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歴史
骨折治療の近代史(1)—Bone Setterから整形外科へ
著者: 天児民和12
所属機関: 1九州労災病院 2九州大学
ページ範囲:P.874 - P.879
文献購入ページに移動今回私は骨折治療の変遷を少し書いてみようと思う.元来私は歴史の専門的な研究家ではない.学生の講義の合間に新しい治療法を開拓した先人の業績を称えるとともにその人の伝記の中から面白いエピソードをいくつか紹介した.そういう形での歴史,言い換えてみると素人が興味本位に眺めた,もっと言葉をくだいて言うならば素人が野次馬精神で眺めた歴史である.正統な医学史というには余りにおこがましい.しかしこの頃学会に出席してみると新しい業績が続々と発表せられ,前へ前へと進んではいるものの何となく足元がしっかりしていないという感じがする.そして過去の先人の業績が意識してか,無意識であるか分らないがまったく無視してしまわれていることが多い.そんなことを考えると私がここに貧弱な私の知識を紹介するのも無駄ではないと思う.
しかし骨折の治療をヒポクラテスの時代から書くのは大変な仕事であるし,日本のように医学図書館に古い文献のない国ではできる仕事ではない.そこで私は近代史ということにした.では骨折の近代とはいつから始まるか.外科の近代と言えば私はListerの制腐法の始まったころであろうと思う.またListerの制腐法の第1例が脛骨の開放骨折であった.
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