法,③組織学的定量法がある.
 Osteoporosisであるか否かを診断するにあたり,これらのうちいかなる方法をとつても,一般X線像によつて主観的に判断するより客観性をもつている.しかしX線学的にosteoporosisが疑われる場合,骨軟化症,副甲状腺機能亢進症,全身性の悪性骨腫瘍との鑑別を必要とすることが少なくない.このような場合,前2者の定量法より組織学的定量法の方がその組織像を同時に観察されるので有利である.

手術手技

顔面骨骨折の治療

著者: 藤野豊美

ページ範囲:P.864 - P.873

 従来,散発的にみられた鼻骨骨折や顎骨の骨折は,耳鼻科医や口腔外科医によつて治療されていたが,最近の交通機関のスピード化によつて頬骨骨折や眼窩骨折を伴うことが多くなつてきた.これらの治療は形成外科医によるのが理想であろうが,現実には不可能に近い.当然,整形外科医の方々でも患者が飛び込んでくれば処置しなければならない.
 ところが,顔面は,眼,鼻,耳,口腔など他の専門分野に属し,整形外科医にとつてはなんとなく,おつくうな分野である.しかし,本来,整形外科医は骨折の整復固定を得意中の得意とするので,顔面骨折の特異点やその処理のこつに熟知すれば,より処理範囲が拡大できるものと思われる.

歴史

骨折治療の近代史(1)—Bone Setterから整形外科へ

著者: 天児民和

ページ範囲:P.874 - P.879

はじめに
 今回私は骨折治療の変遷を少し書いてみようと思う.元来私は歴史の専門的な研究家ではない.学生の講義の合間に新しい治療法を開拓した先人の業績を称えるとともにその人の伝記の中から面白いエピソードをいくつか紹介した.そういう形での歴史,言い換えてみると素人が興味本位に眺めた,もっと言葉をくだいて言うならば素人が野次馬精神で眺めた歴史である.正統な医学史というには余りにおこがましい.しかしこの頃学会に出席してみると新しい業績が続々と発表せられ,前へ前へと進んではいるものの何となく足元がしっかりしていないという感じがする.そして過去の先人の業績が意識してか,無意識であるか分らないがまったく無視してしまわれていることが多い.そんなことを考えると私がここに貧弱な私の知識を紹介するのも無駄ではないと思う.
 しかし骨折の治療をヒポクラテスの時代から書くのは大変な仕事であるし,日本のように医学図書館に古い文献のない国ではできる仕事ではない.そこで私は近代史ということにした.では骨折の近代とはいつから始まるか.外科の近代と言えば私はListerの制腐法の始まったころであろうと思う.またListerの制腐法の第1例が脛骨の開放骨折であった.

海外だより

英国Wrightington病院におけるCharnleyの股関節total replacementについて

著者: 長井淳 ,   伊藤鉄夫

ページ範囲:P.880 - P.884

 私は最近英国のWrightington病院で10ヵ月間Charnleyのtotal replacementを見る機会を得ましたのでそれについてお話ししたいと思います.
 昨年9月,New YorkのColumbia大学でのリウマチの実験をひとまず終えてManchester郊外のWiganにあるWrightington病院に着きました.Wrightington病院は本来結核療養所だつた所で結核が少なくなつてからはCharnleyのHip Center,一般整形外科,リウマチ科,胸部結核科があり,以前にはosteotomyで有名なMcMurrayも居たことがあります.ベッド数350床中股関節外科のみで約130床を占めています.Hip CenterのstaffはCharnleyの下に私を含めてresidentが5〜6人居り,毎週約20例のtotal replacement(Low Friction Arthroplasty, L. F. A.と呼ぶ)を行なつています.私も10ヵ月間に約180例のL. F. A.の手術助手と20例の執刀をする機会を得ました.病院としては,この7年間に総数3000例を数えています.最近は股関節のみならず,膝関節のL. F. A. も開発中でCharnley以下非常に開放的な明るい感じの病院でした.

カンファレンス

骨腫瘍—これはなんでしよう(27)

著者: 骨腫瘍症例検討会 ,   字野秀夫

ページ範囲:P.885 - P.889

 A:患者は36歳の男子で,家族歴には特記することはありません.既往歴1967年6月,交通事故にあい,頭部外傷および左前腕骨骨折,左下肢打撲にて某救急病院に約1ヵ月入院しました.
 1968年4月,左膝関節部痛にて当院外科を訪れ,レ線像(第1図)で脛骨上端に異常陰影を指摘されたが放置しておりました.

臨床経験

成人の肘内障について

著者: 武井秀丸 ,   鈴木勝己 ,   高橋定雄 ,   高橋力 ,   佐々木崇

ページ範囲:P.890 - P.893

はじめに
 幼児に多い肘内障は,成人では解剖学的にも発生しにくく,事実文献上極めて少数の報告例をみるのみであるが,われわれは,3例の成人に発生した肘内障の治験を述べ,過去の文献と併せ,多少の検討を加えてみたい.

外傷性腓骨筋腱脱臼

著者: 高沢晴夫 ,   福沢玄英 ,   土屋弘吉

ページ範囲:P.894 - P.900

はじめに
 腱の外傷性脱臼は腱断裂に比較すると割合に稀なものであり,通常は解剖学的に特有な部位,すなおち腱が骨突出部の周りで,あるいは筋膜の仕切りの中でその方向を変える場所で生ずる.
 現在までに上腕二頭筋腱,指伸筋腱,腓骨筋腱,前・後脛骨筋腱等の脱臼の報告がなされているが,一般に下肢に多く,なかんずく腓骨筋腱にもつとも頻発するとされている.

ゴルフスウィングにより惹起したと思われる第7頸椎,第1,第2胸椎棘突起骨折の1例について

著者: 藤野豊樹

ページ範囲:P.902 - P.905

 ゴルフスウィングによる頸胸椎棘突起骨折は比較的稀なもので,外国には報告例を見出すことができなかつたが,本邦では第1表に示す諸氏)1〜4)による7症例をみる.最近,われわれはゴルフスウィンクにょつて惹起したと思われる第7頸椎,第1,第2胸椎棘突起の多発性骨折の1例を経験したので若干の考察を加えて報告する.

左示指に発生した滑膜肉腫について

著者: 石井良章 ,   細谷俊彦

ページ範囲:P.906 - P.913

はじめに
 Simon(1865)35)は膝関節部に発生した腫瘍を切除し,これを滑膜由来の肉腫と推測した.ついでLejars & Rubens-Duval(1910)21)によりその組織学的特徴が記載され,初めて本腫瘍は独立疾患として,Endotheliome Synovialeと命名された.Smith(1927)36)はその発生起源と部位を明確に示すものとして,"Synoviomata"と命名した.
 爾来欧米では多数の報告を見るが,本邦では四ツ柳,田上(1942)46)の報告をもつて嚆矢とする.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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